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「強すぎる検察の力」木谷明 最終講義/小沢一郎氏への検察の対応は重大な人権侵害〜政治生命を傷つけた

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「強すぎる検察」の力とは
【私説・論説室から】東京新聞2012年8月6日
 「強すぎる検察(検察官司法)と裁判員制度」と題する冊子を弁護士の木谷明さんから頂戴した。
 元刑事裁判官で、法政大学法科大学院教授を今春、退官し、その最終講義をまとめたものだった。
 木谷さんは裁判官時代に「無実の人を罰しない」ことに傾注し、無罪判決を数多く出した人として、法曹界で知らぬ者はいない。
 冊子の中で、検察官と被告人の関係を「もっている武器がまるで違う」と記し、「大砲と空気銃」と比喩した。国家権力を背景にあらゆる証拠を集める権限が、検察官にはあるのに、被告人にはないからだ。
 トランプにもたとえた。「検察官はエースやジョーカー、キング、クイーン」を独り占めにしている。それに対し、被告人側は「普通の札を二、三枚持っているに過ぎない」のだ。
 トランプの札とは証拠のことだ。裁判員制度導入に伴って、ある程度、証拠を開示する仕組みはつくられたが、全面的な開示とは程遠いのが現状である。
 木谷さんはこう綴(つづ)る。「検察官が弁護人の想像もできないような被告人に有利な証拠を隠し持っていたような場合に、その証拠を出させる方法がない」
 冤罪(えんざい)事件が相次いでいる。東電女性社員殺害事件でも、ネパール人男性の再審開始が決定した。無実の人を罰しないためには…。証拠の全面開示、せめてリスト開示制度を採用するしかあるまい。 (桐山桂一)
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特集ワイド:「小沢元代表は推定有罪」の罪
毎日新聞 2012年04月27日
 東京夕刊
 資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)で検察審査会の議決により強制起訴された民主党の小沢一郎元代表(69)に下された判決は無罪。剛腕、壊し屋などダーティーなイメージがある政界実力者なだけに、検察も、民主党も、そしてメディアも、「推定有罪」で小沢元代表を遇してはこなかったか。【瀬尾忠義】
 ■検察は
 ◇制度悪用の疑念ぬぐえず−−木谷明さん(元裁判官)
 裁判の過程で、小沢元代表の元秘書の衆院議員、石川知裕被告への再聴取で、田代政弘検事が虚偽の捜査報告書を作成し、検察審査会に提出したことが明らかになっている。つまり検察は自らの手を汚さないで、検察審に元代表を強制起訴させたと見られても仕方がない事案だ。検察審は、検察が提出した捜査報告書をウソだとは思わない。もし、検察審が起訴議決すると検察側が見越していたとするならば悪質で、制度を悪用したと言える。無罪判決は当然のことだろう。
 元代表に対する検察の対応は重大な人権侵害だ。検察は自らのストーリーに沿った事実とは違う調書を作成することに抵抗感がなくなっているように感じられる。地検の取り調べや強制起訴で、元代表は首相になるチャンスを失ったのかもしれず、政治生命を傷つけられたと言える。
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正義のかたち:裁判官の告白/2 木谷明さん、30件超す無罪判決 2008-04-13 | 死刑/重刑/生命犯 問題 
 「再審開始すべきだと思った」−−「白鳥事件」の悔い原点
 痴漢冤罪(えんざい)事件を描いて昨年ヒットした映画「それでもボクはやってない」で、周防正行監督が参考にした元裁判官がいる。
 「無罪言い渡しに喜びを感じていた、と言ったら監督に驚かれましたよ」と笑う法政大法科大学院の木谷明教授(70)。現役時代に30件以上の無罪判決を言い渡し、すべて確定した。自分の判断で無辜(むこ)の人を刑罰から解放できたのが喜びだった。有罪判決を出した映画の中の判事の対極に立つ。その原点には「幻の再審」がある。
 確定した判決の審理をやり直す再審。その開始条件を緩和したのが最高裁の「白鳥決定」(75年)だ。
 1952年1月21日、札幌市警本部(当時)の白鳥一雄警部が射殺された。日本共産党札幌地区委員長(94年死亡)が、国外逃亡した実行役に指示したとして逮捕・起訴され、最高裁で63年、懲役20年が確定する。委員長は65年再審請求。札幌高裁に棄却されるが、異議を申し立て、同高裁の木谷さんの部に舞台は移った。
 50冊を超す記録を読み、唯一の物証だった2発の弾丸に疑問を持つ。確定判決は「事件が起きた52年1月上旬に札幌郊外の山中で試射した弾丸」と認定したが、発見されたのは、事件の1年7カ月と2年3カ月後だった。発見されるまで土に埋まっていたのに腐食がない。新たな鑑定書も「長期間土中にあれば、弾丸の表面にひびが入る」と指摘しており、証拠の捏造(ねつぞう)を疑った。
 木谷さんは当時、裁判官3人のうち最も経験の浅い判事補である。合議で、先輩2人に審理のやり直しを訴えたが、理解してもらえない。再審は「開かずの扉」。開始は、真犯人が現れた場合などに限られていた。
 「再審開始すべきだと思った。私の実力不足だった」と木谷さんは悔やむ。決定に「弾丸の疑惑」を盛り込ませたのが精いっぱいだった。その4年後、「白鳥決定」が出る。
 決定は「疑わしきは被告人の利益に」の原則が、再審でも適用されることを明確にうたった。検察側の証拠で考えても「犯人らしい」という程度にとどまるなら被告に有利な無罪に、疑問の余地なく確信できる時だけ有罪に−−。裁判員制度でもこの鉄則は揺るがない。
 木谷さん流の表現では「検察官が有罪と認めさせる十分な証拠を出したか」が裁きの基準だ。弾丸に感じた「証拠捏造」の可能性も忘れず、証拠を深く吟味した結果が、多くの無罪判決につながった。
 裁判員が臨む法廷では、過去の事件を完全には再現できない。だから、と木谷さんは説く。「裁判で絶対的な真実を発見することは不可能と割り切ることが必要。想像で証拠を補ってはいけない」=つづく
 ■ことば
 ◇白鳥決定
 白鳥事件で最高裁は75年、再審請求の特別抗告を棄却するが、確定判決に合理的な疑いを生じさせる新証拠があれば、再審を認める緩やかな基準を示した。これを追い風に財田川、免田など死刑事件でも再審が一時相次いだ。しかし、名張毒ぶどう酒事件で名古屋高裁が一度出た再審開始決定を取り消すなど、扉は再び閉じつつある。
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正義のかたち「重い選択・日米の現場から」「死刑・日米家族の選択」「裁判官の告白」


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