中国、韓国、ロシアの狡猾な領有権拡張戦略 日本の防衛力軽視が招いた現実を直視せよ
JBpress2012.09.19(水)森 清勇
「日本海」を東海とすべきだというのが韓国の言い分である。同様に、「竹島」を独島と呼称し、日本が国家として機能停止状況にあった隙に、勝手に李承晩ラインを引き不法に占拠してきた。
中国は国連機関が海底資源調査をしたときから尖閣諸島の領有権を主張しはじめ、最近では「核心的利益」と称して、領海侵犯など威嚇にも似たあの手この手の言動を繰り返している。
ロシアは大統領や閣僚が北方領土を訪問し、返還するとしてきた歯舞群島の島々にまでロシア語名をつける調査を開始した。
■韓国の「日本海」改称運動
「日本海」は国際的に確立した名称である。しかし、韓国は1992年に国連加盟して以来、日本海に「東海」の併記を訴えてきた。
最新では2012年4月23日からモナコで開かれていた国際水路機関(IHO)総会で、海図集の改定にあわせて「日本海」に「東海」を併記するように全力を挙げた。議論はまとまらず、次期総会(2017年)に持ち越しとなった。
日本海は日本の西方沿岸全域に接している。韓国の東方に位置するが、接しているのはほんの一部で、大部分は北朝鮮やロシアの東南方に位置しており、「東海」が普遍的呼称たりえないことは一目瞭然である。
むしろ韓国の西方沿岸に全面的に接する黄海こそが「西海」にふさわしいのではないだろうか。しかし、こちらの改名については一切主張しないのは、相手が中国であり、華夷秩序を払拭できない韓国の事大主義によるものだろうか。とにもかくにも「東海」は言いがかり以外の何ものでもない。
韓国は韓国系米国人が多く在住する米国のバージニア州などで教科書に「東海」と併記することなどを求めてきた。今年1月のバージニア州議会では8対7の1票差で併記が否決されるという際どいものであった。
従軍慰安婦問題の前例があるように、そのうちに、韓国系米国人の増加とロビー活動の活発化で、韓国の主張が大きな声となって米国議会を動かさないとも限らない。
従軍慰安婦問題が米国の地方議会の決議に発して、最終的には合衆国下院で「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議」(2007年6月26日、下院外交委員会で賛成39票対反対2票、最終的には同7月30日下院本会議にて採択)が採択されてしまった。
2010年には韓国系米国人が52%を占める東部のニュージャージー州パラセイズパーク市で、「日本の植民地時代に20万人を超える女性、少女が慰安婦として日本軍に連れ去られた。これは人権侵害だ」と綴った慰安婦碑が建立された。
2012年にはニューヨーク州ウェストバリー市のアイゼンハワーパーク公園にも建てられた。今後もニューヨーク市などに計画され、増える見込みだという。
パラセイズパーク市には駐ニューヨーク日本総領事や自民党国会議員団が市長を訪問して撤去を要請したが、実現していない。いったん決議された場合の撤去はなかなか難しい。
地方参政権付与問題が繰り返し提議されるが、日本には朝鮮系や中国系住民がかなり所在する地域もある。
そうした人たちが地方議会とはいえ議席を得て政治力を行使できるようになれば、米国どころか日本においてさえ「東海」や「慰安婦像」は言うに及ばず、「竹島」はもちろん、「対馬」の領有権さえ主張しかねない。杞憂が現実となる前に、能動的に日本が動くことが求められている。
■「辺疆」意識の強い中国
五星紅旗と呼ばれる中国の国旗は、大きな星が漢民族本土を示し、小さな4つの星が併呑した満州、モンゴル、ウイグル、チベットを示しているとも言われる。
本来の国境は言うまでもなく漢民族が住む領域であろうが、その縁辺の国々を力でねじ伏せ、自国に組み込むのが古来の中国流国境である。
こうした観点から、中国には固定的な国境よりも、力で屈服させいくらでも拡大できる「辺疆(へんきょう)」意識が強いと言われる。領有をめぐって周辺諸国と係争している南シナ海の南沙、中沙、西沙は新しく設けた「三沙市」に組み込み自国領を主張している。
東シナ海の尖閣諸島もこの延長線上にある。中国外務省から流出したとされる資料では沖縄県は言うに及ばず愛知以西の西日本全体が「東海省」、東日本は「日本自治区」、日本海は「東北海」とされている。
何かと言えば事大主義を取る朝鮮半島は文句なしの「朝鮮省」で、その前に黄海で韓国と争っている蘇岩礁(韓国名離於島〈イオド〉)を辺疆に組み込む動きが活発化しよう。
かつて中国が帝国主義の西洋列強によって虫食い状態にされた時、敢然と立ち上がったのが日本であった。米国は「門戸開放」を掲げて、いかにも西欧列強から中国を守るかのように振る舞ったが、それは米国の付け入る隙を見つける含意でもあった。
近隣国家であるために大きな影響を受ける日本は、自国の存亡のためとはいえ中国の国家崩壊を危惧し、保全を熱望した。
黄文雄の『大東亜戦争肯定論』は、「日本が日露戦争に勝利したことで、ロシアの南下、つまり清国への侵略が阻止されたのである。もし日本が負けていたら、日本というアジアの抵抗勢力がいなくなった以上、まず満洲、朝鮮はロシアの計画通りにその版図に組み入れられた。そして清国でも、ロシアの南下はものすごい勢いで行われ、西欧列強による国土分割に拍車がかけられたことだろう」と述べている。
その中国が、17年前には「30年もすれば日本という国は存在しない」と豪語し、数年前には太平洋覇権の米中二分を提案した。今は核恫喝もちらつかせながら「核心的利益」を掲げて、宣伝と威嚇と捏造の歴史で、1世紀遅れの現代版中国流帝国主義を再現している。
日露戦争の勝利が有色人種に勇気を与えたように、尖閣諸島の国有化とその死守はチベットや東南アジア諸国に勇気を与えるに違いない。
日本にとっては乾坤一擲の真剣勝負であり、中国が繰り出すであろう硬軟両様の戦術、俗に三戦と言われる「世論戦」「心理戦」「法律戦」に翻弄されることなく、国益の一点を見据えて柔軟かつ主導的に対処しなければならない。
■アイヌ語が示す日本の領土
幕末の馬関戦争に勝利した英国は、中国における「香港」と同じように山口県下関市の「彦島」を租借地にしようとした。
藩主は「租借やむなし」という考えに傾いていたと言われるが、上海で外国に占拠された国の惨めな状況を見てきた高杉晋作が突っぱねて事なきを得たという話が伝わっている。
江戸湾には米国人が名付けた岬や島が幾つもあった。
日本を訪れた英国の旅行家は「私たちの船はリセプション湾(久里浜湾)、ペリー島(猿島)、ウェブスター島(夏島、埋め立てで現横須賀市夏島町)、サラトガ島(富津崎)、ミシシッピー湾(根岸湾)を通過した。トリーティ・ポイント(本牧岬)から・・・」(イザベラ・バード著『日本奥地紀行』)と書いている。
米国の属国になっていたら今でもこうした名称であったに違いない。
同書を解説した宮本常一の『イザベラ・バードの「日本奥地紀行」を読む』には、小笠原諸島帰属の経緯にも触れている。
小笠原貞頼が発見するまでは無人島(ぶにんとう)と呼ばれており、ペリーは航海日誌にブニンの訛った「ボナンisland」と書き、日本人が呼んでいた名前を踏襲した。
これが効果を発揮して、明治になって、小笠原は日本の領土であると主張した時、米国も認めざるを得なかった。クナシリ、エトロフはアイヌ人がつけた島名で、領有権がいずれにあるかは言うまでもないとも記している。
北海道勤務時代にアイヌ語名称に関心を持った。
帯広はオベレベレケプ(川尻が分かれる川)で、その名を冠したオベリベリ温泉がある。ニペソツ山(シナノキ群生の意、アイヌは衣服の繊維に活用)や十勝川(トカプチ)など、道内の地名や山川など、ことごとくアイヌ語由来である。
同様に、国後島は「クンネ・シリ」(黒い島)、択捉島は「エトウ・オロ・プ」(岬のある所)に由来するもので、ロシア語名も「クナシル」「イトウルップ」とアイヌ語表記を踏襲している。
しかし、ロシアは日本領土であることが明瞭で、返還するとして足を踏み込んでいなかった歯舞群島を調査し、呼称のない島々にロシア語名をつける動きを示している(『産経新聞』24.9.9)。歯舞、色丹までも返還しないぞという意思表示でもあろうか。
ここまでくれば、友好や協力などとは別次元の長期的国益に関わる問題として、ロシア(旧ソ連)による不法占領の経緯を国際社会に向かって執拗に知らせるよりほかにない。日本に足りないのは宣伝力と執拗さではないだろうか。
■条約の適用範囲と領有権
排他的経済水域(EEZ)の起点となる離島は、全国に99島ある。このうち49島には名称がなかったが、10島は2011年5月に命名された。残る39島の名称は所属地方自治体の要望を参考に、2012年3月2日に名称が公表された。
尖閣諸島関係では久場島付近の3島と大正島1島が関係していた。命名された島は、地図や海図に逐次掲載される。中国政府は翌3日、尖閣諸島周辺を含む71島(細部不明)に命名する対抗措置に出た。
米国務省報道官による8月28日の定例記者会見で中国人記者との間で、以下のような質疑応答が交わされたという。
記者が「米国における尖閣諸島の公式名称は何ですか。『釣魚島』ですか、『尖閣諸島』ですか』と質問すると、ヌランド報道官は「われわれは『SENKAKUS』と呼んでいます」と答えた。
中国が「釣魚島」と呼び領有権を主張する尖閣諸島について、米政府は公式呼称として「SENKAKUS」(「センカク」で、英語では諸島を意味する複数形)を採用していることを明らかにしたわけである。
その状況をインターネットでさらに詳しく見ると、「そうです。何度も言うように、1960年に締結された日米安保条約の適用範囲です」と述べる報道官に対し、記者は「それは矛盾ではないですか。私にはそう思えます」と食い下がったという。
報道官は「尖閣諸島は1972年に沖縄に返還されてから、日本政府の管理下にあります」と述べると、記者は「では別の聞き方をしましょう。その島は『日本の領土』ですか」と質問した。
これに対し、報道官は「もう一度言います。特定の立場を取らないが、安保条約は適用されます」と答え、次の話題に転じている。
「特定の立場は取らない」ということは、尖閣諸島の領有権を中国も主張しているので、領有権自体については明言しないという意味に解される。
具体的に言えば、日本の領土であり、所有者が個人から国に代わったわけで、「尖閣=国家」の認識をもって、外交第一を意識しつつも、軍事力もしっかり整備して、いかなる犠牲を払っても保持する姿勢(具体的には「意志」と「能力」)を顕示しなければ、日米同盟さえ機能しないということである。
■あとがき
自分を捨ててでも相手の窮状を慮るという日本人の心優しい民族性が、亡国の危機にあった中国や朝鮮を救ってきた。
例えば近代化を目指す両国への政府開発援助(ODA)など多額の有償・無償の供与などである。こうした支援にもかかわらず、両国は従軍慰安婦や南京大虐殺などと称する欺瞞の歴史を世界に発信し続け、日本を貶めてきた。
これまでの日本は離島をはじめ国土の安全保障に対する確固とした戦略も展望も持っていなかった。相手を刺激するなどとして、最小限のバランスに必要な防衛力の整備さえ怠ってきた。
戦力バランスの空白が、対日攻勢を一気に噴き出させた感さえある。今後は(極力使用しないとしても)軍事力をバックにした国益重視の外交への転換が強く求められている。
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◆ 米の慰安婦碑 撤去の請願署名受理必要数満たす/日本国内にも「全部日本が悪かった」と信じる一定の勢力 2012-06-11 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
米の慰安婦碑、撤去の請願署名が受理必要数満たす
J-CASTニュース2012/6/11 12:08
米ニュージャージー州パリセイズパーク市の公立図書館に設置された慰安婦の碑について、その撤去を求めるホワイトハウスホームページの請願コーナーの署名数が、受理に必要な2万5000件を超えたことが2012年6月11日までに分かった。
この請願は、5月10日にヤスコ・Rの名義で署名受け付けが始まった。慰安婦の碑について、「誤った非難で日本人は何十年も辱めを受けてきた」として、オバマ大統領に碑の撤去などを求めている。この碑は、10年10月に韓国系アメリカ人団体の支援で設置されていた。
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慰安婦問題、敗北主義に陥るな 外務省「韓国は確信犯的にやっている」
産経ニュース2012.6.9 09:42[歴史認識]
米ニュージャージー州パリセイズパーク市の公立図書館脇にある従軍慰安婦の記念碑。パリセイズパーク市は人口約2万人のうち、半数以上が韓国系だ=5月18日(共同)
韓国による慰安婦問題での対日攻撃がやまない。韓国系団体は今や、米国内にも全く史実に反した慰安婦記念碑を建てるなど、海外に向けた日本をおとしめる宣伝戦も仕掛けている。もう、なあなあで済ませている場合ではない。
■水面下で静かに
政府は8日の閣議で、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が昨年12月にソウルの駐韓日本大使館前に建てた「慰安婦像」について、「ウィーン条約に規定する公館の威厳の侵害に関わる問題だ」とする答弁書を決定した。
その認識は正しいが、それでは韓国側に対しどんな申し入れや対策をとったかは明かさない。とにかく波風を立てずにやり過ごそうとする姿勢がみえる。
昨年10月には、韓国系住民が過半数の米ニュージャージー州パリセイズパーク市で、公共図書館の敷地に慰安婦記念碑が建てられた。
碑には「日本帝国政府の軍によって拉致された20万人以上の女性と少女」と荒唐無稽な碑文が刻まれている。在米の韓国系団体は、こうした碑を全米で20以上建てる計画だとされる。
自民党の山谷えり子参院議員によると、こうした韓国側のプロパガンダの影響で在米日本人子弟が「下劣な先祖を持つ子孫」「レイプ魔の子孫」などといじめに遭いつつあるという。
にもかかわらず、政府の対抗措置の動きは目に見えない。このままでは日本のイメージは悪化し、将来的には大きく国益を損ないかねない。
5日に開かれた超党派の「日本の名誉のため行動する国会議員の会」(会長・たちあがれ日本の平沼赳夫代表)会合では、外務省担当者がこう弁明した。
「先方(韓国系団体)は確信犯的にやっている。放っておいていいことではないし、政府としては、主張すべきことは主張する。ただ、よい結果をもたらすには水面下で静かに活動した方がいい」
だが、政府が長年にわたり、ひたすらことを荒立てまいと静かにしていた結果、今日の事態を招いたのではないか。
■「内なる敵」
2007年6月、政治評論家の屋山太郎氏ら民間有志と自民、民主両党の国会議員有志が米紙ワシントン・ポストに「慰安婦の強制連行を示す文書はない」などとする意見広告を出した。これについて、ある外務省高官はこう述べていた。
「残念だが、慰安婦問題ではもう勝敗は決している。今さら強制連行はなかったと主張しても、米国では悪質な言い訳か歴史修正主義と受け取られ、かえって逆効果だ。話を蒸し返さない方がいい」
これが日本外交の基本姿勢だったのだろう。とはいえ、このやり方もうまくはいっていない。日本が過去の話として自己主張もせず封じ込めようとしても、韓国側が大々的にキャンペーンを張っているのだから何の意味もない。
確かに当時、意見広告は米国内で感情的な反発も呼んだ。だが、日本の立場・主張はある程度伝わったのではないか。どうせうまくいきっこないと決めつけるのは、外交上の敗北主義だろう。
もちろん、立ち向かうべき相手は韓国側だけではない。日本国内には「とにかく全部日本が悪かった」という不勉強・思考停止状態に安住し、諸外国の反日団体と連携することを良心的だと信じる一定の勢力がある。
今年5月にソウルで開館した「戦争と女性の人権博物館」(慰安婦博物館)建設を主導したのは、挺対協と日本に組織された「日本建設委員会」だった。
建設委のホームページの募金者一覧をみると、「大阪市職労」「JR東労組」「自治労」「ピースボート」「広島県教組」…とおなじみの顔ぶれが目につく。
「内なる敵」の動向を見極め、なるべく背後から矢を射かけられないよう注意も必要だ。(阿比留瑠比) *強調(太字・着色)、リンクは来栖
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◆ 国防のためにすべきことを行わず無為のままにいる日本〜世界の流れのなかに取り残された孤島になっている 2012-09-14 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
【櫻井よしこ 野田首相に申す】領土問題は正念場
産経ニュース2012.9.13 03:23
■外務省、日本国領有の痕跡を消し去るべきという考えも
尖閣、国防、原発、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など、日本国にとって喫緊かつ根本的問題のすべてで野田佳彦首相は敗北を重ねつつある。
尖閣諸島を国有化しても、「平穏かつ安定的な維持」のためと称して、島の現状を保ち、日本国領有の実態を強化する船だまりや灯台を整備しないのでは、何のために税で島を買ったのかと問わなければならない。
政府は長年尖閣諸島を賃借して、国民の上陸を禁止し、島々を放置した。言葉だけの実効支配の隙に中国が付け入ったのは当然だ。付け入る中国よりも、あるいは北方領土に付け入るロシアや竹島に付け入る韓国よりも、付け入らせる隙を作った日本が悪い。その愚をいま、政府全体で繰り返そうというのか。
石原慎太郎都知事はもはや国家といえないこの惨状を正すべく立ち上がった。約15億円の寄付は、都知事と国民の心がひとつになったことの証しである。
当初、石原知事の思いに前向きだった首相に、岡田克也副総理および玄葉光一郎外相以下外務省が、船だまりや灯台はもとより、島の国有化さえも中国の怒りを買うとして怖(お)じ気(け)づき、圧力をかけた。
外務省内には中国を恐れるあまり、魚釣島に残されている日本国領有の痕跡を消し去るべきだという信じ難い考えさえあったという。たとえ国土を奪われようとも中国の怒りを買わず摩擦回避を旨とする岡田、玄葉両氏、外務省の説得に屈した野田首相も同罪である。
摩擦回避を試みる日本に対して温家宝首相は10日、「主権と領土問題では、中国政府と人民は絶対に半歩も譲らない」と、人さし指を突き立てて猛反発した。「半歩も譲らない」と、人民解放軍機関紙「解放軍報」も報じ、軍事行動に踏み出す可能性を示唆した。
反発は、想定の範囲内であろうに、藤村修官房長官はうろたえたのか、尖閣諸島の現状に変化はなく以前と同じだと会見で訴えた。以前と同じでは無意味であることが理解できていないのである。
尖閣諸島を中国が奪いに来るとき、唯一、領土を守る手立ては実際に日本人を送り込み、島を活用して領有の実態を作り上げることだ。島の空間を日本人の工夫と力で満たしていくことだ。国際社会は力関係によって形づくられる。加えて領土問題で重要なのは、自国を防衛するという強い国家意思であり、迫力である。
首相も官房長官もいまこの局面が日本国の正念場であると覚悟しなければならないのだ。領土問題は時が過ぎたら収束する問題では決してない。
無為の時を過ごすことで、かえって危機は深まり、火の粉は消すに消せなくなる。
民主党政権のわずか3年の歴史の中で、どれほど国益が損なわれたか、なぜそうなったかを首相はいまこそ考えよ。親中恐中派の菅直人政権時の尖閣問題の処理、丹羽宇一郎大使の任命、目的を履き違えたかのような外務省主導の対中外交はいずれも憲法前文および9条に拘束される戦後体制そのものが、現実の国際政治に対応できず、日本が自壊した事例である。
中国は尖閣をまぎれもない国家主権の問題として真っ正面から挑み続けてきた。民主党は国家観なきゆえに対処できないできた。自国を守る意思と力を欠く国など、まともに相手にされないのである。その意味で日中関係の悪化も、日本の立場が貶(おとし)められてきたことも、まさに日本の戦後体制がもたらした結果なのである。
現在、中国の内情は経済の大失速で背筋が寒くなるほど不安定で厳しい。中国社会に蔓延(まんえん)する心理的不安は常に捌(は)け口を求めており、反日教育の結果、日本への故なき怒りは容易に爆発し得る。内政問題の解決策が見えないとき、一党独裁の中国共産党が突如、国民の怒りが自らに向けられるのを回避するために対日強硬手段に出ることもあり得る。日本は国家としての緊張感を保ち、ありとあらゆる場合に備えて、最速で万全の対策を整えなければならない。
尖閣諸島周辺の海底資源は有望で、貴重な日本の宝だ。島周辺は豊かな漁場でもあり、高さ約360メートルの尖閣一の高い山にレーダーサイトを築き、自衛隊の高性能のレーダーを置けば、排他的経済水域のはるか彼方(かなた)まで、中国船の動きを監視できる。わが国最南端の宮古島のレーダーに魚釣島のレーダーを加えることで、対中監視網をかなりの程度広げられる。この重要な戦略拠点を逆に中国に奪われれば、その場合の損失ははかりしれない。
軍事力の行使を示唆する中国に対して、島々と海の監視体制を整え、制海権と制空権を確立するために何よりもまず、国防予算を増やさなければならないが、野田政権は来年度の防衛予算を逆に削減しつつある。中国の軍事的脅威に備えてアジア・太平洋諸国が尋常ならざる軍拡を進めるのとは対照的に、日本のみ国防予算を削減する愚かな政策をなぜ、継続するのか、厳しく問うものだ。
野田首相以下民主党政権の国家戦略の欠如は国防に限らない。原発、TPPなども同様である。この深い混迷からの立て直しを図るために、いまこそ敗北にまみれたこの戦後体制の元凶である現行憲法を見直すときだ。敢然と憲法改正に取り組み政治生命をかけて闘うことによってのみ、活路が開けることを、首相は認識すべきであろう。
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◆ 『尖閣戦争―米中はさみ撃ちにあった日本 西尾幹二×青木直人』(祥伝社新書223)2010年11月10日初版
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◆『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高義樹著《ハドソン研究所首席研究員》
2012年07月25日1刷発行 PHP研究所
p1〜
まえがき
日本の人々が、半世紀以上にわたって広島と長崎で毎年、「二度と原爆の過ちは犯しません」と、祈りを捧げている間に世界では、核兵器を持つ国が増えつづけている。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国に加えて、イスラエル、パキスタン、インドの3ヵ国がすでに核兵器を持ち、北朝鮮とイランが核兵器保有国家の仲間入りをしようとしている。
日本周辺の国々では核兵器だけでなく、原子力発電所も大幅に増設されようとしている。中国は原子力発電所を100近く建設する計画をすでに作り上げた。韓国、台湾、ベトナムも原子力発電所を増設しようとしているが、「核兵器をつくることも考えている」とアメリカの専門家は見ている。
このように核をめぐる世界情勢が大きく変わっているなかで日本だけは、平和憲法を維持し核兵器を持たないと決め、民主党政権は原子力発電もやめようとしている。
核兵器を含めて武力を持たず平和主義を標榜する日本の姿勢は、第2次大戦後、アメリカの強大な力のもとでアジアが安定していた時代には、世界の国々から認められてきた。だがアメリカがこれまでの絶対的な力を失い、中国をはじめ各国が核兵器を保有し、独自の軍事力をもちはじめるや、日本だけが大きな流れのなかに取り残された孤島になっている。
ハドソン研究所で日本の平和憲法9条が話題になったときに、ワシントン代表だったトーマス・デュースターバーグ博士が「日本の平和憲法はどういう規定になっているか」と私に尋ねた。
「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
私がこう憲法9条を読み上げると、全員が顔を見合わせて黙ってしまった。一息おいてデュースターバーグ博士が、こういった。
「おやおや、それでは日本は国家ではないということだ」
これは非公式な場の会話だが、客観的に見ればこれこそ日本が、戦後の半世紀以上にわたって自らとってきた立場なのである。
このところ日本に帰ると、若い人々が口々に「理由のはっきりしない閉塞感に苛立っている」と私に言う。私には彼らの苛立ちが、日本が他の国々とあまりに違っているので、日本が果たして国家なのか確信が持てないことから来ているように思われる。世界的な経済学者が集まる会議でも、日本が取り上げられることはめったにない。日本は世界の国々から無視されることが多くなっている。
日本はなぜこのような国になってしまったのか。なぜ世界から孤立しているのか。このような状況から抜け出すためには、どうするべきか。
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◆石原慎太郎著『新・堕落論』 新潮選書2011/7/20発行
p76〜
日本の核保有に関して、私と、もう一人複雑な思いを抱えていた若泉敬にとって極めて印象的な思い出があります。ある機会に私はかつて強い影響を受けた、サルトルと並んで戦後のフランスにおける実存主義の旗手の一人だった哲学者のレイモン・アロンとの知己を得て以来彼が来日する度会って会話を楽しみましたが、ある時親友の若泉を伴って会食したことがあります。
その時話題が世界の核に及んだらアロンが、
「日本は何故自ら核兵器をもとうとしないのだ。世界で核を保有する権利が最もあるのは、世界で唯一の被爆国の日本以外にありはしないのに」と詰問してき、何か言い訳をしようとした若泉を遮って、
「日本にはドゴールのような指導者はいないのか。我々は我々の危機に及んでの、友人と称する他国の善意を信じることはあり得ない。君ら一体何を根拠に他国の善意なるものを信じようとするのか」
といわれ返す言葉がありませんでした。
p77〜
若泉にとってその時の会話はよほど肺腑をえぐるものだったらしく、彼はその後すぐに生まれた次男に核という名前をつけましたが。
現代この時点で核戦略に関する議論は新しい技術体系を踏まえてさまざまあり得よう。核兵器による攻撃は弾道ミサイルで運ぶ以外に、潜水艦からの発射や巡航ミサイル、あるいは今日では宇宙船搭載による等。しかし日本という狭小な国家は、今日の水爆ならばただの2発で全滅してしまいます。そんな国が、例えばまず1発の水爆で半ば消滅しかけているのに、それを救うべく他の一体誰が自らの危険を冒して乗り出してくるだろうか。
特に中国が「軍民統合、平戦結合、以民養軍、軍品優先」なる16文字政策によって1989年から2006年にかけての17年間に軍事予算をなんと8倍に増やし、核に関しても十分な抑止力を超えた装備を備えた今、彼らのいうように「中国の国防は純粋に自衛のためのもの」と信じる者はどこにもいません。今限りで中国がいずれかの国に対して直接武力による侵犯を行う意図はうかがえぬにしても、日本との間にある尖閣諸島周辺の資源開発問題や、あるいは領土権そのものに関しての紛糾の際に、その軍事力はさまざまな交渉の際の恫喝の有効な手立てとなってくるのです。
p79〜
しかしその間中国の潜水艦は沖縄の島々の間の海峡を無断で通過するという侵犯を敢えて行い、日本側はそれに抗議するだけにとどまる不祥事がつづき、日本側は、本来なら警告の爆雷投下ぐらいはすべきだろうに放置してきました。これがもし日本の潜水艦が中国なり北朝鮮、いや韓国の領海にしても無断で押し入ったなら当然撃沈されるされるでしょう。それが「国防」というものだ。国防のためにすべきことを行わない国家にとっては、領土も領海も存在しないに等しい。
この尖閣問題はさらに今後過熱化され、日本、アメリカ、中国三者の関わりを占う鍵となるに違いない。要はアメリカは本気で日米安保を発動してまで協力して尖閣を守るかどうか。守るまい、守れはしまい。
p81〜
尖閣諸島への中国の侵犯に見られる露骨な覇権主義が、チベットやモンゴルと同様、まぎれもなく、この国に及ぼうとしているのに最低限必要な措置としての自衛隊の現地駐留も行わずに、ただアメリカ高官の「尖閣は守ってやる」という言葉だけを信じて無為のままにいるこんな国に、実は日米安保条約は適応されえないということは、安保条約の第5条を読めばわかることなのに。後述するが、アメリカが日米安保にのっとって日本を守る義務は、日本の行政権が及ぶ所に軍事紛争が起こった時に限られているのです。
つまりあそこでいくら保安庁の船に中国の漁船と称してはいるが、あの衝突の(略)アメリカはそれを軍事衝突とはみないでしょう。ましてその後ろにいるのが中国としたら、アメリカの今後の利害得失を踏まえて本気のコミットメントは控えるに決まっている。
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◆ 「9条守れば攻撃されず。攻撃すれば世界中から非難される」〜世界の動向に疎い福島瑞穂氏の錯誤と無責任 2012-09-13 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
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