オバマ「日米VS.中国」堅持に期待 杏林大学名誉教授・田久保忠衛
産経ニュース2012.11.8 03:33[正論]
歴史的な接戦模様の末にオバマ米大統領が再選された。過去4年間の米外交・安全保障政策に少しでも変化が生まれるかどうか。高官人事が決まるにつれ方向は明らかになってくるだろう。大袈裟にいえば、2期目のオバマ政権と、今日開幕する中国共産党大会で決まる予定の習近平体制の関係いかんが日本の運命を左右する。米中間に今の緊張が続いていくのか。対立は険しくなるのか、何かのきっかけで和解に進むのか。それによって、わが国だけではなく、アジア全体が変化を強いられる。
≪深化した米国の中国観≫
この数年間、中国はナショナリズムを人為的に操作し、軍事力を背景に周辺諸国と領土問題を引き起こす、異常というほかない行動に出ている。7年前にブッシュ政権下で、ゼーリック国務副長官が中国にステークホールダー(利害共有者)たれと呼びかけ、中国側の大物スポークスマン、鄭必堅氏が「平和的台頭」を目指すと応じた。あれは一時の掛け合い漫才だったのか。米中2国でアジアの秩序を取り仕切ろうと言わんばかりのG2論も、キッシンジャー元国務長官、ブレジンスキー元大統領補佐官、ポールソン財務長官(当時)ら影響力ある人物の口から次々に飛び出した。彼らは今、どのような心境にあるのだろうか。
一昨年秋以降、オバマ政権が進めてきたのは、中東、中央アジアに置いていた軍事的重心を大きくアジアに転換する政策だ。この地域に軸足(ピボット)を定め、力の均衡の再調整(リバランス)を図るという意味で、この2つのキーワードができたようだ。中国の異常性は経済でも露わになっており、民主党のオバマ、共和党のロムニー両候補者とも口を極めてくさした。槍玉に挙がったのが為替操作であり、知的財産権盗用であり、中国企業のスパイ行為だから、米国の中国観はさらに深化したのではないかと考えられる。
オバマ大統領の立場で、外交的に一線を越えていると思われる発言もあった。外交・安保をテーマにした10月22日の討論会で、「中国は敵対者であり、ルールを守るなら国際社会の潜在的パートナーでもある」と述べたのである。
≪再選で「ピボット政策」継続≫
ブッシュ前政権時代にライス国務長官が敵対国、潜在敵国、競争相手国、友好国、同盟国と分類したこともあったが、「敵対国」はきつく響く。つい、本音が出たのかもしれない。ピボット政策は、国際法に従えと迫りながら、海空軍を中心にアジアの守りを固める硬軟両様の構えに尽きる。さながら5本指のように日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアの同盟国に加え、インドなどの友好国を増やしていく。オバマ氏が再選された時点で、この政策は継続されると見てよかろう。
だが、米国内ではまだ少数意見であろうが、強烈な反論も出てきた。米ボストン大教授でハーバード大ジョン・キング・フェアバンク中国研究センターの研究員、ロバート・S・ロス氏が、米外交専門誌のフォーリン・アフェアーズに、「ピボット政策の問題」と題する批判文を書いたのである。
いわく、オバマ政権の対中政策は、中国指導部が経済、軍事大国の地位を実現した結果、自信を持ち始めたとの判断に基づいている。だが、中国指導部は、深刻な経済危機、社会不安、米国に対する軍事的劣勢に十分、気づいており愛国主義的傾向を強める大衆に力を誇示して地位を維持しようとしている。実際、中国政府が挙げた「大衆による事件」は2011年に18万件を超えたという。
中国の異常性を説明するうえでは説得力に富んでいると思う。
≪中国幹部の腐敗に度肝抜かれ≫
日本の新聞では小さな扱いだったが、念のため10月25日付の米紙ニューヨーク・タイムズを手にした私は正直、度肝を抜かれた。中国の温家宝首相の母、弟、妻、息子、娘ら一族が、広範な許認可権限を持つ首相の地位を利用し、日本円で数千億に上る蓄財をしてきた様子が、異例の長文の中に克明に記述されているではないか。記者の署名入りの調査報道は、首相をはじめ家族全員の写真と関係した人々の相関図を掲げている。
首相と20年以上にわたり交際のある人物が匿名を条件に「幹部で同様の問題を抱えていない者はいない」と語っているから、すさまじい。報道が中国内外に与える衝撃は大きい。ニュース源は米政府内にもあるように読めるから、中国の内情に関する情報は米側もかなり持っているに違いない。
今後4年間に、ピボット政策の修正あるいは変更があるのだろうか。戦前から、日米中3国の関係は連動している。それぞれの国がどこをパートナーに選ぶかによって異なる結果を生んできた。日本が米中を敵対国にした末の敗戦が現状である。
尖閣諸島問題の因果関係を無視して、事をこじらせた原因が石原慎太郎前東京都知事にあるとの妄言や、中国市場に目がくらんで日本政府に配慮を求める財界人の発言は、日米対中の揺るぎない国際秩序にあまりに無頓着でないか。(たくぼ ただえ)
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◆ 中国の抗議デモ 学生の参加目立つ/中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している 2012-09-07 | 国際/中国 アジア
中国の抗議デモ 退学処分の脅しにもおそれず学生の参加目立つ
NEWSポストセブン2012.09.06 16:00
中国では共産党幹部の不正・腐敗への不満が爆発し、権力側の弾圧をはねのけて過激な抗議行動が続発している。反日デモも多数行われている。中国の最新のデモ事情を評論家の宮崎正弘氏がレポートする。
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中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している。今年7月、江蘇省南通市にある日本の王子製紙工場をめぐって大規模抗議デモが発生した。
参加者たちは同工場から啓東市の海につながる排水管建設計画の中止を要求する一方、地元の啓東市政府高官の腐敗に対しても果敢に抗議した。
5000人を超える群衆が政府庁舎に集まり、1000人以上が敷地内になだれ込んだ。警察車両をひっくり返して破壊、一部は庁舎に乱入して、役人がよく賄賂として受け取る高級酒やワイン、たばこのほか、書類なども窓から放り投げた。
背景にあるのは「反日感情」ではない。揚子江下流を漁場とする漁民(およそ4万人)が目的とした補償金に、若者の「公害」「汚染」という新感覚が加わったことが大きな要因だ。
最近のデモ・抗議行動に若者が積極的に参加することも従来の「暴動」との違いである。ある中国の専門家はこう分析する。
「学生の参加が目立ち、卒業資格停止や退学処分にするなど教師から脅されても、まったく懼(おそ)れずに抗議行動に加わる。中学生、高校生さえ参加する。若い世代は公害、汚染に敏感だ」
7月の四川省徳陽市什ホウで起きた暴動はその典型だった。金属工場プラントの新設をめぐって「公害反対」を掲げた市民の抗議活動の様子が、ツイッター、ブログで広がると、学生が主体の過激な抗議行動へと変化していった。彼らもまた市庁舎を襲撃、破壊し、副市長を負傷させた。だが、武装警察は催涙弾を打つ程度で、血の弾圧には踏み切らなかった。
※SAPIO2012年9月19日号
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中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している
NEWSポストセブン2012.09.07 16:00
住民が樹木を切り倒してバリケードを築き警察侵入を阻止した村、政府庁舎に突撃して破壊する若者……。中国では共産党幹部の不正・腐敗への不満が爆発し、権力側の弾圧をはねのけて過激な抗議行動が続発している。最新の動きを評論家の宮崎正弘氏がレポートする。
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昨今、中国で発生している暴動は1日平均500件、年間18万件である。よほど大規模か、参加者に多くの犠牲が出る、あるいは日本企業が狙われるなどのデモ・抗議行動ではない限り報道されることはない。
この5月、筆者は上海空港に降り立った際、空港に座り込んだ住民の抗議行動を目撃した。滑走路近辺の騒音被害を訴え、「この国の政府は何をしているのか」などと書いた大きな紙を広げていた。その示威活動を警察が取り締まろうとする様子はない。従来の中国では考えられない事態が起きていた。
抗議行動・暴動を起こす民衆の不満は、官僚の不正、党幹部の腐敗に原因がある。5月23日、北京で検察機関と党腐敗防止担当委員会、公安、外交部ならびに国際金融機関の担当者が集合して「汚職防止」のための検討委員会が開催された。
徹底した汚職防止の方法を検討するという名目だったが、「会計のごまかし、マネー・ロンダリングの巧妙化、香港の子会社、英領バージン諸島のペーパー・カンパニー」などの諸手口、手段を検証しただけだった。
汚職は減るどころか拡大の一途。公金の横領、恣意的な規制や不公平な建設認可など、庶民の不満は大暴動の導火線となっている。
中国でこれほど暴動が頻発するようになったのは昨年からだ。過激かつ国内に甚大な影響を及ぼした事件を挙げよう。
2011年5月、内蒙古自治区で牧畜に携わる民衆の抗議集会が開かれた。発端は、近年の炭鉱開発によって草原の砂漠化、大気汚染など環境破壊が深刻化したことに抗議したモンゴル人青年が、石炭運搬トラックにひき殺されたことだった。これに怒ったモンゴル人の学生市民らが数千名規模の抗議活動を行ない、10人近い死者が出た。
同月、江西省撫州では政府関連施設で連続爆破事件が発生、省政府ビル前で農地強制収用に抗議して農民が自爆した。6月には山東省徳州市、河南省鄭州市、湖南省来陽市のそれぞれの公安局ビルなど、立て続けに政府関連施設を狙った爆破事件が起きた。それらの事件からは、民衆の共産党に対する怨念がいかに凄まじいかを読み取ることができる。
※SAPIO2012年9月19日号
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◆ メディアは中国の“不都合すぎる真実”を伝えるべき〜隣国は各地でガラガラ音を立てながら崩壊している 2012-09-06 | 国際/中国 アジア
河添恵子 崩壊する隣国に警戒せよ
産経ニュース2012.9.6 08:12[40×40]
抗議船の尖閣上陸、「打倒小日本」などと叫びながら暴徒化する反日デモ、日本大使車襲撃事件…と連日連夜、中国による蛮行が報じられている。が、報道の視点は「(国旗持ち去りの)犯人は?目的は?」などと矮小(わいしよう)化され、評論家は当たり障りない持論を披露…。ゲンナリだ。
それよりこの機会に、メディアは中国の“不都合すぎる真実”を国民に懇切丁寧に伝え、警戒を呼び掛けるべきでは? 隣国は、各地でガラガラ音を立てながら崩壊しているのだから。
まず、道路(高速道路含む)の陥没による大小事故が、北京、上海、杭州、広州、瀋陽など日本人も多い大都市で頻発している。車がスッポリ埋まりそうな巨大な穴が開いた例もある。また、橋の崩壊事故も多発。先日も黒竜江省ハルビン市の高架橋崩落事故で死傷者が出ている。そして、7月に北京を襲った豪雨では数千人が死亡、被災者は数百万人とされ(情報隠蔽(いんぺい)により正確な数字は不明)、北京市長と副市長は早々に辞任、失脚した。
これら災禍の大部分は、共産党幹部が牛耳る人命無視のおから工事&技術不足が要因だ。党幹部の権力闘争が熾烈(しれつ)化し、粛清も強まる中、お次は「裸官(裸の国家&地方官僚)」の“海外逃亡ラッシュ”。妻子らは海外暮らし、ウン億元の不正蓄財も海外へ移し、自身は国内で職権乱用&汚職三昧を続けてきた官僚=裸官が、「逃げるが勝ち」レースに出ている。
先月末には奇怪な事件−中国国際航空の北京発ニューヨーク行き便が、出発から7時間後に北京空港へ引き返す−が起きた。「機長が『脅迫の情報を受けた』と乗客に説明」「米当局が『危険物が載っている恐れ』を寄せた」など報道はおおむね不可解だが、「米国亡命を試みた党幹部3人が搭乗、その阻止のため」と報じた反共産党紙もある。なお、深セン航空の国内便が離陸後の脅迫電話で、近くの空港に緊急着陸した事件も同時期に発生した。
笑えない“三文映画”を地で行くトンデモ国家・中国。それでも日本の「友好国」なのか?(ノンフィクション作家)
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◆ 薄煕来氏夫人への判決の直前「尖閣騒動で中共幹部が隠したこと」 中国現代史研究家・鳥居 民 2012-09-04 | 国際/中国 アジア
中国現代史研究家・鳥居民 尖閣上陸は「裸官」への目眩まし 尖閣騒動で中共幹部が隠したこと
産経ニュース2012.9.4 03:17[正論]
中国が尖閣諸島でごたごたを起こした。この騒ぎによって、過去のことになってしまった出来事がある。それは、中国共産党首脳部が自国民に一時(いっとき)でもいいから忘れてもらいたい問題である。
≪薄煕来氏夫人への判決の直前≫
尖閣諸島に香港在住の活動家の一隊が上陸したのは8月15日だった。続いてどのようなことが日本で起き、さらに中国で起きるのかは、2004年3月にその島に上陸した「七勇士」、さらには10年9月に巡視船に体当たりした中国漁船の先例があることから、その時、北戴河に集まっていた中国共産党の最高幹部たちは、はっきり読み取ることができた。
さて、渤海湾深部のこの避暑地にいた彼らが国民の関心をそらしたかったのは何からであろう。
実は、尖閣諸島上陸の騒ぎが起きた直後、薄煕来氏の夫人に対する判決公判があった。初公判は8月9日に開かれ、「いかなる判決も受け入れる」と彼女は言って即日、結審し、10日ほど後の8月20日に判決が言い渡される素早さだった。単純な殺人事件として片付けられて、彼女は死刑を宣告された。後で有期刑に減刑されて、7年後には病気治療という名目で出所となるかもしれない。
今年1月に戻る。広東省の党の公式会議で、「配偶者や子女が海外に居住している党幹部は原則として、党組織のトップ、重要なポストに就任できない」と決めた。
党、政府の高い地位にいて家族を海外に送っている者を、「裸官」と呼ぶ。中国国内での流行語であり、家族とともに財産を海外に移している権貴階級に対する批判の言葉である。
≪年収の数万倍もの在外資産≫
この秋には、政治局常務委員になると予測されている広東省の汪洋党委書記が「裸官」を許さないと大見えを切ったのは、今にして思えば、汪氏の政敵、重慶の薄煕来党委書記に向けた先制攻撃だったのであろう。そして薄氏が3月に失脚してしまった後の4月になったら、薄夫妻の蓄財や資産の海外移転、米国に留学している息子や前妻の息子たちの行状までが連日のようにネットに載り、民営紙に報じられるようになった。
薄氏の年間の正規の所得は20万元ほどだった。米ドルに換算すればわずか2万8千ドルにすぎない。ところが、薄夫妻は数十億ドルの資産を海外に持ち、夫人は他の姉妹とともに香港、そして、英領バージン諸島に1億2千万ドルの資産を持つというのだ。夫人はシンガポール国籍を持っていることまでが明らかにされている。
薄夫妻がしてきたことの暴露が続く同じ4月のこと、今秋には最高指導者になると決まっている習近平氏が党の上級幹部を集めた会議で演説し、子女を海外に移住させ、二重国籍を持たせている「裸官」を批判し、中国は「亡党亡国」の危機にあると警告した。
党首脳陣の本音はといえば、痛し痒(かゆ)しであったに違いない。実のところは、夫人の殺人事件だけを取り上げたかった。だが、そんなことをしたら、これは政治陰謀だ、党中央は経済格差の問題に真剣に取り組んできた薄党委書記が目障りなのだ、そこで荒唐無稽な殺人事件をでっち上げたのだ、と党首脳たちに対する非難、攻撃が続くのは必定だからだ。
こうして、薄夫妻が行ってきたことを明らかにしたうえで、汪洋氏や習近平氏は「裸官」批判もしたのである。
だが、最初に書いた通り、裁判は夫人の殺人事件だけで終わった。当然だった。殺人事件の犯人はともかく、「裸官」は薄氏だけではないからだ。汪洋氏の広東省では、「裸官」を重要ポストに就かせないと決めたと前述したが、そんなことは実際にはできるわけがない。
≪中央委員9割の親族が海外に≫
中国共産党の中央委員を見れば分かる。この秋の党大会でメンバーは入れ替わることになろうが、中央委員は現在、204人を数える。国と地方の党・政府機関、国有企業、軍の幹部たちである。彼らは選出されたという形を取っているが、党大会の代表が選んだのではない。政治局常務委員、政治局員が選抜したのだ。
香港で刊行されている月刊誌、「動向」の5月号が明らかにした政府関係機関の調査によれば、この204人の中央委員のうち実に92%、187人の直系親族、総計629人が米国、カナダ、オーストラリア、欧州に居住し、中にはその国の国籍を取得している者もいるのだという。ニューヨークや米東海岸の諸州、そしてロンドンで高級住宅を扱う不動産業者の最大の顧客はここ数年、圧倒的に中国人であり、現金一括払いの最上得意となっている。党の最高幹部たちが自国民の目を一時でも眩(くら)ましたいのは、こうした事実からである。だからこそ、夫人の判決公判に先立って、尖閣上陸は必要不可欠となったのである。
ところで、中国の権貴階級の人々がどうして海外に資産を移し、親族を米英両国に移住させるのかは、別に取り上げなければならない問題である。(とりい たみ)
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◆ 【尖閣国有化】中国、対抗措置を示唆 背景に制御不能の愛国主義/反日デモ、抗議活動の急先鋒「90后」世代 2012-09-05 | 国際/中国 アジア
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◆ 日本を倒せ! 中国・韓国 報道されない反日と憎悪/「愛国無罪」の裏側で、政権内部の権力闘争がちらつく 2012-09-06 | 国際/中国 アジア
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オバマ「日米VS.中国」堅持に期待
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