【福島原発事故】線量計に鉛カバー強要 作業員の被ばく隠しか
東京新聞2012年7月21日
東京電力福島第一原発事故の収束作業をめぐり、作業を請け負った福島県内の建設会社の役員が昨年十二月、作業員が個別に装着する警報付き線量計(APD)を鉛板のカバーで覆うよう強要していたことが二十一日、関係者への取材で分かった。これまでにカバーの使用を認めた作業員はいない。
累積被ばく線量が高くなった役員が、遮蔽(しゃへい)効果が高いとされる鉛でAPDを覆い、被ばく線量を偽装しようとしたとみられる。厚生労働省は労働安全衛生法違反の疑いもあるとみて調査を開始、福島労働局などが同日、第一原発内の関係先を立ち入り検査した。
関係者によると、装着を強要していたのは、東電グループの東京エネシス(東京)の下請け企業「ビルドアップ」(福島県)の五十代の役員。昨年十二月一日、作業員宿舎で約十人の作業員に鉛板で作ったカバーを示し、翌日の作業で装着するAPDをカバーで覆うよう求めた。
役員だけが装着した場合、一人だけ極端に被ばく線量が低くなって偽装が発覚するのを恐れたとみられる。
ビルドアップが請け負っていたのは、汚染水を処理する設備の配管が凍結しないようホースに保温材を取り付ける作業。作業現場付近の空間線量は毎時〇・三〜一・二ミリシーベルトだった。工期は昨年十一月下旬から今年三月。
東京エネシス広報室によると、ビルドアップからは「(役員は)カバーを作ったが、作業員は使っていない」と連絡があったという。東京エネシスは「事実だとすれば非常に問題だ」としており、役員が単独で作製したかなどを調べている。
<原発作業員の被ばく線量> 原発で働く作業員の被ばく線量限度は、通常作業時が「5年間で100ミリシーベルトかつ年間で50ミリシーベルト」。事故などの緊急時は「年間100ミリシーベルト」としている。東京電力福島第一原発事故では、作業時間を確保するため特例として100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたが、収束作業の進展に伴い、昨年12月から原則として通常時の基準に引き下げられた。一般人の年間被ばく線量限度は1ミリシーベルト。