復権へ 混乱確実 小沢元代表無罪 9月代表選 照準
中日新聞 核 心 2012/04/27
与党も野党も固唾をのんで見守った民主党の小沢一郎元代表に対する26日の判決。無罪となった元代表は復権に向けた動きを加速させる。内閣不信任決議案や消費税増税法案の採決をめぐる与野党攻防、さらには9月の民主党代表選をにらんだ党内の争いでも存在感を示そうとするだろう。だが、元代表を取り巻く党内外の状況は引き続き厳しい。どの道をたどっても、政治の混乱が増幅することだけは間違いない。(政治部・清水俊介)
■歓喜の涙
待ち望んだ無罪判決にもかかわらず、元代表は26日、記者会見などを開かず「本日の判決は(中略)かねてからの私の主張に沿うものだ」などという短いコメントを発表したのみ。午後1時半前には都内の自宅に戻った。
一方、元代表を支持する議員グループは歓喜に沸いた。判決を聞き、感極まって報道陣の前で泣き出す議員も少なくなかった。
国会内で開かれたグループの会合では、出席者が握手しながら「これで元代表は自由に動ける」「消費税増税は止められる」などと話した。普段は会合にはほとんど出席しない議員は「無罪だから来た」と冗談めかして語ったが、刑事被告人をトップにいただき冷や飯を食ってきたグループが勢いを盛り返したのは間違いない。
議員らは、元代表の党員資格停止の処分解除は当然のこととして、選挙担当の責任者などの党要職に処遇するよう求めていく。
増税採決 先送り狙う? 離党、内閣不信任案も可能性
■シナリオ
元代表は今後、どんなシナリオを描くのか。?民主党を集団離党し、政権再編を仕掛ける?内閣不信任決議案に同調して衆院解散に持ち込み選挙後の再編で主導権を握る?9月の党代表選で勝つ--の3つが考えられる。
消費税増税や環太平洋連携協定(TPP)などの議論で、ことごとく野田佳彦首相と対立する元代表が、離党・新党に走るポイントは今後、何度かあるだろう。しかし新党をつくっても、組もうとする勢力は野党側に見当たらず多数を形成するのは極めて難しい。
衆院選に持ち込むのも、元代表には不利な展開だ。「選挙に強い」と言われてきた元代表だが、グループ内の議員は当選一回生や比例代表選出が多く「選挙に弱い」。衆院選を経れば百人を超えるとされるメンバーの激減は避けられない。
こう考えると党代表選に勝つシナリオが消去法で残る。自身の出馬もあり得るし、自身に近い議員を擁立することもある。
元代表は自身が出馬した10年9月の代表選を含め、代表選では最近3連敗。次に負ければいよいよ影響力は地に落ちる。
だが、野田内閣の今の支持率は3割程度と低迷。消費税増税法案の成立に「命を懸ける」という野田首相に対し「増税に賛成して、選挙は戦えない」という元代表は「増税か、見送りか」という対立軸を示せば勝機ありと見ている。
■継続模索
ただし、この展開に持ち込むのは、代表選までに法案の採決を行わせないことが条件になる。元代表は、集団離党や造反をちらつかせながら消費税増税反対の声を党内で高め、採決の先送りを迫ることになるだろう。党の分裂回避を最優先する輿石東幹事長も、法案を継続審議とする道を模索している。
だが、この方針に野田首相が簡単に納得するはずはない。6月21日までの会期を大幅延長してでも成立にこだわる構えで、この場合も、党内で激しい主導権争いが国民不在で繰り広げられる。