蓮池さん夫妻「帰国は夢のよう」「拉致未解決、非常に辛い」 帰国10年控え会見
産経ニュース2012.10.13 18:58
北朝鮮から帰国して今月15日で10年を迎えるのを前に、拉致被害者の蓮池薫さん(55)、祐木子さん(56)夫妻が新潟県柏崎市で記者会見した。帰国してから「充実した日々を送っている」と、日本での生活ぶりを披露する一方、10年間で進展しない拉致事件について「非常に辛い。(記者会見を)解決の一つのきっかけにしたい」と話した。
蓮池夫妻は平成14年10月15日に帰国。薫さんは「帰国できたことを今も夢のように思う。政府、国民のみなさん、家族、友人、多くの方々の努力、関心のもとで実現した」と、感謝の気持ちを述べた。祐木子さんも「10年間、前向きに生活できたのは職場や地域の方々が温かく接して見守ってくれたおかげ」と話した。
平成14年10月15日に帰国した夫妻だが、16年5月22日までは北朝鮮に残してきた2人の子供と離ればなれで暮らす日が続いた。
10年間で印象深い出来事に「子供たちの帰国」を挙げた薫さん。「子供たちは苦労もあったと思うが、選択の自由があって自分の道を切り開く可能性あがることを感じ、一歩一歩踏み出している」と、日本で自立した生活を送る子供たちに感慨深い表情を見せた。
夫妻は北朝鮮での24年間、自由のない暮らしを強いられた。薫さんは「(北朝鮮を)知れば知るほど帰れるものではないと思っていた」と、当時の心境を振り返った。
そして、「われわれが帰国して日本で暮らしていることは、(北朝鮮にいる拉致被害者の)耳に入っている。期待が膨らむが、1年たち2年たち、10年たっても実現しない。われわれと比べても大変つらい思いをしているはずだ」と、帰国を果たせていない被害者の心境をおもんぱかった。
薫さんは「北朝鮮が(死亡した証拠として提出した)死亡確認書は、でたらめだと(家族に)伝えてある。北の出している(証拠は)つじつまが合わない」と指摘。「被害者の運命に関することについては譲歩はあってはならない」と、政府の対応を求めた。
現在も北朝鮮で救出を待つ被害者に対して、薫さんは「これ以上時間を延ばさないよう、できるだけのことを働きかけていきます」。祐木子さんも「元気でいれば必ず日本に帰って来られると信じている。皆さんのことを忘れていないので、元気でいてください」と呼びかけた。
=========================================
◆ 『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
(抜粋)
p171〜
日本は、「自分の利益を守るために、戦わねばならなくなった時にどのような備えをするか」ということにも、「その戦争に勝つためには、どのような兵器がどれだけ必要か」ということにも無縁なまま、半世紀以上を過ごしてきた。アメリカが日本の後ろ盾となって、日本にいるかぎり、日本に対する戦争はアメリカに対する戦争になる。そのような無謀な国はない。したがって戦争を考える必要はなかった。このため日本はいつの間にか、外交や国連やその他の国際機関を通じて交渉することだけが国の利益を守る行為だと思うようになった。
よく考えてみるまでもなく、アメリカの日本占領はせいぜい数十年である。人類が戦いをくり返してきた数千年の歴史を見れば、瞬きするほどの時間にすぎない。日本人が戦争を考えずに暮らしてこられた年月は、ごく短かったのである。日本人はいま歴史の現実に直面させられている。自らの利益を守るためには戦わねばならない事態が起きることを自覚しなければならなくなっている。
国家間で対立が起きた時、同じ主義に基づく体制同士であれば、まず外交上の折衝が行われる。駆け引きを行うこともできる。だがいまの国際社会の現状のもとでは、それだけで解決がつかないことのほうが多い。尖閣諸島問題ひとつをとってみても明らかなように、外交交渉では到底カタがつかない。
p172〜
ハドソン研究所のオドム中将がいつも私に言っていたように、「常にどのような戦いをするかを問い、その戦いに勝つ兵器の配備を考える」ことが基本である。これまでは、アメリカの軍事力が日本を守っていたので、日本の軍事力は、アメリカの沿岸警備隊程度のものでよかった。日本国防論は空想的なもので済んできたのである。
p173〜
ヨーロッパで言えば、領土の境界線は地上の一線によって仕切られている。領土を守ることはすなわち国土を守ることだ。そのため軍隊が境界線を守り、領土を防衛している。だが海に囲まれた日本の境界線は海である。当然のことながら日本は、国際的に領海と認められている海域を全て日本の海上兵力で厳しく監視し、守らなければならない。尖閣諸島に対する中国の無謀な行動に対して菅内閣は、自ら国際法の原則を破るような行動をとり、国家についての認識が全くないことを暴露してしまった。
日本は海上艦艇を増強し、常に領海を監視し防衛する体制を24時間とる必要がある。(略)竹島のケースなどは明らかに日本政府の国際上の義務違反である。南西諸島に陸上自衛隊が常駐態勢を取り始めたが、当然のこととはいえ、限られた予算の中で国際的な慣例と法令を守ろうとする姿勢を明らかにしたと、世界の軍事専門家から称賛されている。
冷戦が終わり21世紀に入ってから、世界的に海域や領土をめぐる紛争が増えている。北極ではスウェーデンや、ノルウェーといった国が軍事力を増強し、協力態勢を強化し、紛争の排除に全力を挙げている。
p174〜
日本の陸上自衛隊の南西諸島駐留も、国際的な動きの1つであると考えられているが、さらに必要なのは、そういった最前線との通信体制や補給体制を確立することである。
北朝鮮による日本人拉致事件が明るみに出た時、世界の国々は北朝鮮を非難し、拉致された人々に同情したが、日本という国には同情はしなかった。領土と国民の安全を維持できない日本は、国家の義務を果たしていないとみなされた。北朝鮮の秘密工作員がやすやすと入り込み、国民を拉致していったのを見過ごした日本は、まともな国家ではないと思われても当然だった。
-----------------------------------------------------
↧
北朝鮮 拉致 帰国10年/領土と国民を守るという義務を果たしていない日本=まともな国家ではない
↧