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浜岡原発:停止決定

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中部電社長「原発不安、真摯に対応し信頼得たい」
日本経済新聞2011/5/9 22:09
 「今回の要請は社会の原発への不安の高まりを踏まえたもの。真摯に対応して信頼を得ることが最優先だ」。9日夕の記者会見で、中部電力の水野明久社長は浜岡原発の停止を決定した理由を淡々と語った。
 名古屋市内の同社本店で会見に1人で臨んだ水野社長は冒頭の約15分間、資料を見ながら運転停止決定の理由や今後の需給計画などについて説明。約1時間にわたって相次いだ記者団からの質問にも顔色を変えず、短い言葉で返答する場面が目立った。
 ただ、浜岡原発の安全性について質問されると「私たちの安全対策は適切に実施されていると(経産)大臣も確認している。(地域住民らの)一層の安心のためだ」とやや語気を強めた。
 計画停電実施の可能性については「考えていない」と言明したうえで「お客様にはエネルギーの効率的な利用をお願いしたい」と節電への協力を求めた。
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浜岡原発:首相と、原発推進維持図る経産省の同床異夢
 中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の全面停止が9日、菅直人首相からの異例の要請を受け入れる形で決まった。背景にあるのは、これを将来的なエネルギー政策の転換につなげる一歩としたい菅首相と、「最も危険な浜岡」だけを止めることで原発推進の国策維持を図る経済産業省の同床異夢。夏の電力需給の逼迫(ひっぱく)を警戒する中部電は、停止の受け入れを2日間遅らせたものの、微妙なバランスの上に成り立った「政権の決断」にあらがう選択肢はなかった。
 「中部電力が要請を受け入れ、大変良かった。政府としても電力全体が足らなくならないよう対応には力を入れたい」。菅首相は9日夜、東日本大震災の発生後、ほとんど応じていなかった記者団の質問に答え、「海江田万里経産相がしっかりと説明してくれたことによって良い形ができた」と付け加えた。
 実際、浜岡停止の根回しに走ったのは海江田氏だった。日本の原子力行政を進めるためにも「福島第1原発の二の舞いは許されない」と考え、3月末から浜岡原発の耐震性や停止した場合の影響などの検討に着手。4月下旬には停止方針を固めた。
 資源エネルギー庁の一部幹部は「ほかの原発にも波及しかねない」「東京電力や関西電力の需給にも影響が生じる」と抵抗したが、海江田氏は「浜岡は大地震の起こる可能性が突出している。ほかの原発には波及させない」と説得。首相が8日、浜岡以外の原発を止める可能性を否定し、「特別なケース」と明言したのも経産省への配慮だった。
 しかし、首相が周辺に語る本音は「原子力と石油火力がダメとなったら、再生可能エネルギーと省エネに力を入れるしかない」。法的根拠のない「要請」という手法に加え、大型連休の谷間の6日に発表した経緯を首相周辺は「我々が一番気にしたのは、どう(経産省や電力会社の)巻き返しを防ぐかだった」と振り返る。発表前に情報が漏れて原発推進派に抵抗の余地を与えることを警戒。政府内の根回しも官邸、経産省などごく一部に抑え、内閣府の原子力安全委員会にも助言要請しない段階で、間髪をいれず発表した。
 日本全体の電力需給を考えれば、ほかの原発の停止は非現実的。エネルギー政策の方向性をどう示すかが今後の焦点となる。首相は26、27日にフランスで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)で原発の安全対策強化を訴える方針で、風力など再生可能エネルギーの推進に踏み込む意欲も示している。ただ、サミット参加国の大半は原発推進国。政府関係者は「浜岡以外は止めないと言っているのはフランスなどへの配慮」と解説する。
 首相官邸内にも温度差がある。原発プラントの輸出に積極的だった仙谷由人官房副長官は8日のNHK番組で「原発を堅持する」と強調。枝野幸男官房長官は9日の記者会見で「原子力政策一般については(福島原発)事故の検証を踏まえたうえでゼロベースで検討する」と見直す可能性をにじませた。
 当面の浜岡停止でまとまった政権の意向を受け、中部電力は代替火力発電の燃料調達に追われた。中部電の三田敏雄会長は7日の臨時取締役会終了後、0泊3日の強行軍でカタールに飛び、液化天然ガス(LNG)の追加調達のめどがついたことで、浜岡停止を最終決断した。【平田崇浩、野原大輔、丸山進、関東晋慈】
毎日新聞 2011年5月9日 22時39分
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浜岡原発:停止決定に静岡知事ら「深い敬意」
 中部電力が浜岡原発の原子炉全面停止を決めたことについて、静岡県の川勝平太知事は9日、記者団に「社会的使命を果たせるかどうかの問題をクリアしながら、菅首相の要請に応えて決断した経営陣に深い敬意を表する」と評価した。
 浜岡原発が立地する御前崎市の石原茂雄市長は「安全性を重視した決定と思う。原子炉を停止させるまでに1週間程度は必要だと思う」と記者団に語り、地元自治体として運転停止を受け入れる考えを改めて表明した。【舟津進、仲田力行】
毎日新聞 2011年5月9日 20時41分(最終更新 5月9日 21時33分)
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高レベル放射性廃棄物、危険性が消えるまでには十万年/文明転換へ覚悟と気概2011-05-09 | 地震/原発
 文明転換へ覚悟と気概 週のはじめに考える
  中日新聞【社説】2011年5月8日
 東日本の巨大地震からまもなく二カ月。連日の余震となお遠い復興への道のり。私たちが問われているのは、文明転換への覚悟と気概のようです。
 なかば義務感にかられて、北欧フィンランドに建設中の放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」を題材にしたドキュメンタリー映画「100、000年後の安全」を見に出かけました。
 多くの国際賞受賞のこの記録映画の配給元は「アップリンク」。今秋公開の予定でしたが、四月、東京・渋谷の自社劇場で上映したところ連日の行列と満席、全国各地の五十館以上での上映へと広がっていったそうです。前例のない反響、福島第一原発事故で国民が原発問題に真正面から向き合うようになったことがわかります。
 高レベル放射性廃棄物は世界に二十五万トン、危険性が消えるまでには十万年。「オンカロ」はフィンランド語で隠し場所を意味します。廃棄物を凍土奥深くの岩盤に埋め込む世界初の試みです。管理可能か、明快な回答を持ち合わせる専門家はいませんでした。
*人間支配が及ばない
 日本列島が現在の形になったのは一万年前、人類が文明をもったのはたかだか五、六千年前です。十万年は人間のリアルな思考や言葉が及ぶ時空域ではありません。人間が制御できないという絶望感。静かな画面は、人類が手にしてしまった原発の恐怖と不気味さを伝えていました。
 続いて、菅直人首相が浜岡原発の全炉停止を要請しました。法的手続きではない政治判断でした。
 東京から百八十キロ、名古屋から百三十キロ。東海地震想定域の真上の浜岡原発は「世界で最も危険な原発」と呼ばれてきました。事故の場合の被害は福島原発の比ではなく、首都圏の一千万人の避難や首都喪失も想定されました。
*やむをえぬ浜岡の停止
 マグニチュード9・0の巨大地震は、日本列島を東西に数メートル引き伸ばし、首都直下型や東海、東南海・南海地震誘発が憂慮されます。浜岡原発停止はやむをえぬ判断でしょう。全原発に及ぼすべきかどうか、そこが問題です。
 浜岡を含め日本の原発は五十四基、電力の30%を占めるようになっています。すでに原油枯渇の兆候があり、太陽光や風力のクリーンエネルギーへ転換させるにしろ、先行きはなお不透明です。電力の安定供給のためには原発は不可欠という状況です。
 原発停止による生活レベルの一九七〇年代への後退は許容できるにしても、グローバル競争の落後者になる恐怖に打ち勝てるかどうか。私たちは無限の成長を前提にした近代世界の住人。文明転換の勇気をもてるかどうかです。
 地質学の石橋克彦神戸大名誉教授は、地震と原発が複合する破局的災害・「原発震災」の概念や言葉を提唱、浜岡原発の廃炉を訴えるなど警告を発してきました。
 「世界」や「中央公論」の誌上には「日本列島全域が今世紀半ばごろまで大地震活動期」「原発は完成された技術ではない」「人間の地震に関する理解は不十分」「地震列島に五十基以上の大型原子炉を林立させることは暴挙」とも書いています。警告通り、福島原発の大損傷が発生してしまいました。
 「原発震災」は人間存在への問いかけだったのでしょう。教授が提言したように原発総点検、リスクが高い順の段階的閉鎖・縮小が現実路線のように映ります。世界観を変えるには覚悟と決意、気概がいります。
 日本を代表する東北の農漁業。その被害も甚大でした。食料問題も原発に劣らない不安で重大な問題。世界の食料品価格が高騰、二〇〇八年のリーマン・ショック時を上回っているからです。
 食料価格高騰は投機と「将来の供給不足懸念」が要因とされるだけに深刻です。コメと野菜こそ90%台と80%台の自給率を保っているものの、小麦は10%台、大豆やトウモロコシはほとんど輸入しています。命にかかわる問題です。農業の復興と立て直し、食料の自給は急務です。
*新しい幸せと充実が
 失われたコミュニティーの復元や修復も大切なテーマ。震災は、私たちがそれぞれが独立しながらも、結局は支え合い、助け合って生きていくものだ、ということをあらためて気づかせてくれました。それは、ボランティアに向かう若者の行動にも表れました。
 極限状況にあっても、人間はなお優しさや思いやり、勇気や忍耐を示す存在でした。献身や自己犠牲も。それは私たちの未来へ向けての大きな希望でした。
 経済的繁栄や快適な生活とは別次元の幸せと充実。それが追い求める内容かもしれません。私たちは歴史の転換点に立っているのかもしれません。 

使用済み燃料 大量に
中日新聞2011/5/7Sat.夕刊
 政府の要請を受けて浜岡原発が全面停止しても、建屋内には使用済み燃料が大量に残る。このため、想定外の地震や津波が起きた際の危険性はすぐには去らない。
 核燃料は、燃料棒を束ねた燃料集合体を一体とし、使用後も原子炉建屋内のプールで貯蔵される。冷却のために最低でも2年弱は保管され、青森県六ヶ所村の再処理工場や海外などに運ばれる。
 中電によると、3月末時点で浜岡原発1〜5号機に保管されている使用済み核燃料は計6625体。福島原発の事故を受け、中電は緊急対策として冷却機能を保つための非常用ディーゼル発電機を建屋屋上に設置した。(略)
 榎田洋一名大院教授(原子力工学)は「原発を全面停止しても、使用済み燃料は発熱が続く。外部に移すにも、安全性が整った施設に限られており、簡単に運び出せない。国内の原発からは、六ヶ所村だけで処理しきれない量の使用済み燃料が出ており、長期的に手だてを考えなければならない」と話している。


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