審査委員に中電側1140万円寄付 防潮堤安全判断
中日新聞 2012年5月11日 朝刊
中部電力が停止中の浜岡原発(静岡県御前崎市)の津波対策として建設している海抜18メートルの防潮堤をめぐり、2011年度に安全性審査の第三者機関委員を務めた名古屋大教授が06〜08年度、中電の関連企業・団体から総額1140万円の寄付を受けていた。本紙の調べで分かった。法的には必要のない自主的な審査だったが、中電は地元、静岡県に「安全性を確認した」と報告する根拠にしていた。
この委員は、名大大学院工学研究科の中村光教授(48)。審査で、中電の津波対策の柱となる防潮堤の耐震性や強度などを主に担当していた。
本紙が名大に情報公開請求し、過去6年間に大学を通じた研究助成名目の寄付一覧が開示され、判明した。
開示資料によると、中村教授は財団法人「中部電力基礎技術研究所」(現中部電気利用基礎研究振興財団、名古屋市)から06年度に170万円、中電子会社の電気設備業、シーテック(同)から06〜08年度に計970万円の寄付をそれぞれ受け取っていた。09年度以降はなかった。
中電によると、寄付は公募した研究に対する助成や、原発の土木技術に関する解析など委託した業務に対する対価という。
浜岡原発の再稼働を目指す中電は、防潮堤などの津波対策で客観的なデータや専門知識を得るため、自主的な判断で「地震予知総合研究振興会」(東京)に評価を依頼。振興会は昨年7月、地震や土木工学の研究者ら11人による専門の検討委員会を設置し、中村教授も委員の1人になった。
検討委は半年余りかけて審査し、対策は安全性が確保されていると結論付けた。中電は今年3月末、静岡県の県防災・原子力学術会議の分科会にこの報告を伝え、地元の理解を求めた。
中村教授は本紙の取材に「審査と寄付は全然違う問題だ。評価の客観性に影響を与えることはあり得ない」と話している。
◆委員選定関与せず
中部電力広報担当者の話…当社は委員の選定に関与しておらず、恣意(しい)的ではない。これによって検討委員会の結果が当社にとって有利になったとは考えていない。検討委の評価は高度の知識を持った有識者の意見を聞くために自主的に依頼したもので、最終的な安全確認は国がするという考えは変わりがない。
<財団法人地震予知総合研究振興会> 地震予知と防災対策の調査、研究を目的に1981年に設立された。2010年度には研究委託事業で中部電力を含む民間企業から4億円、文部科学省から3億円の収入があり、経済産業省から2億円の補助金を受けた。会長は高木章雄東北大名誉教授。役員の選任や経理書類の承認などの権限を有する評議員には、学者やシンクタンクの研究員とともに中電と東京電力、関西電力の部長クラスが名を連ねている。
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中部電力が、浜岡原発防潮堤安全性審査委員名古屋大大学院中村光教授に1140万円の寄付
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