落合博満氏が球界のタブーである長嶋茂雄氏に立ち向かった日
NEWSポストセブン2012.09.19 16:00
「長嶋監督を胴上げできなかったら、末代までの恥です」
1993年オフ、フリーエージェント制度元年に権利を行使し、中日から巨人へ移籍した落合博満氏が入団会見で語った名言である。この言葉通り、落合氏は翌1994年に巨人を4年ぶりの優勝に導き、長嶋茂雄監督は宙に舞った。野球人である落合氏にとってミスタープロ野球・長嶋茂雄は、憧れの存在だった。
だが、2004年のアテネ五輪前に、2人の間に亀裂が走ろうとしていた。「日本代表に各球団2人ずつ選手を派遣する」とオーナー会議で承認されたあとに、代表監督に就任していた長嶋氏がその枠を撤廃しようとしたのだ。
これまで語られなかった当時の真相が、9月2日に群馬で行なわれた講演会で、落合氏自身の口から漏れた。
「長嶋さんは、(春季キャンプのとき)私のところに来ました。あの人にモノをいえる人はほとんどいません。俺は平気だからね。まして、良いものは良い、悪いものは悪い。
みんな、長嶋さん王さんがいえば通るモノだと思っているんだろうけど、俺は中日ドラゴンズという球団を預かる監督として、ある程度決まったことをなしにして、勝手なことをされるというのは……。
俺も、長嶋さんにいったの。『監督、ねえ』『なんだ、オチ』『監督、いっていることはわかりますよ。五輪でメダルを獲りたい、最強のチームを作りたい、それはそうだよね。それは俺もわかる。だったら、なんで、オーナー会議で各球団に、人数異なるかもわからないけど協力してくれ、と諮って、承認してもらわなかったの?』」
長嶋監督は球界では神様扱いされ、ミスターのいうことなら何でもオーケーという空気があった。しかし、落合氏は自分の意見を伝えた。
「オーナー会議っていうのは、野球界で最高の決定権のある場所だよ。中日の選手を4人も5人も出せといったら、俺どうやって戦うんだこのチームで。『この騒動をおさめるためには、監督が一言いわなきゃダメだよ。最初に決まった通りに、各球団から2人ずつ24人の選手を持っていって、五輪で戦ってきます、と監督がいってくださいね』『うん、わかった』といったんだよ」(落合氏)
落合氏の進言通り、アテネ五輪の代表選出は各球団2人ずつとなった。
国際試合になると、ファン側も指揮する側も、代表の立場からしかモノを考えられなくなる傾向がある。しかし、ペナントレースが続く以上、各球団を預かる監督はモノをいう権利がある。落合氏はみずからの意見を曲げず、“長嶋茂雄”という球界最大のタブーに立ち向かったのだった。
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落合博満がWBC監督を絶対に引き受けない理由
Sportiva 2012年09月20日(木)
WBCの監督要請をかたくなに固辞する前中日監督の落合博満氏。野球ファンなら、彼が日本代表を率いる姿を見たいはずだが
来年3月に開催される野球の世界一決定戦、第3回WBC(ワールドベースボールクラシック)の監督問題が注目を浴びている。
9月4日の出場決定以降、候補として名前が挙がっているのは巨人・原辰徳、ソフトバンク・秋山幸二の両現役監督、過去に日本代表のコーチ経験がある山田久志氏、伊東勤氏、山本浩二氏、そして名将として名高い野村克也氏、落合博満氏だ。
2006年の第1回大会では、王貞治監督が圧倒的なカリスマ性でチームを率い、世界一を勝ち取った。一転して2009年の第2回大会では、原辰徳監督が選手たちのよき兄貴分としてチームをまとめ、連覇を達成。アプローチの方法は違えど、両者ともに短期決戦で強豪国を撃破していった名将だ。今大会の監督が誰に選ばれるにせよ、そのプレッシャーは大きいだろう。
そんななか、メディアや野球ファンのアンケートなどで常に待望論が語られているのが落合博満氏だ。2004年から8年間、中日の指揮を執り、すべてAクラス入りさせ、リーグ優勝4回、日本一1回を達成。中日を常勝軍団に育て上げた”オレ流”で日本代表を率いてほしいと思っている野球ファンは多いはずだ。
だが、本人はマスコミを通じて「(WBCの監督は)絶対にない」と明言している。
「落合さんは、基本的に『プロ野球の選手が国際大会に出場してもメリットがない』というのが持論。ケガなどのリスクがあるばかりで金にはならないということですが、どうも監督についても同じ考えのようです。
WBCなど国際大会での監督、コーチへの報酬は1000万円から1500万円程度といわれています。1回の講演で100万円以上も楽に稼ぐ落合さんにしてみれば、11月の代表監督就任から翌年3月まで5ヵ月間も拘束される上、3連覇を逃せば叩かれるだけの代表監督は”割に合わない仕事”。そう考えても無理はないですね」(テレビ局関係者)
それに加え、落合氏は仮に代表監督を引き受けるとしても、選手選考のチームバランスなど一切の”大人の事情”を無視した全権を求めることは間違いない。そのため、12球団にとっては”好ましくない候補”なのだという。
それでも落合氏の名前が時折浮かぶのは、NPBの加藤良三コミッショナーが相当ほれ込んでいるかららしい。
「ふたりは秋田県出身の同郷人。加藤さんが2月に各キャンブ地を視察した際、他チームでは30分程度の挨拶で帰るところ、中日キャンプだけは監督室にふたりでこもり2時間も話し込んでいたことがありました。加藤さんとしては、在任中に落合代表監督を実現させることが悲願なのかも」(セ・リーグ球団関係者)
しかし、落合氏本人は最近の講演でも「永遠にない」と宣言。顔面麻痺など体調面も気になるが、それ以前にやる気がないということらしい。
前回大会の監督が決定したのは、2008年10月28日のこと。このWBC監督問題、しばらくは続きそうだ。
*週刊プレイボーイ40号「WBC監督問題 な、なんでこーなるの……?」より
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ビジネスマンよ、落合監督の『采配』を読もう
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