大飯再稼働を決定 首相「安全」裏打ちなき強行
東京新聞2012年6月16日 14時00分
政府は十六日午前、野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係三閣僚による四者会合を開き、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を決めた。これに先立ち、福井県の西川一誠知事は官邸で首相と会談し、同意する考えを伝えた。政府は十分な安全対策を取らないまま、裏打ちのない首相の「安全宣言」によって再稼働を強行した。
首相は四者会合で「立地自治体の理解が得られた今、再稼働を政府の最終的判断とする」と表明。「政権として、原子力行政と安全規制の信頼回復に向けさらなる取り組みを進める決意だ。新たな規制機関の一日も早い発足に向け、一丸となって努力を続けたい」と強調した。記者会見はしなかった。
四者会合前の会談には、首相のほか、枝野氏ら関係三閣僚らも同席。西川知事は安全対策や使用済み燃料の中間貯蔵施設の整備など八項目を要望し「関西の人々の生活安定のため再稼働に同意したい」と述べた。
枝野氏は八項目の要望について「重く受け止め、真摯(しんし)に対応する」と応じ、首相は「福井県の決断に深く感謝したい」と語った。
関電は同日午後、機器の点検など再稼働に向けた作業に着手。二基の起動は順番に行い、それぞれ本格稼働に三週間程度が必要とされるため、フル稼働は早くても七月下旬になる。
国内の原発五十基は北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が五月五日に定期検査入りして以降、すべて停止している。大飯原発3、4号機が再稼働すれば昨年の東京電力福島第一原発事故以来、定期検査後の原発が再稼働するのは初めてとなる。
しかし、安全対策に盛り込まれた免震施設の建設や防潮堤の整備などは計画を示せば十分とされ、今回の再稼働には間に合っていない。事故で信頼を失った経産省原子力安全・保安院に代わる安全規制の新組織もまだできておらず、安全対策は万全とはいえない。
大飯再稼働をめぐっては、政府が四月十三日に再稼働方針を決定。首相は今月八日の会見で「福島を襲ったような地震、津波が起きても事故を防止できる」と表明していた。
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【大飯7月再稼働 福井同意に首相決断】 関電、準備作業入り/官邸、市民ら数百人抗議
政府は16日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を正式に決めた。野田佳彦首相が再稼働について「政府の最終的な判断とする」と表明した。福井県の西川一誠(にしかわ・いっせい)知事が官邸で首相に同意を伝えたことで、地元の一定の理解が得られたと判断した。
経済産業省資源エネルギー庁は関電に準備作業の開始を指示。関電は16日午後に3号機の作業を始め、早ければ3号機が7月8日、4号機が同24日にそれぞれフル稼働になる見通しを明らかにした。
昨年3月の東京電力福島第1原発事故後、検査で停止した国内の原発が運転を再開するのは初めて。5月5日に商業用原発全50基が停止した「稼働原発ゼロ」は終わることになる。
政府は再稼働で、電力不足による産業や生活の混乱回避を狙うが、安全規制組織の刷新や事故の検証を待たずに決めることで、抜本的な安全対策を置き去りにしたとの批判は避けられない。
16日午前の知事との会談には、首相や枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚のほか、地震や津波の研究を進める立場の平野博文文部科学相が出席。知事は国民や消費地の再稼働への理解促進や、使用済み核燃料の引き受け拒否など8項目の要望を伝え「同意する決意をしたい」と表明。枝野経産相は「重く受け止め、真摯(しんし)に対応する」と応じた。
首相はあらためて関係3閣僚との会合を開き「原子力行政と安全規制の信頼回復に向け、さらなる取り組みを進める」として再稼働を決断した。
4月14日に政府が福井県に協力を要請後、同意手続きは難航し、2カ月超を要した。中長期の安定稼働を求める福井側に対し、京都府や滋賀県、大阪市など関西圏の自治体が夏に限った運転を求めるなど、慎重論もくすぶり続けている。
枝野経産相は会合後の会見で「特別な監視体制を直ちに立ち上げる」と説明。再稼働時の安全確保に対応する。京都と滋賀には個別に情報提供することも明らかにした。
政府は再稼働の準備状況を見ながら、関電管内で求める15%の節電目標(2010年夏比)の引き下げなど電力需給対策を再検討する。7月2日に節電期間が始まるが、フル稼働が間に合わないため、梅雨明け後の電力需要の急増や、火力発電所のトラブルに備え、計画停電の準備は続ける。
大飯以外の原発の再稼働は、規制組織の発足が遅れており、安全評価(ストレステスト)の手続きが進んでいる四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)も再稼働時期は見通せていない。
▽表情硬く「同意を決意」 官邸、市民ら数百人抗議
首相官邸前で脱原発グループなどの数百人が抗議の声を上げていた。福井県の西川一誠(にしかわ・いっせい)知事は官邸を16日訪れ、硬い表情で関西電力大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働に「同意の決意をしたい」と野田佳彦首相に伝えた。「深く感謝したい」と首相。原発近くの自治体からは安全性への不安と疑問の訴えが相次いだ。
西川知事は午前9時半に県職員らとともに官邸へ。3階の会議室で野田首相ら関係閣僚と机を挟んで向き合った。
「原発の重要性を理解してもらうことが大事。立地地域と消費地がいがみ合うのは避けなければならない」。同意を伝える前に、そう重ねて強調した。会談はわずか20分ほどで終わった。
その官邸前。朝から「脱原発の政治決断を」などと書かれた横断幕を掲げた市民ら数百人が集まった。西川知事を名指しし「市民の側に立て。目を覚ませ」と声を上げ、数十人の警察官が視線を送る物々しい雰囲気に包まれた。
地元のおおい町は期待と不安が交錯する。「おおい町は原発でやってきた。みんな動かしてほしいと思っていたよ」。町商工会副会長の浜田長利(はまだ・ながとし)さん(61)は歓迎した。
原発の長期停止で地域経済は疲弊。商工会には地元の中小企業から雇用調整の相談が相次いでいた。一方で浜田さんは「世論が反対しているのがつらい。今後は風評被害も怖い」と懸念する。
町内の飲食店に勤める女性(34)は「長い目で見れば、原発はなくすしかないと思う。事故の際の補償や避難など、分からないことや不安もある」と打ち明けた。
大飯原発から30キロ圏内に住民の約7割に当たる約6万3千人が住む京都府舞鶴市。多々見良三(たたみ・りょうぞう)市長は5日の市議会で、再稼働に「安全判断は中立的な立場の専門機関から全く説明されていない。安全を徹底することが第一で電力が足りないから動かすというのは本末転倒だ」と話した。
橋下徹(はしもと・とおる)大阪市長は14日、記者団に「再稼働は例外中の例外。暫定的な安全判断だと肝に銘じないといけない」と話し、夏限定の稼働を主張した。
(2012年6月16日、共同通信)2012/06/16 14:26
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大飯原発「5層の防護」3層目まで 国際基準 程遠く
東京新聞2012年6月16日 夕刊
大飯原発3、4号機の再稼働が決まった。野田首相らはしきりに安全性が確保されたと強調するが、国際的な安全基準の一部しか満たしていないのが現状だ。このまま再稼働に踏み切れば、国際基準から逸脱した形になる。
国際原子力機関(IAEA)は、原発の安全性を保つため「五層の防護」という考え方を示している。
五層の防護とは、故障や誤作動を防ぎ、地震や津波などに襲われても炉心溶融のような重大事故にならないよう備えをするのが一〜三層目。事故が起きてしまった場合、いかに事故の被害を最小限に食い止め、住民を被ばくから守るかの備えをするのが四、五層目となる。
大飯原発はどうか。非常用電源の多様化や建屋が浸水しにくいなどの安全向上策はある程度はできたが、それは三層目までのこと。事故が起きた後に重要となる四、五層目の対応は空手形というのが現状だ。
ベント(排気)時に放射性物質の放出を最小限にするフィルターの設置、事故収束に当たる作業員を放射線から守る免震施設の整備などが四層目に当たり、適切に住民を避難させたり、内部被ばくを防ぐヨウ素剤を配ったりするのが五層目。
しかし、四層目が達成されそうなのは三年後で、五層目はいつになるか、めども立っていない。
原発外で対策拠点となるオフサイトセンターは、いまだに見直し作業の最中。モニタリングポストなど広域に放射線量を監視する体制も整っておらず、福井県の避難計画も近隣の他府県との連携を考えない硬直化した内容のままだ。
首相らは「福島のような津波と地震が襲っても事故は防げる」と胸を張るが、国際基準に照らせば、重要な対策がすっぽり抜け落ちている。(福田真悟)
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私たちは、なんという凶悪な犯罪集団を内閣として戴いたことだろう。福島第1原発事故の何も解明されないうちに、野田内閣は大飯原発再稼働を決めた。安全対策が講じられるのは、数年後だ。財務省に操られて再稼働を決め「責任は私がとる」と野田総理は言う。が、凶悪殺人という犯罪の責任を取ることのできる人間など、この世にいない。奪った命や失われた時間を償って元に戻せる、つまり責任を取ることのできる人間などいない。被災した福島の皆さん、そして世界は、野田総理のこの仕業を何と見るだろう。嘆きが伝わってくるようだ。「日本という国は・・・」という驚きの声が聞こえるようだ。
野田執行部と自民党との連立政権は大飯再稼働と同時に、今一つ、消費税増税という凶悪法案を事実上成立させた。
最も重んじられねばならぬ命や生活が、松下政経塾お得意の舌先三寸で鴻毛の軽きに扱われた。