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特集ワイド:小沢一郎氏が掲げる脱原発 少なくともブレてはいない

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特集ワイド:小沢一郎氏が掲げる脱原発 少なくともブレてはいない
毎日新聞 2012年08月01日 東京夕刊
 新党「国民の生活が第一」の小沢一郎代表が、「反増税」と共に掲げるのが「脱原発」だ。反原発デモが日常風景となった今、選挙目当ての「あめ玉」なのか、「改革者・小沢」の3・11後の真情なのか。【宮田哲】
 ◇本気か人気取りか…期待と批判の声、半ば
 ◇「安易な依存、反省すべきだ」 「過渡的エネルギー」主張も
 「再稼働反対」「いのちを守れ」のシュプレヒコールが響く東京・永田町。毎週金曜、首相官邸前では関西電力大飯原発の再稼働撤回を政府に求める抗議行動があり、参加者は7月20日には主催者発表で9万人(警察調べで約7000人)に上った。29日の日曜日は、同20万人(同1万数千人)が国会を取り囲んだ。
 官邸前デモの参加者に、小沢氏について聞いてみた。東京都八王子市の無職女性(64)は「信頼できない。コロコロと言うことが変わるから」。千葉市美浜区の大学3年生男子(21)は「選挙目当てに一過性で終わる反原発ならやめてほしい。危険な活断層のある原発を全部調査して、それが終わるまで全原発を停止させるくらいのことを言うなら本気だと認めます」。厳しい声の一方で、東京都板橋区の映画館従業員、竹崎由里子さん(28)は「応援します。そういう声をあげた議員を応援していかないと、政治は絶対動かないと思うから」と期待する。
 小沢氏の四つめの新党の結党大会が7月11日、永田町の憲政記念館であった。小沢氏はあいさつで「『脱原発の方向性』を鮮明にする」と述べた。「狭い国土に世界の1割近くの発電所が集中する原子力は、過渡的エネルギーと位置づけ、原発に代わる新たなエネルギーの開発に努める」
 記者会見では「高レベル放射性廃棄物の処理は完成した技術ではなく、やればやるほどどんどんたまってくる。原発推進は不可能」「原発に安易に依存した事実も反省しなければならない」と述べた。
 政府が2030年の原発依存度を議論していることについては、「ドイツは10年後をめどに(原発を)やめる。日本の場合、できるか断言はできないが大きなめどだと思う」(7月8日のNHK番組)と話した。
 小沢氏の側近、東祥三幹事長は官邸前デモの人波に「民意」を見る。「人の動きは組織動員ではない。3年前の政権交代は風が吹いたが、今は一人一人が立ち上がって、それが熱気になっている」
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 小沢氏の「脱原発」には風あたりが強い。自民党の石原伸晃幹事長は「原発をすぐなくしてしまうというようなことをやって、国民の生活を守れるのか。できもしないマニフェストを掲げて民主党の来た道をまた進んでいくのではないか」と批判。政治アナリストの伊藤惇夫さんは「脱原発は衆院選でアピールするためのテーマ。小沢さんを20年以上見てきたが、過去に原発問題に発言したことは私の記憶では一度もない」と話す。
 確かに、小沢氏が原発について積極的に発言してきた印象は薄い。民主党政策集の「原子力政策に対する基本姿勢」の項目は、05年版までは「安全性を最優先させ、万一に備えた防災体制を確立したうえで、過渡的エネルギーとして慎重に推進」とされていた。ところが、小沢氏が代表だった07年版から「過渡的エネルギー」の表現が消えている。
 しかし、小沢氏の知恵袋といわれる平野貞夫元参院議員は「若い頃から原発には消極的だった」と振り返る。
 小沢氏自身は昨年11月、「1970年代、僕が科学技術政務次官だった頃に原発が始まりましたが、過渡的なエネルギーとしては仕方がないと最初から主張していた。新エネルギーを見いださないといけないという思いはずっと持っていました」 (「サンデー毎日」11年11月27日号)と語っている。
 科学技術政務次官を務めた後、小沢氏は衆院の科学技術関連の委員会に所属し、衆院事務局に勤めていた平野氏はその委員会を担当した。当時、小沢氏は「科学技術庁では原子力行政のあり方のまずさを勉強した。プルトニウムは人類がつくった最大の毒。量産してためるのはよくない」と平野氏に話した。新進党、自由党時代は「なんで便所のないマンションばかり造るのか」としきりに言っていたという。
    ■
 小沢氏は福島第1原発事故にどう反応したのか。平野氏は3月13日に電話した。「被災地に行くべきか悩んでいたが、『今行ったらじゃまになる』と止めた」。独自に情報収集しているらしく、「3月末には『メルトダウンしている可能性がある』と話していた。小沢さんが批判していたのは、政府が避難指示区域を段々と広げたこと。『だから住民の不安が増す。まず広く取ってから、縮めるべきだ』と言っていた」
 震災後の小沢氏について、夫人が支持者に送ったとされる離縁報告の手紙が週刊誌に掲載された。そこには「小沢は放射能が怖くて秘書と一緒に逃げだしました」と記されている。小沢事務所で9年間、書生や秘書を務めた石川知裕衆院議員は「本当に怖くて逃げたのなら、(原発事故発生後)すぐ逃げているのでは」と疑問を呈したうえで、こう解説する。
 「世間は『選挙目当て』とみるかもしれないが、小沢さんは原理、原則を大事にする人。原発は廃棄物処理ができないからやめるしかないという考えは、小沢さんの思考としてはまっとうだ。原発を取り巻く企業や官僚が入り組んだ体制や原発立地自治体の問題など、『行うは難し』を解決する手腕を小沢さんに期待できるのではないか」
 一方、伊藤さんは「脱原発で共感を呼べるかどうかは、だれが言うかだ。既成の政治構造のど真ん中に座っていた小沢さんが脱原発と言っても直ちに共感されるとは思えない」と話す。
 再び反原発デモ。平野氏は官邸前デモに参加し、小沢氏に様子を伝えて「3・11以降、主体的に政治を考えようと日本人の意識は変わったなあ」と話し合った。小沢氏のデモ参加については、ポピュリズムとの批判をあびるから、と平野氏は勧めていない。
 栃木県壬生町から参加していた花沢隆徳さん(62)は小沢新党について「半分期待している」と語った。「今は人気取りとしか思えない。だが死に物ぐるいですべての原発をなくそうとする姿をみせてくれるなら、本気さを信じるかもしれない」
 「権力闘争」のためでなく、「政策」のために戦う。今こそ多くの人が本気の姿を見たがっている。
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◆ 『小沢一郎 語り尽くす』TPP/消費税/裁判/マスコミ/原発/普天間/尖閣/官僚/後を託すような政治家は  2011-11-20 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 小沢一郎 すべてを語る TPP、消費税、政治とカネ、原発… 聞き手;鳥越俊太郎(サンデー毎日2011/11/27号)
 「僕なら米国と率直に話し合いをし、普天間問題にケリをつけられる」。意ならずも法廷に立たされた小沢一郎元代表(69)は健在だ。TPPから消費税、原発、あの「4億円」――。?剛腕?とジャーナリスト・鳥越俊太郎氏(71)が縦横無尽に語り尽くす。
 「尿管結石が見つかって、その後、何にもないから変だなと思ったら、医者は『(結石が)砕けて(体外に)出たんですかね』と言うんですよ」自身の資金管理団体・陸山会の土地購入をめゞる政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で、政治家として初めて検察審査会によって強制起訴された小沢氏。初公判があった10月6日の夜、尿管結石のため腰の痛みを訴え、日本医科大病院(東京都文京区)に一時入院した。その音、小沢氏は甲状腺がんを、鳥越氏は肺がんを患った経験がある。対談は、小沢氏の冗談めいた語り口で始まった。
 
     

         
鳥越:心境はどうですか?
小沢:体は元気です。ただ、何でもないと思っていても、やはりストレスがたまるんでしょう。肩が凝ったりね。
鳥越:政治情勢にストレスを感じませんか。
小沢:それはもう、ちょっとしんどいですね。
鳥越:民主党の政権運営については、期待通りにいっていないように国民に映っています。自民党はダメだが民主党もダメだな、という雰囲気を感じます。
小沢:事実その通りでしょうね。ですから、非常に危険な状態だと思います。政党不信、政治不信というか、政党はどっちもダメとなると、左であれ右であれ、極端な議論が出てくるんですね。日本人は情緒的ですからバーッと走る可能性がある。今、その境目に来ている。これ以上おかしくなると、本当に悲劇になっちゃうんじゃないか。
鳥越:米国でも、共和党もダメで民主党もダメ。何となく世界中、既存の政党がダメになっている。
小沢:欧州もそうです。極右、極左の政党が票を伸ばす。米国も2大政党ですが、共和党の中のティーパーティー、民主党サイドといわれる若い人のデモも現象のひとつじゃないでしょうか。既成の政党、既成の体制、既成の秩序に対する不信感。
鳥越:今、TPPが一番の問題になっています。国民はあまり知らされていないというか、知らないんですよね。
小沢:直接的に、すぐ実害が国民の懐に及ぶ問題と捉えにくいですからね。
鳥越:どういうふうにご覧になっています?
小沢:ひとつは自由貿易という基本的な経済原則の要素。もうひとつは米国特有の思惑があります。自由競争、自由貿易の原則は誰も否定できない。できる限り世界中で自由な経済取引が行われることは良いことですが、今、米国が主張しているTPPをそのまますぐ受け入れることとは別問題。日本の国民生活をちゃんと守るシステムをつくったうえで、吟味してやらなければならない。(現時点で交渉に参加すれば、米国の)意のままにやられてしまいます。(参加国の間で)経済の深化の程度、レベルの差があったり、国情・民族の差があったりしますから、お互いうまく障害を取り除きながら、合意できるところからやっていくことしかない。米国の場合はちょっと金融で走りすぎて失敗しました。何とか挽回しなきゃいけないと、またもや米国のシステムでみんなを統一しちゃおうという思惑があるものですから、米国にビシッと言わないといけないと思いますね。
鳥越:まったくその通り。関税を100%撤廃するやり方は米国の戦略ですね。農業も医療も日本には固有の事情、歴史や伝統がある。急に100%関税を撤廃してやっていけるのか、ちょっと難しいな。
小沢:米国は農業でも自分の都合の良いことを言っているんですよ。自分の大事なものは保護しておいて、他国には「全部撤廃しろ」と。なんぼでも議論できるんですよ。農業だけじゃない。
 次に分かりやすいのは医療です。米国は国民皆保険ではありませんが、日本は皆保険。その制度を自由診療などで崩そう――という意図があるわけです。制度そのものが崩壊に導かれる可能性もあるし、米国の健康保険、医療制度でよいとは思えません。
鳥越:民主党政権になれば米国に対し、もう少し対等に、言うべきことは言う姿勢で臨んでくれることを国民は期待したと思います。でも鳩山由紀夫元首相は別にして、菅直人前首相や野田佳彦首相は、ほとんど米国の言いなりですね。
小沢:米国の注文を聞いてくる窓口は官僚ですが、彼らの言う通りでは、おっしゃるように、何のための政権交代かという議論が出てくるのは当然です。僕が民主党の一員として見れば、やはり政治的な経験が非常に浅く、まだ実践を踏んでいませんからどうしても役人に頼るところがあるんです。もう少し勉強し、勇気を持たないといけません。
鳥越:民主党にとっては試練、訓練の期間だったということでしょうか。このままだと次の衆院選はどうなるか分からない。
小沢:それが怖い。自民党が政権を取って代われるくらいピシッとしているのかというと、自民党もダメですね。このままだと、どこも過半数を取れない。悲劇ですね。カオス(混沌)の状態になっちゃう。               
*基礎訓練なしに偉くなっても
鳥越:そういう中で、政権の組み替え、政党の再編成は考えられますか。
小沢:民主党が2年前に国民が期待したことをやろうと一生懸命頑張っている姿を見せさえすれば、支持は戻ると思う。悪戦苦闘しているけれども進もうとしている姿に、国民は良い感情を持つのではないか。みんな自覚を持って頑張らないと。それぞれの部署の人が責任を持ち、決断してやっていくということじゃないでしょうか。責任を持たないと、結局、役人の言う通りになっちゃいます。
鳥越:次期衆院選や民主党次期代表選について考えることはありますか。
小沢:野田総理も(安住淳)財務大臣も、消費税(増税)をやるって言っているでしょ?来年1月の通常国会に(関連法案を)出すとなると、来月にはおおよその成案を作っておかなければならない。消費税は直接、個々の国民全部に響きますからね。まして今は世界的大不況が来るかもしれないという時、国内では東日本大震災の影響がある時に、消費税増税というのは、僕は納得できない。もうひとつ、2年前に「(衆院議員任期の)4年間は(消費税増税を)やりません」と約束して政権がスタートしたわけですから、それを反故にすることにもなる。両方の面で、ちょっとどうかなと思います。
鳥越:小沢さんは消費税を上げることには反対?
小沢:今、現時点で上げることには賛成できないですね。ただ、総理と財務大臣が(消費税増税を)言っちゃってますからね。12月には成案、来年1月の通常国会には法案を出すと、よその国まで行って話しているわけですから、ちょっとこれはしんどい。このまま衆院選をすれば問題にならない。ベタ負けですね。
鳥越:あまり明るい材料がありませんね。
小沢:初心に帰ることだと思います。人間ですから約束したことが100%できないのは仕方ない。しかし、約束を守ろうと努力する姿が尊い。最初からやれないとというのでは「一体、何のための政権交代だったんだ」ということになる。真摯な努力の姿を原点に返って取り戻すというのが、いいのではないでしょうか。
鳥越:しかし、小沢さんがそう言っても松下政経塾出身の政治家たちは全然違う動きをしています。
小沢:彼らもそういう公約の下で当選してきた。
鳥越:でも公約がほとんど実行されていません。
小沢:それがちょっと問題でしょうね。困ったことですけど……。
鳥越:困ったとおっしゃいますが、国民も困っているんです。
小沢:そう。そのツケが国民に行くから、国にとっても国民にとっても困ったことになっちゃうということ。非常に心配です。
鳥越:小沢さんがもう一度、政権運営に携わる道はないのでしょうか。
小沢:僕自身は別にどうでもいい。問題は、民主党の場合はみんな基礎的な訓練をしないままポッと偉くなっていること。ベースがないので、何か問題に突き当たった時に「これはこうしよう、ああしよう」という判断ができなくなっているのではないか。仕方ない面もありますが、世界、世の中は待ってくれない。
鳥越:ギリシャに端を発した金融。経済危機ですが、良いのは中国くらいで、ほとんどダメですね。
小沢:欧米がダメになれば中国にも影響するでしょう。中国のバブル経済が弾けそうになっていますが、本当に弾けたら動乱です。中国は政治的動乱を伴うので大変ですよ。
鳥越:経済や金融がグローバル化した結果、一国の問題が世界に波及する事態になった。ギリシャがデフォルトでダメになれば欧州の銀行や米国の銀行がダメになり日本も影響を受ける。そういう時に国民にしっかり支持されている政権がないと困ります。打つ手はありますか?
小沢:妙薬というのはないですね。国民との約束を守る姿勢で政権を運営することからですね。
鳥越:強制起訴による裁判が続いています¨行動の自由を奪われているということはありますか。
小沢:「そんな立場なのに何だ」と、また批判されますからね。あまり過激な言動をするわけにはいかないし、多少は制約されますね。元私設秘書の石川知裕衆院議員ら3人に対する東京地裁の有罪判決は、びっくりしました。
鳥越:驚きました。全部「推認」でした。「多分そうだろう」と(笑)。
小沢:ハッ、ハッ。
鳥越:三重県の中堅ゼネコン・水谷建設の社長(当時)が5000万円ずつ2回、運んできたということが認定されています。
小沢:推認ね(笑)。ただびっくり。前代未間の法廷じゃないでしょうか。(通常の裁判は)裁判官が捜査機関の証拠資料を見て判断しますが、「多分そうなんだろう」ということで判決を出されちゃうとねえ……。
 
                              
 
*マスコミ報道は日本の悲劇だ
鳥越:マスコミからも批判が出ました。ただ、その中でどうしても引っかかるのは(陸山会による土地購入の原資になった)4億円のカネの出所の説明が二転三転していると思えることです。胆沢ダム(岩手県奥州市)建設をめぐり、建設業者からの裏金が渡って原資の一部になった、それがはっきり言えないので説明が二転三転した―― マスコミを含めて、いろいろな人が指摘しています。僕らには真相が分からないのでお聞きしたい。あの4億円の出所、原資は何ですか。
小沢:僕のお金です。今のお話も全部、多分そうじゃないかという類いの話。マスコミも国会も忘れているのは、僕も後援会も秘書たちも、2年近くにわたって国家権力によって強制捜査されているということ。僕の知らないことや忘れたことまで(東京地検特捜部は)全部分かっています。捜査機関が強制捜査したにもかかわらず、不当・違法な金銭の授受はないことが明らかになったんですから、個人が勝手に説明する以上に確かな説明じゃないだろうか。あとはまったくのプライベートな話。何も悪いことがないのにプライベートを全部、説明しなきゃならないという理屈はおかしい。
鳥越:すると4億円の出所についても検察の事情聴取はあったと?
小沢:ぜ〜んぶ(笑)検察は知っています。預金通帳から何から、銀行の原簿まで持っています。強制捜査ですよ、鳥越さん。
鳥越:一部説明をしていましたが、お父さんからの遺産も……。
小沢:もちろんそれもあります。親からの相続は(4億円の中では)大きかった。僕自身だって稼いでいます。印税だけでも1億何千万円もありますし。
鳥越:あの本(『日本改造計画』)は売れましたから。
小沢:本はそれだけじゃないですから(笑)。
鳥越:そこに建設業者からの裏献金が紛れ込んでいることは?
小沢:絶対ありません。第一義的には、後援会のお金と私有財産は絶対混同しないようにずっと心がけてきていますし、もし違法献金があるなら、これだけ調べたら必ず出てくるでしょう。検察は噂の類いから全部、全員を呼んで調べているんですから。それでも出ないんですから。ないものは出るはずがありません。カネがなくなっちゃうということだから、用立てしたということ。
鳥越:そのお金の流れが、何となく不審を感じたところかもしれない。
小沢:「(土地を)買うと、事務所の運転資金、運営費がなくなっちゃう」と。それでは、僕の手持ちのカネを当面、用立てようと。
鳥越:それを抵当にして、また銀行からお金を借りている。
小沢:事務的な話です。(事務所に)まったく任せていますから。強制捜査した結果として何もないにもかかわらず、どうして「違法なカネに違いない」ということが、マスコミをはじめ無関係の人に分かるのでしょう。
鳥越:では、小沢さんは新聞・テレビの報道をどのようにご覧になっていますか。
小沢:日本社会の悲劇ですね。これが戦前、「一億玉砕」を唱えたこともあり、一度は国を滅ぼした。これから戦争が起きるということではありませんが、このままだと民主主義の否定になります。政治不信は民主主義の否定ですから。一体どういう社会をメディアは望んでいるのか、僕にはまったく分からない。ただ悲劇だと思う以外にないですけれど。
鳥越:明るい材料はないですかねえ……。今日は小沢さんに明るい材料をいただかないと(笑)。
小沢:日本人が豊かな情緒と精神文化を持っているのはいいのですが、国際社会の中で生きているのですから、民主主義をきちんと理解することが大切でしょう。それから、もう少し理性的。論理的な発想で自立しなければダメですね。政治でも、みんなで何となく決めるでしょ?誰が決めたのか分からないうちに決まってくる。
 日本の合議制というのは、誰も責任を取らなくていいシステムなんです。うまくいっている時はそれでもいいが、問題が起きた時には「誰も決めない」ということになっちゃう。だから、さらに激変が予測されるような時は、論議を尽くしたうえで、その立場にある人が最終的に自分の責任で決める――「自立と共生」を僕はずっと主張しています。自分で考え、自分で決断し、自分の責任でやる。その要素をもう少し身に着けないといけません。
鳥越:時間がかかりますね。小沢さんと僕とはそんなに年齢が変わらないけれど、われわれが生きている間は無理かも(笑)。
小沢:無理ですね。日本人の中身まで変わるのは無理ですが、頭の中だけでも……。ただ、こう言うと笑う人がいるけど、僕も本質は情に樟さして流されるタイプの典型的日本人なんですよ。でも、政治家はそれではいけない、理性で考えて結論を出さないといけない、と常に言い聞かせています。「冷たい人間だな」とは言われますが(笑)。                              
*原発は過渡的…反省してます
鳥越:ところで、今回の震災については?
小沢:原発事故は深刻ですね。1970年代、僕が科学技術政務次官だった頃に原発が始まりましたが、過渡的なエネルギーとしては仕方がないと最初から主張していた。新エネルギーを見いださないといけないという思いは、ずっと持っていました。今も原子力の結論は出ていないんですよ。高レベル廃棄物の処理はどこの国もできていない。一局レベルは、どこも受け入れないでしょ?
鳥越:将来的には原発をなくしていく方向でしょうか。
小沢:最終処理が見いだせない限り(原発は)ダメ。新エネルギーを見いだしていくほうがいい。ドイツには石炭などの資源がありますが、日本はない。ですからドイツのように10年で原発を止めるわけにはいかないかもしれないが、新エネルギー開発に日本人の知恵とカネをつぎ込めば十分可能性はあります。思えば、過渡的エネルギーだと分かっていながら原発に頼りすぎました。「もう少し強く主張しておけば良かった」という反省はあります。
鳥越:日本人のモノ作りの伝統からいうと、新エネルギーをつくり出すことについて僕は悲観的ではありません。太陽光発電や風力発電、水素エネルギーなどいろいろあります。それにしても(福島第1原発を)廃炉にするだけでも、時間もカネもかかりますね。
小沢:残り滓をどうするかが一番の問題です。使用済み核燃料棒をどうやって取り出すのか、取り出したものをどこに置くのか。できないことを言っても仕方がない。何十兆円かかろうが、何とか封じ込める策を講じないと日本の将来はありません。「冷温停止」と言いますが、爆発しないようにするだけで汚染はどんどん進むし、未来永劫、水をかけっ放しになっちやいます。これを解決しないと日本はダメでしょうね。
鳥越:東京電力だけでなく、国、政治の責任でもある。
小沢:東電を矢面に立て、国が後ろから支援する今のシステムはダメだど思います。国が前面に立ち、その下に東電や原子炉メーカーなどを付け、全力でやるようにしないと。原発の封じ込めは東竺電だけではできません。
鳥越:今、どうしても言いたいことは何でしょう。
小沢:やはり原発問題。これを抱えていたのでは日本の未来はない。どんなにカネがかかっても衆知を集めて封じ込めないといけない。これが第一。それから役所中心の日本の仕組みを改める。そのためには、みんなが民主主義を正確に理解しないとね。個人の自立と民主主義。これがないと、いくらテクニカルな話をしてもダメ。日本に民主主義が定着するかどうか、今が胸突き八丁、境目だ。
鳥越:「官から民へ」と言いますが、官僚は同じ場所で勉強して政策に通じ、優秀です。民主党の若手議員は負けていますね。
小沢:官僚と闘うレベルを間違えているんです。もっと高い次元の理念・見識で闘わないといけない。細かいことは、専門家である官僚のほうが知っているに決まっています。「この理念に基づいて社会をつくりたい。だから協力しろ」と筋道の通った議論がなされれば官僚は抵抗できません。

       

      
*中国にもズケズケ言ってるよ
鳥越:では、具体的に聞きます。沖縄県の普天間(飛行場移設)問題です。
小沢:僕は、いつでも米国とケリをつけられると思っています。あの沖縄のサンゴの海を埋め立てるなんてバカげたことをする必要はない。普天間(に駐留する米軍)の必要はないですよ。前線から実戦部隊を引くのが米国の軍事戦略の基本。欧州からも兵力を引いている。米軍が引くと中国の軍事力にやられるというのは一面の事実ですが、日本が「こういう役割を果たすから、この部分はいなくていい」と言えない。これこそが問題ですね。沖縄は日本の国土ですから日本が守るのは当たり前。3K(きつい、汚い、危険)はやらずにカネさえ出していればという感覚だから、米国人にバカにされちゃう。
鳥越:鳩山由紀夫元首相が突き当たった「抑止力」ですね。これについてはどう考えますか。
小沢:僕も必要だと思います。米国のプレゼンス(存在)が極東アジアからまったくなくなるのは良くない。よく「日米同盟」と言いますが、だったら、それなりの役割を日本も果たさないといけない。「日本の領土はちゃんと日本が守る、トータルな抑止力の一部は担う、緊急の時には米軍が来てください」と。
鳥越:米軍はグアムなリハワイなりで・・・・・・。
小沢:十分。情報を探ったり警戒・監視したりすることは日本でできる。尖閣諸島も日本の領土で、一度も中国の領土になったことはない。中国にも面と向かって言ってますよ。「どの王朝の時に、お前らの領土になった?」「ここは琉球王国の領土で琉球は日本と合併した」と。「その問題は?小平(元最高指導者)先生が『後世に任せようと言った』」と言うが、あれから20年も30年もたっているじゃないか(笑)。
鳥越:それは誰に?
小沢:唐家璇(とうかせん)が国務院国務委員の時かな。中央対外連絡部(中連部)なんかともズケズケやってますよ。
鳥越:日本人は、米国にも中国にもモノが言える政治家がほしいんです。
小沢:僕は日中も日米も、政治家としても個人としても、友好促進のための草の根交流などを何十年も一生懸命やっています。彼らはそれを知っていますから、僕がズケズケ言ったって怒らない。
鳥越:モノを言わないことは国益を害しますね。
小沢:言うと責任が生じるから言わない。官僚はともかく、政治家は言わなくちゃいけないんです。
鳥越:民主党内で、小沢さんが後を託すような政治家は出てきていますか。
小沢:基礎的な勉強をさせなければダメですね。トップリーダーも、若ければ良いというものでもない。実務的な実践を段階的に積んでいかないと、イザという時の判断ができない。30代、40代で良い人たちはいると思いますよ。ただ、基礎的勉強をしなきゃね。すぐに偉くなることばかり考えていてはダメです。 *強調(着色)、リンクは来栖
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小沢一郎が語った「原発/衆愚の中からは衆愚しか/マスコミは日本人の悪いところの典型」 〈悪党?〉 2011-09-19 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 『悪党 小沢一郎に仕えて』石川知裕 元小沢一郎秘書・衆議院議員著(朝日新聞出版)2011年7月30日第1刷発行
 --第3部〈対決〉より部分抜粋転写--
p220〜
小沢 役所は、クリーンで、コストの安い、安全なエネルギーであるみたいな宣伝文句を言っていたんだけども。いまの現実もその当時も、あまり変わりないのは、結果的に原発からできる高レベル放射性廃棄物の処理の方策が、いまだ適当な策がないんだよ。ボクは当初から、役所の宣伝文句は別として、過渡的なエネルギーとしては仕方がない。石油もないからね。石炭だってないし、事実上。だから過渡的なエネルギーとしては仕方ないけども、いずれ新しい、クリーンで、しかも日本で大量に生産できるエネルギーっちゅうものを考えなければダメだというふうに思ってきたし、オレは言ってきたんだ。
石川 はい。
小沢 だからいま、六ケ所村かな、ガラス固化で地中に埋めるという技術をフランスから導入したけどね、もう40年近く前から言ってきたことなんだ。だけどそれは技術として完成していないんだよ。ガラスに固めて埋めたってね、地震でつぶれっかもしれないしね。だから、高レベル放射性廃棄物っつうのはいまの事故でよくわかったけどもコンクリから鉄骨から、なにからみんななんだよ。だから本当は宇宙に飛ばすのが1番いいんだけども、とにかくこの処理はどこの国もまだ確実な方法は見つかっていないんだよ。まあ、見つかるわけないんだけどな。
石川 この間、三陸に被災地の慰問に行った時、三陸は地盤が固いと聞きました。津波被害を受けなかった地区では地震によって倒壊した家屋は少なかったそうです。岩手に原発がないというのは、先代(小沢佐重喜)だったり、ほかの岩手選出の政治家、小沢先生も含めて、誘致運動を止めたということでしょうか。当時は福島にあれだけ原発を持ってきているのに。
小沢 いや、止めたわけではない。結果として、だな。別に岩手がいいというオファーが強くあったわけでもなかったし、ぜひともほしいということもないし。だから、結果として何もなし。1つはね、むしろ電力会社の方がリアス式海岸があまり適してないと考えた節もあるな。オレも積極的にあれこれ運動はしなかった。
石川 やはり青森に六ケ所村があって、福島に原発があって・・・。
小沢 うん、岩手にはないわな。
石川 世間では「岩手は小沢一郎が思い通りに動かしている」と常に言われています。岩手に原発がないのは、「小沢先生ががんばったから」という都市伝説のような噂もあるらしいのですが、結果的には誘致する機運がなかったということでしょうか。
小沢 オレもあまり積極的に引っ張ってこようという気はなかったな。まあ、あの、みんなアレなんだよ。交付金狙いだから。だから、事故が起きない限りはカネをいっぱいもらうからいいっちゅうことになったけど、いまにして考えれば事故が起きて現地の人も大変だし、国全体が大変なんだ。
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『悪党 小沢一郎に仕えて』マスメディアと東京地検特捜部/石川知裕氏×佐藤優氏 緊急対談〈1〉 2011-07-30 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 --部分抜粋--
『小沢一郎と原子力利権の関わり合いを教えてください』
石川:まさに、この本を読んで欲しいんですが、私も聞きました。若い時に科学技術庁の政務次官をやっていますからね。小沢さんは、『特に積極的に誘致してこようと思わなかったから、結果的に岩手に原子力発電所がなかった』と言っていました。
佐藤:なぜ、積極期にならなかったんだろう。
石川:それも聞きました。『なんとなく来なかった......』みたいな事を言ってましたね。
佐藤:その辺りは勘がいいというか、あまり良い物だとは、思っていなかったことですよね。
石川:それもありますし、あとは岩手県の沿岸て、アワビやウニなどが取れて、比較的お金持ちが多いからかな。
佐藤:「悪党」にこう書いてある、
  “役所はクリーンでコストが安くて、安全なエネルギーであると、宣伝文句を言っていた。今も、その当時もあまり変らないのは、結果的に原発から出てくる高レベル放射性廃棄物の処理には、未だ適当な方策がないんだよ。役所の宣伝文句は別にして、過渡的なエネルギーとして、仕方がない。石油もないからね。だから過渡的なエネルギーとしては仕方がないけれど、いずれ新しいクリーンで、しかも日本で大量に生産できるエネルギーっちゅうものを考えなければ、駄目なんだと思っていたし、俺は言ってきたんだ。”「悪党」より
 ということは、菅(直人)さんの言っていたことを、小沢さんは先取りしていたんだ。
石川:私も秘書時代に原子力関連の人とも会った事がないし、利権には関わっていないはずです。
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2012-08-01 16:38:58


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