【大飯原発】国民を煙に巻きつつ進められる再稼働
サーチナ【社会ニュース】 2012/04/16(月) 11:22
政府として原発の再稼働を判断する4者会議(首相、官房長官、経産相、原発事故担当相)が13日の夜に開かれ、「大飯原発3、4号機の安全性と必要性が確認できた」と言うことで、再稼働を認める方針が固まった(東京新聞、2012年4月14日付)。翌14日には、大飯原発の立地県である福井県を枝野経産相が訪問。同県知事ら関係者と会談し、再稼働を要請した。
こうした政府の動きを、地方の新聞各紙が痛烈に批判している。まず、北海道新聞は4月14日付の社説「大飯原発 再稼働要請は早すぎる」で、「再稼働の可否を判断する安全基準が即席で作られ、関電から早々と提出された安全対策の実施計画が了承された」ことへの危機感を訴える。「決定の根拠も過程も不明確な見切り発車」で「地元の同意を求めるのは無理がある」のは当然であろう。
さらに、問題はその先にある。「しかも、急ごしらえの安全基準は、大飯以外の原発の再稼働にも適用される」のである。「中長期的な安全対策は、電力会社が実施計画をまとめるだけで可」とするような甘い基準の、どこが「安全基準」などと言えるのだろうか。また、枝野さんが繰り返す「電力不足」にしても、「原発の安全性と電力需給の逼迫は、同列に論じるべき問題ではない」と斬り込んでいる。
次は西日本新聞。4月15日付の社説「大飯原発再稼働 初めに結論ありき」で、情報公開の不十分さを指摘する。「福島第1原発の爆発事故のときがそうだ。事態の深刻さが増すにつれて、政府、東電の口は重くなった。正しい情報をできるだけ早く。それが最も求められるときに情報が途切れた」。
同事故が起きてから原発は止まり続け、来月には稼働する原発が「一瞬ゼロに」(枝野経産相)なる予定だ。止めた原発を再稼働させないのはなぜか。それは、あの事故が何であったのかを完全に検証し、事故が起きた場合の対策を完璧に講じることができなければ、ふたたび広域にわたる放射能の飛散という前代未聞の事態が発生することを危惧せざるをえないからである。
つまり、止めた原発を次に再稼働させるときには、国民にその危惧を抱かせないような説得力のある情報が必要なのである。にもかかわらず、「最も求められる」情報である上記の4者会議で、「どんな話し合いが行われているか」が分からない。同社説では、情報の「詳細を公開した方がいいはずだ」とした上で、そんな政府の対応を「曇りガラスを通して見るようで、会合の中身はぼやけてしか見えない」と批判している。
秋田魁も同じく4月15日付の社説「大飯原発再稼働『妥当判断』拙速すぎる」で、「最近の政府は、再稼働に躍起となっているのが見え見えだった」と述べる。そして、「3日の初会合から13日までに6回の関係閣僚会合が開かれ、新安全基準の決定、関電からの安全対策工程表提出、再稼働妥当の判断と慌ただしく続いた」ことが、「再稼働を前提としたものとしか受け取れず、泥縄の印象が拭えない」とする。
さらに、「原発事故による放射性物質拡散の影響は計り知れないことを私たちは学んだ。福島第1原発事故の検証は終わっておらず、原子力規制庁も発足していない中で、なし崩し的に原発を再稼働させようという姿勢では国民の理解は到底得られない」と言うが、まったくその通りだと筆者も思う。
原発の再稼働をめぐる現状は、まさに国民が「煙に巻かれた」状態と表現するのにふさわしい。もちろん、国民を煙に巻いているのは政府である。とはいえ、いまの国民は、「安全です」と言って煙に巻いていれば、原発の設置に合意していたころの国民とは違う。免疫力も知恵もつけている。そして、そのことは政府も分かっていると思う。その上で政府が安易な再稼働への道を進んであるのだから、私たち国民もなめられたものである。
ただひとつ、気になることがある。それは、原発に関連する職場で働いている人たちのことである。原発が再稼働せず、このまま停止、もしくは廃炉ということになれば、その人たちが一気に仕事を失う。この点については、後日、改めて考えてみようと思う。基本的には、原発に関連する職場で働く人が失職したら、「安全です」と言い続けて設置を進めた当事者である政府が、責任を持ってその人たちの仕事を保証すべきだと思っている。
(谷川茂)(情報提供:夕刊ガジェット通信)
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国民不在の原発再稼働を進める「チーム仙谷」
夕刊ガジェット通信2012.04.12 10:15
いやな話である。ずるいというか、姑息というか。国民の意思とは全く関係ないところで、与党の有力者と官僚、そして財界とが原発の再稼働を推進しているというのだ。
2012年4月11日付の東京新聞は、トップで「『チーム仙谷』再稼働主導」という記事を掲載した。現在、再稼働するか注目されている関西電力の大飯原発。再稼働の可否を最終的に決めるのは、4者協議(野田佳彦首相と藤村修官房長官、枝野幸男経産相、細野豪志原発事故担当相の3閣僚)である。しかし、その裏で民主党の政調会長代行である仙谷由人さんが動き、原発の再稼働を進めていることが記事で報告されている。
仙谷さんは、上記の枝野さんと細野さんに古川元久国家戦略担当相、そして齋藤勁官房副長官を加えた5人で「チーム仙谷」なるグループを作り、原発の再稼働について議論している。そして、仙谷さん自身は、「政府の新成長戦略の旗振り役」であることから、「電力不足は経済成長の阻害要因になる」と考え、「早い再稼働を前提」に議論を進めているというのである。
消費税増税問題で忙しい首相や官房長官は、「チーム仙谷」での協議を「追認」するようなかたちになっている。さらに、「チーム仙谷」による「一連の議論」は、「党内でも、知る人は少数にとどまる」というから驚きだ。経団連ら財界は、「安定した電力供給がなければ、生産拠点の海外移転が加速する」と「政府に圧力をかけ続け」、「監督省庁として原発をゼロにしたくない」経産省は、そうした財界の動きを「歓迎している」。
再稼働しないと「東電は安定経営ができず、さらに税金投入が必要になる」という理由で、財務省も事務次官が首相に「再稼働を働きかけている」。つまり、「オール財界、オール霞ヶ関が、もともと再稼働をめざす政権を後ろから押している」というのが、現在の原発をめぐる構図となっているわけである。
ホントかデマかも考えず、感情的に反原発を訴えるのは、どうかと思う。だが、福島第1原発の事故が起きてからは、原発に関する情報が身近になり、客観的かつ冷静に原発のことを考える国民も増えている。その傾向は、34万筆の署名を集めた「原発都民投票」などにもあらわれている。そうした原発に対する国民の関心をよそに、財界と霞ヶ関をバックボーンにして、「党内でも、知る人は少数にとどまる」ようなかたちで、与党の一部の人たちが原発の再稼働を決めようとしていることを、読者はどう思われるだろうか。
最終的に再稼働の可否を決める4者協議は「形だけ」のもので、実質的には再稼働を主導する「チーム仙谷」の協議が政府の方針を決めつつある。国民の声はおろか、民主党の議員の声も届かないような意志決定システムにより、原発の再稼働を決めさせていいのか。記事を読むと、それを阻止する仕組みはないように思える。このままずるずる再稼働が決まった場合、私たちにできる抵抗は、総選挙における投票活動くらいのものなのか。
一時は国民の圧倒的な支持を得ていた民主党だが、原発問題に注目していると、堕落していく様子が浮き彫りになる。かといって、そもそも原発を林立させた張本人である自民党に、いまだ不信感を抱いたままの人も多い。河野太郎さんのような良心的な議員を除いては。このように、総選挙になったらなったで、私たちは選択肢のない状況と向き合わなければならなくなるのである。
それにしても、民主党がこれほどひどくなるとは思っていなかった……。
(谷川 茂)
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◆大飯原発再稼働を「チーム仙谷」は決めた/北朝鮮のミサイル発射に国民の注意を向けさせ、その隙に 2012-04-13 | 地震/原発/政治