春秋社「人生の秋に」、映画「ツナグ」効果で重版
文=新文化編集部
映画のなかで樹木希林さん演じる主人公・渋谷歩美の祖母アイ子が、ヘルマン・ホイヴェルスの詩「最上のわざ」を紹介、それを収載したホイヴェルス随想選書『人生の秋に』に客注が相次いでいる。映画パンフレットには詩の一部が抜粋され、同書名が明記されていた。同書は1996年9月に刊行したあと、2008年に同社90周年を記念して新装版を復刻。10月17日、2刷を決めた。
WEB本の雑誌 10月22日更新
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「最上のわざ」
この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、働きたいけれども休み、しゃべりたいけれども黙り、失望しそうなときに希望し、従順に、平静に、おのれの十字架をになう。
若者が元気いっぱいで神の道を歩むのを見ても、ねたまず、人のために働くよりも、謙虚に人の世話になり、弱って、もはや人のために役だたずとも、親切で柔和であること。
老いの重荷は神の賜物、古びた心に、これで最後のみがきをかける。
まことのふるさとへ行くために。
おのれをこの世につなぐ鎖を少しずつ外ずしていくのは、真にえらい仕事。
こうして何もできなくなれば、それを謙虚に承諾するのだ。
神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる。
それは祈りだ。
手は何もできない。
けれども最後まで合掌できる。
愛するすべての人のうえに、神の恵みを求めるために。
すべてをなし終えたら、臨終の床に神の声をきくだろう。
「来よ、わが友よ、われなんじを見捨てじ」と。
*春秋社『人生の秋に』 ヘルマン・ホイヴェルス著より
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〈来栖の独白2012/10/22 Mon.〉
「ツナグ」という映画で、ホイヴェルス神父の詩が紹介されているらしい。
長い時を隔てて、ホイヴェルス師の詩をひもといた。懐かしがこみ上げる。それとともに、学生時代に個人的にホイヴェルス師のお話を拝聴にうかがった日々が甦った。『人生の秋に』という著書も戴いた。が、あの頃は師のおっしゃることが何も理解できずにいたようだ。今、師のうた(詩)に、こんなにも胸を衝かれ癒される私。どの部分も、私をやすませてくれる。
「おのれをこの世につなぐ鎖を少しずつ外ずしていくのは、真にえらい仕事。」「神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる。それは祈りだ。」・・・なんというやさしさに満ちた詩であることだろう。