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「東京地裁判決は小沢さん無罪をこのように説明している〜判決批判する前に読んでほしい」日隅一雄?

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「東京地裁判決は小沢さん無罪をこのように説明している〜判決批判する前に読んでほしい」日隅一雄?からの続き
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 では、詳しく解説します。まず、判決が認定した本件の客観的事実を時系列から確認します(判決要旨14頁〜)。
 時系列(【】だけ読んでもだいたい分かるはずです)
1 【平成16年9月、土地購入計画】
 平成16年9月頃,陸山会において,被告人の秘書を住まわせる寮を新たに建築するための土地として,東京都世田谷区の土地(以下,「本件土地」という。)を購入する計画が持ち上がった。大久保は,本件土地購入につき,被告人の了解を得て,本件土地の売買の仲介をしていた株式会社ミブコーポレーション(以下,「ミブコーポレーション」という。)と連絡を取り,本件土地を購入する旨の交渉を進めた。
2 【10月1日、土地の売買契約締結】
 大久保と石川は,同年10月1日,ミブコーポレーションに対し,本件土地の売主である東洋アレックス株式会社(以下,「東洋アレックス」という。)宛ての,陸山会において本件土地を購入する旨の購入申込書を提出した後,同月5日,ミブコーポレーション本社において,東洋アレックスとの間で,買主を「東京都港区赤坂2-17-覧2チュリス赤坂701号室」「陸山会代表小沢一郎」とし,本件土地を,同月29日を残金支払日として,売買総額3億4264万円で購入する旨の売買契約書を作成し(以下, この売買契約を「本件売買契約」といい,この契約書を「本件売買契約書」という。),東洋アレックスに対し,手付金等として合計1008万円を支払い,ミブコーポレーションに対し,仲介手数料500万円を支払った。
3 【10月12日、小沢さんが4億円を石川秘書に渡した】
 被告人は,同月12日,元赤坂タヮーズに石川を呼び,陸山会が本件土地を購入するための資金として,現金4億円を渡した(以下,この4億円を「本件4億円」という。)。石川は,本件4億円を赤坂事務所に運び,同事務所内の金庫にいったん保管した。
4 【10月13日から27日、石川秘書が4億円のほとんどを銀行に分散して預け入れ】
 石川は,同月13日から同月27日にかけ,本件4億円のうち, 3億8492万円を, 6回に分けて,陸山会代表小沢一郎名義でりそな銀行衆議院支店に開設した預金回座(口座番号(略)。以下,「本件口座」という。以下では,預金口座の名義が,政治団体代表小沢一郎とされているものを,便宜上,政治団体名義の預金口座として表記する。)に合計2億0492万円を入金し,更に6回に分けて,いずれも陸山会名義で開設した三菱東京UF」銀行虎ノ門中央支店の預金口座に5000万円,同銀行虎ノ門支店の預金口座にl000万円,岩手銀行東京営業部の預金口座に3000万円,三井住友銀行日比谷支店の預金田座に合計6000万円,同銀行霞が関支店の預金口座に3000万円を,それぞれ現金を持参して入金した(以下,これらの入金全体を「分散入金」という。)
5 【10月28日、石川秘書が登記を遅らせるとの合意を売り主との間で交わす】
 石川は,同月28日,東洋アレックスとの間で,陸山会と東洋アレックスは,同月29日には所有権移転仮登記だけにとどめ,本登記は平成17年1月7日に行うこと,これに伴って,平成17年分の固定資産税が1月1日の登記名義人である東洋アレックスに課されるが,陸山会がこれを負担することなどを内容とする合意書(以下,「本件合意書」という。)を作成した。
6 【10月28日、いったん分散したほぼ4億円の振込先のうちの4口座から、本件陸山会口座へ1億7000万円送金】
 石川は,平成16年10月28日,いずれも陸山会名義で開設した前記三菱東京UF」銀行虎ノ門中央支店の預金口座から5000万円,前記岩手銀行東京営業部の預金口座から3000万円,前記三井住友銀行日比谷支店の預金田座から6000万円,同銀行霞が関支店の預金口座から3000万円の合計1億7000万円を本件口座に振込送金した(以下,これらの送金全体を「28日の送金」という。)。
7 【10月28日午後遅く、石川はりそな銀行に小沢名義での4億円借入を申し込み、内諾を得た】
 石川は,同日午後遅く, りそな銀行衆議院支店に対し,陸山会名義の定期預金4億円を担保として, 2年程度を返済予定として,被告人名義で4億円の融資を受けたい旨申し込み,その後,同銀行から,その内諾を得た。
8 【10月29日午前9時21分〜11時20分、様々な政治団体の口座から本件陸山会口座に3億5000万円を送金。この送金は小沢さんからの4億円は使われていない】
 l12)石川は,同月29日午前9時21分頃から午前11時20分頃にかけて,小沢一郎政経研究会名義で開設した2つの預金口座から合計9500万円,誠山会名義で開設した預金口座から2000万円,本件口座以外の陸山会名義で開設した3つの預金口座から合計1億2000万円,民主党岩手県第4総支部名義で開設した3つの預金口座から合計7000万円の合計3億0500万円を本件口座に振込送金した(以下, これらの送金全体を「29日の送金」という。)。
9 【10月29日午前10時16分〜28分、土地売買代金の決済】
 川は,同日午前10時16分頃から28分頃にかけ,東洋アレックスに対し,本件口座から, 3億1998万4980円を東洋アレックス名義の預金口座に振込送金し,さらに, 1265万5020円をりそな銀行衆議院支店発行の小切手で支払い(合計3億3264万円),これと引き換えに,東洋アレックスの担当者から,本件土地の所有権移転登記手続に必要な一切の書類を受け取った。この際,東洋アレックスと陸山会との間で,「不動産引渡し完了確認書」が作成された(以下,この一連の行為を「本件売買の決済」ということがある。)。
 また,石川は,同じ頃,陸山会から,ミブコーポレーションに対し,仲介手数料残金として399万4300円を,司法書士に対し,仮登記費用等として90万2488円を,それぞれ本件口座から引き出した現金で支払った。
 同日,本件土地について,被告人を権利者として,同月5日売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記手続がされた。
10 【10月29日午後1時5分〜、本件陸山会口座から4億円を陸山会名義の定期預金に設定。続いて、小沢さん名義で4億円を借り入れる契約を締結、小沢さん名義の口座に入金された。続いて午後1時33分、その小沢さん名義の口座から4億円を本件陸山会口座に送金した】
 石川は,同日午後1時5分頃,本件口座から, 4億円を,陸山会を名義人とする定期預金口座に振り替えて,同額の定期預金をりそな銀行衆議院支店に設定した(以下,この定期預金を「本件定期預金」という。)。そして,石川は,被告人を借主として,手形貸付により,同銀行から,本件定期預金を担保とし,弁済期を平成17年10月31日として4億円を借り入れる旨の契約を締結した。借り入れた4億円については,同銀行から,天引利息等463万7686円を差し引いた3億9536万2314円が,同支店に開設された被告人名義の預金口座に振り込まれ,石川は,同口座から,同日午後1時33分頃,4億円を本件口座に振込送金した(以下, りそな銀行から被告人に対する4億円の貸付を「本件預金担保貸付」といい,被告人個人の口座から本件口座に資金移動された4億円を「りそな4億円」という。)。
10の2 【小沢さんによる書類への署名】(これは判決要旨64頁)
 被告人は,同月29日,りそな銀行衆議院支店から本件預金担保貸付を受けて,りそな4億円を陸山会に転貸する際,石川が持参した同銀行宛の融資申込書と額面金額4億円の約束手形に自ら署名した。ただし,同銀行との交渉や融資関係書類の授受等の手続は,全て石川が行った。また,同銀行から被告人個人名義の口座に振り込まれた融資金について,控除された天引き利息分の金額を加算して,同口座から本件口座にりそな4億円を送金する手続についても,石川は,被告人個人名義の通帳と印鑑の使用を任されていたことから,個別具体的な報告を被告人にすることなく, 石川が行った。
 10の3 【担保貸し付けはその場しのぎで行われたものに過ぎない】(判決要旨34頁)
 本件預金担保貸付は,本件4億円の簿外処理を目的とするものであるが,石川が,先輩秘書からの示唆を受け,陸山会の慣行も考慮して思いつき,短期間で実行したものであって,返済計画等の事後処理は池田に任せているなど,ある意味で,その場しのぎの処理として行われたとみるのが相当である。そして,前F検討のとおり,本件定期預金は,本件4億円の返済原資として確保されたものではなく,いずれ解約されて陸山会の資金繰りに流用される可能性があるものとして設定されたと認められるが,他方で,石川が,確定的に,本件定期預金を,本件預金担保貸付なぃしりそな4億円の返済原資として計画していたとまで認定することも難しく,本件預金担保貸付の返済予定を2年間とし,被告人を債務者としたことについて,隠ぺい,偽装工作としての積極的な意味があるとの指定升護士の主張は,採用することができない。
10の4 【4億円を担保とする貸し付けは、決済までに行われる予定だったが、石川秘書の確認ミスで決済との順番が変わってしまったこと】(判決要旨37頁)
 関係証拠によれば, りそな銀行衆議院支店においては,平成16年10月28日37に石川から預金担保貸付の申込みを受けた際,翌29日朝に被告人が署名した融資申込書や約束手形等の書類(以下,これらの書類を「融資関係書類」という。)が提出されれば,同日午前10時に予定されていた本件売買の決済に間に合うことを前提として手続を進めていたが,融資関係書類の提出が間に合わなかったために,本件雰金担保貸付の実行が午後になった等の経緯が認められる。
11 【平成17年1月7日、土地の所有権移転登記がなされる】
 平成17年l月7日,本件土地について,被告人を所有者として,同日売買を原因とする所有権移転登記手続がなされ,同月14日,陸山会から,司法書士に対し,本登記費用等として89万4613円が支払われた。
12 【平成17年3月31日、石川秘書が平成16年収支報告書を提出】
  平成17年3月31日,石川は,陸山会の平成16年の収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出した。同収支報告書は,「政治団体の名称 陸山会」,「代表者の氏名 小沢一郎」,「会計責任者の氏名 大久保隆規」,「事務担当者の氏名 石川知裕」として作成され,大久保隆規名義の宣誓書が添付されている。
13 【平成17年10月31日、池田秘書が4億円の定期預金を解約し全額をいったん返済した後、再度2億円で同じ預金担保貸し付けをした。実質的には半金を返済したこととなる】
 平成17年10月31日,池田は, りそな銀行衆議院支店との間で,本件預金担保貸付について,本件定期預金を解約し, 4億円を本件預金担保貸付の返済に充てた。そして,池田は,同銀行との間で,陸山会において新たに預金担保で2億円の手形貸付を受けることとし,同銀行の陸山会名義の定期預金口座に振り替えられた2億円の定期預金を担保とし,返済期間を1年として,被告人が2億円の融資を受ける旨の預金担保貸付を受け(以下,この手続を「平成17年10月の半額返済」ということがある。), 実質的には,本件預金担保貸付が2億円に減額された上で継続することとなった。
14 【平成18年3月28日、池田秘書が平成17年収支報告書を提出】
 平成18年3月28日,池田は,陸山会の平成17年分の収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出した。同収支報告書は,「政治団体の名称 陸山会」,「代表者の氏名 小沢一郎」,「会計責任者の氏名 大久保隆規」,「事務担当者の氏名 池田光智」として作成され,大久保隆規名義の宣誓書も添付されている。
15 【平成18年3月31日、減額されていた定期預金2億円を解約して返済。これで4億円全額が返済された】
 同月31日,池田は,平成17年10月31日に被告人がりそな銀行衆議院支店から預金担保貸付を受けた2億円について,担保とされていた陸山会の2億円の定期預金を解約して, これを原資に,同銀行に対し, 2億円を返済した(以下,この手続を「平成18年3月の残額返済」ということがある。)。
16 【平成19年5月1日、池田秘書がさまざまな口座からお金を送金し、本件陸山会口座に4億円以上の残高とした。翌2日、本件陸山会口座から4億円を引き出し、小沢さんに返済した】
 池田は,平成19年5月1日,本件口座以外の陸山会名義の5つの預金田座や関係団体の預金口座から,本件口座に,合計2億0500万円を移動するなどして,本件口座の残高を4億4338万0448円とした上,同月2日,本件口座から4億円を払い出し,本件4億円の返済として, 4億円の現金を被告人に渡した。
 次に関心が高いと思うので、小沢さんが石川秘書に渡した4億円についての事実認定を確認しておきます。
  【被告人は,本件4億円の原資について,「かなり以前から,元赤坂タワーズの金庫で現金として保管していた個人資産である。その原資は,親から相続した不動産を処分して,現在の自宅を取得したときの差額である約2億円,家族名義の預金を払い戻した約3億円,議員歳費や印税等が貯まったものを払い戻した1億六,七千万円であり,手持ちの現金として保管していた。」旨公判で供述している。この供述は,細部において,あいまいな点や捜査段階における供述との変遷がうかがわれるが,大筋においては,この供述の信用性を否定するに足りる証拠はない。】(判決要旨63〜64頁)
 最後に判決が認定した収支報告書の記載内容を確認しましょう。
 収支報告書の記載内容
1 平成16年分の収支報告書と小沢さんからの4億円など(判決要旨18頁〜))
 平成16年分の収支報告書においては,「収支の状況」欄の「1 支出の総括表」においては,「収入総額」は7億3125万4111円,「本年の収入額」は5億8002万4645円と記載され,「2 収入項目別金額の内訳」欄においては,「小澤一郎」を借入先とする金額4億円の借入金がある旨記載され,その備考欄に「平成16年10月29日」と付記されている。前記認定のとおり,石川が被告人から本件4億円を受け取ったのは平成16年10月12日であり,陸山会が被告人から「りそな4億円」(※ヤメ蚊の注記:りそな銀行から小沢さんが借りた4億円を陸山会口座に送金したこと)を借り入れたのは同月29日であるから,この備考欄に記載された日付は,本件預金担保貸付によるりそな4億円の借入れの日付と合致している。
 加えて,平成16年分の収支報告書の「資産等の状況」欄の「2 資産等の項目別内訳」において,資産として,「定期預金」「残高¥400,000,000」「平成16年10月29日」と記載されており,この記載は,本件定期預金を記載したものと解される。
(※ヤメ蚊の注記:小沢さんが現金で石川秘書に渡した4億円については記載されていないということになるわけです)
2  平成16年分,平成17年分の収支報告書と本件土地(判決要旨19頁〜)
 平成16年分の収支報告書においては,「収支の状況」欄の「1 支出の総括表」における「支出総額」は1億2120万2731円と記載され,「3 支出項目別金額の内訳」における「(l)支出の総括表」の「事務所費」は3835万5343円と記載されており,本件土地の購入代金として支払った金額が含まれていないことは明らかであり,また,「資産等の状況」欄の「2 資産等の項目別内訳」欄において,本件土地は記載されていない。
 これに対し,平成17年分の収支報告書においては,「収支の状況」欄の「1 支出の総括表」においては,「支出総額」が6億7996万4189円と記載され,「3支出の項目別金額の内訳」においては,咀4)事務所費」が4億1525万4243円と記載されている。また,「資産等の状況」欄の「2 資産等の項目別内訳」欄においては,「資産等の内訳」として「世田谷区深沢8丁目28番地5号」の取得金額3億4264万円の土地があり,取得年月日は平成17年1月7日であり,面積は476平方メートルである旨が記載されている。この土地の記載は,地番が不正確であるものの,世田谷区深沢8丁目28番5及び28番19の2筆である本件土地を記載しているものと認められる。
 以上を総合すると,本件土地の取得及び取得費の支出は,平成16年分の収支報告書には計上されず,平成17年分の収支報告書に計上されたことが認められる。
3 池田秘書のつじつま合わせ(判決要旨53頁)
 平成17年分の収支報告書を作成するに当たり,平成17年1月7日付で約3億500o万円の本件土地の購入代金等の支出を計上しょぅとしたが,平成17年期首の繰越残高が約6億1000万円であるところ,定期預金が4億7150万円であるために,前記支出の原資となるべき陸山会の資産の存在を説明することができず,同年1月5日付で合計2億80oo万円の寄付といぅ事実に反する収入を計上し,つじつま合わせを余儀なくされている。
 以上のような事実経過を踏まえて判決は、小沢さんの認識(4億円と時期の遅れ)について、次のように認定している。
第1 小沢さんが石川秘書に渡した4億円について
1 【小沢さんが、「自らが石川秘書に渡した4億円を担保として、りそな銀行から4億円を借り入れたうえ、それを陸山会に貸し付け、本件土地の購入資金とすること」を認識していたこと】
(判決要旨70〜71頁)
 石川は,「平成16年10月29日,本件預金担保貸付の融資関係書類に,被告人の署名を得る際,本件土地の取得費等には,本件預金担保貸付によつて融資を受けるりそな4億円を充てること,被告人がりそな銀行に対する債務者となり,融資を受ける4億円を陸山会に転貸すること,本件4億円は,本件預金担保貸付の担保とする本件定期預金にすることを,被告人に説明した。」旨公判で供述している。
 石川は,被告人に対し, 4億円もの巨額の本件預金担保貸付を受けて債務者となり,そのための融資申込書と約束手形に署名し, りそな4億円を陸山会に転貸するといつ経済的負担を求めるのであるから,前記供述のとおりの取引の概要程度は,被告人に理解してもらうことは当然といえる。秘書の裁量であるとして,何の説明もせず,融資申込書や約束手形に署名をもらうなどということはあり得ないことであり,この石川の公判供述は信用することができる。
 これに対し,被告人は,「本件預金担保貸付の融資関係書類に署名した際,石川から,『サインしてくれ。』と言われて,署名しただけである。」などと公判で供述しており,石川から受けた説明の内容を否定するかのようにもうかがわれる。しかし,被告人に4億円もの債務を負わせる手続は,石川において任された裁量の範囲を超えていることは明らかであるし,被告人が,既に本件4億円を提供しているのに,更に4億円の債務を負担する旨の融資関係書類に署名する際に,その取引の概要等について一切報告を求めないということも考え難い上,被告人は,最終的に,預金担保賓付を受けて本件土地の購入代金等に充てる旨は認識していたことを認める旨も供述するなどしており,その供述は,石川の前記公判供述に疑いを入れるものとはいえない。
 以上によれば,被告人は,平成16年10月29日,石川からの前記内容の説明を受け,本件預金担保貸付の内容を理解し,被告人が債務者となってりそな銀行から4億円の融資を受け, りそな4億円を陸山会に転貸して,‐本件土地の購入資金等に充てること, したがって,このりそな4億円は,陸山会の被告人に対する借入金となること,本件4億円は本件預金担保貸付の担保となる本件定期預金の原資にする旨の取引の概要ついて,認識し,了承した上で,融資関係書類に署名したものと認められる。
2 【しかし、小沢さんは、自らが石川秘書に渡した4億円は陸山会へ貸し付けるのではなく、自らの名義で担保として預金されると認識していた可能性があること】
(ヤメ蚊解説:客観的には小沢さんが石川さんに渡した4億円は陸山会の借入金とみなされるが、そのことを小沢さんはどのように認識していたかについて、判決要旨87頁〜88頁に書かれています)
ア 本件4億円の資金の流れの認識
 前記検討のとおり,本件4億円を収支報告書に計上すべき借入金として認定すべき根拠としては,石川が,本件4億円のうち一部を手付金等の支払分として陸山会の金庫の資金に混入させ,その残部を分散入金して本件口座に入金し,睦山会の一般財産に混入させたという具体的な経緯があげられる。
 しかし,これらの経緯について,石川が被告人に報告した旨の直接証拠はない。
 そして,このような資金移動の具体的な経緯は,被告人から受け取った本件4億円を保管し,本件売買の決済に向けた準備をするものに過ぎず,既に了承済みの本件売買契約や本件4億円の貸付の履行過程として,秘書に任されていた事柄と考える余地があり,このような事柄について,被告人が石川に報告を求め,あるいは,石川が被告人に報告したはずであると,直ちに推認することは難しい。
 また,本件4億円を収支報告書に計上すべき借入金として認定すべき根拠としては,本件売買の決済日において,本件預金担保貸付の融資関係書類の署名が遅れて,融資が間に合わず,本件4億円を原資とする本件口座の残高の相当部分が,本件売買の決済に充てられたという経緯も重要である。そして,この経緯について,融資関係書類に署名を受ける機会に石川が被告人に報告したと疑うことは考えられなくはない。
 しかし,この経緯についても,石川が被告人に報告した旨の直接証拠はない。
 そして,前記検討のとおり, このような経緯は,秘書の裁量の範囲内であるとして,被告人が報告を求めない事柄であると考える余地がある上,本件預金担保貸付によるりそな4億円を本件売買の決済資金に充てるという方針と反する内容であること,石川が,自らの不手際として被告人の不興を買うおそれがあること,いずれにせよ,本件土地公表の先送りを実行するつもりであり,摘発の危険は高くないと甘く考えていたことから,あえて被告人に報告しなかったと考える余地もある。
  以上によれば,本件4億円が陸山会の一般財産に混入し,その後,本件売買の決済に充てられたといった資金の流れ等の経緯について,被告人は,石川から報告を受けず,これを認識しなかった可能性がある。
(ヤメ蚊解説:小沢さんが石川さんに4億円を渡した時には、その4億円を土地代金に充てるという認識だったことについて、その後小沢さんの認識はどのように変わっていたかについて、判決要旨88頁に書かれています)
イ 本件4億円の使途についての石川の説明を受けての認識
 前記検討のとおり,被告人は,本件4億円を石川に手渡した際,本件土地の購入資金等として陸山会において費消することを許容しており,この時点では,陸山会の借入金収入として認識していたものと認められる。
 しかし,被告人は,その後,本件預金担保貸付の融資関係書類に署名する機会までに,石川から,本件4億円をそのまま本件土地の購入資金等に充てるのではなく,本件4億円の簿外処理を目的として,本件4億円を原資に本件定期預金を設定し,これを担保に被告人が本件預金担保貸付を受け,陸山会にりそな4億円を転貸した上,本件土地の購入資金に充てる旨の説明を受けており, したがって,本件4億円の代わりに,りそな4億円を本件土地の購入資金に充て,陸山会の借入金とすることになった旨の認識を抱いた可能性がある。
 もちろん,前記検討のとおり, これをもって,被告人と陸山会の間で本件4億円についての消費貸借が解除されたと認めることはできないが,被告人において,漠然とであれ,りそな4億円が借入金になる代わりに,本件4億円は,本件土地の購入資金に充てられるのではないと認識した可能性があり,さらに,後記ウで検討するように,借入金として計上する必要がなくなると認識した可能性がある。
(ヤメ蚊解説:小沢さんが石川さんから10月29日に説明を受けた際に、石川秘書に渡した4億円について、どのような認識だったかについて、判決要旨88頁〜91頁に書かれています)
ウ 本件定期預金の性質,帰属の認識
 さらに,被告人が,石川から本件4億円を原資として設定する旨の説明を受けた本件定期預金について,その性質や帰属を認識したか,そして, この認識から,本件4億円の借入金計上の必要性を認識し得たかを検討する。
 石川の説明を前提とすれば,被告人は,本件4億円を原資として、本件預金担保貸付の担保となる本件定期預金を設定することは了承したものの,本件預金担保貸付の目的は,あくまで本件4億円の簿外処理にあり,陸山会に4億円の資金を追加して融資したものではなかったと認められ,したがって,陸山会に費消を許した金はりそな4億円だけであり,本件4億円を原資とする本件定期預金は,被告人のために確保されると認識した可能性がある。
 すなわち,石川が,被告人に,本件定期預金を本件4億円の返済原資として確保する旨の説明をしたことをうかがわせる証拠はないが,前記検討のとおり,陸山会においては,不動産を取得する際に,預金担保貸付を利用する慣行があったことが認められ,被告人は,石川から具体的な説明を受けなくても,このような慣行や経験から,本件定期預金がそのまま確保されると軽信することは,あり得るといえる。
 そして,被告人は,陸山会に本件土地の取得資金等として費消を許したのは,りそな4億円であり,本件定期預金は本件4億円の返済原資として確保されると考えて,本件預金担保貸付や本件定期預金の設定を了承したものの,被告人は,その了承の範囲内で具体的にどのような取引形態を取るかは,裁量の範囲内であるとして石川に任せて報告を求めず,認識もしなかった可能性がある。
 弁護人が主張するように,石川が,本件4億円を被告人に帰属する定期預金とした上で,預金担保貸付を受けるなどすることによって,本件4億円を収支報告書に計上しないことが,違法とまでいえない場合があり得るとすれば,被告人が,石川に任せた範囲内において,本件4億円を計上しないことが適法に実現されると認識することも,あり得ることになる。
 被告人が署名をした融資申込書には,「陸山会代表小沢一郎」の一般定期預金を担保として,被告人が4億円を借り入れ,転貸する旨の記載がされており, したがつて,被告人は,本件定期預金の名義が陸山会であることを認識していた可能性があり,ここから,本件定期預金が陸山会に帰属することや,その原資とされた本件4億円を借入金として計上する必要性を認識したと疑うことは,考えられなくはない。また,定期預金の名義を被告人個人とすると,資産報告書で公表する必要があるから,具体的な報告を問題にするまでもなく,暗黙のうちに,陸山会名義の定期預金を設定して担保にしていたとの認識を持っていたものと疑うことも,考えられなくはない。
 しかし,融資関係書類に被告人の署名を得る際に石川が被告人に行った説明は,被告人から提供を受けた本件4億円を定期預金にして,それを担保として,本件預金担保貸付を受け, りそな4億円を本件売買の決済に充てるというものであって,本件定期預金の名義について説明をしたとは認められない。前記の融資申込書に記載された定期預金の名義は,比較的小さい字で記載されており,さほど日立つものでもなく,また,被告人が署名した「借入申込人」欄とは離れた位置に記載があることからしても,被告人が,署名した際,直ちに,本件定期預金の名義を認識,把握できたかは疑わしい。また,被告人が,仮に,本件定期預金の名義が陸山会であることを認識したとしても,自らが陸山会に貸したのは4億円にとどまると考えており,本件定期預金は,自分のために確保されると素朴に認識していたとすれば,法律や会計の専門家でない被告人において,本件定期預金の名義の認識から,直ちに,その原資とされた本件4億円を借入金として計上する必要性まで認識することは難しいといえる。
 前記検討のとおり,石川は,本件預金担保貸付について, 2年間程度での返済を予定しており,本件定期預金を,本件4億円の返済原資として確保するつもりではなかったと認められる。このことから,石川が,本件預金担保貸付の返済計画や本件定期預金の性質を被告人に報告したと疑うことは,考えられなくはない。また,関係証拠によれば,池田が,平成17年10月に半額返済をし;平成18年3月に残額返済をした際,被告人は,池田に対し,本件預金担保貸付による利息がもったいないという理由で,本件定期預金から返済に充てることを了承したことが認められ,ここから遡って,本件預金担保貸付を受けた時点においても,被告人が,本件定期預金を,いずれは解約して本件預金担保貸付の返済に充てるなどして,陸山会の資金繰りに充てることを予定していたと疑うことも,考えられなくはない。
 しかし,石川は,確定的に,本件定期預金を,本件預金担保貸付の返済原資に予定していたとまで認めることはできず,返済計画等の事後処理は池田に任せていた,ある意味で場当たり的な計画であったことがうかがわれ,このような本件定期預金の性質や本件預金担保貸付の返済計画を被告人に報告した旨を認めるに足りる証拠はない。
 また,関係証拠によれば,被告人は,陸山会や関係団体における経常的な資金繰りやその経理処理については,石川や池田に一般的に任せていたと認められ,被告人が,本件定期預金を本件預金担保貸付の返済に充てる旨の平成17年10月の半額返済や平成18年3月の残額返済を了承した点は,被告人は,当初の趣旨を失念したか,あるいは,いずれ本件4億円が返済されることに変わりはないとして深く考えずに,池田の申し出を了承したと考える余地もある。
(ヤメ蚊解説:裁判所のまとめです。判決要旨91頁)
 以上を総合すると,被告人は,実際には,本件定期預金が,本件4億円を原資とするのではなく,関係5団体の一般財産を原資とするものであり,その原資や名義に照らしても,陸山会に帰属する資産であり,また,被告人のために確保されるのではなく,いずれ解約されて陸山会の資金繰り等に流用される可能性があることについて,石川から説明を受けず,これを認識しなかった可能性がある。かえって,被告人は,本件定期預金は,本件4億円を原資として設定されたものであり,しかも,本件4億円の返済原資として,被告人のために確保されるものと認識した可能性がある。
第2 土地売買の決済に関して、平成16年分では報告せず、平成17年分で報告したことについて
(ヤメ蚊解説:所有権移転登記手続きを遅らせる合意書について小沢さんが知っていたことは、土地購入を平成16年報告書に記載しないことが違法だという認識を裏付けるのか、そうではないのか、ということについて、判決要旨82頁〜84頁に書かれています)
(1)本件土地取得及び取得費支出時期の認識
ア 本件合意書の認識
 前記認定のとおり,石川は,東洋アレックスとの交渉の結果,決済全体を遅らせることはできず,所有権移転登記手続のみ遅らせるという限度で本件合意書を作成し,所有権の取得時期を遅らせるには至らなかったのであるが,このような交渉の経緯や本件合意書の内容については,石川は,「本件土地の所有権移転登記手続を2か月間先送りしたことは,秘書寮の建設への影響もなく,大きな変化とは考えていなかったので,被告人に報告していない。」旨公判で供述しており,石川が被告人に説明,報告した旨の直接証拠はない。
 この点について, 本件売買契約は,被告人個人の取引ではなく,政治活動そのものでもなく,陸山会における秘書寮の建設のための取引であるから,被告人にとつては,自らが当初了承したとおり,陸山会において,本件土地の所有権を取得し,秘書の寮を建設する旨の方針が変更されるのでない限り,本件売買契約締結後の契約の履行過程には,関心がないということはあり得る。また,本件土地公表の先送りの方針そのものは,前記検討のとおり,被告人への報告とその了承を経たものと認められるが,被告人は,自らが了承したとおり,本件土地の取得や取得費の支出の計上を平成17年分の収支報告書に先送りすることが実現するのであれば,そのための東洋アレックスとの交渉といった先送りの実行過程には,関心がないということもあり得る。
  たしかに,指定弁護士が主張するように,本件合意書においては,陸山会は,本件土地代金の全額を支払っていながら,所有権移転登記を受けられなくなるというリスクを負うことになるから,石,FIは,本件合意書の内容について、被告人の了解を得た上で, これを作成したはずであると疑うことは,考えられなくはない。
 しかし,石川が供述するとおり,本件合意書の作成によって,秘書寮の建設に影響があったことはうかがわれない上,所有権移転請求権仮登記がされることで,実質的には陸山会の所有権が保全されているとみることができるのであって,石川においては,陸山会にとってリスクはなく, 自らの裁量の範囲内で処理できる内容であると判断し,被告人に報告せずに作成したと考える余地があり,被告人も,このような事柄については報告を求めないと考える余地がある。
 もちろん,このような本件土地公表の先送りの交渉が不十分な結果に終わったことは,それによって,本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上しないことが違法との評価を受けるものとなり,捜査機関の摘発を受ける危険にもつながるなど,被告人にとって深刻な政治的影響が生じる可能性のあるものであり,したがって,石川は被告人の了解を得なければ進められないはずであると疑うことも,考えられなくはない。
 しかし,石川の立場から見ると,本件土地公表の先送りは,所有権移転登記手続を遅らせることができたため,それを口実として,当初の予定どおり実行するつもりであったことから,被告人からあらかじめ了解を受けた範囲内の事柄であると考えて,改めて報告しなかったと考える余地がある。また,予め了承を受けた本件土地公表の先送りの方針に反し,決済全体を遅らせる交渉に失敗したことや,本件土地の取得等を平成16年分の収支報告書に計上しないことに問題があるということは,石川にとってはいわば失態であり,被告人の不興を恐れて報告しなかったと考える余地もある。もちろん,その場合,虚偽記入による摘発の危険があるが,この点については,石川は,この程度で摘発されることはないだろうと甘く考えて,深刻に受け止めなかった可能性がある。仮に,石川が摘発を受ける危険を強く認識していたとすれば,しっ責を覚悟してでも,被告人に相談するなどして,本件土地公表の先送り自体を断念したはずであると考える余地もある。
 したがって,被告人は,東洋アレックス等との本件売買の決済全体の先送りの交渉が不十分に終わり,本件合意の限度で交渉が成立しており, したがって,所有権の移転を平成17年に遅らせることができなかったことについては,石川から報告を受けず,認識していなかった可能性がある。
(ヤメ蚊解説:石川秘書が10月29日に土地売買の決済までしたことを小沢さんに報告しているのではないか、ということについて、判決要旨84頁〜85頁に書かれています)
イ 本件売買の決済等の認識
 石川が,平成16年10月5日に手付金を支払い,同月29日に残代金を支払ったことを被告人に報告したかについては,石川も,被告人も,これを認める旨の供述はしておらず,したがって,その旨の直接証拠はない。
 この点について,指定弁護士が主張するように,石川が,同日,本件売買の決済を終えた直後に,被告人の元を訪れて,本件預金担保貸付の融資関係書類に署名を受けていることから,この際に,被告人に説明したと疑うことも,考えられなくはない。
 しかし,前記検討のとおり,本件売買の決済そのものは,既に了承済みの本件売買契約の履行過程,本件土地公表の先送りの実行過程であり,秘書の裁量の範囲内であるとして,石川が被告人への報告を必要としないと考え,また,被告人が報告を求めない事柄であると考える余地がある。
 しかも,同日,本件預金担保貸付の実行前に,本件4億円を原資とする資金を流用するなどして本件売買の決済を終えたという事実は,本件4億円を原資に本件定期預金を設定して本件預金担保貸付を受け,陸山会に転貸したりそな4億円を本件土地の購入資金等に充てるという,前記認定の石川の被告人に対する説明とは矛盾する内容であり,本件4億円の簿外処理のための外形作りとも矛盾する内容である。この事実を被告人に報告すれば,これから融資を受けて転貸するりそな4億円の使途について,疑問を呈される可能性があるから,石川が,本件預金担保貸付の融資書類に署名を得るために,被告人に説明したはずの事柄であるとは必ずしもいえない。むしろ,前記検討のとおり,本件土地公表の先送りの交渉が不成功に終わり,決済日を変更できなかったことについては,石川において,被告人の不興を恐れて報告しなかったと考える余地があり,この事実につながる本件売買の決済の事実も,報告しなかったと考える余地はある。また,石川が,本件売買の決済に先立って融資書類に署名を得るはずであったのが,当日朝に被告人に会えなかったことから,間に合わなかったということも,いわば石川の不手際であり,やはり,被告人の不興を恐れて報告しなかったと考える余地もある。
 したがつて,被告人は,同月5日に手付金を支払い,同月29日に残代金を支払うなどして本件売買の決済が終了していること, したがって,同日,本件土地の所有権が陸山会に移転したことについて,石川から報告を受けることはなく,これを認識しなかった可能性がある。
(ヤメ蚊解説:小沢さんが決済を実際に遅らせることができたと認識していたのではないか、ということについて、判決要旨85頁に書かれています)
ウ 本件売買契約の決済全体の先送りに関する認識
 前記認定のとおり,石川は,当初,本件土地公表の先送りのため,売主である東洋アレックスと交渉するに当たり,本件売買契約の決済全体を遅らせようとしていたことが認められるところ,被告人も,平成16年10月20日頃,当初の本件土地公表の先送りの方針を了承した際,本件土地の所有権取得時期や残代金支払等め決済時期を含めた決済全体を遅らせるものとして,報告を受け,認識していた可能性がある。
 被告人は,平成19年2月,民主党代表の地位にあった際,国会議員の事務所費問題に対応するためであるとして,事務所費をマスメディア等対外的に公表したことが認められ,この際,本件土地の取得費等も平成17年の支出として公表したことが認められる。このことは,被告人において,本件土地の取得費は,実際にも平成17年に支出されたと認識していたことをうかがわせる。
 以上によれば,被告人は,本件土地の所有権の移転及び残代金等支払等の決済全体が平成17年に先送りされたと認識していた可能性があり, したがって,本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上せず,平成17年分の収支報告書に計上することが,適法であると考えていた可能性もある。
(ヤメ蚊解説:小沢さんが石川さんに4億円を渡した時には、その4億円を土地代金に充てるという認識だったことについて、その後小沢さんはどのように認識していたかについて、判決要旨85頁〜86頁に書かれています)
工 池田の捜査段階の供述
 池田は,捜査段階において,「平成18年3月頃,被告人に対し,『石川から引き継いだとおり,平成17年分の支出に,平成16年に支払った深沢8丁目の約3億5000万円の土地代金を計上しております。』などと念のため説明したところ,当然のことながら被告人も事情は分かっていたので,『ああ,そうか。』と言って,スムースに了承を得ることができた。」旨供述しており(甲115),この供述から,被告人が本件土地の代金が実際には平成16年に支払われていたことを認識していたと疑うことは,考えられなくはない。
 しかし,池田の説明は,簡単なやりとりにとどまっている上,本件土地公表の先送りの方針が被告人と石川の間で合意された平成16年10月から1年以上も経過した時点におけるものである。その説明内容に照らしても,本件土地の取得費が実際には平成16年に支出されていることを指摘して,平成17年分の収支報告書に計上することの問題点を注意喚起するような趣旨はうかがわれない。被告人の立場からみても,本件土地の取得費が平成16年中に支払われた旨の池田の指摘を聞き流し,あるいは,それを平成,17年分の収支報告書に計上することの問題点を認識しなかったと考える余地がある。
(ヤメ蚊解説:裁判所のまとめです。判決要旨86頁)
オ まとめ
 以上のとおり,被告人は,本件土地公表の先送りのための交渉は不成功に終わり,所有権移転登記手続の時期のみを先送りする旨の本件合意書が作成され,本件土地の取得費が平成16年覧0月5日及び同月29日に支出され,同日,本件土地の所有権を陸山会が取得したこと等については,報告を受けず,これを認識していなかった可能性があり,かえって,本件売買契約の決済全体を先送りしようとしていた当初の方針どおり,本件土地の取得や取得費の支出が,実際にも平成17年に先送りされたと認識していた可能性がある。
 したがって, 被告人は, 本件土地の取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上する必要があり, 平成17年分の収支報告書には計上すべきでないことを, 認識していなかった可能性がある。
 以上から、裁判所は小沢さんを無罪としたのです。
 冒頭で述べたように、裁判所は、小沢さんはいったん、現金4億円を土地の購入代金として使うために、石川秘書に渡したが、急きょ、預金担保の手法を使うこととなり、この現金4億円を小沢さん名義の預金としたうえ、その預金を担保として小沢さん名義で4億円を借り入れ、これを土地購入代金として陸山会に貸し付けた、と考えた可能性があると認定したのです。時期遅れについては、本当に取引そのものを遅らせたのだと思っていた可能性があるという認定です。
 本件は、認定は認定として、実際本当のところはどうだったのか?という推理ゲームをしたくなるような複雑な事実関係ですね。特に、なぜ、平成17年の取引にしようとしたのか、それがよく分からない。石川さんがぎりぎりのところで慌てて処理したことはよく分かるが、その際、何かの手違いがあったのか…。とはいえ、現在の証拠のもとでは、最大限、小沢さんに不利に認定しても、無罪は間違いないのは、以上のような丁寧な事実認定から明らかですね。
. . . . . . . . . .
【コメンテーターの皆様への補足】
1 「限りなく黒に近い灰色」というコメントをした方へ
 刑事事件は、検察側が立証して初めて有罪になります。検察側が立証できなかったら、白です。何故、限りなく黒に近いというのか、その理由を説明してください。今回の件は、外形的に事実と違う記載があったことまでは裁判所が認定することは予測されていたため、最大の争点は、小沢さんの違法性の認識の有無です。その最大の争点を検察側が立証できなかったのですから、完全に検察側の負け、白です。
 そもそも、刑事事件の無罪判決は、「立証不十分」とするのが通常であり、それを乗り越えて、さらに、「無実」だと書くことはほとんどない。例外的に、「アリバイが成立する場合」、「ほかに犯人がいる場合」があるが、それ以外の無罪判決では、立証不十分で無罪ということになる。私が担当して無罪になった件は、行為者の故意が問題となったが、判決は「立証不十分で無罪」というものだった。
 このコメントをした人は、たとえば、今回の事件で、判決がどのような表現をしたら、「限りなく黒に近い灰色」でなくなるのですか?教えてください。
2 「国会で説明するべきだ」というコメントをした方へ
 何を説明するべきかを具体的に述べてください。判決を読めば、本件の詳細は分かるのであり、それ以上に何が聞きたいのですか?4億円の出所ですか?それについても、判決は触れていますよ。国会で質問する議員は、今回の裁判で出た以上の何か新しい証拠でも持っているのでしょうか?そうでないなら、国会での質問は裁判所でなされたこと以上のことはできないのではないですか?
3 「知らないと言うだけで済ませるわけにはいかない」
 知っていることを立証するのは、検察側の責任です。単独事件では、外形的な行為から意図まで立証できるケースが多いので、このことをあまり考える必要がないのですが、本件のように、実行した人(石川秘書)とそれに関与したとされる人(小沢さん)などの複数が関与する場合には、それぞれの思惑が違うことがあるため、検察側が関与したとされる人の意図(違法性の認識)まできちんと立証する必要があります。それに失敗したのです。結果があっても、直ちにその結果に責任を問うことができないことは、同じように包丁で人を刺しても、最初から刺す気だったのか、転ぶ拍子に手にしていた包丁が刺さったのか、包丁で斬りかかってきた人に抵抗しているうちに斬りかかってきた人に包丁が刺さったのかで、まったく、責任が違ってきます。結果だけで責任を考えるような制度は日本ではとられていません。
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