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小佐古内閣参与、辞任/政治とカネ/尖閣問題・・・官邸圧力 国民の命よりも情報隠匿による政権維持

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〈来栖の独白〉
 放射線安全学の小佐古敏荘東大大学院教授が内閣参与を辞任した。政府のリスク管理、とりわけ福島県内の子どもの被ばく線量の上限を年間20ミリシーベルトとしたやり方に懸念を示してのことだ。
 が、辞任の理由は、それだけではないようだ。記者会見に関し、官邸事務方から「守秘義務がありますから」と圧力をかけられたとも囁かれている。むろん、枝野官房長官も細野首相補佐官も、圧力を否定したが。
 被曝線量のみならず、原発すべてについてデータの「秘密」などあってはならない。国民の生命に関わることだ。国民には、知る権利もある。秘密は許されない。
 振り返るなら、菅政権は実に多くのことを国民の目から隠し、隠し偽ることで政権維持に利用してきた。「政治とカネ」の問題、尖閣問題・・・。そして今回は、国民の命に関するデータを隠匿しようとしている。
 警戒区域とされた原発20キロ圏内、住民はもとより一般人の立ち入りが禁止となった。ここで何が起きているか、国民は一切、知ることができなくなった。「知る権利」が脅かされている。独裁が進む。「秘密」の政権が、いよいよその正体を現してきた。
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内閣参与辞任 安全最優先で議論を
中日新聞2011年5月4日社説
 福島第一原発事故への政府の姿勢に抗議して内閣官房参与が辞任した。放射能のリスク管理をめぐり、政府が混乱しては国民の不安を招く。政府が設けた学校の放射線量基準には合理性があるのか。
 辞任したのは、菅直人首相が起用した放射線安全学を専門とする小佐古敏荘(としそう)東大大学院教授だ。放射能をめぐる政府の対応を場当たり的だと涙ながらに批判した。
 国の原子力政策を担う原子力委員会の専門部会委員でもある。放射線防護の碩学(せきがく)の涙は重く受け止めるべきだ。
 とりわけ小佐古氏が強い懸念を示したのは、福島県内の学校での被ばく線量の暫定の上限を年間二〇ミリシーベルトとした政府のやり方だ。
 子どもが一日のうち八時間を屋外で、十六時間を屋内で過ごすと仮定して逆算し、校庭の放射線量が毎時三・八マイクロシーベルト以上ならば屋外活動を制限するとしている。
 この目安は原発作業員の普段の年間被ばく量の上限に相当し、高すぎるという。小佐古氏は「学問上の見地からも、私のヒューマニズムからも受け入れがたい」と猛反発して引き下げを求めた。
 政府が目安を決めるのに助言を求めた原子力安全委員会が、小佐古氏のような意見を踏まえてどういう議論を交わしたのか見えないのは残念だ。
 「差し支えない」との結論を出すまでに、さまざまな意見が出たに違いない。しかし、正式な委員会は招集されておらず、議事録がないから確かめようもない。
 子どもの健康を左右しかねない大事な目安をぞんざいに扱ったとのそしりは免れまい。責任の所在が曖昧なのも問題だ。
 広島や長崎の原爆の研究によれば、一〇〇ミリシーベルトの放射線を浴びると、がんになる確率が0・5%増える。ところが、それ以下の被ばく量の影響は明確ではない。
 ただ、子どもの放射線への感受性が大人より高いことははっきりしている。一九八六年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故では子どもの甲状腺がんが多発した。
 子どもの被ばく量の上限として年間二〇ミリシーベルトは高すぎると警告する人は小佐古氏のほかにも多い。飯舘村などの計画的避難区域で予想される積算の被ばく量と同じ数値なのも気掛かりだ。
 地元の自治体では、校庭の表土を放射性物質ごと削り取る動きも広がっている。政府の方針に安心できないからだ。子どもの安全を最優先に議論し、揺るぎない手だてを打ち出すべきだ。
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「官邸圧力」 「あり得ぬ」 小佐古前参与 会見急きょ中止
東京新聞2011年5月3日 朝刊
 学校での被ばく線量を年間二〇ミリシーベルト以下とした政府の対応を批判する形で内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘東大大学院教授は二日、線量をめぐる見解を述べるはずだった自らの会見を急きょキャンセルした。首相官邸側が会見を中止するよう圧力をかけたとの見方もあるが、官邸側は全否定している。
 小佐古教授と親交のある空本誠喜衆院議員(民主)はキャンセル理由について会見し、「小佐古教授は、官邸の事務方から『老婆心ながら、守秘義務がありますから』と言われ、来られなくなった」と説明した。また「小佐古教授のことが、報道各社に政局をからめて面白く書かれるのではないかと心配した」と述べた。
 四月三十日付で小佐古教授が参与を辞任して以降、官邸側からは、火消し狙いとみられる発言がしきりに出ている。
 枝野幸男官房長官は同日の会見で、「(政府の対応は)正義に反しているところはないと確信している。何か誤解があるのではないかと思っている」と述べた。五月一日の会見でも「小佐古教授は牛乳や飲料水の基準値では、逆に、より緩やかでいいと提言している。専門家の意見もいろいろある」と述べ、小佐古教授は必ずしも被ばく線量について厳格化論者ではないと強調した。
 会見キャンセルの背景に官邸側から圧力的なものがあったとの指摘について、官邸筋は二日夕、「それはありえない」と全否定。
 小佐古教授と面識のある細野豪志首相補佐官も同日の福島第一原発事故対策の統合本部会見で、「そのようなこと(圧力)はないと承知している。参与は公職なので一定の守秘義務はあるが、学問的見地からお考えになることには自由が認められている」と否定している。
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