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「テロ」との戦い、という「正義の御旗」/米国がビンラディンを追っている間に中国は絶対的な台頭を追求

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〈来栖の独白〉
 オバマ米大統領はウサマ・ビンラーディンを米国が実施した作戦で殺害したと発表、「正義は遂行された」と語った。
 ウサマ氏を「捉えた」のではなく「殺害」だった。オバマに余裕がなかったのだな、と直感した。9・11以降、アメリカから栄光も力も急速に失われていった。もはや地球に君臨する唯一の超大国ではなくなった。
 過去の栄光の残照が、大統領をして「正義」という言葉を口にさせた。が、過去においても、アメリカは「正義」ではなかった。古い記憶だがヨハネパウロ2世教皇は「戦争は人間の仕業です」と言い「戦争は悪です」と言った。地球の各地、いや全地で戦争を仕掛け、加担してきたアメリカという国が正義であるはずはない。問いたい。ヒロシマへの原爆投下は正義であったか。ベトナムでの戦争は正義であったか。イラク、アフガンへの攻撃は、正義か。聖戦であったのか、と。人間の仕業ではないか。
 田母神さんは洞察に満ちたことを言っている。テロに立ち向かう、という「錦の御旗」と。
 余分な付けたりを一つ。オバマ氏の顔を見て私は、ああ、この国から死刑制度がなくなることはないだろう、と慨嘆した。安易に「正義」などを標榜する地平からは死刑はなくならないだろう、そう思った。
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『田母神国軍』田母神俊雄著(産経新聞出版)
p94〜日本をしゃぶりつくすアメリカ
同盟国から情報がほしい
 我が国は、日米同盟という命綱のもと、アメリカの強大な軍隊に守られています。戦後、この日米同盟のおかげで、日本が経済発展に専念できたのは事実です。
 しかし、アメリカという国も、自国の国益に基づいて行動する国に過ぎません。アメリカが、日本よりも中国と組むほうが国益に繋がると判断すれば、日本は見捨てられてしまうでしょう。実際、尖閣諸島での「漁船」事件でも、アメリカは一応は日本への配慮を見せ、日米安保が適用される旨、アナウンスしましたが、そんな事件はなかったかのように中国と首脳会談を行っています。日本人には国際社会が人間の善意で動いていると思っている人が多いのですが、それは全く違います。国と国との関係は利益関係で結びついているのです。国は国益で動くのです。これはアメリカに限らず日本以外のすべての国がそうなのです。このような国際社会で「日本列島は日本国民だけのものではない」などと善意を見せれば、それは日本を中国にくれてやると言っているようなものです。中国などにつけ込まれるだけです。国際社会は腹黒の世界なのです。
 そしてもはやアメリカは、決して中国と争いたくない。争えないのです。
 経済的に切っても切れなくなった米中の狭間で、日本が翻弄されないためにも、同盟国・アメリカの考え方を知っておくことが必要です。
 日本を含めたアジア地域に対してどのような戦略を持っているのか。中国にはどう対峙していくつもりなのか。そして、アメリカが日本を同盟国としてつなぎとめておこうとする真意はどこにあるのか。
 同盟を堅持しつつ、日本はアメリカから自立しなければなりません。ただ従属するのではなく、国益のために同盟を活用する第1歩として、アメリカの戦略を知っておくことが重要なのです。
 2009(平成21)年1月にオバマ政権が発足しましたが、2010年になってから新政権の国防政策を次々と発表しています。(中略)
p96〜
 まず、現在の安全保障環境には、アメリカは次のような認識をもっているということです。
《今回のQDR(4年ごとの国防計画の見直し)は、イラクとアフガニスタンにおいて米国が現在戦っている戦争、中国やインドなどの新興国の台頭、非国家主体の影響力の増大、大量破壊兵器の拡散、海、空、宇宙、サイバー空間といった国際公共財(Global Commons)に対する侵害などにより、安全保障環境が複雑で不確実なものになっているとしている。また、紛争に多様な主体が各種手段を用いて参加することで、紛争が複合的な性格を有するハイブリッドなものとなってきているとしている。さらに、脆弱な国家は過激主義や急進主義の温床となるおそれがあり、紛争を引き起こす要因となるとしている。》
 このアメリカが言うところの「国際公共財」とは、つまりは「アメリカが自由に使えるもの」ということです。アメリカのような能力があるものしか使えないもの、それを彼らは「国際公共財」と呼んでいるのでしょう。
 そして、ここでアメリカが認識しているように、紛争には「多様な主体」が「各種手段を用いて」参加するようになってきています。
 いままでのアメリカは、国家間の戦争だけを考えていればよかった。国家間の戦争というのは、相手がはっきりしています。相手が明確にわかっていれば、その相手を抑え込むにはどうすればいいかという対応は、比較的簡単に取ることができます。
 これに対して、テロ攻撃のように戦うべき相手が誰だかもわからない、手段も様々であるというとき、1番必要になってくるのが「情報」です。この「情報」というものは、実はアメリカだけでは取ることはできません。同盟国などいろいろな国の協力があってこそ、初めて細かい情報というものが取れるようになります。
テロとの戦いは「正義の御旗」
 ですから、このような安全保障環境に置かれたアメリカは、これまでの同盟国にとどまらず、中国やロシア、そして国力をつけつつあるインドといった国も組み込んでいく必要があると考えているでしょう。
 しかし、アメリカがいままでのように「世界のリーダー」ぶって、自分勝手に行動しているようでは、なかなか情報を取ることはできません。これまでの同盟国だけでなく、できるだけ多くの国がアメリカに協力してくれるような態勢にしなければならない。だからこそ、アメリカという国は、いままでよりも各国に対して、頭を下げていくことになるでしょう。
 現在のアメリカは、サブプライムローンを発端とした不況の影響などで、経済的にも絶対に強いという存在ではなくなりました。これからは、BRICs(ブリックス)のように経済力をつけた国がどんどん出てくるので、世界における相対的な力というものも、恐らく落ちてくるでしょう。
 そういう中で、アメリカはテロ攻撃への対応で、先頭に立つこともできるだけ避けたいという思いもあります。他国をできるだけ働かせて、協力を得ていきたいと考えているのです。
 おそらく、アメリカはテロ攻撃について、「いつかは起る」と織り込み済みだったのではないかと私は思います。アメリカへのテロ攻撃は、いわゆる9・11テロのような大規模なものではなくても、いままでにもありました。それだけに、9・11テロ以降のアメリカの立ち回りは、うまくテロを使ったと言えるのではないでしょうか。
 「テロ攻撃という卑劣な手段には、断固として立ち向かわなければならない」と訴え続けることで、アメリカは同盟国に対して「協力しないのか!」という「錦の御旗」を掲げているのです。「正義」を掲げられると、諸外国も「協力しない」とはなかなか言いにくい。
 ですからアメリカは、使い勝手のいい錦の御旗を見つけたということです。誰が考えたのか、頭のいい奴がいたなと思うばかりです。(〜p99)
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遺体なき暗殺という空虚な勝利ビンラディン追跡に固執した代償  
JB PRESS 2011.05.06(Fri)Financial Times(2011年5月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 死体のない暗殺には、どこか妙なところがある。不思議なことに16年間にわたって遺体がどこかに消えていたアルゼンチンの大統領夫人、エバ・ペロンの場合と同様、死体がないということは奇異な感じがする。
 バラク・オバマ大統領の言葉を除けば、ウサマ・ビンラディンが実際に死亡したことを示す具体的な証拠はほとんどない。
 オバマ大統領は遠からず、それが怒りをかき立てるにせよ、そうでないにせよ、殺害されたアルカイダの指導者の写真を公開することを余儀なくされるだろう。
 もちろん、ビンラディンが殺害されたことや、世界がそのおかげでよくなったことを本気で疑う人はほとんどいないだろう。また、最も憎い敵に命をもって責任を取らせたことが米国に心理的な高揚感をもたらしたことを否定できる人もまずいないはずだ。
・犠牲が大きすぎて割に合わない勝利
 だが、恐ろしいのは、今回の行為の結果が死体のない暗殺と同じくらい空虚なものだと判明することだ。オバマ大統領の勝利は、犠牲が大きすぎて割に合わない結果になるかもしれない。
 その一因は、ビンラディンが世界で最も危険な人物と判断された時から、世界がどんどん先に進んできたことだ。誰に聞いても、ビンラディンは過去5年間、電話も電子メールもない状態で、緑豊かなアボタバード近郊に潜伏していた。ビンラディンは、テロの首謀者というより、テロの理念を象徴する人物になっていたのである。
 がんのような彼の考え方は、パキスタンを通ってイエメンやソマリアなどに転移していた。当然ながら、理念というものは人間よりも殺すのが難しい。
 アラブ世界の多くも、どんどん前に進んできた。示唆に富む北アフリカ、中東全土の反政府運動は、ビンラディンの二元論的なイスラム国家観とはほぼ無縁だ。エジプトからリビアに至るまで、抗議運動をする人たちは、西側の民主主義という人を夢中にさせる考え方を吸収してきた。
 そのため、ビンラディンの殺害は、彼の落ちた権威を強く感じさせるものとなった。さらに大きなダメージを与えたのは、そのことが、アフガニスタンとパキスタンで米国が進めてきた影を追いかけるような軍事行動の大きな欠陥を露呈したことだ。
 米国は「9.11」の同時テロの翌月にアフガニスタンに侵攻した。理由は単純明快だ。アフガニスタンのタリバン政権がビンラディンをかくまい、引き渡すのを拒否していたからだ。多くの米国人にとって、アルカイダとタリバンは1つに融合している。だが、アフガニスタンのタリバン政権の目的は、常にアルカイダより穏健なものだった。
 タリバンは、アフガニスタンから外国人を追い出し、自分たちの手で国を動かすことを望んでいる。米国の侵攻軍がタリバン政権を転覆させ、アルカイダの兵士の多くをパキスタンに逃げ込ませた時、米軍は、それまでと異なるアフガニスタンでの任務――国造り――と奮闘する羽目に陥った。
 パキスタンでビンラディンが発見されたという事実は瞬時に、米国の作戦の迷走を浮き彫りにした。アルカイダの指導者が死に、米軍の撤退開始期限である7月が間近に迫る中で、アフガン戦争に対する国内の批判派が完全な撤退を求めることが容易になった。
 マサチューセッツ州の民主党下院議員、バーニー・フランク氏は今週、CNNに対して、米国は「悪い政府をすべて改心させるために物理的な力を行使することはできない」と述べた。さらにフランク議員は、安全な避難場所から別の避難場所へとテロリストを追いかけることの無益さについて言及し、米国は「世界中のネズミの穴をすべて塞ぐこともできない」と付け加えた。
・パキスタンとの同盟関係に大きな亀裂
 ビンラディンの殺害は、米国政府とパキスタン政府との同盟関係により一層暗い光を当てている。パキスタンの軍統合情報局が何を目論んでいたにせよ、適切だったようには見えない。
 ある見方をすれば、情報局は、世界一のお尋ね者が目と鼻の先にいたのに発見することができなかった。米国から180億ドルも支援を受けていたのだから、ビンラディンの隠れ家を壁越しにのぞくための梯子くらい買えたはずだろう。
 また別の見方をすれば、情報局はビンラディンが発見されないように意図的にかくまってきた。米中央情報局(CIA)のレオン・パネッタ長官は、パキスタンは、ビンラディンにこっそり情報を漏らす恐れがあったために、日曜日の作戦を知らされなかったと述べた。これ以上にパキスタンを強く非難する評決は想像し難い。
 インドの軍事専門家でパキスタンに対して非友好的なブラーマ・チェラーニ氏は辛辣な論説の中で、「パキスタンのテロリズムを引き起こした原因は、数珠を擦り合わせる宗教指導者よりも、スコッチウイスキーをすする軍司令官たちだった」と書いた。
 パキスタンの米国の友人たちがこれとよく似た発言をしていなければ、チェラーニ氏の見方はパキスタンの敵であるインド人の見方として片づけられたかもしれない。米国の何人かの議員は、パキスタン政府への援助をすべて停止するよう米国政府に求めてきた。
 「我々はあともう10セントでも出す前に、パキスタンがテロとの戦いで本当に我々の味方なのかどうか知る必要がある」と、ニュージャージー州の民主党上院議員、フランク・ローテンバーグ氏は語っている。
 だが、米国政府はパキスタンを見捨てることはできない。ビンラディンを追い詰めるうえでパキスタン政府が果たした役割が良くて最小限だったという証拠にもかかわらず、オバマ大統領はパキスタン政府の協力を称賛することによって、その事実をはっきり示した。
 核武装したパキスタンは、米国が簡単に見捨てるにはあまりにも不安定であまりにも闘争の温床になりすぎている。米国とパキスタンは、居心地の悪いベッドで一緒になっているしかないのだ。
・米国がビンラディンを追っている間に中国は絶対的な台頭を追求
 ビンラディンの死によって露呈された3つ目の点は、彼を追い詰めるのにどれだけ多くのコストがかかったかということだ。米国の各テレビ局は、その数字を、アフガニスタンとイラクでの戦争を含めて2兆ドル以上と見積もっている。
 これは、エール大学の歴史学者、ポール・ケネディ教授が、その著書『The Rise and Fall of The Great Powers(大国の興亡)』の中で描いている「帝国の過剰拡大」の本質だ。
 ケネディ教授は、ハプスブルク家の皇帝たちについて書いている。「彼らは対立を繰り返しているうちに徐々に背伸びをし過ぎて、弱体化する経済基盤の割に軍事的に頭でっかちになってしまった」 米国が中東のあちこちでビンラディンを追いかけ、持続不可能な赤字を膨らませている間に、中国は自国の絶対的な台頭を追い求めてきた。
 中国は昨年、世界第2位の経済大国になり、米国に取って代わって世界最大の製造国になった。米国政府は追い求めていた人物を手に入れた。しかしその一方で、米国は道を見失ってしまったのかもしれない。
By David Pilling
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五木寛之著『歎異抄の謎』(祥伝社新書)より  
 先日、アメリカ本土の米軍基地で、高級将校が銃を乱射し、数十人の死者と30人以上の負傷者をだしました。オバマ大統領の来日が、そのために延期されたほどの衝撃的な事件でした。
 私が気になったのは、その将校が、精神科の軍医だったことです。
 2001年9月11日、いわゆる「9・11」以後のアメリカは、まちがいなく鬱の時代に突入しました。ニューヨークにそびえるツインタワー・ビルの崩壊する映像は、はっきりとそのことを世界にしめしたのです。
 戦争というものの姿が、あの日以来、一変したといっていい。
 それまでの戦争は、いわば「躁の戦争」でした。巨大空母から発進する攻撃機が、爆弾とミサイルの雨をふらせる。圧倒的な火力で敵陣を制圧し、はなばなしく地上戦を戦う。
 そんな「躁の戦争」の時代は、もう完全に終わったのです。
 あらたに登場したのが「鬱の戦争」です。「鬱の戦争」とは、テロとの戦いのことです。
 敵がどこにいるかが見えない。敵は味方のなかにひそんでいるかもしれない。一般市民にまぎれこんでいるかもしれない。
 戦車で攻撃するわけにもいかず、核兵器も使えない。疑心暗鬼のなかで、見えない敵と戦うしかない。それが「鬱の戦争」です。テロとゲリラこそ、鬱の時代の戦争の典型的な姿でしょう。
 「鬱」の時代は、すべての分野にあらわれてきます。
 成長と開発は、「躁の経済」です。それに対して、エコと環境問題は「鬱の経済」にほかなりません。
 20世紀は自動車文化(モータリゼーション)の時代でした。スピードとパワーを競うF1レースは、まさに「躁の工学」の象徴でした。トヨタをはじめ日本の有力なメーカーも、次々とF1からの撤退を発表しています。
 そしていまやエコカーと、音もなく走る電気自動車が人気を集めています。
 航空界では巨大なスーパージャンボから、効率的な中型ジェット旅客機へと業界の視線が移ってきました。
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オバマ大統領が緊急声明「正義は遂行された」
産経ニュース2011.5.2 13:18
 【ワシントン=犬塚陽介】オバマ米大統領は1日夜、ホワイトハウスでテレビカメラを前に緊急声明を発表し、2001年9月11日の米中枢同時テロの首謀者で、国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者を「米国が実施した作戦で殺害した」と語った。米国が遺体を確保しており、本人と最終確認した。米国が最大の標的と位置づけていたビンラーディン容疑者の殺害で、米国が遂行するテロとの戦争は大きな転換点を迎えた。
 米国は先週、ビンラーディン容疑者がパキスタン国内に潜伏していることを確認。パキスタン当局と協議の上、米情報当局が拘束・殺害に向けた作戦を実施した。オバマ大統領は声明で、「正義は遂行された」と語った。
 一方、ビンラーディン容疑者の殺害で、アルカーイダ系のテロ組織が報復に出る可能性もあり、米政府は警戒を強めるとみられる。
 また、米国とパキスタンの間では米情報当局のパキスタン国内での活動をめぐって軋(あつ)轢(れき)が生じており、ビンラーディン容疑者の潜伏状況や米情報当局による殺害方法をめぐって両国関係の緊張がさらに高まる可能性もある。
 ビンラーディン容疑者はサウジアラビア出身。米国はビンラーディン容疑者の拘束、殺害を最重要課題に位置づけていた。
 同時テロ後、ブッシュ前政権はアフガニスタンに滞在していたビンラーディン容疑者の身柄引き渡しを当時のタリバン政権に要求したが、拒否された。タリバン政権の崩壊後はパキスタンとアフガンの国境付近で潜伏生活を続けていたとされる。
 ビンラーディン容疑者は潜伏中もビデオや音声での声明を発表し、欧米諸国との戦いを呼びかけていた。
 米国は同時テロのほか、1998年に発生した在ケニア、タンザニアの米大使館爆破事件、2000年にイエメン沖で爆弾を積んだボートが米駆逐艦コールに突入した事件にもビンラーディン容疑者が関与した可能性があるとみている。
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ビンラディン容疑者:水葬? イスラム教慣習に反し、臆測
 【カイロ和田浩明】国際テロ組織アルカイダの最高指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の遺体を、殺害した米当局が海に流したと米主要メディアが報じている。イスラム教の慣習では土葬が一般的で、本当ならイスラム教徒から批判が強まるのは必至。殺害を巡り「何らかの作為」を疑う声も強まりそうだ。
 ビンラディン容疑者の遺体の扱いについて、米政府高官は「イスラムの伝統に沿って行う」と述べた。イスラム教では通常、遺体は死後24時間以内に土葬する。だが、米メディアが流した水葬説について、米政府高官は「引き取り手がいないからだ」とAP通信に説明したという。
 ビンラディン容疑者はサウジアラビア出身だが、同国の国籍はすでに剥奪され、遺族も絶縁している。引き取り先がテロの対象になる可能性もあり、悪名高い人物の遺体の引き取り手を探すのは確かに困難だ。また、埋葬地がイスラム過激派の「聖地」になるとの指摘もある。
 だが、米政府が「最重要容疑者」として行方を追っていた人物の遺体を殺害直後に水葬し、場所も明らかにしないのは、極めて異例な措置だ。米政府は「複数の方法で本人確認をした」と説明しているが、遺体がなければ検証もできない。
 イスラム教スンニ派の最高権威機関アズハルのタイエブ総長は2日、エジプト政府系紙アルアハラム(電子版)に対し、遺体を海に流すことは「すべての宗教的、人間的価値に反する」と批判した。
毎日新聞 2011年5月2日 23時21分(最終更新 5月3日 0時05分)
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「BRICS」を政治利用する中国2011-04-23 | 国際
  米国への挑戦状:世界の盟主になりたい中国 BRICS首脳会議を主催して〜中国株式会社の研究(107)
JB PRESS〔中国〕2011.04.22(Fri)宮家 邦彦 
 日本中が放射線量の増減に一喜一憂していた4月13〜14日、胡錦濤総書記は海南島で第3回BRICS首脳会議を主催していた。インド、ロシア、ブラジルに加え、今回から南アフリカも参加した。「BRICs」が「BRICS」に変わったことに気づいた日本人がどれだけいただろうか。
投資銀行が考えた「BRICs」
 共同会見に臨む(左から)インドのマンモハン・シン首相、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領、中国の胡錦濤国家主席、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領、南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領〔AFPBB News〕
 「BRICs」という言葉が使われたのは2001年、米投資銀行大手ゴールドマン・サックスが投資家用に作成したニュースレターが最初だったと言われる。
 当時から、広大な領土と巨大な人口を持ち、急成長を続ける新興国家群の存在は関係者の間で注目されていた。
 あれから10年、今年から南アフリカが参加し、イラン高官もBRICs諸国との関係拡大を公言するようになった。
 当初は理念的に考えられ、半ば語呂合わせ的に命名されたBRICsだったが、今や国家グループとして自律的な進化を始めたかのようだ。
 ロシアとブラジルで開かれた過去2回のBRICs首脳会議のテーマは、基本的に経済問題だった。BRICs諸国が、G20と国連の役割を重視しつつ、より平等、多極的で民主的な国際社会・経済システムを目指して協力し合うという一般的な主張だったと記憶する。
 ところが、4月14日に発表された今年の首脳宣言には、微妙ながら重要な変化が見られた。昨年の共同コミュニケと読み比べれば、国連改革、リビア情勢、国際金融システム改革など、前回よりも政治的に踏み込んだ内容が随所に盛り込まれていることが分かる。
2011年BRICS首脳宣言
 今年の首脳宣言中、特に注目すべきは以下の諸点だ(括弧内の注は筆者のコメント)。
●安全保障理事会を含む国際連合の全面的改革が必要であり、中国とロシアは、インド、ブラジル、南アフリカの国際的地位・役割向上の重要性を再確認する
(注:欧米主導でつくられた現在の国連は不平等・不公平なシステムだと批判するが、インド、ブラジル、南アフリカの地位向上の重要性を唱える一方で、日本やドイツに言及しないことも同様に不平等、不公平ではないのか)
●中東・北アフリカ地域における混乱を深く憂慮し、武力行使は回避すべきである
(注:リビアなどで欧米諸国が安易に軍事介入を行っていることを批判しているようだが、BRICSとして軍事的手段に代わる解決策を提示しているわけではない)
●国際通貨基金(IMF)改革目標を早急に達成し、商品デリバティブ市場の規制を強化すべきである
(注:欧米主導の国際金融システムにおけるBRICS諸国の発言力・影響力を高めようとする主張であるが、ここでも具体的改善策は示されていない)
●安定性と確実性を伴う広範な国際準備通貨制度に基づく国際金融システムの改革・改善を支持する
(注:名指しは避けたものの、明らかに米ドル中心の現行国際通貨制度を強く批判するものだ、他方、中国の人民元の取り扱いなどの具体的解決策は提示していない)
●原子力エネルギーはBRICSにとって重要な要素であり、安全な原子力エネルギーの平和利用に関する国際協力を推進すべきである
(注:BRICSが経済成長を続けるため必要なエネルギーを確保しなければならないことは分かるが、このタイミングで敢えて原子力の重要性に言及することは実に興味深い)
「BRICS」を政治利用する中国
 以上のようなBRICS首脳会議の「政治化」を主導したのは、やはり中国であろう。中国は今回の首脳会議を大々的に宣伝しており、開催地である海南省三亜市のウェブサイトに今次首脳会議の公式サイトまで作っている。
 これに対し、欧米メディアの反応は総じて鈍いようだ。少なくとも、BRICS諸国が国際金融システムに対し挑戦し始めたといった警戒心は見られない。
 それどころか、BRICS経済が元気になることは米国にとっても有益であるといった楽観的な論調すら見られる。
 確かに中国などがこの種の主張をするのは初めてではない。その内容にも具体性がない。
 さらに、BRICS諸国と言っても一枚岩ではない。中印だけでも国境問題、貿易摩擦問題を抱えるなど、各国間の利益対立は決して小さくないからである。
 リーマン・ショック後の新たなパラダイムの中で、米国が相対的に弱体化することは避けられない。他方、BRICSを中心とする新興国側にも、米国に代わって新しい国際秩序をつくるだけの余力はなかろう。
 今のところ欧米諸国は、BRICSは「弱者同盟」に過ぎず、米国を中心とする欧米型システムを打ち破る力にはなり得ないと高を括っているのだろう。BRICS諸国側も当面は米国を中心とするグローバル経済の枠内で独自の主張を強めていくことになりそうだ。
BRICS=金磚国家
 ちなみに、第3回BRICS首脳会議は中国語で「金砖国家领导人第三次会晤」という。「金砖」とは「金磚(きんせん)」で金の延べ棒をも意味するようだ。「磚」とは煉瓦のこと、煉瓦は英語でBRICKだから、BRICS=金磚国家ということになるらしい。
 友人の中国語専門家に言わせると、これは一種の芸術なのだそうだ。未知の外来語に対し、漢字と英語の類推から、ぴったりの漢字新語を作る中国人の能力とセンスは誰も真似できないという。それはそうだろう。そんなことをするのは中国人だけなのだから。
 BRICSはBRICSなのだから、そのまま使えばいいではないか。中国語でDavidは大偉(ターウェイ)という。なぜわざわざ漢字化するのだろうか。
 趣味の問題かもしれないが、筆者には「金磚国家」など「洗練させたセンス」どころか、下手な「こじつけ」としか思えない。
 「金磚」は元々古代中国の珍しい武器の一種らしい。伝説によれば、金色をした円形敷石か瓦のようなもので、空に投げ上げると金光を発したという。
 つまり、BRICSとは、煉瓦は煉瓦でも、光り輝く煉瓦の国家群ということなのか。是非そうあってほしいものである。
〈筆者プロフィール〉
宮家 邦彦 Kunihiko Miyake
 1953年、神奈川県生まれ。東大法卒。在学中に中国語を学び、77年台湾師範大学語学留学。78年外務省入省。日米安全保障条約課長、中東アフリカ局参事官などを経て2005年退官。在北京大使館公使時代に広報文化を約3年半担当。現在、立命館大学客員教授、AOI外交政策研究所代表。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。
 中国 経済の爆発的な急成長と引き換えに、中国には様々な歪みも表れてきている。減速する世界経済を中国は支え、牽引することができるのか。豊富なデータや現地情報をもとに、世界経済を左右する中国経済の行方を読み解く。
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「中国の『激変の日』に備えよ」 中国の異質性 『尖閣戦争 米中はさみ撃ちにあった日本』2011-03-03 | 政治〈国防/安全保障/領土〉


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