【主張】憲法公布66年 平和主義条項は破綻した 警察権による対応は限界だ
産経ニュース2012.11.3 03:37
憲法公布から66年を迎えて、日本の領土や主権を守れるかどうか日ごとに危うさを増している。
この1カ月半で中国公船による沖縄県の尖閣諸島周辺における領海侵犯は9回に及んだ。中国は海軍艦艇による威嚇行動もみせている。異様な事態である。
これからも中国が挑発行為をエスカレートさせ、軍事力行使もありうることを想定しておかなくてはなるまい。
大きな問題は日本がこうした危機的な事態を乗り切る国家としての備えが十分ではないことだ。
それを象徴的に示しているのは憲法の「平和主義条項」だ。
≪「平時の自衛権」認めよ≫
敗戦の翌年に公布された憲法は日本の無力化を念頭に置いたものだ。前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とうたい、第9条で戦争放棄や戦力不保持、交戦権の否認などを打ち出した。
日本の非軍事化が国際の平和と安定をもたらすという当時の連合国の意向を反映したもので、その非現実さは当初から問題視されていた。
日本の周辺国が「平和を愛する諸国民」とはいえず、「公正と信義」に信頼を置けないことは、中国の攻勢だけでなく、韓国大統領の竹島上陸や北朝鮮の核・ミサイル開発などが如実に物語る。
平和主義条項の破綻は明々白々であり、自衛隊を正式に軍と位置づけ、領土・主権を守る新たな憲法を作成することは、国家にとって喫緊の課題である。
産経新聞の「国民の憲法」起草委員会は、来年4月に新憲法の要綱をまとめるため、国家や自衛権のあり方の議論を深めている。
中でも急務であるのは、国家として中国の行動を阻止する有効な手立てを持つことだ。
国連海洋法条約は、領海内の無害でない活動に対して必要な措置をとることを認めている。諸外国の多くは領海法などで無害でない活動を禁止し、違反に有効に対処する法制度を整備している。重大な領域主権侵害に対しては、自衛措置として実力を行使する。
しかし、日本はこうした法律を整備することを怠ってきた。海上保安庁の巡視船が領海侵犯を繰り返す中国の公船に対し、退去要求しかできないのはそのためだ。
しかも、より深刻な問題は、領海内の無害でない活動を強制的に排除することが、現在の自衛権の解釈では極めて困難なことだ。
自衛隊による自衛権行使は自衛隊法で防衛出動になっている。だが、防衛出動は「外国軍隊によるわが国に対する計画的、組織的な武力攻撃」に対するものと規定されている。領海内の悪質な無害でない活動を実力排除するのは「平時の自衛権」とされているが、日本はこれを認めていない。
自衛隊による治安出動や海上警備行動も「警察作用」であり、退去要求しかできないのである。
≪改正への潮流強めたい≫
海上保安庁が昨年まとめた「海上警察権のあり方」でも、無害でない活動を排除する問題が取り上げられたが、「引き続き各省庁が必要性を判断していく」にとどまった。8月に成立した改正海上保安庁法、改正外国船舶航行法によって海保の権限強化が図られたのは前進だが、警察行動しか許されないのでは、残念ながら領土・領海を守れるとは言い切れない。
軍隊とすれば解決できるが、当面は自衛権を柔軟かつ実効的に行使できるようにすべきだ。集団的自衛権の行使容認も当然だ。
注目したいのは、領土・主権の危機や国政の閉塞(へいそく)感の広がりを背景に、「国の立て直しには憲法改正が欠かせない」とする政治潮流が強まっていることだ。
自民党は4月、天皇を元首と明記し、「国防軍」の保持や領土保全の規定などを盛り込んだ新たな憲法改正草案を発表した。9月の総裁選では、首相当時に憲法改正を政治日程に乗せた安倍晋三氏を選出した。
新党結成方針を表明した石原慎太郎前東京都知事も、現行憲法を「解決しなければならない主要矛盾」と指摘し、新憲法を制定するよう訴えている。
橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会も、首相公選制や参議院廃止など憲法改正を必要とする課題を掲げている。次期衆院選では、新憲法づくりを主要な論点とすべきである。
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『世界の変化を知らない日本人』日高義樹著 2011年5月31日第1刷 徳間書店
p87〜
第2部 中国外相が日本の外相を嘲笑した
「日本の外相が中国外相に会って、核戦力を削減するよう頼んだが、中国外相は嘲笑しただけだった。日本の民主党政権は、中国が日本と同じ考え方をしていないことに大きなショックを受けた」
これはシュレジンジャー博士が私に話してくれたことである。
p88〜
この話はアメリカとヨーロッパ各国の関係者の間でまたたくまに広がってしまった。民主党政権はその幼稚な外交戦略を世界に知られることになってしまったのである。
民主党政権が中国に対して核兵器の削減と軍事力の制限を申し入れたことは、平和主義的で国際主義的な立場からすれば当たり前で、驚くべきことではない。オバマ大統領の「核兵器をなくそう」という政治スローガンと同じだと考えれば、しごく当然の主張ともいえる。
だが本気で中国に対して「核兵器を制限してほしい」と依頼したのだとしたら、あまりにも幼稚である。中国に対して軍事力を削減しろと求めたり、核兵器を減らせと要求したりするには力が必要であることは、国際政治の常識である。
もともと日本の民主党の首脳たちの周りには平和主義者や国連中心主義者が多く、平和理想論が世界でまかり通るという間違った考え方を民主党指導部に吹き込み続けている。中国に核兵器の削減を申し入れた「日本の外相」も、そうした間違った考え方にもとづいて行動したのだろう。
p89〜
だが核兵器保有国にとって核戦略は、国家安全の基礎である。核兵器の削減や破棄について話し合うためにはそれ相応の力が必要である。核戦略を廃棄したり削減したりしなければ、中国の安全に関わると考えさせるだけの力を持たなくてはできないことなのである。それには日本が独自の核戦力を開発し、中国に対して核軍事力競争を挑む決意のあるところを示す必要がある。(略)
いま中国にとって最も厄介なことが起きるとすれば、極東アジアのライバルである日本が軍事力を強化し、核兵器を持つことである。そうなれば中国の軍事的な優位が相殺されてしまう。
p90〜
日本の民主党政権が、理想的な平和主義者たちの言うことをしりぞけて、世界の現実を理解するならば、中国に対して交渉する方法がただ一つある。
「中国が核戦力を削減しない限り、日本も核武装する」
中国にとってこの日本の主張は安全保障上の大打撃になる。ある意味では、これまでの努力を帳消しにしてしまうものだ。(略)
このエピソードほど民主党の持っている国際政治音痴の体質をあらわにしたものはない。他国の政策を変えるのは平和主義ではなく、力であるという単純な原則を、民主党政権は理解していない。 *強調(太字・着色)は来栖
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◆『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
p173〜
ヨーロッパで言えば、領土の境界線は地上の一線によって仕切られている。領土を守ることはすなわち国土を守ることだ。そのため軍隊が境界線を守り、領土を防衛している。だが海に囲まれた日本の境界線は海である。当然のことながら日本は、国際的に領海と認められている海域を全て日本の海上兵力で厳しく監視し、守らなければならない。尖閣諸島に対する中国の無謀な行動に対して菅内閣は、自ら国際法の原則を破るような行動をとり、国家についての認識が全くないことを暴露してしまった。
日本は海上艦艇を増強し、常に領海を監視し防衛する体制を24時間とる必要がある。(略)竹島のケースなどは明らかに日本政府の国際上の義務違反である。南西諸島に陸上自衛隊が常駐態勢を取り始めたが、当然のこととはいえ、限られた予算の中で国際的な慣例と法令を守ろうとする姿勢を明らかにしたと、世界の軍事専門家から称賛されている。
冷戦が終わり21世紀に入ってから、世界的に海域や領土をめぐる紛争が増えている。北極ではスウェーデンや、ノルウェーといった国が軍事力を増強し、協力態勢を強化し、紛争の排除に全力を挙げている。
p174〜
日本の陸上自衛隊の南西諸島駐留も、国際的な動きの1つであると考えられているが、さらに必要なのは、そういった最前線との通信体制や補給体制を確立することである。
北朝鮮による日本人拉致事件が明るみに出た時、世界の国々は北朝鮮を非難し、拉致された人々に同情したが、日本という国には同情はしなかった。領土と国民の安全を維持できない日本は、国家の義務を果たしていないとみなされた。北朝鮮の秘密工作員がやすやすと入り込み、国民を拉致していったのを見過ごした日本は、まともな国家ではないと思われても当然だった。
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