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東京電力と監督当局の馴れ合い体制/天下り/原子力政策は政治家が触れることのできない分野

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東京電力と監督当局の馴れ合いを生んだ体制
JB PRESS 2011.04.21(Thu)
Financial Times(2011年4月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 ある米国人が2000年に、日本の原子力監督当局に内部告発を行った。東京電力が原子力発電所での安全基準違反を隠蔽しているという内容だ。当局はこれを受け、これらの発電所のことを最もよく知る団体にその調査を命じた。そう、東電自身に調査させたのだ。
 2年後、東電は正式に、同社の原子力施設は安全だという報告を行った。ところが、同社が検査データを改竄していたことを示す証拠が明るみに出て、数週間後にこの報告を撤回する羽目になった。
 不祥事の責任を取って数人の上級幹部が辞任し、東電は保有する原子炉17基すべてを停止して総合的な安全検査を行わざるを得なくなった。
 今年3月11日の大津波の後に東電の福島第一原発から放射線が漏れ始めて以来、10年前のこの事件がたびたび引き合いに出されている。
 やり玉に挙げられるのは大抵、東電だ。同社は福島原発の事故について手厳しい批判を浴びており、10年前の不祥事は同社が安全基準を長年軽視してきた証拠だという指摘が数多くなされている。
内部告発者の身元を東電に明かした保安院
 だが、日本の原発反対論者は、この2000〜02年のエピソードで監督当局が担った役割が最も腹立たしいと考えている。経済産業省の一部門で、日本にある原子炉54基の安全性を監督するのが仕事の原子力安全・保安院は、内部告発者が誰であるか(ゼネラル・エレクトリック=GE=から業務を請け負っていた人物だった)を東電に明かしていたのだ。
 またこの一件を批判する人々によれば、保安院はこの内部告発が真剣に検討されるような手配をほとんど行わなかったという。
 「原子力安全・保安院と原子力安全委員会(もう1つの監督機関)があるから原子力発電は大丈夫だと、政府はずっと言ってきた。だが、そんなのはウソだ」。原子力業界で20年間働いたウラン濃縮の専門家で、現在は中部大学の教授を務める武田邦彦氏はこう言い切る。「東電は悪い。だが、それがまかり通っているのは、あのシステムのせいだ」
 日本の原子力行政を批判する人々は、2つの原子力監督機関のうち、より強い権限を持つ原子力安全・保安院を経済産業省から完全に独立させることを望んでいる。保安院では現在、経産省出身の官僚が在籍して原発の日々の監督に当たっている。
姿の見えない原子力安全委員会
 もう1つの監督機関である原子力安全委員会は外部の専門家からなる諮問機関で、プロジェクトの申請のチェックや総合的な安全基準の策定などを行うことになっている。権限を持たない組織だという見方が一般的で、今回の福島原発の危機に際しても表舞台にはほとんど出てきていない。
 独立行政法人日本原子力研究開発機構の研究所長をかつて務めた笠井篤氏は、原子力安全委員会を歌舞伎の控えめな裏方になぞらえる*1。〈*1=日本原子力研究開発機構は、日本原子力研究所(原研) と核燃料サイクル開発機構を統合再編して設立した組織で、笠井氏は原研の研究室長を務めた〉
 「彼らは日本の原子力の安全に責任を負うことになっているんだ。なぜ前に出てこないのか?」
 日本政府は18日、原発の監督体制の改善に向けた一歩を踏み出した。電力業界の規制に関与している上級公務員が退官後に電力会社に就職すること――長く続く慣例、いわゆる「天下り」――を禁じたのだ。
 原子力エネルギーの利用に反対している日本共産党の塩川鉄也議員がまとめたデータによれば、電力会社10社はこれまでに45人の経産省OBを取締役クラスの役職に受け入れてきた。現在でも6人が常務などの役職に就いているという。
根深い馴れ合い関係
 東電では、これまでに4人の官僚OBが副社長を務めている。今年1月に東電に顧問として入社した石田徹・資源エネルギー庁前長官も同じ道を歩んで5人目になると見られていたが、19日に辞任することを明らかにした。
 別の電力会社のある幹部は、東電の原子力のスペシャリストたちと彼らのかつての監督官たちとの関係は、キャリアの初めから決められると指摘する。「東大で原子物理学を専攻した人のうち、トップクラスの成績を収めた人が東電に就職し、それより成績の低い人が保安院に入る」
 また、この幹部によれば、官僚は原子力関連の予算をほぼフリーハンドで決めることができ(基礎研究や廃棄物処理、原子力関連施設を受け入れている自治体への補助金などには年間4000億円を超える公金が投じられている)、電力会社が規制緩和を免れるための手助けもこっそり行ってきたという。
 官僚と電力会社は1970年代の石油危機の際に原子力発電を推進すべく手を組んだ。両者のつながりはいろいろな面で、日本の産業政策全盛期に見られたものによく似ている。2年前に政権を取った左派寄りの民主党でさえ、この現状を変える手だてはほとんど講じていない。
 「原子力政策は、政治家が触れることのできない分野だ」。原子力業界を批判してきた前福島県知事の佐藤栄佐久氏はそう語る。技術的な複雑さゆえに、政治家は専門家に質問することに消極的になってしまうのだという。
天下り禁止は小さな一歩
 電力業界が監督当局に影響力を及ぼしているといっても、それによって電力会社の幹部が私腹を肥やしたわけではないようだ。東電の取締役21人が2010年3月期に受け取った報酬は1人平均3430万円。年間の売上高が5兆円を超える企業の経営者であることを考えれば、莫大な金額だとはとても言えない。
 佐藤氏らによれば、官僚と原子力業界の幹部たちはむしろ、原子力発電をこれに批判的な勢力から守るという「大義」の元に自分たちは一致団結していると考えているという。
 天下りの禁止は、この四半世紀で最悪の原発事故が生じた後にシステムを変えるに当たってのほんの小さな一歩にすぎないということになりそうだ。 By Jonathan Soble and Michiyo Nakamoto
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佐藤栄佐久氏、ずっと前から指摘「国と東電が安全神話を拡散、事故発生しても先ず隠蔽」2011-04-14 | 地震/原発
そこは?死の灰?が降る戦場だった/もたれ合い原発ムラの科学者たちはテレビに出るのではなく、現場へ行け2011-04-16 | 地震/原発 
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原発事故 元凶は天下りにあり 
現代ビジネス2011年04月08日(金)ドクターZは知っている
 東日本大震災による福島第一原発の事故で、政府と東京電力が各方面から非難を浴びている。情報開示の不十分さが不安を拡大させているからだ。
 背景にあるのが、政府(経産省、原子力安全・保安院)と東電の特殊な関係だ。はっきり言えば、ズブズブで密接すぎるのである。
 原子力安全・保安院は原子力等のエネルギーに係る安全及び産業保安の確保を図るための機関。原発などの安全確保のために厳正な監督を行うことになっている。経産省の外局で、有り体に言えば植民地だ。
 一方、東電は独占企業だから、ライバル企業との競争はない。監督するのは政府=原子力安全・保安院だけで、政府さえ丸め込めば、恐いモノなしだ。実際、東電は歴代経産幹部の天下りを受け入れており、今年1月には原子力安全・保安院の上部組織である経産省資源エネルギー庁の前長官だった石田徹氏が、退官後わずか4ヵ月で顧問に天下っている。そうした天下りの見返りとして政府は厳しい監督をせず、また適切な情報開示も行わせることができなかった。安全基準も、いまとなっては甘かったことが明らかになった。
 また、原子力安全・保安院の現院長である寺坂信昭氏は、エネ庁勤務の経験もあるが、前職が経産省商務流通審議官であり、三越や伊勢丹などの百貨店担当をしていた人物だ。経産省が原子力の安全・監視・指導を軽視してきたことを物語る人事と言えよう。
 過去にも福島第一、第二原発や柏崎刈羽原発などでデータ改竄が繰り返されてきたこと、東海村で臨界事故が発生したことなどを見ても、政府と東電のもたれ合いの弊害は明らかだ。はっきり言えば、政府は東電に取り込まれたのである。
 このように、規制する側が規制される側に取り込まれて、規制が被規制側に都合よく歪曲されるメカニズムを「虜理論」(ノーベル経済学賞を受賞したG・スティグラー教授の理論)という。東電の虜になった政府は、国民に対して「由らしむべし、知らしむべからず」の姿勢で原子力行政を行い、今回そのツケが最悪の形で回ってきたのだ。
 それにしても、原発事故に関する政府の情報開示はまったくお粗末で話にならない。テレビでは専門家がいろいろと解説しているが、国民が最も欲しているのは外部への放射線量の情報だろう。例えば、放射線測定データを花粉情報のように地域別に示して提供するべきなのだ。
 実は、そうした情報を提供できるシステムがすでに存在している。(財)原子力安全技術センターが開発した「SPEEDI(スピーディ)」だ。これは「万一、原子力発電所等から大量の放射性物質が放出される事態が発生したとき、線量等を地形や気象を考慮し迅速に予測する」(同センターHPより一部抜粋)もので、'10年度予算には7億8800万円が計上されている。いまこそこのシステムを活用すべきなのに、政府がこれを使った情報発信を決めたのはようやく23日になってから。「スピーディ」とは、ブラックジョークにしか聞こえない。
 賢明な読者はもうお気づきだろうが、この財団法人も天下り機関だ。役職員16名中4名が官僚OBで、元科学技術事務次官だった石田寛人氏が会長(非常勤)として天下っている。
 政府と東電のように天下りを介して規制を歪める関係は、この国の至る所にある。被規制側が規制の主導権を握るのだから、分野によっては危険極まりない。
 日本の総点検が必要だ。


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