上杉隆氏の連載コラムは「盗用」? ダイヤモンド・オンラインが掲載停止
J-CASTニュース2012/10/23 19:43
ビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」は2012年10月22日、ジャーナリスト上杉隆氏が執筆したコラム内の一覧リストをめぐり、「読売新聞の図表を盗用したのではないか」と指摘されたことから、結論が出るまでの間、問題となった記事などを掲載停止にしたことを明らかにした。
盗用疑惑が浮上したコラムは「今なお続く大手メディアの"不誠実"な報道に対する不信感」。2011年9月22日にダイヤモンド・オンラインに掲載されたほか、連載をまとめて同年12月に発行された上杉氏の著書「国家の恥 一億総洗脳化の真実」(ビジネス社)にも収められている。
■「読売が報じた記事と同一」の指摘
上杉氏はこの記事の中で、同年3月発生の福島原発事故の直後、海外政府が日本国内の自国民に出した避難勧告などの対応について大手メディアは「ほとんど報じてこなかった」と指摘。その上で、自身のメールマガジンで同年3月23日に配信した各国政府の対応一覧リストを掲載し、
「当時の日本では、世界のこうした動きを報じるだけで『デマ扱い』され、非難の集中砲火を浴びたものだ」
と記していた。
ところが、記事掲載から1年以上が過ぎた今年10月上旬、「上杉氏の言動を検証している」というサイトが「読売新聞からの記事盗用疑惑」という記事を公表したことで事態が急変する。
その記事は、上杉氏が昨年9月にダイヤモンド・オンラインにアップし、著書にも掲載した各国政府の対応一覧の図表は、読売新聞が半年前の3月19日付朝刊に掲載した対応リストの内容と、「並び順から言葉遣いに至るまで同一であることがわかる」と指摘。その上で、上杉氏は大手メディアが原発報道を避けてきたという事実を指摘するために、「(大手メディアである)読売が報じた記事と同一のものを、自前情報として披露していた訳である」と皮肉った。
これを機にネット上の掲示板には上杉氏の「盗用疑惑」に関するスレッドが設けられたほか、経済評論家の池田信夫氏も自身のブログに「お笑いネタ」として「読売の記事を盗用した上杉隆氏」という記事を10月12日に掲載。「こういうのを『盗っ人』猛々しいという」などと揶揄した。
この池田氏の記事に対して上杉氏は「完全なる事実誤認」であり「名誉を著しく棄損するもの」として、削除と謝罪を求める声明を出すともに、10月18日のダイヤモンド・オンラインのコラムでは指摘に関する釈明に加え、池田氏のブログにも言及。「悪意と作為に満ちた劣悪な記事」「池田信夫氏の言論を多様性を根拠に放置することは、百害あって一利なし」と批判した。
■上杉氏、法的解決の道を検討
池田氏は翌10月19日、この問題に関するダイヤモンド・オンライン副編集長との一問一答を自らのブログに掲載。議論を終えた後の感想として
「ほとんど押し問答だったが、彼(副編集長)は『上杉氏の話を信用している』の一点張り。これだけ嘘をまき散らしている彼を信用するとはなかなかいい度胸だが、編集者にも(疑惑を打ち消す)証拠が提示されていないことがわかった」
と記した。
ダイヤモンド・オンライン編集長名の「当サイト記事に対する『図表流用』という指摘についての見解」が、サイト上にアップされたのはそれから3日後の22日のこと。その内容を抜粋して紹介すると、
「2011年9月22日に掲載した上杉隆氏のコラムの中で、『3月23日現在、原発事故への各国政府の対応』の表が、他メディアからの流用ではないかとの指摘がなされています。当編集部の確認に対し、筆者である上杉氏からは法的な解決の道を検討しているので、全面的な資料提供はできないとの判断が示されました。これを受けて、当編集部は、結論が出るまでの間、本記事と関連記事の掲載を停止いたします」
文面からは、上杉氏が盗用疑惑を否定する証拠提示を拒んだため、編集部として当該記事の掲載停止という判断に至ったとみられる。上杉氏の過去のコラムで、この問題に関連しない記事の掲載は続いている。コラムの今後については言及されていない。
上杉隆事務所はダイヤモンドによる掲載停止の判断前の21日、「多くの激励や応援をお寄せいただきありがとうございます。すでにお応えしているものも含め事務所として再度お応えして参りたいと思います。回答まで少しお時間を頂きますが何卒ご了承ください」とツイートしているが、上杉氏や事務所側は23日夕方までにこの問題に直接関連した新たなツイートを公開していない。
池田氏は10月23日未明、ブログを更新し、「ダイヤモンド社が真相を解決して謝罪するまで問題は収まらない」と述べている。
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池田信夫 blog 2012年10月23日 00:57
ダイヤモンド社は上杉問題の真相を解明せよ
ダイヤモンド・オンラインは、きのう「当サイト記事に対する『図表流用』という指摘についての見解」を公表した。
ダイヤモンド・オンライン2011年9月22日に掲載した、上杉隆氏のコラムの中で、「3月23日 現在、原発事故への各国政府の対応」の表が、他のメディアからの流用ではないかとの指摘 がなされています。当編集部の確認に対して、筆者である上杉氏からは法的な解決の道を検討しているので、全面的な資料提供はできないとの判断が示されました。これを受けて、当編集部は、結論が出るまでの間、本記事と関連記事の掲載を停止いたします。
これは編集部が「盗用ではないという証拠を出せ」と要求したのに対して、上杉氏が証拠を出さなかったため、彼の弁解に信用性がないと判断して連載を中止したということだろうが、これでは「結論」が出るまで問題は先送りされる。「法的な解決を検討」というのはよくある時間稼ぎだが、彼のいう「リスト」も「情報提供者」も存在しないのだから、訴訟すら成り立たない。
事実は明白だ。上杉氏は昨年9月22日のダイヤモンド・オンラインの記事(魚拓)で、韓国が被災地への渡航制限を解除したという読売新聞の記事を「不誠実」だと批判した。それは〈日本への渡航制限が行われていた〉というニュースを読売が報じなかったからだというのだが、その証拠として彼が使ったのが、なんと昨年3月19日の読売の記事の丸ごとコピーだったのだ。
これはおそらく読売の記事を3月23日のメルマガに盗用したことを忘れて(あるいはスタッフが盗用したことを知らないで)ダイヤモンドの記事に使ったのだろう。これ自体は引用元を書かなかったという些細な違法行為で、「出所を表示するのを忘れていた」と謝罪すればすむことだが、読売の記事を盗用して読売を批判したとなれば天下の笑いものだ。
これを上杉Wikiが指摘し、私のブログで紹介したところ、上杉氏は10月18日の記事で「BLOGOSとアゴラの悪意と作為に満ちた劣悪な記事やその筆者である池田信夫氏の言論を多様性を根拠に放置することは、百害あって一利なしだったのだ」と江川紹子氏や私に難癖をつけてきた。
私は彼の嘘に興味はないが、こんなことをいわれて黙っているわけには行かない。そこでダイヤモンド・オンライン編集部に抗議したところ、細川一彦副編集長は「対応する気はない」と言い切った。この経緯をブログで公表したところ大きな反響があり、きのうになって上の「見解」が出たわけだ。
しかしこれで幕引きというわけには行かない。ダイヤモンド社は真相解明を上杉氏にまかせず、独自に調査すべきだ。といっても、むずかしいことではない。問題のリストを外部の「情報提供者」から入手したかどうか、読売新聞に問い合わせればいいのだ。読売は私の問い合わせにも「自社の取材だ」と答えているので、そんな情報提供者は存在しない。
このまま問題を先送りしていれば忘れるだろうと思ったら、大きな間違いだ。週刊朝日の事件にも見られるように、ソーシャルメディアで火がついたら、どちらかが全面的に謝罪するまで鎮火しない。すでに一般ニュースにもなり、問題は拡大する一方だ。ダイヤモンド社が真相を解明して読売と江川氏と私に謝罪するまで、問題は収まらない。
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