中国 南シナ海における領有権主張は根拠なし
WEDGE Infinity 2012年07月11日(Wed) 岡崎研究所
アジア情勢に詳しいジャーナリストのバウリングが、6月4日付ウォール・ストリート・ジャーナルで、中国は、地理的関係を無視し、一面的な歴史的根拠によりスカボロー礁への領有権を主張しているが、中国がこのような歴史の書き換えを続ける限り、南シナ海における対立は解決しない、と論じています。
すなわち、中国は、南シナ海において、地理を無視し、一面的な歴史的事実に基づき、領有権を主張しているため、フィリピンだけでなく、他の諸国とも対立している。
中国外交部は、モンゴルの支配下にあった13世紀に中国船がスカボロー礁を訪れたことを領有権の根拠としているが、それより遥かに前から、インドネシア人、マレーシア人、フィリピン人、更に、ベトナム人の祖先がこの海域に進出していたのだから、一番乗りをしたなどとは言えない。
中国は、1898年のパリ条約で、スペインが米国に主権を委譲した地域にスカボロー礁が含まれていないことを指摘しているが、フィリピン人の意向を無視して結ばれた条約を、ご都合主義で、自らの領有権主張に利用する行為だ。
中国は、1932年に領有権を主張していたので、その後になってフィリピンが領有権を主張しても無効であるとしているが、フィリピンは当時外国統治下にあった。
フィリピンが1994年に発効した国連海洋法条約に基づく解決を希望しているのに対し、中国は、自らの領有権主張は1932年に既に行われているので,海洋法条約の規制を受けないと主張している。これは、海洋法条約上の立場が弱いための言い訳だ。
中国が厚かましく歴史を書きかえ、地理的現実を無視するままでは、地域の海洋での対立は終焉しないだろう。
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バウリングが主張するように、中国の領有権主張には十分な根拠があるとは言えません。フィリピン側が主張するように国連海洋法条約に基づく解決が筋でしょう。
中国においては、歴史は王朝の正当性に貢献するものであり、法は王朝の支配のための道具である、というのが長年の伝統であったと言ってよいでしょう。領有権問題への対応などを見ていると、中国は、現在でもこうした意識から抜け切れていないかのようです。
中国が、歴史を書きかえ、地理的現実を無視し、国際法をご都合主義的に解釈することを、簡単にやめるとは到底思われません。それゆえ、周辺地域の海洋での対立も、中国が戦術的に硬軟両姿勢をとるなどして、強弱はあるかもしれませんが、近い将来に止む見通しは、まずありません。
なお、バウリングは、中国側が1932年にスカボロー礁の領有権を主張したと述べていますが、一般的には、1935年1月に中華民国水陸地図審査委員会が同礁を中華民国の版図に入れたことを領有の根拠としているようです。
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