一体改革の支離滅裂…日経社説も同じだ
zakzak 2012.06.22.連載:「お金」は知っている
「社会保障と税の一体改革」と銘打ちながら、内実は消費増税率を10%まで引き上げる。みんなで渡れば怖くない、増税さえ確定させれば、あとは各党が有権者の歓心を買うために社会保障財源のバラマキ案を競う。そんな構図がみえみえだ。
問題は、かれらの国家観の不在とそれを裏打ちする見識のなさ、である。デフレ増税がもたらす恐るべき結果は国家の衰退と国民の疲弊の加速である。
消費増税を急ぐ理由は、増税しないと「日本がギリシャみたいになる」からだった。菅直人前首相がまず、そう騒ぎ出し、菅直人−野田佳彦のラインで東日本大震災からの復興財源も社会保障財源も増税という、何でも増税路線を突っ走るようになった。
民主、自民、公明3党の増税主義者よ、では答えてみよ。日本はギリシャ化するとはどういう定義なのか。
「財政破綻」のことか。財政破綻とは、現代の市場経済のもとでは、国債の買い手がなくなり、投げ売り状態になることである。
今、世界の投資家は日本、米国、ドイツの国債買いに殺到している。政府の総債務の対国内総生産(GDP)比率は日本が飛び抜けて高いのだが、日本国債は最も安全な資産との市場評価を受けている。利回りも国債の焦げ付きリスクも健全財政を誇るドイツよりも低い。
理由は、日本が貯蓄大国であり、世界最大の対外債権国であるというのがまず第一点。二つ目は、日本が慢性デフレで、モノやヒトに投資するよりも、すぐ現金化できる金融資産の国債投資が有利なことだ。国内の金融機関は国債を買い、その売り買いで収益増加分の大半を稼ぐ。外国の投資家もそれに便乗する。超円高、デフレを加速し、国民の所得、雇用機会を奪い、破壊する。
増税はデフレを助長する。かのデフレ容認派の白川方明日銀総裁ですら、国外での講演では「成長期待が弱い中での増税懸念は、デフレ圧力につながる可能性もある」と認めている。
日本がギリシャ化するとすれば、財政収支が悪化を続け、バラマキ型の社会保障制度を温存することである。ギリシャは欧州連合(EU)基準に合わせて付加価値税(消費税に相当)率を引き上げ、それに安住して年金など社会保障支出を野放図に拡大してきた。
デフレと円高が止まらないと、GDP縮小がさらにひどくなる。消費税収入は税率アップにもかかわらず伸びず、所得税、法人税は激減する。財政収支は悪化する。そして、今回の3党合意でもバラマキ型を止める気配が全くない。
増税主義の急先鋒、日経新聞ですら、16日の社説で、3党合意について「穴の空いたバケツに水を注ぐようなものだ」「増税だけが際限なく膨らむ恐れがある」と嘆いている。ところが社説主見出しは「首相は消費増税の実現へひるむな」と叱咤する。支離滅裂な政治といい勝負だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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“国の借金”とは財務官僚の詐欺論法!
zakzak 2012.05.18.連載:「お金」は知っている
最近でも、財務省による「1000兆円借金」論が以下のように報じられる。
−−財務省は10日、国債など「国の借金」が平成23年度末時点で過去最大の959兆9503億円になったと発表した。24年度末時点の借金は1085兆5072億円と1000兆円を突破する−−
「国の借金」とは財務官僚の詐欺論法である。
官僚は「政府」とは「国」のことだと勝手に解釈し、御用メディアを通じて「政府=国=国民」だと読者の頭に刷り込んでしまう。ところが、英語では国と国民はいずれもnationなのだが、政府はgovernmentであり、はっきりと国と政府を区別している。政府の借金とは政府の借金以外、何でもない。米国で「国民の借金」だと政府が公言すれば、「何を言っているか、責任を有権者に押し付けるつもりか」とたちまち世論の袋だたきにあうだろう。
ともあれ、日本の財務官僚はこの錯覚を利用して、そのホームページなどで、「国の借金」を家計や国民一人当たりの借金に置き換えて、記者に劣らず経済音痴の官邸の主や議員を増税また増税に駆り立てる。
財務官僚やメディアの言う「国の借金」とは、「政府の国民からの借金」であり、国民にとってみれば資産である。国民は政府にきちんと元利返済させる権利を持つ。ところが、国民に増税を認めよ、そしたら返すというのが財務官僚と野田政権のロジックである。とんでもない、ならず者の論理ではないか(詳しくは拙近著「財務省『オオカミ少年』論」参照)。
そもそも、お金ですべてが動く近現代社会では、借金があってこそ世が栄える。従って、政府も民間も借金すること自体は「よいこと」なのである。
グラフ(略=来栖)は米国の政府と民間の借金合計額の国内総生産(GDP)比とインフレ率の推移を追っている。借金超大国でもある米国は借金すればするほど、物価が安定し、経済成長してきた。借金が膨張したからといって、悪性インフレになるどころではない。逆である。物価は安定度を高めていることが読みとれる。
政府の義務は国民から借金し、その資金で国民に安全と雇用機会や所得増をもたらす政策の実行で成果を挙げることだ。
日本の場合、政府が政策で大失敗し、デフレ不況と失業、窮乏化、大災害に無防備、という最悪の結果を招いている。この責任を政府や官僚がとるどころではない。だれも知らぬふり、揚げ句の果てに、政府はこの借金は国すなわち国民の借金だから、さっさと増税を受け入れろ、と迫る。
野党の自公両党も政権時代に大失敗を重ねてきたのに頬被りし、増税で帳尻合わせしようとした。その点、民主党と大差ない。政局の表舞台では小競り合いの演技、裏舞台では消費増税で事実上の大談合、大連立だ。
誤った国の定義をただすのが民主主義国家の野党の役割だというのに情けない。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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なぜ永田町は財務官僚に支配されるのか
zakzak 2012.04.06.連載:「お金」は知っている
元通産省(現・経産省)エースで橋本龍太郎内閣(1996年1月〜98年7月)の首相首席秘書官として「橋本行革」を進め、大蔵省(現・財務省)官僚と対峙した江田憲司氏(みんなの党幹事長)が「財務省のマインドコントロール」(幻冬舎)を出版した。
筆者は1月に「財務省『オオカミ少年』論」(産経新聞出版)を書き、財務官僚主導の政策が円高デフレ不況、財政収支をいかに悪化させているのか訴えたが、江田さんは野田佳彦首相に至るまで歴代の政権と政治家がなぜ財務官僚のかいらいになり、誤った政策に走るのかを明らかにしている。
政治家は予算の査定権を握る財務省主計局官僚に、地元に道路や橋をつくってくれと頭を下げてまわる。もっと怖いのが「国税の査察権」で、税の支払いをめぐって「すねに傷を持つ」政治家が多く、財務官僚批判などできない。橋本首相は行革の一環で国税庁を財務省から切り離そうとしたが、与党政治家の猛反対で発案は葬り去られた。
背後にいるのは財務官僚である。民主党は2009年の総選挙でのマニフェストで国税庁と社会保険庁の統合による「歳入庁」設置をうたったが、野田首相らには実行する気はないようで「検討中」で逃げまくる。
財務省は首相官邸、内閣府の最高スタッフはもちろん、全霞が関官僚の人員増減を査定する「総務省行政管理局管理官」、全公務員の給与を査定する人事院給与課長、法律の適否を判断する内閣法制局の要職、さらに財務官僚がつくった予算の決算審査に当たる会計検査院のトップまで独占し、霞が関の隅々まで財務省が支配する仕組みになっている。
政治家は「脱官僚」と言っても及び腰だし、「政治主導」と勇ましく言っても財務官僚の協力無くして新政策を打ち出せない。経済のみならず、外交、防衛・安全保障、教育など国家の基幹に関わるすべての政策がそうである。
財務官僚主導、つまり財務省が政治との駆け引きを通じて予算を組み、支出してきた結果が現在の財政大赤字だ、と江田さんは断じる。財務官僚は野田首相や谷垣禎一自民党総裁ら与野党をたきつけて、何でも増税路線を着々と敷いていく。
では、江田さん自身関わった橋本内閣による97年の消費増税はどうだったのか。橋本氏はかなりためらった揚げ句、財務官僚が仕掛けて村山富市内閣時代の94年10月に閣議決定した消費増税実施に踏み切った。合わせて所得減税を打ち切り、健康保険の患者負担を2割に引き上げ、9兆円の国民負担増に突き進んだ。江田さんは明確に言っていないが、その結果、95年1月の阪神大震災後の復興の波に乗っていた景気は失速、急降下し、98年から現在に至る慢性デフレの泥沼にはまった。
江田さんは今回の消費増税などで国民全体で14・2兆円の負担増になり、97年とは大きく違い、日本がいよいよ破滅への道を歩むことになりかねない、と「歴史の生き証人」として警告している。今回も定義不明の「景気の好転」を条件に消費増税で最後は与野党が一致しそうだ。それこそは橋本増税の大失敗の教訓を無視する財務官僚のシナリオ通りなのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
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一体改革の支離滅裂…日経社説も同じだ/なぜ永田町は財務官僚に支配されるのか
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