丹羽大使、尖閣購入支持「おかしい」 外交軽視の実害 与党からも批判
産経ニュース2012.6.8 01:27
「知らない。言わせておけばいい」
東京都による沖縄・尖閣諸島の購入を批判した丹羽宇一郎駐中国大使の発言に対し、石原慎太郎知事は7日、不快感を隠さなかった。都内で産経新聞の取材に答えた。
藤村修官房長官は記者会見で、丹羽氏の発言を「政府の立場を表明したものでは全くない」と否定した。民主党の前原誠司政調会長は「大使の職権を超えており、適切な発言ではない」と強く批判し、「私は東京都よりも国が買うべきだと考える」と述べた。
丹羽氏をめぐっては今回の英紙インタビューに先立つ5月4日にも、訪中した横路孝弘衆院議長と習近平国家副主席との会談に同席し問題発言をしていたことが7日、分かった。
丹羽氏は習氏に対し、日本国内で石原氏による沖縄・尖閣諸島の購入表明を支持する意見が多数を占めることについて、「日本の国民感情はおかしい」と述べていた。複数の横路氏同行筋が明かした。
丹羽氏はこの際、「日本は変わった国なんですよ」とも語っていたという。
横路氏同行筋の一人はこう振り返る。
「あの人は中国べったり。外交官じゃなくて商社マンだ。重視しているのは国益か社益か分からない」
だが、丹羽氏が「中国最強商社」を自任し、対中ビジネスを重視してきた伊藤忠商事の社長経験者であることは、就任前から懸念されていたことだ。
その丹羽氏を「政治主導」の象徴として、民間から初の中国大使に起用したのは民主党政権だ。野党からは当然、「その大使の言動について民主党の責任は免れない」(自民党の世耕弘成参院議員)と任命責任を問う声が出ている。
外交・安全保障の門外漢であり、出身会社を「人質」にとられた形の丹羽氏の起用は、「日本は領土問題を含む政治的課題よりも経済関係を重視する」というメッセージとして中国に受け止められていた可能性すらある。 実際、丹羽氏はすでに役割を終えた対中政府開発援助(ODA)を日中関係改善のため「続けるべきだ」と主張するなど、中国側の意向に配慮を示す例が目立つ。こうした不規則発言の連続に、これまで丹羽氏を守ってきた外務省内からも「伊藤忠が中国にモノを言えるわけがない」(幹部)と冷めた声が聞こえる。
丹羽氏起用を主導した岡田克也副総理も今では丹羽氏が大使として機能していないことを暗に認め、周囲に「政権交代のコストだ」と漏らしているという。
結局、外交の重要性をわきまえない民主党政権のあり方が、専門家でも何でもない民間人の駐中国大使起用というパフォーマンスを生み、今や深刻な実害を招いている。(阿比留瑠比)
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【石原知事会見詳報】
「日本を代表して北京にいるべき人物じゃない」 尖閣めぐる丹羽駐中国大使発言に
産経ニュース2012.6.8 18:12
東京都の石原慎太郎知事は8日の定例会見で、丹羽宇一郎駐中国大使が英紙インタビューで、東京都の尖閣諸島購入計画に反対を明言したことに、「少なくとも、日本を代表して北京にいるべき人物じゃないということだ」などと厳しく批判した。会見の詳報は以下の通り。
◇
−−丹羽中国大使が、都の尖閣購入が実行された場合、日中関係に問題を起こすと発言し、さらに、習近平国家副主席との会談に同席した際に、「日本の国民感情はおかしい」「日本は変わった国」と発言していたが
「あいつが変わってるんだよ。だいたいだな、伊藤忠の社長ごときものをだね、そんなものをね、この日中関係のこういう大事な時に、大使として送る方が間違っている。だいたい、尖閣の問題があったときに、例の衝突事件のときかな、真夜中にいびりで何回呼び返され、そのたびに『はいはい』と、夜中の3時に相手の外務省なんのつもりか分からないけど、出ていくのはばかだよ。おれは寝てるからって、日が変わってからにしろって言ったらいい。失敬千万だ、奴隷のごとく使われて。まあ、そんなもんだな、日本の外交官というのは」
「昔、中江要介という、私が非常に親しくかわいがっていた青年、舞台のバレエの台本なんかやってて。この男もインテリゲンチアでましかとおもったら、中国大使になったらがらっと変わった。驚くほどものの考え方が変わった。とにかく、日米安保、日米関係は中国の障害なので、これをなくさないといけないと言い出して、外務省が非常に困惑して迷惑した。そういうなんか日本人が突然北京に誕生するというのも、不思議というか恐ろしいというか、相当なとこなんだな。どんな抑圧、どんな洗脳が行われているかは知りませんがね。少なくとも、日本を代表して北京にいるべき人物じゃないということだな」
−−東京都、都知事としてこの発言に対して抗議などする予定は
「もう少し自分の国のこと勉強してものを言えと。じゃないと大使の資格ないよ、こんな奴は」
−−「SAPIO」のインタビューで、国会がめちゃくちゃになっていて、この状況を変える核になるのは新党になると発言している。大阪の橋下徹市長と組んで、次期衆院選に向けて石原新党を立ち上げる決意を固めたということか
「なんとでもご想像ください。物事を具体的に発表するのは、タイミングをみてしますから」
−−同じインタビューで、尖閣購入のめどになる来年3月までは都政に徹したい、東京オリンピックは次の知事にやってもらえればいいと発言しているが、来年4月に尖閣を購入した場合、東京オリンピックの選考の間に次の知事に職を譲るということか
「まあ、あなたがたの乏しい想像力で物事を考えたらいいんじゃないの」
−−今月27日に東京電力の株主総会が開かれますが、都が提案した『顧客第一』という経営理念を定款に盛り込むことに東電が反対。猪瀬直樹副知事は株主に賛同を呼びかけているが、知事の考えは
「なぜ定款にそれをうたえないのかね。それがそんなに彼らの営業に拘束力持つんですかね。憲法みたいなもんだからね。こういう事故も起こしたわけだし、いろんな問題抱えているわけだから。これから、体制の整備もしつつ体質変えていかなくちゃいけない時に、東京都が提案した条件を飲めないというのは、あまり期待が持てないことを周知させることになるんじゃないかな。そこらへんが、今の東電の限界と言うか、まあ、官僚と同じように、硬直したあの会社の幹部たちの限界じゃないか。なんでその言葉に恐れることがあるのか」
−−尖閣諸島について、東京都が購入を計画しているのは4島のうち3島ですが、久場島についてはどう考えているか
「聞いたところ、地権者の妹さんの所有になっている。私は、地権者が自分の相続人になっている妹さんにどういう話、説得されるか分からないが、あわせて取得できるものと思っている」
−−4島の購入を考えていると
「はい。だって1島だけ別の人が持つとややこしいじゃないですか」
−−以前、知事は新党の党首と都知事は両立しないと発言したが、その気持ちは変わらないか
「そりゃそうでしょう。地方自治体の首長しながら総選挙やるわけにはいかないだろうし、仲間の応援だけにしかならないしね。やるんだったら自分が陣頭指揮して突っ込んでいかないと迫力がない。しかし、私にとっても尖閣の問題は、早くらちつけて、11日に持ち主と懇談して話を詰めるんですが、ある間違いないめどを、彼が国との約束の中で地主さんでいる間でも、ひとつのめどだけつけたいと思っている」
−−11日に地主と懇談し、金額についても話すのか
「それはもうすでに話している、その他この他。こういう話はいちいち具体的に微細にあなた方に話をするものでもないし、余計なものが漏れれば、まとまる話もまとまらなくなる。今の限りにしておいてほしい」
−−地権者は国に売ることに今も反対している印象か
「さあ、それも彼と会って話をしようと思う。もし野田君(佳彦首相)が心変わりして今でも買うって言うんだったら、さっさと買ってもらいたい。国がもともとすべき仕事だから。やらないんだから自民党も民主党もずっと。こないだの衝突船長、あの犯罪人も、拘留もせずに釈放するわけでしょ、向こうに言われるままに。地方の検事の裁断でしたと言うけど、検事かわいそうだね、あの検事よっぽど出世させてやらないと。だから参考人で呼んだらどうだと言ったんだが、呼ばないだろうな。君らが言って大いに呼べ呼べと言ってやれよ。メディアもしっかりしろよ、政府を追い込むまでやってくれよ、こういう時に。国民が燃えているんだから。メディアが燃えないから。朝日はどうも反対らしいけど。ま、なんでもいいや」
−−スカイマークのサービス指針で、苦情は消費生活センターへという文言に、都が抗議し回収することになった。知事の見解を
「当たり前じゃないですかね。会社は会社の責任で営業してるんだからね。お客の苦情を役所に任せるなんてのはばかな話で、自分たちがじかに聞いて解消するのは、それが本当に営業、サービスというものじゃないですか。論外だ。都庁もたまにはいいことやるんで、消費者のためには。評価してやってください」
−−夕方に野田総理が大飯原発再稼働について記者会見するが、知事の見解は
「政府は政府の判断で、国家の安危を左右するものだから、どれだけ実質的なことやってるか知らないが、あるタイムスパンを構えて、その間何%の経済成長をする、しなかったら生活はこうなるけどいいのか。いずれにせよ何%の成長するためには、どれだけのエネルギーを、どういう形で担保するのか、そのうち原発が何%占めなかったら成り立ちませんという、そういうシミュレーションを示したからやったらいい。とりあえず夏に停電になるかもしれないということではなく、もっと緻密(ちみつ)に国民が納得できる手順を踏んで発表したらいいと思いますよ」
「田中角栄(元首相)の時にオイルショックの時の政令は今でも生きている。なぜ政令出さないのか。たとえばパチンコ屋がちんじゃらちんじゃら過剰にやってることとか、あのころはなかった自動販売機なんてのは、あのとき東京が過剰じゃないか、東京の夜は明るすぎるんじゃないか、こんな電力いらないんじゃないかと言ったから、パチンコ業界も、最初はサントリーも反対したけどコカ・コーラがそうだと言って自粛することで、自動販売機の電気の使用量が減った。政府が言えばいいんだ、政府が。最高の権限もってるんだから。総司令官なんだから。軍隊じゃないけど号令出したらいい。それが政令というもんだ。それも知らない担当の大臣がやってきて、首都圏で節電をお願いしますと言ったって、君、東京も神奈川県も千葉県も回るのかって聞いたら、とりあえず東京だけって言うから、政令出しなさいと言ったら分からずぽかんとしている。『てにをは』を教えたが、結局出さなかったね、あの時も政府は。私があそこで言ったことを取り次いでくれたからね、パチンコ業界や自動販売機業界は自粛してくれた。電力助かった。出せばいい、出せばいい、国が。号令したらいい、政令を出したらいい、それが指導力ってもんじゃないですか」
−−首都高速道路の新社長に元副知事の菅原秀夫さんが固まった。老朽化など指摘されているが、期待するところを
「これちょっといろいろ人事の問題もあって、国交省も懊悩(おうのう)したんですが。とんちんかんな人が来て、よく分からない理念でぶち上げられても現場が混乱する。そういう点では、菅原くんは経験もあるということで推挽(すいばん)した。いずれにせよ、道路の整備は東京だけでなく関東全体、日本全体のためになることなので、合理的にできるだけ早く完成してもらいたいと思っている」
−−9日、10日から尖閣に都の職員が行くということだが
「あれ行きません、行きません。やめさせました。行くときはちゃんと東京都の船で行きますから」
−−やめさせた理由は
「政治色が強いグループということで、自粛したというのかな、止めたようですよ」
−−9、10日は今まで一番大きな規模で、国会議員も6人、都議も参加ということだが、どう思うか
「いいことじゃないですか。上陸してみたらいい。いかに峻険(しゅんけん)な島で、苦労してある連中が志で灯台建ててくれた。いってみたらもっと分かる。一人過労で死んだりもしているのに、その灯台を外務省の腰抜けがシナにおもんぱかって、時期尚早と言って20年近くチャートに載せていなかった。こんなばかなことをする国はないね。あそこを航行する人間たちにとって生命の危険にかかわる。と言ったのに外務省は、知らん顔をして、特にシナにはばかって、時期尚早と言って、また歴代自民党の政府もそれに従ってきた。私はそういう自民党に我慢ならない。今の政府も良くないけどね。外務省の役人の身の程にも、あそこを航行する日本人、シナ人、台湾人、朝鮮人たくさんいるだろう。そういう人間たちの、船に乗っている人間の生命の安危を保証するのは、国家としての責任じゃないですか。それを果たせないで、せっかくできたものをチャートに載せないことはかえって危険なんですよ。そういうばかなことを延々やってきた」
−−野田改造内閣についての印象を
「僕は知らない人が多いんでね。ただ、民間人であるとか、国会議員という資格がないとか、防衛庁の長官の資格をうんぬんするする節があるが、私は実にいい人事だと思う。彼以上に見識を持っている人間がいるんですか。最後のいろんな大事な問題のの判断下すのは、当然総理大臣でしょう。しかしそれまでのプロセスの中で、なんか訳の分からない、アルファベットも読めない、いろはも読めない人間がだね、防衛省の総司令官でいたのは、やっぱり隊員だって動きづらいし、国の安危にかかわると思っていたので」
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中国紙、丹羽発言に注目 尖閣諸島の購入反対
産経ニュース2012.6.8 19:46 [尖閣諸島問題]
丹羽宇一郎駐中国大使が英紙のインタビューで東京都の石原慎太郎知事による沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)購入計画に反対を明言したことについて、中国メディアは8日、英紙の記事を転電するだけでなく、発言をめぐる日本政府の対応も含めて詳細に報じた。
8日付の新京報は国際面で「日本大使、東京都“釣魚島購入”に反対」との見出しを付け、論評抜きで事実関係を報道。同時に藤村修官房長官が記者会見で「政府の立場を表明したものでは全くない」と否定したことも伝えた。
北京青年報は、国際面で丹羽発言に加え、日本政界に与える影響の大きさも指摘。中国外務省の談話や中国政府の対応についても行数を割いて説明した。
(共同)
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尖閣発言 国益損なう大使は更迭を
産経ニュース2012.6.9 03:11[主張]
丹羽宇一郎駐中国大使が東京都の尖閣諸島購入計画について「実行された場合、日中関係に深刻な危機をもたらす」との見解を英紙に述べたことが明らかになった。
日本固有の領土である尖閣諸島を守り、実効統治を強めるための計画を真っ向から否定する発言は国益に反しよう。中国による不当な領有権主張を後押ししかねず、更迭すべきだ。
藤村修官房長官は「個人的な見解であり、政府の立場を表明したものではない」と否定した。外務省は「政府の立場とは異なる」と丹羽氏に注意し、丹羽氏は「大変申し訳ない」と謝罪した。
しかし、それで済まされる問題ではない。丹羽氏は先月、訪中した横路孝弘衆院議長と習近平国家副主席の会談に同席した際にも、石原慎太郎東京都知事の「尖閣購入」発言を国民の大半が支持していることに「日本の国民感情はおかしい」などと述べている。
尖閣購入資金として、都へ寄せられた10億円を超す善意の寄付を貶(おとし)めるものだ。外務省は丹羽大使を召還し、一連の発言の詳しい経緯を問いただした上で、厳しく処分すべきだ。
丹羽氏は伊藤忠商事の社長や相談役を務め、中国政府とのパイプを持つ財界人として、菅直人前政権下の平成22年6月、初の民間出身の駐中国大使に起用された。
だが、中国に過度に配慮した丹羽氏の発言はしばしば問題になった。赴任前のパーティーで中国の軍事力増強に触れ、「大国としては当然のことといえば当然かもしれない」と述べた。赴任後も、役割を終えた対中政府開発援助(ODA)を関係改善のために「続けるべきだ」と主張した。
中国は強大な軍事力を背景に尖閣周辺の領海侵犯などを繰り返している。石原知事の尖閣購入発言以降でも、中国の漁業監視船が2度、接続水域に入った。
先月の日中首脳会談で、温家宝首相は尖閣について譲れない国家利益を意味する「核心的利益」という言葉を使い、尖閣奪取の意図をうかがわせた。日本の領土が危険にさらされかねない時期だ。丹羽氏は大使として国益を踏まえ、中国政府に耳の痛いこともはっきり言わねばならなかった。
「政治主導」と「脱官僚」を印象づけようとした丹羽氏の起用が失敗だったことは明白である。民主党政権は反省が必要だ。
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尖閣買い取り懸念の中国大使、処分せず…外相
玄葉外相は8日の記者会見で、丹羽宇一郎駐中国大使が東京都による尖閣諸島の買い取り計画に懸念を表明したことについて、「(大使は)『大変申し訳ない。一切このようなコメントはいたしません』ということなので、現時点で私としては受け止めている」と述べ、既に行った注意に加えてさらなる処分を行わない考えを示した。
同日の自民党外交部会では、丹羽氏の更迭要求が相次いだ。
(2012年6月8日18時15分 読売新聞)
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◆尖閣諸島を守る第一歩は丹羽駐中国大使の更迭/『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』 2012-06-09 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
櫻井よしこ氏 尖閣諸島を守る第一歩は丹羽駐中国大使の更迭
NEWSポストセブン2012.06.09 07:00
中国が着々と獲得を進めようと動いているようにも見える尖閣諸島の購入や活用に向けて東京都が募集した寄付金が10億円を超えるなど、領土に対しての国民の関心は高まりつつある。一方で肝心の国の腰は重い。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は政府の対応に憤りを感じると語る。
* * *
中国は尖閣諸島の「領有」を目に見える形で示そうとし始めました。2011年には公船が領海に侵入し、今年になって、「定期的な巡回」だと言い出しました。また、国家海洋局の大型艦船が尖閣付近にたびたび姿を現わしているのが現在の状況です。
加えて、明確に尖閣諸島を中国の「核心的利益」だと言い始めました。まず、5月13日、北京で行なわれた野田佳彦首相と温家宝首相の会談を受けて開かれた中国外務省の記者会見で、ウイグル問題と尖閣問題を温家宝首相が中国の「核心的利益」だと述べたと発表されました。それまでは中国共産党機関紙「人民日報」が尖閣諸島を中国の核心的利益として報じたことはありましたが、中国政府が「核心的利益」と呼んだのは初めてでした。
その後の5月22日、今度は中国共産党の王家瑞対外連絡部長が江田五月元参院議長に北京で尖閣諸島を「核心的利益」だと述べています。中国政府が尖閣は必ず取るという強固な意志を見せつけているのです。それでも日本政府には、尖閣の守りを固めようという動きは見られません。
尖閣諸島の所有者である栗原國起氏が、国に対して不信感を抱き、「この人なら」と石原慎太郎都知事と交渉をしているのもわかるような気がします。
石原氏による購入計画が浮上した当初は、藤村修官房長官が「必要ならそういう(国有化の)発想で前に進めることもあり得る」といい、野田首相も「ありとあらゆる可能性」を口にしました。ところが、それ以来、「国有化」の議論は立ち消えになってしまいました。玄葉光一郎外相がブレーキをかけたと報じられました。
とするなら、外務官僚が玄葉氏に、「国有化を言い出したら、また中国と軋轢が生じかねない」などと囁いたのではないでしょうか。
こちらが頭を低くしていれば物事が収まると考えるのが外務省です。それではすべての物事が中国の思う通りに収まってしまいます。外務省は、中国共産党政権の「御用聞き」なのかと問わざるを得ないほど、日本の主張を展開してきませんでした。
ひたすら中国の顔色を窺い、中国の意向に逆らわないように“気兼ね外交”を展開して現在に至ります。政府がこんな外務省の姿勢を重視するかぎり、日本の国益を守ることはできないと断言してよいでしょう。
こうした外務省の「御用聞き外交」をより顕著な形で体現しているのが、丹羽宇一郎在中国日本大使です。丹羽氏は月刊誌『Voice』3月号でインタビューに応じていますが、「日中の衝突は身体を張って阻止する」と題された記事の内容はまさに中国の国益を代弁するかのようでした。
丹羽氏は尖閣問題に関する質問に対し、故・周恩来元首相の「和すれば益、争えば害」という言葉を引き、こう嘯(うそぶ)きました。
〈中国とやるなら徹底的にやるべきだという人がいる。でもそれは、いったいどういう意味なのでしょうか。軍事衝突も辞さないということでしょうか〉
この言葉に、私は憤りを感じました。「徹底的にやるべき」ということを、いきなり「軍事衝突」に結びつける短絡的な思考は、外交とはほど遠いものです。守るべきものを守り、交渉すべきことは交渉する。そして、相手が国際法を破るなどの行為をしてきた際には厳しく抗議し、国益を損なわないよう、戦略を持って対峙する――それが外交です。
「争えば害」と言いますが、そもそも「争い」を仕掛けてきているのは、常に中国です。日本の領土であることに争う余地もない尖閣諸島を「問題化」し、理不尽にも奪い取ろうとしているのは中国です。「和すれば益、争えば害」の言葉は中国に向けてこそ発するべきものです。丹羽氏はいったいどの国の大使なのでしょうか。尖閣諸島を守る第一歩は、まず丹羽氏を更迭することだと言わざるを得ません。
※SAPIO2012年6月27日号
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田母神俊雄著『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』(産経新聞出版)
p29〜
▲尖閣諸島が中国に乗っ取られる 中国の謀略は始まっている
尖閣諸島をめぐっての中国の動きは活発化しています。
2004年3月、中国人の活動家7人が魚釣島に上陸し、沖縄県警が逮捕。
2008年12月には中国の海洋調査船2隻が、約9時間にわたって領海侵犯。
2010年4月、中国海軍の艦艇10隻が沖縄本島と宮古島の間の公海を南下し、中国艦の艦載ヘリが監視中の海上自衛隊の護衛艦に、2度も異常接近。
そして2010年9月7日、尖閣諸島の久場島から北北西約12キロメートルの日本領海内で、監視中だった海上保安庁の巡視船が、違法操業をしていた中国のトロール漁船に衝突されるという事件が起きました。
p30〜
中国は1992年にこっそりと制定した「領海法」という国内法で、尖閣諸島や西沙・南沙諸島を中国領土だと主張しており、中国国内に「尖閣諸島は中国の領土」という共通の認識をもたせることにはすでに成功したと言えます。
▲最初は中国政府の工作だとわからない
では、日本の領土である尖閣諸島が、実際に中国に占領されてしまうきっかけにはどのようなものがあるか。「漁船」衝突事件とは、別のやり口を考えてみます。
中国は、まずは漁船などを使って、中国人を島に上陸させることから始めると考えるのが妥当です。
もちろんそのとき、中国政府は一応、自国民の違法行為に対して、「遺憾である」という立場を取るはずです。公式に「遺憾」とは言わないまでも、「上陸はするなと押さえていたけれど、彼らが勝手に上陸してしまった」というような言い訳をするでしょう。
本当は中国政府が仕掛けているとしても、そんなことはおくびにも出しません。
中国という国は、何をするにしても、最初は誰がやったかわからないような形で仕掛けてきます。(略)
無断で日本領土である島に上陸されたのですから、日本は当然、上陸した中国人を強制的に排除しようとします。2004年のケースでも、沖縄県警が入管難民法違反の現行犯で上陸した中国人活動家7人を逮捕しています。
ここで忘れてはならないことは、漁船で中国人が上陸するというのは、すでに大きな乗っ取り戦略の1つだということです。
おそらく、上陸行動自体も段階的に行われるでしょう。まずは、漁船で島に近づいてきますが、海保の巡視船に注意されて、ひとまずあきらめて帰ります。
しかし、また少し時間をあけて、様子を見ながらもう1度近づいてくる。それを3、4回繰り返して、5回目ぐらいになるといよいよ上陸してくる。
上陸が始まってからも、中国は段階的に進めてくるでしょう。
p32〜
日本側は最初、警察当局が入管難民法違反の容疑で上陸した中国人たちを逮捕します。あるいは、最初は中国人のほうが無条件で撤退するかもしれません。しかし、2度目の上陸では、確実に逮捕者が出ます。
そして3度目の上陸では、より多くの中国人がやって来て、逮捕者も増えます。
それを何度か繰り返す中で、中国は漁民の中に兵士を紛れ込ませてくると考えられます。
すると、強制的に排除しようとする警察と、中国人たちとの間で小競り合いが起きるようになります。この小競り合いも何度か繰り返されるでしょう。
小競り合いが3日、あるいは1週間近くも続くようになってくると、中国が国を挙げて「中国人を保護しなければいけない」と乗り出してくるはずです。
▲危機に自衛隊が出動できない
では、このような事態に、日本政府と自衛隊に何ができるか見てみましょう。
2010年9月に防衛省がまとめた平成22年度防衛白書の「武装工作員などへの対処の基本的な考え方」という項目の中では、武装した工作員が日本国内で不法行為に及んだときに、第一義的に対処するのは警察機関だという考え方を示しています。
そして、警察機関が武装工作員への対応をとっているとき、自衛隊の任務は「状況の把握」であり、「自衛隊施設の警備強化」であり、「警察官の輸送」であるとしています。自衛隊員が警察を支援するわけです。
これが、とても馬鹿げたことであるのは子供でもわかると思います。諸外国とはまったく反対の構図で、何もしないと言っているのと同じです。
中国人が漁船で上陸してきた初期の段階なら、まだ、警察当局や海保庁で対応できるかもしれません。しかし、その人数が増え、中には兵士も混ざり、さらには最終的に「自国民を守る」という御旗の元に中国の軍艦がやってくるまでには、そう時間はかかりません。
「日本の領土に上陸しても、とくに武力行使されるわけでもないし、悪くて警察に捕まる程度か」という認識を中国に持たせれば、彼らは軽い気持ちで軍艦を出します。
問題は、中国人が漁船で上陸した初期の段階で、なぜ、自衛隊が出動できないのかということです。
p34〜
この段階で、日本政府が武力攻撃事態対処法に基づいて、防衛出動ができるかといえば、おそらくできません。つまり、自衛隊は動けない。日中関係を悪くしたくないと考える人たちから、「防衛出動を発令すると、中国を刺激してよろしくない」といういつものセリフが出て、そうこうしているうちにうやむやに終わってしまうのがオチです。
おそらく、中国の正規軍が侵攻してくるという事態にでもならない限り、日本政府は武力攻撃事態として認定しないでしょう。
では、諸外国ではこのような事態にどう対処しているのか。
そもそも諸外国では、まず防衛出動が発令されることはありません。防衛出動というものは、ただ軍に対して命令を与えるだけのものですが、他国ではエリアの担当司令官に、その対応が任されています。
例えば、あるエリアが他国から攻撃を受けた場合、当然、そのエリアの防衛を担当している司令官が対応することになります。有事の際には、司令官の判断で対応するというのが、普通の国のあり方です。事は突発的に起るものですから、もたもたしていたのでは時すでに遅し、ということになります。
日本でも国内の事件の場合は、警察の判断によって警察が対応しますが、本来、防衛に関してもそれと同じで、警察のかわりに軍が柔軟に対応するべきです。
p35〜
防衛出動が発令されるという異常な体制をとっているのは、日本だけです。日本の場合は、これが発令されなければ、自衛隊は動けないということです。
p166〜
わが国は戦後、アメリカに守ってもらうことを前提としてきましたので、自らやり返すという意思がありません。従ってやり返すための攻撃力も自衛隊は持っていないのです。専守防衛では抑止力にならないのです。
今後、多くの新興国の勃興によりアメリカの相対的国力はどんどん低下していくと思います。アメリカの抑止力は次第に弱くなっていくのです。そのような情勢下で、我が国の防衛がこれまでどおりアメリカの抑止力に全面的に依存することは無理があると思います。日中間の尖閣諸島における小競り合いでも、アメリカは中国と争うことがアメリカの国益に合致しないと判断したときは、日本を守らないと思います。
独立国家は、自分の国を自分で守ることが必要です。日本は世界のGDPの10%近くを占める経済大国なのです。(略)
そのためには、いま自衛隊に欠けている攻撃力を整備する必要があります。それがやられたらやり返すという明確な意思表示であり、我が国に対する侵略を抑止するのです。
具体的には諸外国が持っている空母、戦略爆撃機、地対地ミサイル、艦対地ミサイルを持つべきです。
p167〜
現在、日本の自衛隊は空母を持っていません。
なぜ持っていないのかと言えば、空母が攻撃のための戦闘機を運ぶものだからです。隣国が空母を持つというのに、日本にはないのですから、我が国がどれほど自衛隊に攻撃力を持たせたくないかわかろうというものでしょう。
四方を海で囲まれた日本にとって、いつでも攻撃に出る用意があるという姿勢をとるためには空母が重要不可欠です。
中国は、通常型の国産空母の建造に乗り出しています。つまり、中国は着実に「恫喝」の準備を進めているのです。
このまま指をくわえてみていれば、いずれ中国の空母が東シナ海に出ようとしたとき、日本は何の対抗措置もとれないということになります。
中国との軍事力のバランスをとるためには、日本も空母を3隻は持たなければならないと私は思います。アメリカの第7艦隊に配備された原子力空母ジョージ・ワシントンと同じクラスの10万トン級相当を想定して、3隻です。もちろん、艦載機も必要です。
ただし、アメリカ海軍のように遠海を巡回させる必要はありません。日本周辺に置いておけば、それだけで抑止力になります。
p168〜
例えば尖閣諸島や南沙・西沙諸島といった、中国が太平洋に進出するために通過しなければならないルートに置けばいいわけです。その地域に空母が存在し、海と空を支配することが、中国に対する抑止になる。(略)
p169〜
我が国が核武装を目指す場合、国内的な合意を取ることが相当に難しいし、また核武装国はこれを邪魔しようとするでしょう。(略)
日本の核アレルギーは相当なもので、核をアメリカに落とされたことも忘れてしまっているほどですが、1番の問題は、国民も政治家も核兵器がどういう兵器なのか、わかっていないということです。核兵器は先制攻撃に利用するものだと思われていますが、国際社会では「核兵器は防御の兵器」というのが常識です。
核兵器はその破壊力があまりにも強大であるために、核戦争に勝者はいません。核で先制攻撃したところで必ず報復されますから、これもまた負けに等しい。
ですから核は、「やれるならやってみろ、だけどやったら報復するぞ」と思わせておいて、実際は誰も使いはしないし、使わせもしないという“防御的”な兵器なのです。
また、核兵器は、これまでの通常兵器のように戦力の均衡というものを必要としません。通常兵器の場合は、相手国が100で自国が1というほどの戦力差をつけられていれば、たとえ1を持っていようとも何の抑止にもなりません。しかし、核の場合は、アメリカやロシアがそれを何千発保有していようが、インドや北朝鮮が数発持つだけで十分に抑止力になります。
日本の場合は、核武装について議論をするだけでも、核抑止力は向上します。外交交渉力も向上するのです。それだけでも、国際社会の中で日本の発言力は高まります。しかし、「核武装はしません」と公言した途端に、世界中から相手にされなくなるのです。(略)
アメリカもロシアも、自分たち以外の国に核武装をさせたくないのが本音です。NPTという枠組みで世界的に核軍縮を呼びかけていますが、あれはタテマエでしかありません。アメリカもロシアも「核を廃絶する方向に行くよ」と単なるジェスチャーをしているの過ぎないのです。
「私たちも核廃絶に向けて努力するのだから、いまから核武装しようとは考えないでください」ということで、本音は、「皆さんが核武装を考えなければ、私たち核保有国の優位は永遠に続きます」と言っているわけです。
そんな核保有国の意図もわからずに、日本の首相はそれにまともに乗っかってしまう。2009年9月、ニューヨークの国連本部で開かれた核軍縮・核不拡散に関する安全保障理事会の会合で、鳩山由紀夫首相(当時)は非核三原則を堅持すると改めて宣言しました。
鳩山さん本人は心の底から、そうすれば世界から尊敬されると思っているのだから重症です。当然ながら、世界中の国が、「馬鹿な首相もいるな」と思ったはずです。誰も言わないけれど、世界中の失笑を買ったのは明らかです。
あの場では、「日本は唯一の被爆国だからこそ、二度と核攻撃されないためにも核武装する権利がある」と言うべきでした。鳩山氏、ひいては日本の政治家は、「国際政治を動かしているのが核兵器だ」ということを全く理解していないのだから、呆れるばかりです。
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丹羽宇一郎駐中国大使発言/外交の重要性をわきまえない民主党政権のあり方が深刻な実害を招いている
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