危機にひんする中国社会 胡政権の失敗と不作為
産経ニュース2012.11.8 11:09[石平のChina Watch]
10年前に胡錦濤政権ができたとき、中国国内では「胡温新政」という言葉がはやった。政治改革の停滞と腐敗の蔓延(まんえん)が彩った「江沢民時代」がやっと終わった後、多くの人々は清新なイメージの胡錦濤・温家宝両氏に多大な期待を寄せ、新しい国家主席と首相となったこの2人が政治を刷新して明るい時代を切り開いてくれるのではないか、との希望的な観測が広がっていた。
だが蓋を開けてみれば、胡・温両氏が中国の政治をつかさどったこの10年間はむしろ、「新政」への期待が裏切られる日々の連続だった。待望の政治改革は10年にわたって一歩も進まず、「創新」よりも「守旧」の方が胡政権のモードとなったからである。
政治改革が進まなかった結果、権力と市場経済との癒着から生まれた「権貴資本主義」の利権構造が空前の規模において拡大かつ強化され、腐敗の氾濫は未曽有の新境地に達した。政権末期になると、「清廉潔白」な政治家として腐敗の一掃を期待された温家宝氏その人の身辺でさえ、巨額の不正蓄財の情報が流されるありさまだ。
「権貴資本主義」の利権構造が拡大されている中で、貧富の格差の是正と社会的対立の解消を目指した胡政権の「和諧社会(調和のとれた社会)建設」はただのかけ声だけに終わっている。胡政権成立時と比べれば、格差はむしろ数倍以上に拡大している観がある。
人民日報系の雑誌「人民論壇」が今年10月に実施した意識調査で、回答者の70%が「特権階級の腐敗は深刻」とし、87%が特権乱用に対して「恨み」の感情を抱いていると回答したことは前回の本欄でも紹介した。それはまさに「和諧社会建設」の失敗に対する現実からの嘲笑であろう。
貧富の格差が極端に拡大し「特権階級」に対する人々の「恨み」が増大すると、社会的不安はますます高まってくるものだ。全国で発生した暴動などの集団的抗議活動が年間9万件に上ったのは胡政権中盤の2006年のことだったが、政権末期の11年になると、暴動・騒動事件の発生件数が18万件を超えた。さすがの「胡温新政」、ただの5年間で「国民所得倍増」ならぬ「国民暴動倍増」を見事に実現させたのである。
胡錦濤政権はその成立した日から、「維穏」、すなわち「社会的安定維持」を最重要課題にして国政の運営を行ってきたが、上述の「暴動倍増」の数字によっても示されているように、政権が「維穏」に熱を入れれば入れるほど社会的不安はむしろ高まってきている。揚げ句の果てには、胡政権最後の年である今年の国家予算に計上された「治安維持費」は当年度の国防費を上回る巨額となったほど、中国社会は完全に乱れている。
こうしてみると、過去の10年間にわたって、胡錦濤政権が推進してきた諸政策はほとんどが失敗に終わってしまい、いわば「胡温新政」たるものは、単なる黄粱一炊(こうりょういっすい)の夢に過ぎなかった。そして、10年間にわたる胡政権の失敗と不作為の結果、中国社会全体はかつてないほどの危機にひんしているのである。
今年9月、「中国経済学界の良心」と呼ばれている著名学者の呉敬●(=王へんに連)氏が「中国の経済・社会の矛盾はすでに臨界点に達している」と警告を発したことは、まさに「中国の危機」に対する知識人たちの現状認識を代弁したものであろう。
危機打開の難題は結局、胡・温の後の新政権に委ねられることになる。ちょうど今日開かれる党大会で誕生する予定の習近平政権には果たして危機脱出の妙案があるのか。お手並み拝見である。
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◆ [石平のChina Watch] 習近平氏の罠に要注意/中国の沖縄工作の狙い〜日本属国化 2012-09-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
習近平氏の「罠」に要注意
産経ニュース2012.9.27 11:03[石平のChina Watch]
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◆中国の「沖縄工作」の狙い
産経ニュース2012.9.13 11:09[石平のChina Watch]
「尖閣問題」で日中関係がぎくしゃくしている中、中国の一部の軍人や学者が突如、「沖縄は実は中国領だ」という奇妙なことを言い出した。
たとえば解放軍の現役少将で国防大学戦略研究所の金一南所長は7月13日、中国広播網という官製メディアの取材記事において、歴史の経緯や戦略的重要性などの角度から「琉球の所属問題」について延々と論じた。その中で彼は、「琉球はもともと中国の属地。それが日本によって強奪された」と論じた上で、「われわれは今後(対日交渉において)、尖閣の領有権問題にとどまらず、琉球群島全体の帰属問題を持ち出すべきだ」と語った。
金少将はさらに、「(中国の)学界や研究機関は今後、琉球の帰属問題について大いに議論すべきだ」とも提言した。
この提言に応じたかのように、今度は『社会観察』という政論誌の8月号が、復旦大学日本研究センター副主任の胡令遠教授と中国対外経済貿易大学国際関係学院の王海浜副教授連名の「琉球問題論文」を掲載した。論文は直ちに人民日報系の環球時報が運営する「環球網」に転載され国内で大きな反響を呼んだ。
論文はまず、前述の金少将と歩調を合わせて、いわば「歴史の経緯」から「琉球が中国領、日本がそれを不法占領」との珍説を展開した上で、「政府・学界・メディアは緊密に連携し、琉球群島の主権帰属問題に関する研究と宣伝を展開していくべきだ」と提言した。その「宣伝工作」の一環として、「国際社会に中国の主張を伝えること」の重要性を論じた。
そして最後に論文は締めくくりの部分で「琉球人民の本土意識や帰属感を深く研究し、琉球人民に十分な民族自決権を行使させるべきだ」とも語った。
以上は、最近になって中国国内で飛び出した「琉球帰属論」の2つの事例だが、日中国交回復以来40年間、中国国内から「琉球が中国領だ」というデタラメな暴論が展開されたのは初めてのことである。
しかも、本来なら関係性の薄い解放軍の現役軍人と大学の教授がほぼ同じ時期に同じ主張を展開し始めたことの背後には、中国共産党政権の影が感じられる。解放軍将校と大学の教授の両方に影響力を行使し彼らに同じことを言わせることができるのは、当の共産党政権以外にはないはずだ。
そして政権の意向を受けた彼らは、「琉球が中国領」という論を単なる論として唱えるのではなく、「政府・学界・メディア」の「連携」による「沖縄工作」の展開を具体的に提案した。
その中で、「琉球人民に十分な民族自決権を行使させよう」という、赤裸々な「沖縄県民離反工作」までが公然と語られているのである。
つまり中国が欲しがっているのは、決して尖閣諸島だけではないことは明々白々だ。彼らはすでに、日本の沖縄に対する野望をむき出しにしている。おそらく中国からすれば、沖縄を名実ともに「中国の属地」にしてしまえば、中国の海洋制覇戦略の最大の妨げとなっている米軍基地をかの地から追い出すこともできるし、日本本土を完全に中国の軍事力の脅威下に置くこともできよう。
そうすると、「琉球の中国属地化」の次にやってくるのは、すなわち「日本の中国属国化」なのである。
われわれはまさにこのような意味合いにおいて中国の考える「沖縄工作」の真意と狙いを理解しておかなければならない。このような国家存亡の危機にどう対処するのかが、まさにわれわれにとっての重要課題となるのである。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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◆ 【中国共産党大会】習氏に「国民不満解消」課題 胡総書記が残す“負の遺産” ネット世論無視できず 2012-11-08 | 国際/中国/アジア
【中国共産党大会】習氏に「国民不満解消」課題 胡総書記が残す“負の遺産” ネット世論無視できず
産経ニュース2012.11.8 14:27
【北京=河崎真澄、川越一】5年に一度開かれる中国共産党大会は今回、10年ぶりの指導部交代の節目の大会となる。新たに最高指導者の座に就く習近平国家副主席は、権力と同時に、貧富の格差や幹部の腐敗に対する国民の不満解消という大命題を、胡錦濤総書記(国家主席)から引き継ぐことになる。
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8日午前9時(日本時間同10時)、北京の人民大会堂のひな壇に、新旧指導者が入場してきた。胡氏に続いて江沢民前総書記が姿を現すと、会場の拍手がひときわ大きくなった。胡氏と温家宝首相の間に腰を下ろした江氏は、胡氏の活動報告を表情を変えずに聞き流していた。隣で微笑を浮かべる温氏と好対照な様子は、江氏の隠然たる権力を暗示していた。
胡氏の出身母体である共産主義青年団派(共青団派)、習派の太子党(党高級幹部の子弟グループ)、江氏が率いる上海閥は、最高指導部人事をめぐって暗闘を続けている。今回の党大会には朱鎔基前首相、李鵬元首相らも顔を見せた。習氏は、長老や胡氏らからの圧力を背中に受けながら、胡錦濤指導部が残す“負の遺産”と向き合うことになる。
胡氏は「和諧社会(調和社会)」を掲げ、格差是正や持続的成長の実現に取り組む姿勢を示してきた。しかし、実際には格差が拡大、環境破壊が進んだ。官僚の腐敗に庶民は敵意さえ覚えている。各地では住民による抗議活動が頻発している。インターネットの普及に伴い、絶対的な権力を維持してきた中国共産党も、ネット世論を無視できなくなっている。
共産党の正当性を保ち、民意をつなぎとめるためには、国民にすり寄ることも一層必要になりそうだ。胡氏は「反腐敗闘争は依然として厳しい状況にある」と汚職がはびこる現状を認め、腐敗根絶を約束。2020年までの国内総生産(GDP)倍増計画を打ち上げたのも、国民の生活改善を重視している姿勢を繕う狙いがうかがえる。
しかし、実際に難題に取り組むのは習氏を中心とする新指導部。胡氏が突きつけた“注文”は、重い足かせに他ならない。
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【中国共産党大会】胡総書記、海洋権益堅持を強調 尖閣国有化した日本牽制
産経ニュース2012.11.8 13:04
【北京=川越一】第18回中国共産党大会が8日、北京の人民大会堂で開幕した。胡錦濤総書記(国家主席)は党中央委員会活動報告で、2020年までに国内総生産(GDP)を10年比で2倍にすると表明、海洋権益の堅持を強調し、沖縄県・尖閣諸島を国有化した日本を牽制(けんせい)した。党大会の会期は14日までの7日間。閉幕翌日に開かれる見通しの第1回党中央委員会総会(1中総会)を経て、習近平国家副主席を中心とする新指導部が船出する。
過去5年間を総括し、新指導部に引き継ぐ施政方針を示す中で、胡氏は、「発展が不均衡で、持続的ではないことは、依然として突出した問題だ」「都市と農村の発展の格差は大きい」と述べ、急速な経済成長による貧富の格差拡大の是正や、環境悪化の改善を重視する方針の堅持を強調。20年までに、自らが提唱してきた「和諧社会(調和社会)」の構築という目標を達成するよう党と中国国民を鼓舞した。
和諧社会を導くのが、胡氏が03年からスローガンとして掲げ、報告の中でも徹底を訴えた指導理念「科学的発展観」だ。胡氏はその理念を、毛沢東思想、?小平理論、江沢民前総書記の唱えた「三つの代表」と同じ「長期的に堅持すべき指導思想」と表現。今回の党規約改正で位置づけが格上げされることが決まったことを物語っており、胡氏が勇退後も、一定の影響力を維持する証といえる。
経済目標としては、GDPに加え、国民1人当たりの収入も20年までに10年の2倍にするとの目標を掲げた。海洋権益については「海洋開発能力を高め、断固として国家の海洋権益を守り、海洋強国を建設する」として、尖閣諸島や南シナ海への権益拡大を明言した。
中国では官僚腐敗に対する庶民の不満が高まっており、腐敗根絶への取り組み強化も急務だ。胡氏は「政治体制改革は全体的な改革の重要な一部分だ。改革を実行し、人民の民主を拡大するための努力を続けなければならない」と述べた。しかし、その努力には「積極的」と「慎重に」という相反する言葉が付随しており、早急な変化を期待するのは時期尚早とみられる。
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■中国共産党大会 中国共産党の最高意思決定機関で、正式名称は「中国共産党全国代表大会」。5年に1度開催される。総書記が行う中央委員会活動報告や党規約改正について審議するほか、中央委員会、中央規律検査委員会のメンバーを選出する。中央官庁や地方政府、軍、国内各地の職場に広がる党組織から選ばれた代表が出席。第18回党大会の代表者数は2268人。大会閉幕翌日に開かれる中央委第1回総会(1中総会)で、政治局員・同候補、政治局常務委員、総書記、および中央軍事委員会メンバーが決まる。
■科学的発展観 中国共産党の胡錦濤総書記(国家主席)が2003年から提唱してきた指導理念。経済成長が最優先される中、深刻化した環境破壊や過熱投資、幹部の腐敗といった社会のひずみを反省、都市と農村の格差是正、社会保障の充実などを推進し、将来を見据えた持続可能かつ安定的な社会の発展を目指す考え方。「人本位」を掲げ、バランスの取れた「和諧社会」(調和社会)を構築するための「戦略的思想」と位置づけられている。
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◆ 中国の抗議デモ 学生の参加目立つ/中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している 2012-09-07 | 国際/中国 アジア
◆ 薄煕来氏夫人への判決の直前「尖閣騒動で中共幹部が隠したこと」 中国現代史研究家・鳥居 民 2012-09-04 | 国際/中国 アジア
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◆ オバマ「日米VS.中国」堅持に期待 2012-11-08 | 国際/中国/アジア
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危機に瀕する中国社会 胡政権の失敗と不作為 [石平のChina Watch]
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