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石原伸晃を襲う“谷垣の怨念”!謀反と長老支配復活への逆風/「返り忠」と「謀反」

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自民・石原を襲う“谷垣の怨念”!謀反と長老支配復活への逆風
zakzak2012.09.11
 自民党の石原伸晃幹事長(55)は11日夕、党本部で、総裁選(14日告示、26日投開票)への立候補を正式表明する。党内長老グループの支持をはじめ、消費税増税を完遂させたい霞が関も好意的といい、有力候補に躍り出そうだ。ただ、谷垣禎一総裁(67)を出馬断念に追い込んだ手法は、永田町に新たな怨念を生んだ。石原氏に対する「平成の明智光秀」という異名も定着し、「長老支配の復活」に対する党内の抵抗感も根強い。次期衆院選をにらみ、石原氏には逆風も吹き始めている。 
 記者「出馬しないということで、石原幹事長を支援するのか?」
 谷垣氏「私は執行部の路線が明確にならなくなることを心配しているということは申し上げておく」
 10日午前の出馬断念会見、谷垣氏はあいまいに応じた。しかし、側近議員が会見後に、石原氏支持に回らないように念を押すと、谷垣氏は「それ(=石原氏支持)は絶対ない」と明言したという。「谷垣総裁が出馬するなら支援する」と公言していながら、いつの間にか寝首をかきに来た“光秀”への憎悪がにじんでいた。
 谷垣氏の決断を受け、すでに出馬表明している町村信孝元官房長官(67)は10日、「総裁の苦渋の決断の心中は察して余りある」と語った。山本一太前参院政審会長も同日、「仮に、長老たちから何らかの圧力があったとしたら、大問題だ」と、長老支配復活への批判を展開した。
 谷垣氏支持派は同日夜、都内のホテルに集まり、「伸晃許すまじ」で一致結束したという。
 石原氏の出身派閥・山崎派は11日昼に緊急総会を開き、石原氏への支持を決める。これを受け、石原氏は同日夕、出馬会見を開く。当初は10日に会見を予定していたが「谷垣氏が断念した当日では、党内外の批判を招きかねない」(周辺)として延期していた。
 父は石原慎太郎東京都知事、叔父は俳優の石原裕次郎という「石原ブランド」で、高い知名度を誇る石原氏。国交相や政調会長、幹事長を歴任してきたが、政治家として突出した実績はなく、代わりに目立つのは失言・暴言の類だ。
 3000人近い犠牲者を出した米同時多発テロを「歴史の必然として起こった出来事」(昨年9月、青森県での講演)といい、福島原発事故に関連しては「市民に線量を計らせないようにしないといけない」(同、NHK番組)と発言。胃ろう患者を「映画で、寄生したエイリアンが人間を食べて生きているみたい」(今年2月、BS番組)と語ったことは、政治家以前の問題がありそう。
 ただ、森喜朗元首相や古賀誠元幹事長、青木幹雄元参院議員会長といった長老グループへの「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」を欠かさず、寵愛され、さらに中堅・若手十数人による「勁草(けいそう)の会」といった支持グループも持っている。
 石原陣営の戦略は、山崎派と青木氏が影響力を持つ額賀派参院議員、勁草の会のメンバー、東京都選出議員を中核部隊にして党員票と議員票を固め、第1回投票で2位以内を確保する。決選投票では、森氏や古賀氏の支持を結集して勝ち抜く−というもの。まさに、派閥の合従連衡的な思考だ。
 こうした情勢で、石原氏は勝ち抜けるのか。
 政治評論家の浅川博忠氏は「『谷垣降ろし』『長老支配復活』のダメージは大きい。石原氏への逆風は強まっており、本命から転落しつつある」といい、こう解説する。
 「これまで、党員票は石破茂前政調会長(55)がトップで、国会議員票では石原氏が1位とみられていた。石原ブランドや陽性の性格から、国会議員らは『総理としては疑問だが、選挙の顔にはいい』と受け止めていた。ところが、本能寺の変で主君を討った逆臣イメージや、『石原氏=長老支配復活』という報道が繰り返され、情勢は変わりつつある。次期衆院選が先送りになりそうなこともあり、『政策に詳しい石破氏の方がいいのでは』という見方が広がっている」
 総裁選をめぐっては、町村氏と石破氏がすでに出馬表明している。
 安倍晋三元首相(57)は11日午前、陣営幹部らと国会内で会合を開き、12日の正式表明に向け、推薦人名簿の確認など準備を進めた。林芳正政調会長代理(51)も同日、出馬に必要な国会議員20人の推薦人確保に向け協力を要請している。大激戦は避けられない様相だ。
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【歴史の交差点】明治大特任教授・山内昌之 「返り忠」と「謀反」
産経ニュース2012.9.11 03:13
 まさに政治の季節である。政治家というよりも政局家の多い日本のポリティシャンには、まず足元で自党の党首選挙が控えている。そして、「日本維新の会」の発足を迎えて心穏やかでない国会議員もいるはずだ。
 この間の新党騒ぎや谷垣禎一総裁の出馬断念をめぐる混沌のなかでも、人間の立ち居振る舞いから政治家としての器量や性格が透けてみえるのは、歴史学者としてまことに興味が尽きない。
 9日に国政新党・日本維新の会に合流した民主党議員で目を引いたのは松野頼久氏である。氏は鳩山由紀夫元首相の官房副長官であり、鳩山氏の側近と謳(うた)われる人だったはずだ。沖縄での記者会見の際にも首相の後に立ちながら、抑止力が必要という首相の説明を聞くテレビ映像を記憶している人も多いだろう。
 松野氏が維新の会に移るというのは、政治家鳩山氏の能力と将来を見限ったことを意味するのだろうか。
 仮にも内閣総理大臣を務めた人物に見切りをつけるとすればよくよくのことだ。氏の振る舞いは、戦国時代でいえば「返り忠」に近いものである。主君・鳩山氏の心中を聞いてみたいものだ。
 他方、自民党の総裁選挙で、谷垣総裁が信任し幹事長に抜擢(ばってき)していた石原伸晃氏の立候補を明智光秀に擬(なぞら)える人たちもいる。主君への「謀反」だと言いたいのだろう。
 返り忠なら元の主人に再び帰参(きさん)することもある。織田信長にとっての柴田勝家、徳川家康に対する本多正信のように、再び帰参して忠義を励む臣下もいた。しかし、謀反は主の権力を実力で簒奪(さんだつ)する反乱である。
 返り忠なら主君を一時的に裏切って姿をくらましても、主の生命までを自ら奪おうとはしない。だが、謀反となれば命の遣(や)り取りにかかわる真剣勝負の世界になる。政界と政治生命の場合も同じである。
 選挙手続きに従って党総裁に立候補する行為を謀反に擬えるのは穏当でないかもしれない。石原氏には、自民党の党勢挽回に貢献した谷垣氏を補佐してきた功績もある。しかし、氏が首相の地位がちらつく最短距離の幻想に目がくらんで谷垣氏に挑戦したのは、武士がいちばん嫌う「盾裏(たてうら)の反逆」と言えば厳しいだろうか。
 同じ政策と主張を掲げ総裁として仰いだ人間を立候補断念に追い込む行為は、自分を要職へ引き立ててくれた人間を政権交代前夜に裏切る行動にほかならないからだ。
 この点で、民主党代表選で一時有力対抗馬と目された細野豪志環境相兼原発事故担当相が野田佳彦首相への挑戦を断念したのは、「盾裏の反逆」として記憶される可能性の政治的意味をぎりぎりで理解したからかもしれない。
 閣僚や党三役を務めることは、首相や総裁の掲げる政策や理念の実現に邁進(まいしん)することを意味する。謀反をするなら最初から無役に徹し自己の信念に忠実であればよいのだ。
 それにしても、返り忠をしても信長をまた裏切り謀反した荒木村重や松永久秀のような事例もある。政界がいくら離合集散の世界であるにしても、返り忠や謀反の在り方にも政治家の器量や識見が現れるのは興味深いことだ。(やまうち まさゆき)
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