決められない「反野田」 民主代表選 「原発」「消費税」政策面で違いなし
中日新聞【核心】2012/09/08 Sat.
野田佳彦首相が七日、民主党代表選に再選を目指す考えを表明し、政権与党党首選びが始まった。国民に約束していない政策を、世論や党内の反発を振り切って進めてきた野田首相。党内には相当程度の反野田勢力がいるが、対立候補として白羽の矢が立った細野豪志環境相は結局、不出馬。その後は有力な候補を絞り込むことができずにいる。民主党の現状をさらけ出すような形で「党の顔」選びが進んでいる。(政治部・城島建治、清水俊介)
■71人が離党
二〇一一年九月に就任してからこの一年。
野田氏は消費税増税法を成立させ、関西電力大飯原発の再稼働に踏み切った。
「決められない政治からの脱却」といえば聞こえはいい。だがこの一年、野田氏の政権運営に対する批判などを理由に離党した国会議員は計七十一人。二〇〇九年八月の衆院選で獲得した三百超の議席は二百五十を割り込み、過半数割れも現実味を帯び始めた。
そして共同通信が行った最新の世論調査で内閣支持率は26・3%に低迷している。
二つの数字は野田氏がこの一年、世論と党内の意見を軽視してきたことを物語る。本来なら再選を目指すことさえも許されない状況だが野田氏は七日の記者会見で「経済再生、行政・政治改革と一体改革、震災復興と原発事故との戦いを成就させる道筋を付ける」と続投を目指す考えを表明。党内でも野田氏再選を予測する声が多い。
■自己矛盾
細野氏擁立論が高まったのは、党運営への批判とともに「野田氏では衆院選に勝てない」という思いが党内に広がったから。四十一歳と若い細野氏が「選挙の顔」(党中堅)として「よりまし」に映った。
だが、その細野氏も野田氏への対抗馬として立候補する資格があったとは言い難い。
細野氏は野田内閣の発足当初から原発事故担当相を務めた。首相が原発政策にはあまり関心がない中、仙谷由人党政調会長代行らとともに政権のエネルギー政策を牛耳る「チーム仙谷」の主要メンバーとして大飯原発再稼働を決めた。
一方、消費税増税法にも閣僚の一人として賛成の立場。野田氏の政策を批判すると自己矛盾に陥ってしまい、代表選を戦う「大義」はない。
■有資格者
細野氏の不出馬が決まり「反野田」の勢力は迷走する。首相への不満と、このまま衆院選を迎えることへの不安は、党内ではむしろ広がっている。「脱原発」「消費税増税見直し」という政策の対立軸を立てやすい。
だが、その力を結集する動きにならない。七日、原口一博元総務相、赤松広隆元農相、馬淵澄夫元国交相が出馬に意欲をみせた。だが反野田勢力が乱立すれば、野田陣営を利するだけだ。
この三人も、この一年の政治行動をみると「脱原発」「消費税増税見直し」の先頭に立つ適任者とは言い難い。
大飯原発の再稼働に反対する民主党の有志議員約百二十人が六月、首相に提出した反対署名活動に賛同したのは三人のうち馬淵氏だけだ。消費税増税法の衆院採決で造反したのは、棄権に回った原口氏のみ。赤松氏と馬淵氏は賛成した。
原口氏は七日、代表戦を目指すにあたり、消費税増税の前提となる民主、自民、公明の三党合意破棄と脱原発を掲げる考えを示した。だが消費税はともかく「脱原発」について積極的な発言はしておらず、にわか仕立ての印象は否めない。
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◆ 再稼働5人組「チーム仙谷」枝野・細野・古川元久・斎藤勁/霞が関(財務省 勝栄二郎)・財界(米倉)同調 2012-04-11 | 原発/政治
再稼働「5人組」仙谷氏ら
中日新聞 朝刊2面 2012年4月11日Wed.
関西電力大飯(おおい)原発の再稼働問題で、野田佳彦首相と関係三閣僚が頻繁に会合を開き、議論している。だが、再稼働問題は実質的には仙谷由人党政調会長代行が中心となる通称「五人組」が、水面下で議論を仕切っている。そして首相らの四者の協議は、それを追認するような形だ。まさに政府・与党、さらに財界、霞が関が一体となって「再稼働ありき」を進めようとしている構図が浮かび上がる。(城島建治、関口克己)
野田首相、藤村修官房長官、枝野幸男経済産業相、細野豪志原発事故担当相。この四人の協議が再稼働を決める。
だが四者協議の議論を先導し、事実上政権内をまとめる枠組みが、昨年秋、非公式に出来上がっている。
四者協議のメンバーでもある枝野、細野の両氏と、仙谷氏、古川元久国家戦略担当相、斎藤勁官房副長官の五人組。リーダー格は仙谷氏で「チーム仙谷」とも呼ばれている。
仙谷氏は国家戦略担当相、官房長官、党代表代行などの要職を歴任。枝野氏、古川氏も一員の前原誠司政調会長を支持するグループを束ねている。昨年八月の党代表選では決選投票で野田氏支持に回り、首相誕生の立役者となった。その政策力と政治的腕力には野田首相も一目置く。
仙谷氏は菅政権で官房長官、副長官としてエネルギー政策を担当し、官邸を去った後も仕切り役を続ける。野党時代から電力会社とのつながりがあり、霞が関や党内ににらみが利く仙谷氏が頼られ続けている格好だ。
野田首相と藤村氏は昨年末以来、消費税増税問題に忙殺されてきた。そのこともあり再稼働問題は長い間、五人に任されてきた。
五人の議論は人目につきにくいホテルなどが選ばれる。東京電力をどう再建するか。電力会社の地域独占体制をどう破るか。そして再稼働問題。政府の新成長戦略の旗振り役を担ってきた仙谷氏は、電力不足は経済成長の阻害要因になると考えている。早い再稼働を前提に議論を進めてきた。そして、一連の議論は党内でも、知る人は少数にとどまる。
■仙谷氏ら、4者協議お膳立て
五人が出す方向性を正式に認める形の四者協議も再稼働を前提として生まれた。
昨年七月。九州電力玄海原発2、3号機(佐賀県玄海町)の再稼働が政治日程に上っていた時だ。
当時の菅直人首相は閣内に根回しなく「新たなルールを作って、国民が納得できる判断が出るよう指示する」と表明。再稼働を考えていた他の閣僚と衝突した。当時の菅氏は、脱原発を進めて延命を図る野心もあり、衆院解散も頭をよぎっていた。
この時は当時官房長官だった枝野氏が、再稼働の決定は、首相だけでなく官房長官、経産相、原発相を含めた四人で決定することを提案。菅首相にのませた。つまり四者協議は脱原発に走る菅氏を止めるためにできた。再稼働のツールだった。
四者の協議は四月三日の初会合後、九日までに計四回、慌ただしく回数をこなしているが、各回の所要時間は平均約一時間。首相が枝野氏に求めた新しい安全基準も、関西電力に求めた安全対策の工程表も、指示を待っていたかのように次の会合までに提出されるなど、出来レースを思わせる展開が続いている。
■霞が関・財界同調
経団連の米倉弘昌会長ら財界首脳は「安定した電力供給がなければ、生産拠点の海外移転が加速する」などと、政府に圧力をかけ続けている。
そんな経済界の動きを、経産省は歓迎している。監督官庁として稼働する原発をゼロにしたくない。五月五日、北海道電力泊原発3号機が停止するまでに大飯原発が再稼働しなければ全国で五十四基ある原発は一基も動かなくなり「原発なしでも大丈夫」という機運が高まる。
その事態を避けたいという利害では財界と一致する。
経産省だけでなく財務省も後押ししている面がある。総合特別事業計画で、政府は今夏に一兆円規模の公的資金を投入する方針だが、再稼働しなければ、東電は安定経営ができず、さらに税金投入が必要になると想定しているからだ。財務省の勝栄二郎事務次官も野田首相に直接、再稼働を働きかけている。
オール財界、オール霞が関が、もともと再稼働をめざす政権を後ろから押している。
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