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大飯原発再稼働/野田総理 福井県知事の要請で渋々記者会見し、自らも確信していない原発の安全性を説く

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首相「大飯原発再稼働すべきだ」と表明 
中日新聞 2012年6月8日 19時06分
 野田首相は8日夕、官邸で記者会見し、関西電力大飯原発3、4号機について「国民生活を守るため、再稼働すべきだというのが私の判断だ」と表明した。「今原発を止めてしまっては日本の社会は立ち行かない」と指摘、橋下大阪市長らが求めている夏季限定の再稼働は「国民生活は守れない」と否定した。
 同時に「関西を支えてきたのが(原発立地の)福井県とおおい町だ。敬意と感謝の念を新たにしなければならない」と強調。安全監視体制の強化に取り組んできたとして「東京電力福島第1原発事故の時のような地震や津波が起きても事故は防止できる」と自信を示した。
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「大飯」再稼働会見 国民を守るつもりなら
2012年6月9日中日新聞 社説
 国民の生活を守るため、野田佳彦首相は関西電力大飯原発3、4号機を再稼働させるというのだろうか。国民は知っている。その手順が間違っていることを。このままでは安心などできないことを。
 これは原発再稼働への手続きではなく、儀式である。
 西川一誠福井県知事の強い要請を受け、従来の発言をなぞっただけ、西川知事にボールを投げ返しただけではないか。誰のための記者会見だったのか。いくら「国民の生活を守るために」と繰り返しても、国民は見抜いている。そして儀式には、もううんざりだ。
 国民は、首相の言葉をどのように受け止めたのだろうか。
 「スケジュールありき、ではない」と首相は言う。しかし、長期停止した原発のフル稼働には六週間ほどかかる。そのような再起動の手順を踏まえた上で、小中学校が夏休みに入り、電力需要が本格的に高まる前に原発を動かしたいという、“逆算ありき”の姿勢は変わっていない。
 経済への影響、エネルギー安保など、原発の必要性は、執拗(しつよう)に強調された。だが国民が何より求める安全性については、依然置き去りにしたままだ。
 「実質的に安全は確保されている。しかし、政府の安全判断の基準は暫定的なもの」という矛盾した言葉の中に、自信のなさが透けて見えるようではないか。
 会見で新たな安全対策が示されたわけでもない。緊急時の指揮所となる免震施設の建設や、放射能除去フィルターの設置など、時間と費用のかかる対策は先送りにされたままである。これでどうして炉心損傷を起こさないと言い切れるのか。どんな責任がとれるのか。首相の言葉が軽すぎる。
 未来のエネルギーをどうするか。脱原発依存の道筋をどのように描いていくか。次代を担う子どもたちのために、国民が今、首相の口から最も聞きたいことである。それについても、八月に決めると先送りしただけだ。
 「関西を支えてきたのが福井県であり、おおい町だ」と首相は言った。言われるまでもなく電力の消費者には、立地地域の長い苦渋の歴史を踏まえ、感謝し、その重荷を下ろしてもらうためにも、節電に挑む用意がある。ともに新たなエネルギー社会をつくる覚悟を育てている。そんな国民を惑わせ、隔ててしまうのは、その場しのぎの首相の言葉、先送りの姿勢にほかならない。
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中日春秋
2012年6月9日
 米映画『八十日間世界一周』は、主人公が、それだけの期間で本当に世界一周が可能か友人と賭けをし、英国から旅立つお話▼半世紀以上も前の作品で、筆者も昔、テレビ放映で観(み)たはずだが、主人公が日本にも立ち寄り、鎌倉の大仏が出てきた程度の記憶しかない。ただ旅心をくすぐるテーマ曲は別。今も旅行番組などで使われるから、聞き覚えのある人も多かろう▼さて、福島大の研究グループが大学屋上で大気中の放射性物質を調べたら、昨年五月以降どんどん減ってはいるのだが、一定周期で増減することが分かったのだという▼どうも放射性物質は大気と一緒に四十日程度かけて地球を一周、各地にちりとともに落ちるなどしているらしい(NHK)。いやはや、あの映画の心楽しい雰囲気とは正反対、何とも胸塞(ふさ)ぐ“四十日間世界一周”だ▼<海は私たちを隔てているのではなく、つなげてくれている>。ミクロネシア連邦の非核憲法前文の一節だが、それが悲しく思えるような報道も最近、あった。微量の放射性セシウムが米西海岸沖のクロマグロから検出されたのだ。研究チームは「マグロが太平洋を横断、日本から運んできたのは間違いなさそう」と…▼汚染の恐るべき広がりを思う。昨日の会見など原発再稼働を急ぐ首相に地球は訴えているのではないか。あの事故を軽く考えるな、もう忘れたのか、と。
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〈来栖の独白2012/6/9 Sat.〉
 首相の頭の中を占めているのは、消費税増税のことだ。だが、福井県知事の要請で渋々記者会見し、自らも確信していない「原発の安全性」を説く。国民に向かってではない、福井県知事に向かって。
 野田さん、大丈夫ですか。人間とは、脆い、やわいものだ。本音に反する言動を重ねれば、心は悲鳴を上げる。心身に異状をきたす。無理を重ねるには、限界がある。
 そこまで官僚政治をやらねばなりませんか。トップの座の魅力から離れられませんか。貴方の心身を心配する。もう、限界だ。そうではないですか。
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民主・再稼働「慎重」要請117人議員名一覧 大飯原発再稼働を慎重に判断するよう求める署名 2012-06-06 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 小沢、“野田いじめ”始動!原発再稼動でも倒閣へ
 ZAKZAK2012.06.06
 民主党の小沢一郎元代表が、新たな倒閣運動に乗り出した。同党の有志議員117人が5日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を慎重に判断するよう求める署名を、野田佳彦首相あてに提出したが、大半が、非主流派の小沢氏や近い議員だったのだ。「消費税増税反対」に加え、「原発再稼働問題」という武器も手に入れ、一気に「野田降ろし」に突き進むのか。
 「本当に国家、国民、次世代を考えたとき、何をやらなければいけないかは、多くの人が分かっている。当たり前のことが当たり前のように決まる政治を実現したい」
 野田首相は5日午後、都内で開かれた経団連の定時総会で、消費税増税、原発再稼働、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を挙げて、こう意気込みを語った。
 しかし、民主党内の動きを見ると、野田首相の苦境は明らかだ。
 5日に提出された署名を呼びかけたのは、菅直人前首相グループの荒井聡元国家戦略担当相と、内閣改造で閣外に去った中間派の鹿野道彦前農水相グループの増子輝彦元経産副大臣ら。だが、名簿の半数以上は、小沢氏をはじめ、鳩山由紀夫元首相や岡島一正衆院議員など小沢系議員がズラリと名を連ねた。「117」という数字は、民主党議員の3分の1にのぼる。
 小沢氏に近い議員は「増税反対だけでなく、再稼働問題でも、数の力を見せつけることができた。この問題は、大阪市の橋下徹市長ともつながる。これにTPPを加えれば、人数はさらに増える。『野田降ろし』に向けて、着々とウイングが広がっている」とほくそえんだ。
 実際、民主党内の“野田包囲網”は確実に狭まっている。
 30人を抱える中間派の鹿野グループは内閣改造で閣僚がゼロになったため、「誰のおかげで首相になれたと思っているのか」(幹部)と反発を強めている。輿石東幹事長は増税法案の与野党協議について、自民党が求めている採決日の確定を拒否。修正協議の実務者である長妻昭元厚労相らは自民党案の丸飲みに強く反対している。
 世論も野田首相には厳しい。内閣改造後の世論調査で、内閣支持率は、共同通信が32%(前回比4ポイント増)、朝日新聞は27%(同1ポイント増)となっており、効果はほとんどみられなかった。それどころか、増税法案を「今国会で成立させるべき」は17%と低調だった。
 ただ、小沢氏にとっては、「9月の代表選で野田首相を引きずり降ろし、息のかかった新代表・首相を誕生させるのが上策。小沢系議員は選挙基盤が弱いので、野田首相を追い詰めすぎて衆院解散・総選挙を打たれたら最悪」(民主党中堅議員)だけに、厳しい駆け引きが続く。
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◆民主・再稼働「慎重」要請117人議員名

◇署名議員
<衆議院>
逢坂誠二(北海道8区)
鳩山由紀夫(北海道9区)
階猛(岩手1区)
黄川田徹(岩手3区)
小沢一郎(岩手4区)
石山敬貴(宮城4区)
石原洋三郎(福島1区)
渡部恒三(福島4区)
福島伸享(茨城1区)
松崎哲久(埼玉10区)
松崎公昭(千葉8区)
櫛渕万里(東京23区)
羽田孜(長野3区)
斎藤進(静岡8区)
萩原仁(大阪2区)
稲見哲男(大阪5区)
村上史好(大阪6区)
梶原康弘(兵庫5区)
馬淵澄夫(奈良1区)
吉川政重(奈良3区)
古賀敬章(福岡4区)
菊池長右エ門(比例東北)
石井章(比例北関東)
高野守(比例北関東)
水野智彦(比例南関東)
川島智太郎(比例東京)
小林興起(比例東京)
田中美絵子(比例北信越)
今井雅人(比例東海)
大山昌宏(比例東海)
笠原多見子(比例東海)
室井秀子(比例近畿)
永江孝子(比例四国)
道休誠一郎(比例九州)
野田国義(比例九州) 

<参議院>
主浜了(岩手)
岡崎トミ子(宮城)
行田邦子(埼玉)
小見山幸治(岐阜)
斎藤嘉隆(愛知)
福山哲郎(京都)
姫井由美子(岡山)
江田五月(岡山)
佐藤公治(広島)
武内則男(高知)
大久保潔重(長崎)
外山斎(宮崎)
江崎孝(比例)
ツルネン・マルティ(比例)
那谷屋正義(比例)
西村正美(比例)
藤原良信(比例)

◇呼び掛け人
<衆議院>
荒井聡(北海道3区)
佐々木隆博(北海道6区)
畑浩治(岩手2区)
京野公子(秋田3区)
太田和美(福島2区)
小泉俊明(茨城3区)
石森久嗣(栃木1区)
宮崎岳志(群馬1区)
小宮山泰子(埼玉7区)
小野塚勝俊(埼玉8区)
黒田雄(千葉2区)
岡島一正(千葉3区)
生方幸夫(千葉6区)
奥野総一郎(千葉9区)
東祥三(東京15区)
初鹿明博(東京16区)
岡本英子(神奈川3区)
首藤信彦(神奈川7区)
橘秀徳(神奈川13区)
樋高剛(神奈川18区)
篠原孝(長野1区)
加藤学(長野5区)
近藤昭一(愛知3区)
牧義夫(愛知4区)
杉本和己(愛知10区)
鈴木克昌(愛知14区)
平智之(京都1区)
大谷啓(大阪15区)
辻恵(大阪17区)
中川治(大阪18区)
坂口直人(和歌山2区)
山田正彦(長崎3区)
福嶋健一郎(熊本2区)
川内博史(鹿児島1区)
玉城デニー(沖縄3区)
瑞慶覧長敏(沖縄4区)
工藤仁美(比例北海道)
山口和之(比例東北)
三宅雪子(比例北関東)
柳田和己(比例北関東)
相原史乃(比例南関東)
山崎誠(比例南関東)
橋本勉(比例東海)
玉置公良(比例近畿)
菅川洋(比例中国)
皆吉稲生(比例九州)

<参議院>
徳永エリ(北海道)
舟山康江(山形)
金子恵美(福島)
増子輝彦(福島)
大河原雅子(東京)
森裕子(新潟)
米長晴信(山梨)
谷岡郁子(愛知)
中村哲治(奈良)
松野信夫(熊本)
相原久美子(比例)
有田芳生(比例)
石橋通宏(比例)
大島九州男(比例)
今野東(比例)
田城都(比例)
難波奨二(比例)
はたともこ(比例)
藤谷光信(比例)
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野田内閣再改造 消費増税と取引する愚 / 「増税反対派」増やした改造人事 2012-06-05 | 政治 
 「増税反対派」増やした改造人事
 日刊ゲンダイ2012年6月5日 掲載
 中間派の鹿野グループ、長妻グループが反旗
 4日発足した「再改造内閣」について、「適切な時期に適切な人材を選んだ」と自画自賛している野田首相。しかし、これまで首相を支えてきたグループが「冗談じゃない」と大騒ぎしている。野田政権はいよいよ終わりだ。
 今回の人事でカンカンなのが、鹿野グループ(約30人)だ。鹿野道彦農相と前田武志国交相が外された上、新たな入閣者もいなかったからだ。「首相を支えてきたのに、裏切られた。増税法案にも協力しない」と反旗を翻す議員も次々と現れている。
「我々のグループの半分は、当選4回以上のベテランです。どうしても両大臣を内閣から外すというなら、大畠元国交相を再入閣させたり、末松前内閣府副大臣を昇格させたりすることも出来たはず。それなのに首相は一方的に『内閣改造をします』と鹿野さんに告げただけで、断行。民間人まで入閣させた。首相にはずっと協力してきたのに、この仕打ちは酷いですよ。これでは増税法案にも賛成できません。もともと反対だし、これを機に縁を切ろうという議員も多いです」(鹿野グループ中堅議員)
 鹿野グループといえば、昨年8月の民主党代表選の決選投票で、大半が野田に投票し、野田逆転勝利に貢献した。いわば野田政権誕生の立役者だ。野田は気を配らなければいけないのに、冷遇し、自民党の要求に沿った再改造内閣を発足させた。鹿野グループが「恩知らず」と激怒するのも当然だ。
 5日昼にグループ会合を開き、今後の増税法案への対応を話し合うが、この状況で「協力する」という議員は皆無だろう。
「鹿野グループに続き、中間派から増税反対にシフトしそうなのが、党の厚労部門会議の座長を務める長妻昭元厚労相のグループ(約20人)です。マニフェスト通り、後期高齢者医療制度の廃止の素案をまとめたのに、自民党が廃止の撤回を求めているため、野田首相は及び腰です。長妻グループからは『自民党にスリ寄るのもいい加減にしろ!』『マニフェストの旗を降ろせと言うなら、増税には反対する』との声が上がっている。鹿野だけでなく、長妻グループも増税反対に動けば、残る中間派も同調する。そうなると、首相を支えるのは岡田副総理や仙谷政調会長代行ら、わずか数十人。自民党全員が増税法案に賛成しても、衆院の過半数には達しないでしょう」(政治ジャーナリスト・小谷洋之氏)
 中間派には「小沢は嫌いだが、小沢の方がスジは通っている」と言い出す議員も目立ってきた。野田政権の終わりが、ぐっと近づいている。
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野田総理は「時間軸の違い」という技術論に矮小化したが、官僚統治こそが「決められない政治」の根本原因だ2012-06-06 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 「永田町異聞」
 2012年05月31日(木) 官僚統治こそが決められない政治の根本原因だ 
 「増税の前にやるべきことがある。行政の仕組みを中央集権の官僚支配から地方分権に変える大改革を実行すると国民に約束した。それが緒に就いていない」
 小沢一郎は、「官僚支配体制」の解体という、政権交代時に厳然と存在した民主党の理念を野田首相に諄々と説いた。
 しかし、消費増税パラノ症候群に陥っている野田首相の耳には素直に入っていかない。
 マスコミもこれを「増税の前に行政改革」という定型句で素通りし、野田首相の言葉を借りて、「消費増税時期の時間軸の違い」という技術論に矮小化しようとする。
 官僚中央集権の統治機構こそ、「決められない政治」の根本原因である。政治家はなにごとも省益優先の官僚に依存し、「先生」とおだてられてその代弁者となり、「ご説明」にコロリと騙される操り人形に成り果てている。
 「議院内閣制」は名ばかりで、実態は「官僚内閣制」だ。
 各省庁が、天下り先の企業や業界団体の利害得失を優先した予算配分や政策を進めようとすれば、一般市民の価値観と対立するのは当然であり、そこから情報・便宜サービスによってマスコミを手なずけ世論を操作するという悪だくみも生まれてくる。
 性急な消費増税論に走るのも、停電恐怖で原発再稼働という特攻精神をあおるのも、政治家の裏で振り付けている連中の仕業である。
 国民に選ばれた政治家が「民権」を重んじず、実態として官僚組織に握られている「国権」の使い走りをやっている。
 憲法上、国権の最高機関であるはずの国会は、さながら、官僚に振り付けられた政治家踊りの舞台のようである。激しい論戦であるかのごとき質疑の多くは、地元や支持団体向けのパフォーマンスにしか見えない。
 小沢は、明治以来続いてきた骨抜き政治におさらばし、根本的に統治機構を変えたいと言っているのだ。
 これまでの統治機構の延長線上でお愛想ていどに行革をやればいいという、霞ヶ関への迎合的姿勢が、野田首相をはじめとする政権中枢の面々に見えるからこそ、検察の弾圧で疲れ切った身に鞭打って、あえてここで小沢は踏ん張ろうとしているのではないだろうか。
 それは、真の民主主義をこの国に確立したいという、多くの国民の願いと一致するはずだ。
 日本になぜ真の民主主義が育たず、官僚支配体制が続いてきたのか。
 その淵源は、大久保利通、木戸孝允、西郷隆盛らが相次いでこの世を去った明治11年以降、伊藤博文とともに政府の実権を握るようになった山県有朋が、ヨーロッパ視察でフランスの「民権」に恐れを感じて帰朝したあたりからみてとれる。
 富農層の政治参加要求がもたらした自由民権運動は、憲法制定と議会開催を求めて盛り上がり、各地の演説会場はあふれるほど聴衆がつめかけるようになった。
 山県は藩閥支配を脅かすこの運動に危機感をおぼえ、運動を弾圧するため、憲兵を設け、警官にサーベルをもたした。
 政府は明治23年の憲法施行、帝国議会開催を約束したが、それまでの間に、山県有朋は周到に、官の権力を温存する仕組みをつくりあげた。
 「天皇の軍隊」「天皇の官僚」。軍隊や官僚は神聖なる天皇のために動く。政治の支配は受けない。そんな仕組みを制度に埋め込んだのだ。
 明治18年に初代伊藤博文内閣が発足し太政官が廃止されるや、内務大臣となった山県はエリート官僚を登用する試験制度を創設し、中央集権体制を確立するために市町村制、続いて郡制・府県制を実施した。
 避けて通れないのが人心の問題だ。いかに政府の思うように大衆を引っ張っていくか。
 江戸日本人の道徳は藩主、すなわち恩ある殿様を敬い、従うという風であったが、明治になって、それに代わる忠誠の対象が必要になった。
 そこで山県を中心に考え出されたのが天皇の神格化であり、そのためにつくられたのが「軍人勅諭」や「教育勅語」である。
 山県は松下村塾以来の皇国思想をその基盤とした。天皇と国民が道徳的絆で結ばれることで日本の民族精神は確立する。そして、それは日本の古代からの伝統である、というものだ。
 ところが、記録のない古代はいざ知らず、実際にはこの国において天皇が国民と道徳的絆で結ばれて統治したという歴史はほとんどないといえる。
 壮大なフィクションで天皇統治の国体を創造し、軍や官僚を中心に西洋列強の圧迫を跳ね返す国力をつけようというのが山県のねらいだった。
 自由民権運動、政党の台頭、憲法制定という近代化の流れ。時代に逆らうことはできないと知りつつ、あたかもその推進力を形骸化するかのように、天皇の名の下に独裁に近い体制を築き上げていったのである。
 そうした軍部や官僚への政党の関与を許さない、天皇直属体制が、昭和になって統帥権の名のもとに軍部の暴走を許し、気に入らない政治家を暗殺する暴力装置として働いて、国あげての軍事態勢へと突入していった。
 そして、敗戦で過去の国家体制が崩壊し、新憲法で国民主権が謳われても、天皇の官僚は、必ずしも国民の官僚とはならなかった。
 官僚は難関の国家公務員試験をパスした者たちの集団であるがゆえに、「一般人とは違う」という、いわば「身分」のような意識が強い。
 封建的な表現でいえば、同じ身分、同じ階級の仲間共同体ができあがり、自分たちが国家を背負っているという自負心が増長しやすい。
 そこで、自分たちの身分共同体、すなわち非公式の階級を守りたいという、組織防衛の意識が異常に強くなり、それが国家国民の公益よりも優先されるようになってくる。
 そしてそのありがたい身分を老後まで守り抜きたいという思いが、共同体の掟のなかで受け継がれ、退職後の天下りやわたりの人事異動まで、出身府省の官房が世話をするという、生涯まるがかえの巨大官僚一家が構築された。
 そうした官僚独裁ともいえる権力構造の解体をめざした政権交代の理念とは裏腹に、野田首相は自民党政権時代と見紛うばかりの官僚依存に戻ってしまった。その象徴ともいえる方針転換が、内閣法制局長官の国会答弁復活だ。
 国の予算を握っているのが財務省とすれば、法の制定や解釈を左右するのが内閣法制局である。
 法解釈を盾に内閣法制局が省益を守る側に立ち、政治主導による政策遂行を妨げることがある。
 そのトップである内閣法制局長官を、民主党政権は国会で答弁する「政府特別補佐人」のなかから除外していたが、通常国会開会後の今年1月26日に復帰させた。
 そもそも、内閣法制局長官の国会締め出しは、代表時代から小沢一郎が主張していたことだった。脱官僚依存を実行するためには、この組織の権力を削がなければ話にならない。
 小沢は内閣法制局に自民党時代から何度も煮え湯を飲まされた経験がある。
 1990年、イラクがクウェートに侵攻して湾岸戦争がはじまったとき、小沢は海部内閣時代の自民党幹事長だった。国連決議で派遣された多国籍軍に協力するため自衛隊を活用すべきだと小沢は主張した。
 東西冷戦が終わり、日本も国際社会できちんと役割を果たす一人前の国家になるべきだという認識が小沢にはあった。
 その意見に強硬に反対したのが内閣法制局だ。憲法で禁じられた集団的自衛権の行使にあたるという理由だった。
 日本の石油タンカーが往来するペルシャ湾の危機に直面し、130億ドルもの巨額なカネを出しはしても、命を賭ける人的な貢献をしない日本政府に、多国籍軍に参加した各国から冷ややかな視線が向けられた。まさに外交敗戦だった。
 内閣法制局が担う役割は内閣法制局設置法で次のように定められている。「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」。
 ところが、実態としては単なる意見具申機関にとどまらなかった。
 内閣法制局の判断に従って政府提出法案がつくられ、憲法などが解釈され、それに沿って政治、行政が進められてきた。各省庁は、法制局のお墨付きを得られなければ法案ひとつ作れなかった。
 積み上げてきた法解釈の連続性、整合性を、変転しやすい政治の動きから守ることこそ、自分たちのつとめだと信じて疑わないのが、内閣法制局の伝統的思想なのだ。
 法制局の言い分も分からぬではないが、それで時代の変化に対応していけるかとなると甚だ疑問である。法解釈の整合性を重視するあまり思考が硬直化し、迅速で柔軟な法案作成が必要なときには、障害になるだけだろう。
 とくに憲法解釈を内閣法制局が担うという実態には、根本的な問題がある。
 そもそも憲法は、国民から統治者へ向けた、いわば契約書である。国民が守るべきものは憲法ではなく、法律や法規範だ。つまり主権者である国民の利益に反したことをしないように、統治者が絶体に守るべき基本ルールとして定めるものが憲法である。
 その解釈を、行政サイドにある内閣の役人が担い、国民に選ばれて立法機関である国会に集まった政治家がそれに従うというのでは、国民主権と、憲法の目的からして、本末転倒なのではないだろうか。
 その本末転倒が許されてきたのは、政治家の不勉強による官僚依存、政官の馴れ合いなど、いくつかの要素が重なり、絡み合ってきたからにほかならない。
 小沢は、そうした日本政治のぬるま湯体質が、官僚の実質的支配につながり、ひいては役所や関連団体などの組織的増殖、天下りの横行を生んできたのだという問題意識を持ち続けてきた。
 そして、国会の論戦さえ法制局の判断に依存するという悪弊を断ち切るために、法制局長官の答弁禁止を主張し、政権交代によって実現させた。
 もちろん、法制局長官という強力な助太刀がないなかでの国会答弁は、閣僚に負担を強いることは確かである。
 鳩山内閣では枝野幸男が、菅内閣では仙谷由人が法令解釈担当として国会で答弁する役割を担ったが、昨年9月、菅から政権を引き継いだ野田首相は、早々に方針を転換し、現内閣法制局長官、山本庸幸を国会の自席の後部席に座らせた。
 失言へのガードが固い野田の性格がもろに出た手堅い変更といえるが、かつて自由党党首だった時代の小沢が、自民党との連立協議のなかで、官僚が代理答弁する政府委員制度の廃止を認めさせ、国会を議員どうしの討論の場にするよう変革を志した経緯を考えると、いささか、やるせない。
 小沢はその自自連立政権において、政府委員制度廃止とともに内閣法制局長官の国会答弁廃止も求めたが、自民党はついに首を縦に振らなかった。しかし、民主党への政権交代にともなって、ようやくそれが実現したのである。
 法案をつくるさい、各省庁は事前に法制局の審査を受け、承認を受けることではじめて閣議決定に持ち込み、国会に提出することができる。
 だが、官僚が官僚の作成した法案に権威づけをして国家運営をコントロールしているにすぎず、国民に必要かどうかを判断しているわけでは決してない。
 小沢はそういう官僚の脱政治的「職欲」とでもいうべきものを排し、政治家どうしの真剣な議論の末に法律や政策が決定される、ごくあたりまえの国会のありようをめざしてきたといえる。
 行政も、国会も、司法も、変わらなくてはならない。真の民主主義のために。
 「行政の仕組みを中央集権の官僚支配から地方分権に変える大改革を実行する」という小沢の統治機構改革が、いつの日か緒に就くことを期待したい。
 新恭(ツイッターアカウント:aratakyo)
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「指揮権発動について再び首相と会う前日に更迭された」「小沢裁判の虚偽報告書問題・・・」小川敏夫前法相 2012-06-07 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
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小川敏夫法相は罷免された〜小沢一郎氏裁判「指揮権の発動を決意したが、首相の了承が得られなかった」 2012-06-09 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア


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