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人質司法

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「人質司法」 虚偽自白の温床なくせ
中日新聞 社説 2012年10月27日
 自白をしないと身柄拘束を続ける捜査手法は、法曹界で「人質司法」と呼ばれる。パソコンの遠隔操作による誤認逮捕事件でも、この疑惑が浮かんだ。拘置や保釈制度は早く改善されるべきだ。
  パソコンで小学校の襲撃予告を書き込んだ差出人は「鬼殺銃蔵」だった。逮捕された大学生の少年は、「鬼殺は日本酒名で、銃蔵は不吉な数字の十三から」「楽しそうな小学生を見て、脅かしてやろうと思った」との趣旨の上申書を書いた。
  犯人でもないのに、どうして、迫真の内容になったのか。捜査官による自白の誘導があったとしか思えない。
  検察は保護観察処分の取り消しを家庭裁判所に要請したものの、自白の経緯の検証結果は、少年事件であることを理由に公表しないとしてきた。少年のプライバシーは保護されるのは当然として、焦点は捜査当局の過ちである。検証結果はむしろ公表されるべきだ。
  とくに捜査官に「認めないと少年院に行く」「否認すると(拘束期間が)長くなる」と言われたと伝えられる。捜査当局は否定するが、もし事実ならば、まさに「人質司法」そのものではないか。
  初公判前の保釈率は、否認のケースは自白のケースと比べて半分ほどだといわれる。重大事件でなくても、数カ月以上、保釈されないこともある。
  大阪地検の郵便不正事件に巻き込まれた厚生労働省の村木厚子さんは、無実であるのに、百六十日以上も拘置された。部下だった係長は罪を認めたため、起訴後にすぐに保釈されたのと対照的だ。
  否認すれば、長く拘置される実態は、被疑者・被告人の自由と引き換えに、虚偽の自白を生む温床となる。無実の人はその間に仕事を失うなど、社会生活上でさまざまな深刻な打撃をこうむる。
  そもそも、無罪推定を受けているのだから、自分の無実を証明するため、速やかに保釈されるのが基本でないだろうか。裁判所が拘置すべきかどうか、きちんと判断しているのか極めて疑わしい。
  日弁連では拘置の代替手段として、「住居等制限命令制度」の創設を提案している。逃亡や証拠隠滅を防ぐため、住居の特定や事件関係者との接触禁止などを裁判所が命令する仕組みだ。
  法制審議会の特別部会で、新しい刑事司法について議論されている。冤罪(えんざい)が絶えない現状を考えれば、この新制度も真剣に検討する時期に来ている。
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「日本は人質司法。罪を認めなければ保釈されない」後藤昌弘〈弁護士〉 2010-02-23 | 後藤昌弘弁護士/石原慎太郎 
 【認めないと出られない】〜中日新聞を読んで 後藤昌弘〈弁護士〉
 6日朝刊の特報欄に「乱発!?再逮捕」の見出しで、特集記事が掲載されていた。鳥取や埼玉の連続不審死事件、千葉の女子大生殺害放火事件で、関与が疑われる女や男に対し、別の容疑での逮捕が繰り返されていることの問題点を指摘する記事である。
 記事中にも書かれているが、長期間の身柄拘束が被疑者に与える影響は極めて大きい。注目を集める事件なら、新聞やテレビなどで実名入りで取り上げられ、その上に22日間も警察署や拘置所に身柄を拘束されるのである。
 被疑者が否認すれば、多くは接見禁止の決定も下されるため、家族や同僚との面会や仕事の打ち合わせもできない。中小企業なら倒産の危機にひんすることになる。
 実は、問題はそれだけではない。いったん逮捕され起訴された場合には、裁判で認めない限りは、保釈も認められないというのが最近の実情なのである。私は昔扱った贈収賄事件で、被疑者とこんな会話をしたことがある。
 被疑者「このまま否認を続けたらどうなります?」
 私「当分、保釈は認められません。裁判中、おそらく1年程度は、拘置所にいなければなりません」
被疑者「裁判で認めたら、どうなりますか?」
私「すぐ保釈で外に出られます。この事件なら執行猶予が認められると思います」
被疑者「無罪になっても、1年程度は拘置所にいなければならない。認めたらすぐに外に出られ、有罪になっても刑務所にはいかなくてよい。それなら、事実と違っていても、認めざるを得ないじゃないですか!」
 再逮捕が繰り返される問題や、否認すると保釈が認められない問題は、裁判所が本来行うべきチェック機能を果たしていないことが大きな要因であるが、こうした実態が市民によく知られていないことも原因のひとつである。こうした背景を指摘する報道を引き続き期待したい。2010/2/14Sun.
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検察を支配する「悪魔」 田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)
 普通の人は、連日、検事から責められて辛い思いをすると、事実とは違っていても認めてしまう。しかし、裁判で事実を明らかにすれば覆ると思っているので、裁判に望みを託す。
 日本の場合は人質司法で、罪を認めなければ保釈されないので、なおさらこの罠にはまりやすい。何日も自由を拘束されて、厳しい取調べで肉体的にも精神的にも苦痛を受け続けると、一刻も早く家に帰りたいと思うようになる。
 事実であろうが、なかろうが、罪を認めれば、帰れる可能性が出てくる。そして、その場から逃れたい一心で、検事の言うがままになる。だが、これは、非常に甘い考えです。
 と言うのも、一度、調書がつくられて、それにサインしてしまえば、それが事実ではなくても、裁判でも通ってしまうからです。客観的なアリバイなど、よほど明白な証拠でもない限り、弁護士でも検事調書の内容をひっくり返すのはむずかしい。
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