【欠陥憲法】
(2)国民の平安祈る存在明記を
産経ニュース2012.5.1 13:29
戦後最大の国難、東日本大震災発生から6日目の昨年3月16日。天皇陛下は国民に向けてビデオでお言葉を述べられた。被災者を深くいたわり、救援活動にあたる自衛隊員や消防隊員や警察官をねぎらったのち、こう語りかけられた。
「被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、さまざまな形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います」
「平成の玉音放送」といわれる。
この後、陛下は7週連続で岩手、宮城、福島県などの被災地や首都圏の避難所を皇后さまとともに訪問され、被災者一人一人に声をかけて励まされた。
両陛下は皇居で自主停電もなされた。連日、一定時間をろうそくや懐中電灯で過ごし、暗いなかで食事される日もあった。
国民と苦難を分かち合おうとされる両陛下のお姿に、被災者や国民はどれだけ勇気づけられたか、はかり知れない。
今年3月、心臓の手術を受け、退院から1週間で大震災の追悼式典に臨まれた。
民の暮らしをひたすら案じ、その安寧を願う。「民とともにある」という不易な営みが歴代天皇に脈々と引き継がれてきた。
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「国民統合の象徴」とされる戦後憲法の天皇の規定はそうした天皇のありように見合っているのだろうか。
象徴とは何か。天皇は元首か。こうした疑問がこれまでもしばしば論議されてきた。
「天皇が元首かどうかは、要するに元首の定義いかんの問題で…今日では、実質的な国家統治の大権を持たなくても、国家のヘッドの地位にある者を元首とする見解も有力で、この定義ならば、天皇は、現憲法下でも元首と言って差しつかえない」(昭和48年6月28日参議院内閣委員会、吉国一郎内閣法制局長官)
政府見解は憲法に「元首」との明記がなくとも、元首であることは明らかという立場だ。世界の多くの国も「天皇」を国家を代表する「元首」とみている。だが、国内では依然として「天皇は形式的・儀礼的な行事を行う象徴にすぎず元首ではない」という見解が一方にある。
× ×
天皇をめぐって憲法の規定が問題となった出来事はほかにもある。昭和天皇崩御後の平成元年の「ご大喪」もそのひとつだ。
「ご大喪」は現行憲法下での初めての天皇の国葬だった。ところが、「ご大喪」で行われる神事が憲法20条にある政教分離の規定との兼ね合いで問題となり、「大喪の礼」という国による儀式部分と、皇室行事である「葬場殿の儀」に厳格に分けて執り行われた。葬場殿の儀から大喪の礼に移る間の短い時間に大急ぎで鳥居などが撤去され、日本の伝統を冒涜(ぼうとく)する、と批判を浴びた。
高崎経済大学の八木秀次教授は「象徴という言葉には出典があり、本来ならば国民を超越して国家の尊厳を担う国家元首を指す言葉であることは明らかだ」としたうえで、こう指摘した。
「『象徴にすぎない』『元首はいない』などとする見解による混乱が現にある以上、天皇を国家元首と明確にする意義はある。対外的な代表者が存在しなければ国家として問題で、不毛な混乱に終止符を打つべきだ。ただ、重要なことは天皇はただの元首にとどまらず、わが国の安泰と国民の平安を祈り続けてきた永続的な存在でもある。歴史があって尊厳ある天皇の姿を憲法に位置付ける必要があろう」(安藤慶太)
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憲法第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
37憲法第20条
1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
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