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「日本よ、習近平体制(覇権国)への備え、急げ」/中国は「力が全て」/どの国も民主主義になるわけではない

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習近平体制 「覇権国」への備え急げ 国内矛盾転嫁に注意が肝要
2012.11.16 03:10[主張]
 中国共産党第18回全国大会の閉幕を受け、習近平国家副主席が新たな党総書記に選ばれた。首相候補の李克強副首相とともに政治局常務委員に就任し、新体制が始動した。両氏は来年3月の全国人民代表大会(国会)で胡錦濤国家主席、温家宝首相と交代し、今後10年の中国のかじ取りを務める。
 胡氏の完全引退に伴い、習氏は党中央軍事委員会主席にも就き、党と軍を掌握した。日本はこの体制を直視し、紛争抑止や有事への万全の備えを急ぐ必要がある。
 日本政府の尖閣諸島国有化を契機とした領海侵犯の常態化や常軌を逸した反日暴動などは、中国が「異様な国家」であることを改めて世界にみせつけた。
 ≪経済改革の後退を懸念≫
 その渦中に米国防長官と会談した習近平氏は国有化を「茶番劇」「戦後の国際秩序を否定する日本の行為を絶対許さない」と口を極めて非難した。反省のかけらもなく、さらなる膨張と海洋覇権をめざす以上、同じ事態が今後も繰り返される恐れが強い。
 今後を懸念させる要素は、党大会初日に胡錦濤主席が行った報告の随所にうかがえる。
 とりわけ、「国家の主権、安全保障、発展の利益を断固として守り、外部のいかなる圧力にも屈服しない」「強固な国防と強大な軍隊の建設は、現代化建設の戦略的任務」「海洋権益を断固守り、海洋強国を建設する」などは、その象徴といっていい。
 10年前、「調和のとれた社会の建設」や「平和的発展」「善隣友好」を掲げて登場した胡錦濤・温家宝政権への期待は高く、「胡温新政」とも呼ばれた。江沢民前政権が「反日親米」外交と富国強兵路線を突っ走ったのとは対照的で清新なデビューだった。
 にもかかわらず、結果は全くのかけ声倒れに終わり、任期最後の大会報告は多くの面で江沢民時代に逆戻りした観が強い。
 その理由は、江氏ら上海閥・太子党(高級幹部子弟)勢力に推されて総書記となった習近平氏の思想や政策が、胡氏の大会報告にも組み込まれたからだろう。
 温氏が何度も提起した政治改革では「党指導下で民主と法治を堅持」して「西側の政治制度のモデルを引き写ししない」とし、何の新味も改革意欲もみられない。
 経済改革でも「公有制経済を強化し、国有経済の活力、支配力、影響力を絶えず増強させていく」と民営化、市場経済化の流れを後戻りさせるような言及がある。習氏の属する太子党など既得権益層の意向を反映しているのか。
 これでは薄煕来事件で露呈した幹部の腐敗、特権乱用、所得格差に歯止めがかからない。
 一方で、習氏は就任会見で新体制の目標が「偉大な中華民族の復興」にあると強調した。国内矛盾を外に転嫁して対外膨張を加速する懸念が一段と高まるわけだ。
 ≪中国リスクを見極めよ≫
 日本のとるべき道は明確だ。
 習体制は尖閣問題で一層の圧力をかけてくる可能性があるが、日本は断じて屈してはならない。
 領土・領海を守る十分な防衛力と、それを的確に動員可能にするために、憲法改正を含む法整備を急ぐ。日米同盟を基軸に豪州、東南アジア、インドなどとの政治、軍事的連携も強化すべきだ。
 過度の対中経済依存を防ぐために生産拠点を分散し、領土・領海に関する日本の主張を国際社会に普及することも必要だ。中国国内や世界の華僑社会に向けた中国語の情報発信にも力を入れたい。
 米国のアジア太平洋重視外交と連携して中国に「責任ある行動」を求める一方、不測の事態を防ぐため政治、軍事、経済、文化など幅広い対中交流を可能な限り維持拡大する工夫も欠かせない。
 江氏らの上海閥、太子党、胡氏率いる共産主義青年団(共青団)の対日姿勢は異なる。上海閥と太子党は概して日本に厳しい。習氏は過去の言動からも「親米反日」の傾向がうかがえ、軍の権力を掌握したことも要注意だ。
 共青団系は対日姿勢が比較的穏健とされ、李氏は滞日経験もある。それでも、尖閣奪取の攻勢を容認した胡氏が共青団直系だったことを忘れてはならない。
 日本は国益を断固堅持し、何よりも日中が衝突する最悪の事態に十分に備えた上で、互恵・共存の道を探ることが大切である。中国共産党政権は「力が全て」の相手だからだ。
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『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
p93〜
第5部 どの国も民主主義になるわけではない
 人類の歴史を見れば明らかなように、確かに長い目で見れば、野蛮な時代から封建主義の時代に代わり、そして絶対主義の時代を経過し、民主主義が開花した。ヨーロッパの多くの国々はこういった過程を経て豊かになり、人々の暮らしが楽になるとともに、民主主義、人道主義へ移行していった。鍵になったのは「経済が良くなり、暮らしが楽になる」ということである。
 中国の場合は、明らかにヨーロッパの国々とは異なっている。そして日本とも全く違っている。中国は二十数年にわたって経済を拡大し続け、国家として見れば豊かになった。だが、すでに見てきたように貧富の差が激しくなるばかりで、国民は幸福にはなっていない。こう決めつけてしまうと親中国派の人々から指弾を受けるかもしれないが、中国国内の政治的な状況を見ると、依然として非人道的な政治が続いている。民主主義は全く育っていない。
 中国はもともと共産主義的資本主義と称して、共産党が資本主義国家と同じようなビジネスを行なってきた。中国という国家が資本主義のシステムを使ってビジネスを行ない、国営や公営の企業が世界中から稼ぎまくった。この結果、中国国家は経済的に繁栄したものの、中国人一人ひとりは幸福になっているようには見えない。
p95〜
 「中国人は食べられさえすれば文句は言わない」
 中国の友人がよくこう言うが、中国人はそれ以上のことを望まないのかもしれない。つまり中国の人は「食べられる」以上のこと、つまり形而上学的な問題には関心がないのかもしれない。
 「民主主義、人道主義、国際主義といったものは我々には関係ない」
 こう言った中国の知人がいるが、中国だけではなく、ロシアの現状を見ても、封建主義から民主主義に至る政治的な変化を人類の向上とは考えない人々が大勢いるようだ。
p97〜
 第2次大戦以来、人道主義と民主主義、そして平和主義を主張してきたアメリカのやり方が、アメリカ主義でありアメリカの勝手主義であると非難された。「アメリカ嫌い」という言葉が国際的に定着したのは、その結果であった。そうしたアメリカのやり方を、1つの考え方であり、1つの価値観に基づくものであると切り捨てているのが、ロシアの指導者であり、中国の指導者である。
p98〜
 ヒットラーはドイツの誇りを掲げ、ユダヤ人を圧迫するとともに、反政府勢力を弾圧して経済の拡大を図った。中国もその通りのことをやっている。しかも、冷戦に敗れたロシアのプーチン前大統領が主張しているように、価値観の違った、そしてやり方の違った経済の競争が可能であるとうそぶいている。
 だが彼らの言う価値観の相違というのは、民主主義を無視し、人道主義を拒否し、国際主義に反対することである。中国やロシアについては、冷戦に敗れた国や第2次大戦に脇役しか与えられなかった国が自分たちのやり方で歴史の勝利者になろうとしているように見える。
p99〜
 共産主義は冷戦の結果、民主主義とそれに伴う人道主義に敗北したはずである。ところが中国は、冷戦と同じ体制を維持しながら、経済の戦争には勝てるとばかり傲慢になっている。
 ヨーロッパの人々は中国の台頭をヒットラーの台頭になぞらえている。これに対して日本のジャーナリストや学者たちは驚きを隠さないようである。彼らは、ユダヤ人を抹殺しようとしたヒットラーと中国は異なっていると考えている。だが、共産党が絶対で、反対の意見を持つ者は犯罪者として牢獄に送り、言論の自由を認めていないという点では、中国はヒットラーと同じである。
 中国は明らかに人道主義を否定しているだけでなく、民主主義を理解しようとしていない。国際主義も分かろうとしない。
p100〜
 ヨーロッパの人々は、歴史的な経験から中国が危険であるとして、ヒットラーと同じであると指摘しているが、歴史にナイーブな日本の人々は全くそのことに気がついていない。
 ヨーロッパの人々はヒットラーと戦い勝利を得たが、そのためにアメリカと同盟し手を携えて戦った。中国がヒットラーだという考えに驚くべきではない。新しいヒットラーである中国の共産主義の専制体制に対して世界の人々は、手を携えて戦わなくてはならなくなっている。「アメリカ嫌い」という言葉で中国の脅威から目を逸らす時代は終わったのである。
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