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一体改革法案 成立へ〜谷垣氏×野田総理 打算むき出し【中日〈東京〉新聞 核心・社説】2012.08.08/09

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党内反発 ぎりぎり合意 一体改革法案 成立へ
中日新聞 核心 2012/8/9
 消費税増税という悲願に向けて自民党の要求を次々にのむ野田佳彦首相と、自ら決断した合意をほごにしてまで衆院解散にこだわる谷垣禎一自民党総裁。民主、自民両党の交渉は八日夜、党首会談の結果「近いうちに」衆院解散することで合意。消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革の関連法案も成立の運びとなった。党利剥き出しの混乱は結局、国民の負担を強いる法案だけは通し、その他は曖昧なまま収束した。(政治部・岩田仲弘、金杉貴雄)
■再選に危機感
 解散の確約を迫ってきた谷垣氏。党首会談で勝ち取ったのは午前中の「近い将来」を「近いうち」に変更させただけ。
 会談後、「近いうち」をどう受け止めるかを記者団に問われた谷垣氏は「『近いうちに』ということは『近いうちに』だ」と苦笑まじりで繰り返し「(この言葉が)解散の確約でなく何なのか」と語気を強めた。しかし谷垣氏がどう抗弁しても、自民党側が大幅に譲った印象は否めない。
 自民党側が譲歩したのは八日、党参院議員総会などで「政局優先」の対応に批判が噴出したためだ。
 国民に負担を強いる消費税増税について野党として賛成した自民党。選挙基盤の弱い若手議員は苦労して、有権者に理解を求めてきた。それから日がたたないうちに、今度は法案を廃案に追い込むという行動は理解を得られないという思いは、自民党に相当広がっている。
 三党合意の破棄も恐れずに解散を迫る強硬戦術は、執行部内では意思統一されていたが、その他の議員たちには、ほとんど説明されていなかった。気がつけば党内は、早期解散を優先する意見と、解散は求めつつも三党合意を重視すべきだという意見に二分されていた。谷垣氏はそこを見誤っていた部分がある。
 財務相の経験があり増税論者の谷垣氏が、手のひらを返したように解散を主張し始めた理由は「今なら選挙に勝てる」という党利優先の判断と、解散に持ち込めなければ、九月の党総裁選での自身の再選が難しくなるとの危機感からだ。
 党内で「解散の確約は得られなかった」と解釈されれば、谷垣氏は党内での求心力を失い再選に赤信号が灯りかねない。
■異例のカード
 「内閣不信任決議案、首相問責決議案は野党として一番重い決断だ。(自民党が提出を取りやめたことに)感謝したい」
 首相は党首会談後、顔を紅潮させながら記者団に語った。
 衆院解散権は首相専権事項で「伝家の宝刀」といわれる。野党に言われて時期を表明するのは常識的には考えられない。それでも首相は、消費税増税関連法案の成立が困難になったのを受けて八日午前に「近い将来、国民に信を問う」という表現の妥協案を自民党側に伝え、党首会談で「近いうちに」という表現で合意した。
 野党の求めを受けて「信を問う」というカードを切ったのは異例だ。しかも民主党は深刻な分裂状態で、支持率も低迷する今、衆院を解散するのは自殺行為。そのことは首相自身も分かっている。
 首相が解散を確約することについては、解散先送りを目指す輿石東幹事長はもちろん、前原誠司政調会長ら党幹部が軒並み猛反対。女房役の藤村修官房長官さえも「解散を確約するなど一般的にも常識的にも有り得ない話」とクギを刺していた。
 首相は党首会談で具体的な時期には触れなかったが、早期解散とも受け取れる首相の発言に党内の不信感は高まっている。議員総会でも早期解散に反対する声が続いた。党首会談のうち、約八分間は谷垣氏と二人だけで会談したことから「解散の密約が結ばれたのではないか」との疑心暗鬼も広がる。九月の党代表選を前に「野田降ろし」の流れが強くなる可能性がある。
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党首交代なら3党合意は見直しも 民主・輿石氏
日本経済新聞2012/8/9 15:17
 民主党の輿石東幹事長は9日午後の記者会見で、民主、自民、公明3党の党首会談で「社会保障と税の一体改革関連法案が成立した暁に、近いうちに国民に信を問う」ことなどを合意したことについて、9月の民主党代表選や自民党総裁選で党首が交代した場合は合意内容が見直されるとの認識を示した。「2人が替わった場合は2人の話は終わりだ」と述べた。
 輿石氏は3党党首による合意について「一体改革法案を成立させるための合意だったわけで、法案が成立すればそこで一区切りになる」と指摘。民自両党で新たな党首が選出された場合「(合意内容が)継続していると考えられれば、また再度(会談を)やったらいい」と語った。
 これに関連して民主党幹部は同日、赤字国債発行法案や衆院選挙制度改革関連法案の成立にメドがついていないことを念頭に「年内に解散はできるわけがない」との見通しを示した。
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打算むき出し 政局混迷 増税法案 政争の具に 自民 解散要求「今なら選挙勝てる」
中日新聞 核心 2012/08/08
 消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案をめぐる与野党攻防は、国民には理解不能な展開となっている。法案採決前にそれぞれが党利党略をむき出しにする中、増税法案は完全に「政争の具」と化している。分かり難いことばかりの現状の中で、特に分からない三つの「謎」と、その背景を追った。(政治部・岩田仲弘、清水俊介)
? 自民の対応
 今回、特に行動が分かり難いのは自民党だ。自民党は消費税増税が必要との立場で、二〇一〇年の参院選挙で10%引き上げを明確に主張した。国会審議の場でも堂々と訴えていた。
 民主、公明両党との協議は、自民党が主導した部分も多く、主張の多くが盛り込まれた。その自民党が法案成立前の内閣不信任決議案と野田佳彦首相の問責決議案を提出しようとしている。これは三党合意の破棄を意味する。
 そんな対応をとる理由を自民党は「衆院解散の確約がないから」と説明する。三党合意の段階で解散の時期の話し合いはなく、「後付け」の感は否めない。
 自民党が解散にこだわるのは「今なら勝てる」に尽きる。公明党幹部は「自民党の最近の調査では、自民党が過半数近く獲得できるという結果が出たようだ。それで強硬姿勢を取るようになった」と分析。これが本当なら、党利のために自分たちがまとめた合意を蹴散らすことになる。
 自民党の姿勢に対し、支持者の慎重論を押し切ってまで三党合意を優先させた公明党は強く反対。六日夜の自民党との幹事長、国対委員長レベルの会談では、三党合意を破棄するなら自民党との協力関係を見直す考えを伝えた。
 自民党内でも、支持者から激しい批判を受けて三党合意は優先すべきだという意見も高まったため、七日になって「解散の確約がなければ採決に応じない」という条件は取り下げた。だが可決されれば参院審議が止まる問責決議案の提出を検討し続ける。解散の確約がなければ「採決に応じない」が「不信任、問責は出す」に変わったに過ぎない。
? 「呉越同舟」
 七日、自民党よりも一足先にその他の野党各党が不信任、問責決議案を提出した。自民党が提出すると、一時的に不信任二本、問責二本の決議案が提出されることになる。
 採決される時は、慣例では大会派、つまり自民党が提出する決議案が取り扱われることになる。その場合、増税賛成勢力と反対勢力が共闘して決議案可決を図ることになり「何でもありの政界でも、見たことがないような呉越同舟」(民主党幹部)となる。
? 首相の焦り
 深刻な内部分裂を抱える民主党。増税関連法案の参院での採決にあたっては、十分な審議時間を確保し、その間に党内の造反予備軍を懐柔することが必須だった。輿石東幹事長ら執行部は八月下旬ごろの採決を念頭に置いていた。
 一方、首相は自民党の求めに対し、譲歩を重ね採決の前倒しを指示。二十日から十日、さらには自民党が求めている八日の採決を丸呑みした。これは、法案の成立を最重視する首相の焦りが原因だ。
 だが、党内対策はほとんど手付かずの状態のまま、六月二十六日の衆院採決前には首相自らが慎重派らに協力を要請したが、それでも党内の五十七人が反対票を投じた。
 採決を急ぐ首相に対し、党内の反対派、慎重派の不満は高まっており、参院で多数の造反が出る可能性は、むしろ高まっている。こういった首相の姿勢に対し、輿石氏は強い不快感を隠さない。
 さらに、問責決議案が可決されれば採決日程、法案の成否は見通せなくなる。民主党内から「せいては事を仕損じる」とのため息も漏れる。
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消費税増税法案 国民に信を問う潮時だ
中日〈東京〉新聞 社説 2012年8月8日
 内閣不信任決議案と首相問責決議案が提出された。民主党マニフェストに違反する消費税増税の強行は許されない。野田佳彦首相にとって衆院を解散して国民に信を問う潮時ではないのか。
 不信任決議案と問責決議案を提出したのは自民、公明両党以外の野党各党だ。提案理由を「消費税増税は民主党の公約違反で、国民の声に背く野田内閣は信任に値しない」とする。
 不信任決議案はいまのところ否決される公算が大きいが、問責決議は可決される可能性がある。決議には法的拘束力はないものの、可決されればすべての国会審議が止まる。首相は重く受け止めるべきだ。
 消費税を増税する社会保障と税の「一体」改革法案は、二〇〇九年衆院選の民主党マニフェストに反する。盛り込まれておらず、消費税増税はしないと公約して政権に就いたのではなかったか。
 消費税増税に転換するのなら、衆院を解散して国民にその是非を問うのが筋だ。公約違反と理解しながら強行するのは、国民に対するだまし討ちと言ってもよい。
 自民党は首相が衆院解散を確約しなければ、ほかの野党とは別に不信任決議案と問責決議案を独自に提出するという。野田内閣の支持率が低迷するうちに衆院選に持ち込んだ方が党勢拡大が見込めると踏んだのだろう。
 しかし、消費税増税という民主党のマニフェスト違反に加担しながら、解散の確約がなければ「一体」改革法案の成立に協力しないというのは理解しがたい。
 社会保障改革を先送りし、政府や国会の無駄にも切り込まず、消費税だけが増税される、名ばかりの「一体」改革法案は本来、成立させるべきではない。
 とはいえ、国民の生活に大きな影響を与える消費税増税を衆院解散の取引材料にしてもよいのか。自民党の対応は、党利党略との批判を免れないのではないか。
 国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会の仕事は、法律をつくり、国民の生活のために政策を実現することだ。
 しかし、歳入の四割を占める赤字国債発行のための特例公債法案や、衆院「一票の格差」是正など緊急を要する案件も手付かずだ。そんな状況で、与野党は責任を果たしたと胸を張れるのだろうか。
 消費税増税前にやるべき改革、処理すべき案件は数多くある。それをやろうとしない首相にはもはや政権を委ねることはできない。


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