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NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由

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NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
 言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。
2012年05月15日 08時02分 UPDATE [窪田順生の時事日想:Business Media 誠]
 5月13日、広島県福山市のホテルで火災が起きて7人が亡くなるという大惨事が起きた。
 亡くなられた方のご冥福をお祈りする一方で、この悲劇の報じ方が非常に気にかかる。というのは、テレビ局各社でかなりバラつきがでて、その意味するところがまったく異なっているからだ。
 例えば、NHKは第一報から現場を「ホテル」と表現し、「ホテル火災 ほとんどがCO中毒死か」というニュースのなかで、消防団のこんな証言を紹介している。
 「逃げ遅れた人を助けようと、道路に面した2階や3階の窓ガラスを割って入ろうとしたが、窓の内側に木の板が張ってあり、板を打ち破らなければ部屋に入れず、救助作業はかなり手間取った」
 そりゃ一酸化炭素中毒にもなるよ、とんでもなくずさんな防災設計じゃないかと怒りを覚えるところだが、これがTBSのニュースではちょっと事情が変わってくる。
 ネットで紹介されているホテルの室内写真や、業界では「わかめ」と呼ばれるビニールのれんが垂れる駐車場の映像も流れ、さらに現場を「ラブホテル」と明言した。
 利用された方ならば分かるだろうが、ラブホテルの部屋というのは基本的に窓はないことが多い。「そういう行為」をする人たちにとって、窓から差し込む陽の光は邪魔者以外の何者でもないので、板を打ち付けたり家具で塞ぐ。
 つまり、NHKの視聴者は、「ひどいホテルがあったもんだ」だという印象になるが、TBSの視聴者は「ラブホテルってそもそも安全なの?」と問題意識を抱く。同じニュースでも、意味するところがまったく違ってくるのだ。
■「ラブホはNG」という「報道の作法」
 この火災の少し前、茨城県土浦市で、ラブホテルの受付女性が強盗に刺された時もNHKは頑なに「ホテル」と報じている。ここまで徹底して「ラブホテル」という言葉を毛嫌いする背景には、放送コードもあるが「プライバシー」によるところが大きい。
 というのも、ラブホテルで亡くなったということをニュースで全国に報じて、もし遺族からクレームが入った場合、テレビ局はただ平謝りをするしかないからだ。
 世間体もあるんだから勘弁してよ、という当然の遺族感情もある。もし仮に不倫カップルなどの場合、死者にムチ打つような事態を招く恐れもある。そういうリスクを総合的に考えると、「ラブホはNG」という判断をするテレビ局もある。
 もちろん、これぞ正義だという自負もある。みなさんからすると好き勝手なことを書き飛ばしているイメージがあるだろうが、なにせ「報道」と呼ぶぐらいなので、「華道」や「茶道」と同じく高い美意識をもち、厳密なルールもある。
 早い話が、「ラブホはホテル」というのが「NHK流報道」の作法というわけだ。
■カメラマンが見せてくれた「お蔵入り映像」
 個人的には報道の権利よりも優先すべきものがあると思っているので、「ラブホをホテル」はしょうがないなあと思うが、「報道の作法」を気にするあまり、本質的なことを報じられなくなるという問題もある。
 東日本大震災の発生から1週間後。親しい某ニュース番組のテレビカメラマンから「お蔵入り映像」を見せてもらった。
 震災直後、関東某所の避難所に、福島第一原発の作業員が妻と娘をつれて訪れた。彼は協力企業の人間からサーベイメーター(携帯用の放射線測定器)を奪うと、愛娘を調べ始める。すぐに針が振り切れ、ピーピーという大きな音。なだめる協力企業の人間から、「俺は毎日つかってっからわかんだ! やべえだろ、これ!」と怒鳴って取り乱す作業員。震災からまだ1週間ほどだったので、モニターを見て思わず息を呑んだ。
 この映像はテレビ局幹部から「あまりにショッキングで、視聴者の恐怖心をいたずらに煽る恐れがある」としてボツになった。「報道の作法」に反するというわけだ。
 放射線の人体への影響はいまだに議論があるが、あの時、福島第一原発の作業員がこのような形で避難し、恐怖を感じていたというのはまぎもれない「事実」だ。あれはやはり報じるべきではなかったか、と個人的には思う。
 プライバシーや世論の反応を気にして言葉を選ぶのはいい。ただ、「報道」を名乗っているのだから、あまりに度を過ぎて事実から目を背けるというのは、逆に「道」を踏み外していることになるのではないか。
*窪田順生氏のプロフィール:
 1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
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ホテル火災 7人の身元が判明
NHK NEWS WEB 5月15日 19時25分
 広島県福山市で13日、ホテルが全焼し、宿泊客7人が死亡した火事で、身元が判明していなかった4人は、いずれも広島県内に住む中国人の26歳から33歳の男女と確認され、亡くなった7人全員の身元が分かりました。
 13日午前7時ごろ、広島県福山市の中心部にある「ホテルプリンス」から火が出て、男性3人と女性4人の合わせて7人の宿泊客が死亡、従業員1人を含む女性3人が大けがをしました。
火事で亡くなった7人のうち、身元が分かっていなかった4人は、いずれも広島県内に住む中国人で、2階の同じ部屋にいた29歳の男性と30歳の女性、3階の同じ部屋にいた33歳の男性と26歳の女性と確認されました。
 これで7人全員の身元が分かりました。
 また、今回の火事で、消防は1階のフロントを兼ねた事務所内の配電盤や屋内配線などの焼け方が激しかったと説明していましたが、消防は15日になって事務所には配電盤はなく、焼け方が激しかったのは事務所内の屋内配線のほか、エアコンやレジなどだったと訂正しました。
 消防や警察は、15日も焼け方が激しく、火元とみられる1階の事務所を中心に現場検証を行い、電気系統のトラブルがなかったかなど出火原因の特定を急ぐことにしています。
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