【中国共産党大会】習氏に「国民不満解消」課題 胡総書記が残す“負の遺産” ネット世論無視できず
産経ニュース2012.11.8 14:27
【北京=河崎真澄、川越一】5年に一度開かれる中国共産党大会は今回、10年ぶりの指導部交代の節目の大会となる。新たに最高指導者の座に就く習近平国家副主席は、権力と同時に、貧富の格差や幹部の腐敗に対する国民の不満解消という大命題を、胡錦濤総書記(国家主席)から引き継ぐことになる。
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8日午前9時(日本時間同10時)、北京の人民大会堂のひな壇に、新旧指導者が入場してきた。胡氏に続いて江沢民前総書記が姿を現すと、会場の拍手がひときわ大きくなった。胡氏と温家宝首相の間に腰を下ろした江氏は、胡氏の活動報告を表情を変えずに聞き流していた。隣で微笑を浮かべる温氏と好対照な様子は、江氏の隠然たる権力を暗示していた。
胡氏の出身母体である共産主義青年団派(共青団派)、習派の太子党(党高級幹部の子弟グループ)、江氏が率いる上海閥は、最高指導部人事をめぐって暗闘を続けている。今回の党大会には朱鎔基前首相、李鵬元首相らも顔を見せた。習氏は、長老や胡氏らからの圧力を背中に受けながら、胡錦濤指導部が残す“負の遺産”と向き合うことになる。
胡氏は「和諧社会(調和社会)」を掲げ、格差是正や持続的成長の実現に取り組む姿勢を示してきた。しかし、実際には格差が拡大、環境破壊が進んだ。官僚の腐敗に庶民は敵意さえ覚えている。各地では住民による抗議活動が頻発している。インターネットの普及に伴い、絶対的な権力を維持してきた中国共産党も、ネット世論を無視できなくなっている。
共産党の正当性を保ち、民意をつなぎとめるためには、国民にすり寄ることも一層必要になりそうだ。胡氏は「反腐敗闘争は依然として厳しい状況にある」と汚職がはびこる現状を認め、腐敗根絶を約束。2020年までの国内総生産(GDP)倍増計画を打ち上げたのも、国民の生活改善を重視している姿勢を繕う狙いがうかがえる。
しかし、実際に難題に取り組むのは習氏を中心とする新指導部。胡氏が突きつけた“注文”は、重い足かせに他ならない。
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【中国共産党大会】胡総書記、海洋権益堅持を強調 尖閣国有化した日本牽制
産経ニュース2012.11.8 13:04
【北京=川越一】第18回中国共産党大会が8日、北京の人民大会堂で開幕した。胡錦濤総書記(国家主席)は党中央委員会活動報告で、2020年までに国内総生産(GDP)を10年比で2倍にすると表明、海洋権益の堅持を強調し、沖縄県・尖閣諸島を国有化した日本を牽制(けんせい)した。党大会の会期は14日までの7日間。閉幕翌日に開かれる見通しの第1回党中央委員会総会(1中総会)を経て、習近平国家副主席を中心とする新指導部が船出する。
過去5年間を総括し、新指導部に引き継ぐ施政方針を示す中で、胡氏は、「発展が不均衡で、持続的ではないことは、依然として突出した問題だ」「都市と農村の発展の格差は大きい」と述べ、急速な経済成長による貧富の格差拡大の是正や、環境悪化の改善を重視する方針の堅持を強調。20年までに、自らが提唱してきた「和諧社会(調和社会)」の構築という目標を達成するよう党と中国国民を鼓舞した。
和諧社会を導くのが、胡氏が03年からスローガンとして掲げ、報告の中でも徹底を訴えた指導理念「科学的発展観」だ。胡氏はその理念を、毛沢東思想、?小平理論、江沢民前総書記の唱えた「三つの代表」と同じ「長期的に堅持すべき指導思想」と表現。今回の党規約改正で位置づけが格上げされることが決まったことを物語っており、胡氏が勇退後も、一定の影響力を維持する証といえる。
経済目標としては、GDPに加え、国民1人当たりの収入も20年までに10年の2倍にするとの目標を掲げた。海洋権益については「海洋開発能力を高め、断固として国家の海洋権益を守り、海洋強国を建設する」として、尖閣諸島や南シナ海への権益拡大を明言した。
中国では官僚腐敗に対する庶民の不満が高まっており、腐敗根絶への取り組み強化も急務だ。胡氏は「政治体制改革は全体的な改革の重要な一部分だ。改革を実行し、人民の民主を拡大するための努力を続けなければならない」と述べた。しかし、その努力には「積極的」と「慎重に」という相反する言葉が付随しており、早急な変化を期待するのは時期尚早とみられる。
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■中国共産党大会 中国共産党の最高意思決定機関で、正式名称は「中国共産党全国代表大会」。5年に1度開催される。総書記が行う中央委員会活動報告や党規約改正について審議するほか、中央委員会、中央規律検査委員会のメンバーを選出する。中央官庁や地方政府、軍、国内各地の職場に広がる党組織から選ばれた代表が出席。第18回党大会の代表者数は2268人。大会閉幕翌日に開かれる中央委第1回総会(1中総会)で、政治局員・同候補、政治局常務委員、総書記、および中央軍事委員会メンバーが決まる。
■科学的発展観 中国共産党の胡錦濤総書記(国家主席)が2003年から提唱してきた指導理念。経済成長が最優先される中、深刻化した環境破壊や過熱投資、幹部の腐敗といった社会のひずみを反省、都市と農村の格差是正、社会保障の充実などを推進し、将来を見据えた持続可能かつ安定的な社会の発展を目指す考え方。「人本位」を掲げ、バランスの取れた「和諧社会」(調和社会)を構築するための「戦略的思想」と位置づけられている。
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◆ 中国の抗議デモ 学生の参加目立つ/中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している 2012-09-07 | 国際/中国 アジア
◆ 薄煕来氏夫人への判決の直前「尖閣騒動で中共幹部が隠したこと」 中国現代史研究家・鳥居 民 2012-09-04 | 国際/中国 アジア
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