「理」と「情」のはざまで
政治部 足利浩一郎
「理」と「情」のバランスをどう取るか。誰もが、人生の節目、節目で悩まされる。
夏目漱石の「草枕」の冒頭にこんなくだりがある。
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される」
理性だけで物事を判断すると人間関係にひびが入るし、他人の情を重んじるとそれに振り回されてしまうという意味だ。
この半年の間に2度も、漱石の言う「理」と「情」の間で引き裂かれるような思いを経験した国会議員がいる。民主党の階猛衆院議員だ。
最初に訪れた試練は、民主党を離党して新党「国民の生活が第一」の代表となった小沢一郎氏との決別である。
6月末、野田首相が「政治生命を賭ける」と言った消費税率引き上げ関連法案の衆院採決をめぐり、執行部と距離を置いていた小沢氏は同法案への反対票を投じ、ついに離党した。
小沢氏の側近だった階氏は、採決における可否の対応は小沢氏に同調したものの、離党・新党結成という展開については、自らが信じる政策の実現には「民主党に残るのが最善策」と考え、小沢氏とたもとを分かつ決断をした。「情」よりも「理」を優先させたのだ。
階氏の決断に対し、小沢氏は新党の代表として、次期衆院選では階氏の選挙区であり、かつ、小沢氏の影響力が色濃く残る衆院岩手1区に、「国民の生活が第一」から"刺客"を対抗馬として擁立する考えを示した。
「道が分かれるということで、小沢先生には厳しい言葉も頂いた。厳しい態度をとられるでしょう」と、「報い」を覚悟していた階氏だが、刺客が放たれたという現実は、精神的に相当応えたようだ。
重要法案での造反を「理」と呼ぶことには、異論もある。むしろ、その時点では、小沢氏との長年の関係に根ざす「情」が勝ったのかも知れない。ただ、党代表である野田首相が政治生命を賭けた法案への造反に対する民主党執行部の処分は驚くほど甘かった。この政党の規律のなさは、「理」でも「情」でも説明しにくい。残ったのは、階氏に対する党内の冷ややかな視線だけだった。
そんな階氏を気に掛けていたのが、細野豪志原発・環境相だ。
9月21日の民主党代表選では、中堅・若手から、細野氏に出馬を要請する声があがった。階氏もその一人だ。これに対し、「福島の復興に専念したい」と土壇場で立候補を断念した細野氏は、仲間との「情」よりも、原発事故の担当相としての「理」を重んじたように映った。
苦渋の撤退を伝える細野氏を前に、階氏は自らの小沢氏との離別の経緯を思い、複雑な気持ちだった。
「理」と「情」の間で再び引き裂かれた階氏の姿を、周囲は「茫然自失の状態だった」と表現した。
「理」と「情」の間で翻弄される人生を、漱石は「とかくに人の世は住みにくい」と書いている。
階氏もきっと、「世の中の住みにくさ」を味わったに違いない。
9月17日、階氏の選挙区に、細野氏が駆けつけ、街頭演説やミニ集会に終日つきそう姿があった。期待に応えられなかったことへのせめてもの罪滅ぼしの意味もあったのだろう。知名度の高い応援弁士の友情あふれる来訪は、かつて「小沢王国」と呼ばれた岩手での孤独な戦いを続ける階氏には、心強かったはずだ。
「理」と「情」はいつも背中合わせで、損得だけでは割り切れない。住みにくいと思うことも多いが、住みにくさばかりが、世の中でもない。
(2012年9月18日 読売新聞)
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◆ 岩手日日新聞 解散・総選挙へ態勢固め/「国民の生活が第一」小沢一郎・畑浩治/「民主」黄川田徹・階猛 2012-08-29 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
解散・総選挙へ態勢固め 衆院議員任期満了まで1年
岩手日日新聞(08/29)
衆院議員の任期は29日で、あと1年となった。本県でも民主、自民、新党「国民の生活が第一」、共産の各党が複数選挙区で候補擁立を図り、態勢固めに入っている。特に本県全4選挙区の議席を独占していた民主は、消費増税関連法案の採決をめぐり小沢一郎元代表が離党。同党県連、所属議員が完全に分裂した。民主は、分裂で空白となった2区と小沢氏の4区に候補を立てられるかが焦点。民主分裂劇を尻目に前回、議席を失った自民は全4選挙区に候補を立て議席奪還を狙う。小沢氏が立ち上げた新党は民主残留議員の1、3区に対立候補を立てる方針で、全面対決の様相だ。共産も党勢回復を図ろうと3、4区で候補を擁立する。野田佳彦首相の「近いうち」解散発言を受け、県内各党、各陣営は今秋、年内解散を視野に選挙モードに入る。
■3区 「生活」の候補擁立焦点
岩手3区はこれまでに、民主党現職黄川田徹氏(58)、自民党新人橋本英教氏(45)、共産党新人菊池幸夫氏(53)の3人が出馬を予定。新党「国民の生活が第一」の候補擁立が大きな焦点だ。
5選を目指す黄川田氏は、一関市上大槻街の前県議会議長佐々木一榮氏事務所に一関事務所を移転。民主党分裂後、同党県連代表に就任した。小沢氏支持者と重なっていた後援会にも出入りがあり、小沢氏系とは対立関係となるが「復興第一に取り組む」(関係者)と実績をアピールする。
橋本氏は2005、09年に続く3度目の挑戦で、一関市中央町に事務所を設置。今回の民主党分裂を「千載一遇の好機」(関係者)と捉え、議席奪取を期す。後援会体制の再構築に努め、自民党の神崎浩之県議の全面的後押しを受けながら今後、一関地方を重点的に活動する方針だ。
菊池氏も00、03、05年に続き4度目の立候補となる。11年の県議選一関選挙区で高田一郎氏が共産党県南初の議席を獲得し、勢いに乗る。陣営は「3年前より党員も増えている。消費増税反対、脱原発、環太平洋連携協定(TPP)交渉の反対を訴える」といい、民主、自民、新党以外の支持層の取り込みを図る。
「国民の生活が第一」の小沢代表は、消費増税法案採決で棄権しながら民主党に残留した黄川田氏を厳しく批判。対立候補擁立が選挙戦の動向を大きく左右しそうだ。
■4区 カギ握る民主動向
岩手4区は、「国民の生活が第一」代表を務める現職小沢一郎氏(70)、自民党新人藤原崇氏(29)、共産党新人高橋綱記氏(64)が出馬を予定。社民党も候補擁立を模索する。小沢氏が離党した民主党が対立候補擁立に動くかどうかが、最大の焦点となっている。
次期衆院選で15選を目指す小沢氏は新党結成前後にたびたび本県入り。9月2日には地元の奥州市水沢区を訪れ、自身の後援会拡大役員会に出席する予定で、翌3日は盛岡市で開かれる県連結成大会に臨み、支持基盤の引き締めを図る。
2月末に自民党岩手4区支部長に就任した藤原氏は、後援会事務所を北上市内に移転し、党支持者を中心にあいさつ回りに取り組む。9月中旬には奥州市の後援会組織を固め、事務所も開設する。花巻市や西和賀町でも組織構築を目指す。
7月下旬に共産党県委員会が擁立を決めた元花巻市議の高橋氏は、街頭演説を中心に戸別訪問活動を行うキャラバンを展開し、既に選挙区内を一巡。今後はミニ集会を各地で開催して主張を訴えるなど、支持拡大にさらに力を入れる考え。
社民党は4区を含め、県内4選挙区で候補擁立を検討している。4区について関係者は「重要な選挙区。慎重かつ大胆に進めたい」と検討を急ぐ。
民主党県連は対応を検討中。関係者の中には「政党政治の筋論を通すため、候補擁立に全力を挙げるべき」との意見がある半面、「争いはしたくない」と“全面対決”回避を望む声もある。
■1区
岩手1区は、民主党の現職、自民党の新人候補に加え、小沢一郎代表の「国民の生活が第一」から候補擁立が確実視される。共産党も候補を擁立する意向で、現職を軸に各党候補が絡む展開が予想される。
現職の階猛氏(45)は民主党分裂時、小沢氏と同一歩調を取らず残留した。これに対し、小沢氏は消費増税関連法案の採決で造反しながら同党にとどまった階氏に、対立候補を擁立する考えを明らかにしている。
特に、同区は生活の立候補者が情勢の鍵を握る。小沢新党に賛同する達増拓也知事は衆院議員時代の地盤で、国政への転身もささやかれるが、「知事以外の関わり方は今、頭にない」との姿勢を保つ。むしろ後継としてきた階氏に生活への合流を期限付きで期待する。
自民党新人の高橋比奈子氏(54)は、09年の衆院選に続いて再度挑戦する。前回の得票に、民主党分裂などを踏まえた新たな支持獲得を目指し、あいさつ回りなどで存在感のアピールに力を注いでいる。
共産党は岩手全区で候補を擁立する方針。社民党も検討を重ねている。地域政党いわては候補を立てず、大阪維新の会などの動きを注視する。
■2区
岩手2区は、民主党を離党した「国民の生活が第一」の現職畑浩治氏(48)に、議席奪還を目指す自民党の元職鈴木俊一氏(59)、これに空白区となった民主党や、共産党の出方によって選挙図が大きく変わる。
畑氏は、民主離党から生活結党の経緯などを支持者に説明してきた。8日に設立した党県連も9月3日に結成大会を予定し、畑氏ら公認候補の支持拡大に向けて結束を強める。
鈴木氏は前回衆院選で畑氏に敗れたが、当選6回の実績と元環境相という知名度を基礎にしながら、民主党分裂を好機と捉えて議席奪還を狙う。県連会長として9月2日に政経懇談会を開く。
民主党は候補擁立について「党本部としっかり協議する」(黄川田徹県連代表)としている。生活とは党分裂時に、県連資金4500万円の移動が問題化したことで、両党間の溝が一気に深まった。
公明党は小選挙区に候補を立てず、「比例区候補に重点を置く」(小野寺好県本部代表)。共産党は「候補者を擁立したい」(菅原則勝県委員長)と時期をにらむ。社民党は「岩手全区で検討中」(伊澤昌弘県連合代表)としている。
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◆ 「小沢王国」に挑む 反旗翻した飼い犬たち=階猛/黄川田徹のもとに届いた小沢氏の妻和子夫人からの手紙 2012-08-21 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
民主残留組に対立候補=小沢氏
2012年8月20日21:06 JST
新党「国民の生活が第一」の小沢一郎代表は20日の記者会見で、次期衆院選への対応に関し、消費増税関連法案の採決で造反しながら民主党にとどまった階猛(岩手1区)、黄川田徹(同3区)両氏の対立候補を擁立する方針を明らかにした。
小沢氏は「民主党に残っているということは、われわれが政権交代で唱えた約束をほごにして増税に走ることを是とした人たちだ」と階氏らを厳しく批判した。[時事通信社]
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「小沢王国」に挑む 反旗翻した「飼い犬」たち
産経ニュース2012.8.16 22:14
7月29日、東日本大震災の傷痕が残る岩手県陸前高田市の市役所仮庁舎は、日曜日にもかかわらずにぎやかだった。
仮庁舎では財務相、安住淳が地元市議らの陳情を受けていた。安住の隣に座るのは同市出身の衆院議員、黄川田徹。黄川田は、安住が予算要望に「わかりました」と前向きに応じるたびに静かにうなずいた。
陳情を聞き終えた安住は去り際、こう言い残した。
「黄川田さんは大変難しい決断をしてくださり、ありがたい。私たちも黄川田さんを支えたい」
「大変難しい決断」−。安住が指摘したのは、黄川田が長年行動をともにしてきた元民主党代表、小沢一郎とたもとを分かったことを指す。黄川田は小沢が旗揚げした「国民の生活が第一」に参加しなかった。
黄川田の「決断」に応えるかのように、岩手3区には閣僚や民主党幹部が頻繁に入る。首相、野田佳彦も「生活」結成から3日後の7月14日に3区入りした。
「小沢家と黄川田家は、双方の父の代から50年以上の付き合いだ」
黄川田は今でも、小沢との深い関係を強調する。大震災の津波で両親、妻、長男、秘書の5人を亡くした黄川田の仮設住宅を今年4月に訪れ、家族の位(い)牌(はい)を拝んでくれたのも小沢だ。そのとき、黄川田は小沢から総務副大臣の辞任を求められ、これに応じている。
その黄川田が今回なぜ、小沢に背いたのか。
■小沢夫人の手紙
家族4人の初盆を迎えたころ、黄川田のもとに香典を添えた便箋2枚の手紙が届いた。小沢の妻、和子からだった。
お悔やみの言葉から始まり、被災地の現状を案ずる言葉や激励の言葉などがつづられ、どれもこれも黄川田の心に響いた。さらにこんな一文もあった。
「大変な状態でも政局や権力闘争をする人はいるが、黄川田さんは頑張ってほしい」
黄川田はこの言葉の意味をかみしめた。「地元の復興対策よりも永田町の政局を優先している」。夫人は小沢をこう批判しているかのようだ。黄川田も「小沢先生は、権力争いでなく副総理にでも手を挙げてほしいのに…」と考えていた。
総務副大臣の辞任も断腸の思いだったのに、野党になれば復興に直接関与するのも難しくなる…。被災自治体の復興計画がまとまりはじめ、「今は政局より復興が最優先」と判断した。
しかし、小沢の「恐ろしさ」は、黄川田自身が肌で知っている。
平成12年の衆院選。小沢は、自由党を去り保守党結成に参加した当時の衆院議員、佐々木洋平を徹底的に潰した。そのときの刺客がほかならぬ黄川田だった。
そして今、小沢の牙が自分に向けられようとしている。「生活」県連幹部の県議、佐々木順一は、黄川田に刺客を向ける可能性を示唆している。3区内の県議、市議の一部も「生活」に移り、黄川田を脅かす。
■知事自ら刺客?
「小沢さんにしてみれば、飼い犬に手を噛まれたような気分かと思います。今後、私に対して厳しい態度で臨まれるでしょう」
黄川田と同じく民主党にとどまった岩手1区選出の衆院議員、階猛はブログで、これからの覚悟をにじませた。1区では、小沢らに目立たぬよう街頭演説を避け、2、3人とのミニ集会を通じて支持者との関係維持に腐心している。
1区の民主県議4人は全員残留し、支持母体の連合岩手も「生活」を支持しない方針という。それでも、小沢が「飼い犬」を放置するはずがない。
佐々木順一は7月30日、岩手県知事、達増拓也との関係について「次期衆院選で同一歩調を取りたい」と表明した。階の前任者である達増が刺客となる可能性が出てきたのだ。
達増は知事職を続ける意向を示しているが、「小沢氏の指示であれば刺客になるのもためらわないだろう」(民主岩手県議)との見方もある。しかも、階の支持者の多くは達増の支持者だ。達増と階が激突すれば、支持者はどっちにつくのか−。
岩手県議会で「生活」は民主、自民に次ぐ第3会派となった。しかし、民主と自民が共闘すれば「小沢王国」は崩壊の危機にひんする。自民から再挑戦する高橋比奈子は「ようやく岩手も『小沢氏の呪縛』が解け、県民が普通の判断ができるようになるのではないか」と期待する。もっとも、現時点で民主、自民による選挙協力の話はない。(水内茂幸)=敬称略
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◆ 小沢一郎氏裁判「判決骨子」 / 全文〈http://shina.jp/a/wp-content/uploads/2012/04/ozawa.pdf〉 2012-04-26 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
「政治資金規正法違反被告事件」判決全文 http://shina.jp/a/activity/5263.htm
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◆無罪だが、気になる「収支報告書の記載を虚偽記載と認定」「指定弁護士の主張を相当程度認定」 2012-04-26 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
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◆しなたけし(衆議院議員) http://shina.jp/a/
◆「虚偽記載」の真相−小沢さん無罪
4月 28th, 2012 @ 09:30 am › しなたけし
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「理」と「情」のはざまで <階猛衆院議員>小沢一郎氏/細野豪志原発・環境相
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