【風を読む】
論説委員長・中静敬一郎 軍隊でなければならぬ理由
産経ニュース2012.2.28 08:08
少しずつ、着々と、東シナ海における日本の排他的経済水域(EEZ)が、「中国の海」と化している。2月19日、沖縄県久米島近海の日本のEEZ内で海洋調査中の海上保安庁測量船が、中国国家海洋局の「海監66」から無線で調査の中止を要求された。海保測量船が中国政府公船から調査中止を求められたのは一昨年5月以来、3回目だ。今回、中国船は中間線から最も日本寄りの海域に入り込んできた。
自国の主権的権利が公然と否定されていることへの日本政府の外交ルートによる申し入れは「中止要求は受け入れられない」。山根隆治外務副大臣は記者会見で、「中国の反応次第で抗議するのか」と尋ねられ、「反応が何かあれば、当然対応する」と語った。こんな形式的な申し入れしかできぬ野田佳彦政権の主権意識の希薄さにはあきれ果てるが、底流には、戦後日本が国の独立と安全を守ることにあまりに無頓着だったことがある。因循姑息(いんじゅんこそく)なやり方がなお続いているのである。
昨年8月、中国の漁業監視船は尖閣諸島沖の日本領海に侵入した。国連海洋法条約は領海内の無害でない行為を防止するため、必要な措置を取れると定めている。列国の軍隊はこれに沿って排除行動を取るが、日本だけはなぜか、排除できないようにしている
国内法に排除規定がないことに加え、自衛隊に国際法上の軍隊としての機能と権限を与えていないためである。例えば、中国が行動をエスカレートさせ、海上自衛隊艦船に海上警備行動が発令されたとしても、退去要請という警察権の行使しかできない。実はこうした日本の弱みを周辺国は見抜き、付け込んできている。北朝鮮による拉致事件も日本の抑止力が機能していたら、起こりはしなかった。
自衛隊を軍隊として国際法に基づく自衛行動を取れるようにしなければ、より大きな危難を呼び込みかねない。憲法第9条の改正が待ったなしの理由である。
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