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疎開船遭難事件 尖閣慰霊祭 なぜ日本人を上陸させぬ

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尖閣慰霊祭 なぜ日本人を上陸させぬ
産経ニュース2012.8.20 03:20[主張]
 超党派の「日本の領土を守るため行動する議員連盟」の山谷えり子会長ら国会議員8人が、尖閣諸島の魚釣島沖の船上で行われた疎開船遭難事件の慰霊祭に地方議員や地元漁民らと出席した。
 議員連盟が事前に尖閣の賃借権を持つ国に上陸許可を求めたものの、許可されなかったため、洋上での慰霊祭となった。
 尖閣諸島では、終戦間際に石垣島から台湾に向けた疎開船が漂着し、石垣島の住民が食糧難などで死亡している。その戦争犠牲者を慰霊する大切な行事が魚釣島で行えなかったのは残念である。
 政府は上陸を許可しない理由を「尖閣諸島を平穏かつ安定的に維持・管理するため」と説明している。だが、魚釣島での慰霊祭がなぜ、安定的な維持管理の妨げになるのか全く分からない。尖閣の領有権を不当に主張する中国への配慮があったとすれば、問題だ。
 尖閣は法的にも歴史的にも紛れもない日本固有の領土だ。国会議員も出席する慰霊祭を魚釣島で堂々と行ってもらうべきだった。
 尖閣購入を計画している東京都も、購入予定地を調査するために上陸許可申請を出す方針だ。都の上陸も国は許可すべきである。
 尖閣を行政区域とする石垣市も、固定資産税評価などを目的として国に何度も上陸許可を申請しているが、認められていない。石垣市への上陸許可については遅きに失しているというほかない。
 東京都や石垣市が尖閣で公的な調査を行うことは、そこに日本の主権が及んでいることを海外により明確に示すことにもなる。
 慰霊祭出席者の中から、地方議員ら10人が魚釣島に一時、上陸した。国が上陸を許可していれば、何の問題もない行為だった。
 中国は、洋上慰霊祭までも「中国の領土主権を損なう行動だ」として、日本側に中止を求めた。不当な要求には抗議すべきだ。
 中国では、尖閣に不法上陸した香港の活動家14人が逮捕されたことに抗議する反日デモが拡大している。日の丸が燃やされるなどデモ隊の暴徒化が懸念される。
 14人は香港に強制送還されたが、それで問題は終わらない。
 野田佳彦政権はなぜ、厳正な刑事手続きを踏まず、逮捕した14人を強制送還したのかを、国民に改めて詳しく説明する必要がある。活動家の行動を写したビデオの公開も重ねて求めたい。
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【尖閣に日本人10人上陸】
首相の整合性は… 一時、上陸許可の可能性を示唆
産経ニュース2012.8.19 22:48
 沖縄県・尖閣諸島の魚釣島に日本人10人が上陸したことで、野田佳彦首相は厳しい立場に立たされた。首相は一時、上陸に理解を示していただけに、10人の扱いや中国政府への対応によっては、15日に上陸した香港の活動家を強制送還という穏便ともいえる措置で済ませたこととの整合性について、国会で厳しい追及を受けそうだ。
 首相は7月25日の参院社会保障・税一体改革特別委員会で「慰霊を望んでいる遺族の気持ちは重く受け止めなければいけない」と述べ、上陸許可の可能性を示唆していた。
 しかし、13日、慰霊祭のため上陸許可を求めていた超党派の「日本の領土を守るため行動する議員連盟」(会長・山谷えり子自民党参院議員)に「尖閣諸島を平穏かつ安定的に維持・管理するためという政府の賃借の目的を踏まえると、上陸は認められない」とする斎藤勁官房副長官名の決定書を通達。香港の活動家が上陸したのは皮肉にもその2日後だった。
 政府筋は19日の上陸について「国内問題として冷静に対処する」としている。官邸では桜井修一官房副長官補(安全保障・危機管理担当)が情報収集に当たったが、首相や藤村修官房長官らは姿を見せず、今回も海上保安庁などに対応を任せる姿勢を明確にした。
 ただ、今週には衆参両院の予算委員会で尖閣上陸事件に関する集中審議が予定されており、野党側は強制送還で済ませた首相の「弱腰」を追及し、早期の衆院解散に追い込む構えだ。
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【尖閣に日本人10人上陸】
身の安全と外交的問題 政府「一般」の上陸認めず
産経ニュース2012.8.19 22:46
 尖閣諸島は中国や台湾が領有権を主張し始め、領海内での違法操業などが相次いだことから、政府が平成14年に「平穏かつ安定的な維持のため」として所有者の民間人から魚釣島などを借り上げ管理してきた。
 身の安全が保障できない上に外交上の問題もあるとして、政府関係者や地権者以外の上陸を認めてこず、事実上、立ち入りを排除している。
 行政区域上は沖縄県石垣市に属し、同市も、自然環境などの実地調査を再三にわたり求めているが、政府は認めていない。また、今回の慰霊祭でも一行の上陸許可は認められなかった。
 ただ、東京都の石原慎太郎知事が今年4月、購入計画を表明しており、都が購入に向け近く上陸許可を申請する方針で、政府の対応に注目が集まっている。
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【亡国の領土政策】尖閣諸島に上陸すると長期勾留されるというルールを定着させることが重要だった 2012-08-18 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉 
 【亡国の領土政策】蛮行をお目こぼし 世論戦で再び敗北
 産経ニュース2012.8.18 00:12
 「領土問題は国家主権に関する問題なので、不退転の決意で、体を張って取り組みたい」
 野田佳彦首相は17日午後、官邸で新党大地・真民主の鈴木宗男代表と会談した際、こう決意を示した。
 実際に「体を張って」香港の活動家らを阻止しようとしたのは海上保安官や警察官だったが、日本政府は活動家が海保巡視船に向かってれんがやボルトを投げつける蛮行を不問に付した。しかも、政府は抗議船の非を国際社会に訴える有力な手段である海保撮影のビデオ映像も公開しないと決めた。
 藤村修官房長官はビデオ非公開などについて「海保の判断」としたが、そもそも公務執行妨害という事態に発展させない大方針は、官邸サイドから海保に伝えられていた。海保を所管する羽田雄一郎国土交通相は17日の記者会見で「民間のカメラマン、マスコミが乗っている情報を勘案し、人身事故を起こさないのが基本だ」と認めた。
 抗議船には親中国系の香港「フェニックステレビ」の記者2人が乗り込み、上陸の一部始終を実況していたからだった。
 中国人民解放軍は敵や文民に衝撃を与えて士気をくじく「心理戦」、国際法を利用する「法律戦」、国内・国際世論に訴える「世論戦」の3つによる「三戦」の軍事思想を持つ。日本側が香港メディアの存在を理由に強硬姿勢を取れなかったとすれば中国が世論戦に成功したことを意味する。
 元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は今後も尖閣諸島に中国人が上陸を試みることを考慮し、不法上陸し逮捕された5人に関しては送検し、「背後関係、中国の公権力の関与などを徹底的に調査する必要があった」と指摘する。
 「尖閣諸島に上陸すると長期勾留されるという『ゲームのルール』を定着させることが重要」(佐藤氏)だったわけだが、首相は早期決着にこだわった。
 2年前の中国漁船衝突事件で中国側は船長勾留に反発、レアアース(希土類)の対日禁輸や大手ゼネコンの日本人社員拘束などを打ち出した。当時の菅直人政権は処分保留で釈放し、「弱腰外交」との批判を浴びた苦い経験がある。
 だが、尖閣諸島の購入を表明した東京都の石原慎太郎知事は17日の記者会見で、今回の政府の対応も痛烈に批判した。
 「やっぱり弱腰の外交というか、シナにへつらう情けない姿が出てきた。ただの不法入国者だから帰すというのでは、日本は法治国家といえない」
 実は平成16年3月に上陸した活動家7人を当時の小泉純一郎首相が強制送還させたとき「甘い対応では誤解されかねない」と、政府の「弱腰」を最も強く批判したのが他ならぬ野田首相だった。当時の勢いはどこへ行ったのか。
 香港の活動家の尖閣諸島上陸問題に関する関係閣僚会議は発生から2日後の17日、ようやく開かれた。だが、その場に森本敏防衛相の姿はなかった。防衛省幹部は「呼ばれなかっただけだ。官邸に聞いてほしい」と不快感を露わにした。
 政府筋は、「出席者は野田首相と藤村修官房長官が決めた。不法上陸に防衛相は直接関係ないから参加させなかったのではないか」と語るが、領土主権を脅かす事態への意識の希薄さを浮き彫りにしている。
 海保を所管する羽田雄一郎国土交通相、警察を担当する松原仁国家公安委員長は15日に登庁しなかった。藤村氏は「緊密な連携をとっていた」と問題ないとの認識を示したが、自民党は対応を批判している。
 17日の自民党外交部会・領土特命委員会の合同会議で、新藤義孝委員長代理は「事前に予告され、やすやすと上陸されて何のおとがめもなしに帰すのか」と追及した。海上保安庁や警察庁の担当者は「政治の指示はなく、現場の判断だ」と繰り返すだけだった。
 竹島問題をめぐる関係閣僚に関しても、政府内では韓国の李(イ)明(ミョン)博(バク)大統領が島根県・竹島に上陸した10日の段階で直ちに会議を開くべきとの意見があったが、藤村氏らは当初「韓国側を刺激する」(外務省筋)として消極的で週明けにようやく開かれることになった。
 外務省は尖閣問題でも中国側への抗議を事務レベルにとどめようと腐心した。佐々江賢一郎事務次官は15日夜、程永華駐日中国大使を呼んで抗議したが、玄葉光一郎外相が直接中国側に抗議する場面はなかった。
 玄葉氏は李大統領の竹島上陸には申珏秀(シンガクス)駐日韓国大使や金星煥(キムソンファン)外交通商相に抗議したにもかかわらずだ。
 玄葉氏は17日の会見で「(竹島は)国家元首が上陸した。(竹島と尖閣を)同じように扱うのはどうか」と述べた。領土主権を脅かされている意味では違いがないはずだが…。
 「国境に関しての干渉には国威をかけて対応すべきだ。反論すら出ないと思われた瞬間、なめられる」
 首相は政権交代前の自著で、平成16年3月の中国人活動家7人による尖閣諸島上陸事件で、強制送還を決めた小泉純一郎元首相の対応を批判した。
 首相になった今、小泉氏に向けた批判がブーメランのように野田氏に向かう。
 同じ強制送還でも、首相と小泉氏では対応に大きな違いがある。小泉氏は強制送還を決めた後、記者会見し、自らの「政治判断」を鮮明にした。是非はともかく国民への説明責任は果たしたのである。首相は記者団に「法令にのっとり、厳正に対処する」と述べたものの、小泉氏のように記者会見し、自らの責任を明確にすることはなかった。
 「中国も韓国もロシアも今後は何をやっても日本の話を聞く必要がない状況になった。国を守ることを考えず党内の政治闘争だけやっている民主党政権が続いたことはこの国の不幸だ」
 昨年8月、竹島に近い韓国・鬱陵島を視察しようとして韓国政府に拒まれた新藤氏は合同会議後、ため息をついた。
   ◇
 沖縄県・尖閣諸島の魚釣島に香港の活動家らが上陸した事件は、14人の強制送還で幕が引かれたが、大きな課題を残した。島根県・竹島、北方領土…。領土主権を脅かす事態の前に、日本外交は機能不全を起こしている。
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中国の一貫した謀略戦(長期間かけた法律、世論、心理の三戦)に曝されている日本 尖閣諸島 2012-07-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
 日本を絶体絶命の危機に陥れつつある中国 長期間かけた法律、世論、心理の三戦を実施中
 樋口譲次 JBpress 2012.07.24(火)
 石原慎太郎・東京都知事によって、尖閣諸島の購入計画が明らかにされると、国内では大きな反響と支持の輪が広がり、すでに10億円を超える賛助金が集まっているようである。
 これに対し、中国は当然のように反発を強めているが、尖閣諸島略取の対日戦略は40年余りにわたり終始一貫して展開され、年を追うごとにエスカレートしてきた。その戦略は、いったいどのような思想の下に押し進められているのか?
■中国の三戦、「世論戦」+「心理戦」+「法律戦」
 いつもながら中国に対する控えめな表現が目立つ防衛白書(平成23年版)であるが、中国の「三戦」については、次のように記述している。
 「中国は、軍事や戦争に関して、物理的手段のみならず、非物理的手段も重視しているとみられ、「三戦」と呼ばれる「輿(世)論戦」、「心理戦」および「法律戦」を軍の政治工作の項目に加えたほか、『軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させる』(2008年中国の国防)との方針を掲げている」と。
 1963(昭和38)年に公布された「中国人民解放軍政治工作条例」は、2003(平成15)年に改正され、「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」の実施を明確に規定した。
 過剰なまでにシビリアン・コントロールを強調する戦後の日本にあっては、軍が行う「政治工作」という概念が理解できないかもしれない。
 中国軍の「政治工作」とは、対内的には「共産党の軍隊」であるとの基本原則を堅持するための政治思想教育の徹底であり、対外的には国家目標を達成するため「軍隊の戦闘力を構成する重要な要素」としての軍による政治活動を、前もって相手国(その同盟国を含む)に仕かけることを意味していよう。
 軍による対外的政治工作は、軍事を純粋に軍事力という物理的要素からだけではなく、心理的、政治的要素にも重きを置いて考える「孫子」の戦略思想を反映したものである。
 時々、中国政権内部における軍の独走が話題になる。しかし、「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」を代表的手段として行われる軍の政治工作は、軍単独ではなく、政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に絡ませ、国家のあらゆる機能を駆使して展開される。その策動の目標の1つが、まさに尖閣諸島なのである。
■「孫子」の「戦わずして勝つ」の現代的実践としての三戦
 一般的に、戦争は、相手国を軍事力で撃破して目的を達成するものと考えられがちだ。しかし、孫子は、相手国の占領支配を目的とする戦争においては、敵国を保全したまま勝利を獲得するのが最上の策であると主張する。
 つまり、「不戦而屈人之兵、善之善者也」(「孫子」第3章謀攻篇)、すなわち「戦わずして勝つ」ことである。
 中国では、王朝の交代のたびに繰り返されてきた残虐な戦いで、何千万とも言われる大量の人命と莫大な財産が失われてきたが、この歴史が、上記の考えを補強してきたのは、なるほどとうなずけるところである。
 ヘンリー・キッシンジャー博士は、米国の親中派の代表と目される重鎮であるが、回顧録「中国(上)」(岩波書店)の中で、「中国人は、常にぬけ目のないリアルポリティクス(現実的政治)の実行者である」と喝破している。
 古来、中国は、権謀術数の国であり、極めて策略的である。そして、中華人民共和国(人民解放軍)を作った毛沢東がそうであったように、中国は「孫子」の忠実な実践者であり、その「戦わずして勝つ」の現代的実践の手段が、中国が三戦として掲げる「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」なのである。
 米国防省は、2010年8月の「中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告」の中で、中国の三戦について、次のように説明している。
 「世論戦」は、中国の軍事行動に対する大衆および国際社会の支持を築くとともに、敵が中国の利益に反するとみられる政策を追求することがないよう、国内および国際世論に影響を及ぼすことを目的とするもの。
 「心理戦」は、敵の軍人およびそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させようとするもの。
 「法律戦」は、国際法および国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する反発に対処するもの。
 いずれにしても、中国の三戦を一言で置き換えれば、「謀略戦」で勝つということである。「謀略戦」は、平・戦両時にわたって展開されるが、特に、平時の戦いにおける主要手段として重視して運用される。
 「謀略戦」は、「間諜」(スパイ活動)や「詭道」(相手を偽り欺くこと)などとともに併用され、その狙いは、相手国の意図を測り、油断を誘い、戦備を弱め、そして戦意を挫くことにある。同時に、相手国の同盟関係(日米同盟)を機能不全とし、あるいは解体するにある。
この「謀略戦」は、尖閣諸島などを標的に、すでに我が国に対して広範に仕かけられており、明らかに現在も進行中である。
 そして、今後も執拗に続いて行くものと覚悟しなければならない。従って、その狙いと実態を十分に承知し、これに打ち勝つ対中戦略を練り、国を挙げて対応する体制を整備することが必要である。
■謀略戦に乗じられやすい民主国家の弱点
 建国以来、米国が、唯一敗北を味わったのはベトナム戦争である。
 「孫子」の弟子である北ベトナムのホー・チ・ミン大統領やボー・グエン・ザップ将軍は、その間接的な攻撃と心理戦の原則を自分たちの戦争に適用した。
 そして、その巧妙な報道操作によって、南ベトナム国家警察本部長官によるベトコンの銃殺、「ソンミ村事件」に代表されるベトナム住民の虐殺、爆撃で焼き出され裸で泣きながら逃げ惑う少女の姿など、参戦の大義に対する疑念と戦争の残虐さをアピールする映像がテレビなどで繰り返し米国のお茶の間へ持ち込まれた。
 米国内では、ベトナム戦争派兵の支持率は急速に低下し、反戦の声は高まり、厭戦思想(気分)が全国規模にまで拡大して米軍の撤退を早めた。ベトナム戦争は、史上初めて、戦場ではなく新聞の紙面やテレビの画面で勝敗が決まった戦争(「テレビ戦争」、「リビングルーム戦争」)だと言われている。
 1993年10月、「ブラックホーク・ダウン」で有名になったソマリアの「モガディシュの戦闘」でも同様なことが起こった。米軍の「MH−60ブラックホーク」がソマリア民兵に撃墜された。そして、18人の米兵が殺戮されて市中を引きずり廻されるテレビ映像が公開された。
 米国民の間には衝撃が走り、一挙に撤退論が噴出して、ソマリア内戦で発生した難民に食糧援助を行うために参加した平和維持活動(PKO)の目的を果すことなく撤退を余儀なくされた。自由な民主社会における情報の持つ威力である。
 一方、中国あるいは北朝鮮のように、共産党(朝鮮労働党)一党独裁で、思想・言論・報道の自由を認めず、強度の統制を行う国家では、このような事態には陥り難い。ちなみに、ソ連邦の崩壊は、「情報公開(グラスノスチ)」が大きなきっかけになったと指摘されている。
 このように、強権支配の全体主義国家と自由な民主主義国家との抗争においては、非対称の政治社会体制が戦いの帰趨を左右する大きな要因となり得る。
 特に、意見の多様性を認め、情報の自由な発信・交換を認める国家では、政治家、軍隊、国民そしてマスコミまでもが謀略戦の格好の対象となり、敵に乗じられやすい社会環境が存在する。
 秘密保護法もスパイ防止法もない我が国は、その不備を深刻に認識し、法制定やマスコミのあり方などを含めて弱点の解消策を真剣に検討する必要がある。
■我が国への「三戦」の仕かけ〜その実態
 そこで、現在、日中間で最大の懸案事項となっている尖閣諸島問題を題材に、中国の「謀略戦」の実態について公刊資料を基に概説してみよう。
 尖閣諸島は、歴史的にも、国際法的にも我が国の固有の領土であり、我が国が実効支配している。
 この尖閣諸島に対して、中国は、自国領土である根拠も、実体も皆無であるにもかかわらず、あたかもそうであるかのように捏造し、略取する「謀略戦」を大胆かつ執拗に仕かけている。誠に不届き千万、厚顔無恥な国家と言わざるを得ないのだが・・・。
 そもそも、中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは1971年12月である。1968年秋、日・台・韓の専門家が中心となり、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の協力を得て行った学術調査の結果、東シナ海に石油埋蔵の可能性があるとの指摘がなされたのが発端だ。
 1972年の日中国交正常化交渉第3回田中・周会談において、周恩来首相は「尖閣諸島問題については、・・・石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない」(服部隆二著「日中国交正常化」中公新書)とその事実を認めている。
 そのうえで中国は、当時、中ソ対立の激化にともない、対ソ戦略上日中講和を急いだため、自ら本問題の一時棚上げを提案した。
 しかし、中国の「謀略戦」は、1970年代初頭からすでに始まっていた。その主要な事象を追ってみよう。なお、文末の括弧内は、三戦のうち、どの戦いに該当するかを示している。
 1971年、米国サンフランシスコで中国人留学生らが尖閣諸島は中国固有の領土であると主張するデモを行い、これが世界中の中国社会にも拡大されて「保釣運動」へと発展した(世論戦)。
 1978年には、約100隻の中国漁船が尖閣諸島に接近し、領海を侵犯して違法操業を行った。この後、中国人活動家などの領海侵犯が繰り返されていく(世論戦、心理戦)。
 1992年、中国は「中華人民共和国領海法」を制定し、釣魚列島(尖閣諸島)が自国領であると規定した。(法律戦)なお、翌年(1996年)、国連海洋法条約が発効し、我が国は尖閣諸島周辺における排他的経済水域を設定した。
 2003年、厦門市で開催された全世界華人保釣フォーラムにおいて「中国民間保釣連合会」の結成を決定した(世論戦)。
 翌年、この連合会などが準備した抗議船2隻は、領海を侵犯し、魚釣島から約3海里地点に20個の石碑を沈めている。尖閣諸島には、かつて中国人が居住していたとの証を作為するためである(法律戦)。
 本問題とも関連するが、中国は、2004年4月、我が国の沖ノ鳥島は「島」ではなく「岩」であり、日本の領土とは認めるが、排他的経済水域は設定できないと主張した。
 そして、2009年8月の国際連合大陸棚限界委員会において、沖ノ鳥島を「人の居住または経済的生活を維持できない岩」であると認定するよう意見書を提出している。
 その主張に反して、南沙諸島西北部の群礁である赤瓜礁には人工建造物を構築しており、自国に有利なように国際法を解釈し、あるいは自国の主張を裏付ける国内法の制定を行うなど、近年積極的な法律戦を展開するようになっている。
 2008年には中国国家海洋局所属の海洋調査船2隻が、尖閣諸島付近の領海を約9時間にわたって侵犯した。これ以降、中国は国家機関を表に出して主権を主張するようになり、行動は一段とエスカレートした。
 我が国は、翌年、海上保安庁による同諸島周辺の監視態勢を強化するため、PLH型巡視船の常駐化を決めたが、中国外交部は北京の日本大使館に対し「日本が行動をエスカレートさせれば、中国は強硬な反応を示さざるを得ない」と、恫喝まがいの抗議を行った(心理戦、世論戦)。
 2010年9月7日、中国漁船が領海を侵犯し、海上保安庁の巡視船の停船勧告を無視して逃走する際、巡視船に衝突を繰り返したため、同船長が公務執行妨害で逮捕・勾留されるという「中国漁船衝突事件」が発生した。
 中国政府は、即座に複数の報復措置を繰り出した。
 日本との閣僚級の往来停止、航空路線増便の交渉中止、石炭関係会議の延期、日本への中国人観光団の規模縮小、在中国トヨタの販売促進費用を賄賂と断定、日本人大学生の上海万博招致の中止、中国本土にいたフジタ社員4人をスパイ容疑で身柄拘束、レアアースの日本への輸出停止などである。
 そして、9月10日には中国の漁業監視船「漁政201」と「漁政202」が尖閣諸島付近の日本の接続水域に侵入するとともに、18日、中国国内4都市では数百人規模の反日デモが組織され、21日、ニューヨークを訪れていた温家宝首相は「我々は(日本に対し)必要な強制的措置を取らざるを得ない」と述べた(心理戦、世論戦)。
 これに屈したかのように、民主党政権は、25日、中国人船長を処分保留のまま釈放した。しかし中国政府は、中国人船長逮捕に関して日本に謝罪と賠償を要求するとともに、尖閣諸島海域における「漁政」によるパトロールを常態化させることを決定した(心理戦、世論戦、法律戦)。
 昨年(2011年)、香港の民間団体「保釣行動委員会」は、世界各国の保釣運動6団体を結集して「世界華人保釣連盟」(会長は台湾人)を設立した。両岸問題を抱える中台であるが、こと尖閣諸島問題に限ってはこの外交的演出を通して共闘関係にあることを見せ付けようと腐心している(世論戦、心理戦)。
 この年は、漁業監視船に加え、中国海軍Y8情報収集機とY8哨戒機、国家海洋局のヘリコプターそして海洋警備機関である海監所属の「Y12」プロペラ機など航空機による活動が活発化してきた。
 また、中国の海洋調査船「北斗」と「科学3号」が我が国の排他的経済水域内でワイヤー状のものを下し曳航しているのが度々確認されており、海洋調査を本格化させているのは明らかだ。これらの諸活動が、軍の統制下にあることは周知の事実であり、その行動の三次元化(立体化)が顕著となっている(心理戦、世論戦)。
 今年(2012年)になって、中国政府および政府系報道機関は、初めて釣魚列島(尖閣諸島)を、チベット・新疆ウイグル自治区および台湾と同じように中国の「核心的利益」と表現するようになった。
 3月には、中国国家海洋局所属の「海監50」と「海監60」が我が国の接続水域に侵入し、このうち1隻が25分にわたって領海を侵犯した。本行動について、同海洋局の海監東海総隊責任者は「日本の実効支配打破を目的とした定期巡視」と述べるまでに至っている。
■最後は、心理的な戦いだ
 「孫子」は、中国の春秋時代(紀元前8世紀〜)末に呉王闔廬(こうろ)に仕えた兵法家・孫武が書き残した兵法書と伝えられている。その「孫子」以前に成立していたとされる「囲碁」は、中国人の戦略的思考を色濃く投影している。
 碁盤上では、同時に数か所で異なった戦いが繰り広げられるが、それらは相互に絡み合って展開され、最後は支配した領域の多寡をもって相対的優位を争う戦略的包囲戦である。
 また、日本の「将棋」や西洋の「チェス」を短期決戦とすれば、「囲碁」は長期持久戦である。
 「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」は、独立した概念のように分類されているが、尖閣諸島問題に関する中国の対日戦略に見られる通り、実際は相互に密接不可分の関係にあって、三位一体として運用される。中国の三戦は、まさに「囲碁」のゲームの理論に沿って展開されるのである。
 「世論戦」は「心理戦」と「法律戦」の展開を促進するため国内外における同調意見の高まりを作為して相手の敵対心を弱め、「心理戦」は「世論戦」と「法律戦」の遂行を可能とするよう相手の意識を攪乱・操作し、「法律戦」は「世論戦」と「心理戦」を助長するための法的布石を打つという具合である。
 このように、中国の三戦は、戦略的包囲戦ならびに長期持久戦として巧妙にかつ何年もかけて忍耐強く遂行される。そして、「相手国の為政者と国民の目を曇らせ、心を腐らせる」ことを狙いとし、「熟柿(膿み柿)」になって落ちるのを待つ。
 すなわち、敵を絶体絶命の窮地に誘いこみ、戦う前にその軍隊や国が無傷のままで降伏するように陥れるのである。その要訣は、大きな軍事力を背景とした心理的な戦いをもって政治目的を達成することにほかならない。
 我が国が、中国の一貫した謀略戦に曝されている重大な事実と深刻な実態を、政府はもとより、国民も重々肝に銘じなければならない。
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日本抹殺を目論む中国に備えはあるか?今こそ国家100年の計を立てよ、米国の善意は当てにできない
 JB PRESS 2011.01.12(Wed) 森 清勇
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尖閣衝突事件 公訴棄却/日本という国は国家主権にかかわる問題でも「押せば法を曲げてでも退く」 2012-06-09 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉


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