危険な方向へ走る中国新政権 広がる暴動予備軍の裾野【石平のChina Watch】
産経新聞2012.12.06
習近平政権が発足して数週間、この政権の不吉な未来を予兆するような暗いニュースばかりが中国から伝わってきている。
たとえば11月27日、中国株の指標となる上海総合指数は久しぶりに2000ポイント台から落ちて約4年ぶりの低水準を記録した。
新しい政権が誕生した直後に株の「ご祝儀相場」が見られることがあるが、中国の場合、むしろ新政権への「失望相場」となっている。
同じ日に中国証券報が伝えたところによると、米JPモルガン・チェースが発表した11月の中国市場信頼感指数(JSI)は49・2で、10月の61・2から大幅に低下した。誕生早々の習政権はすでにバブル崩壊中の経済低迷に悩まされている。
新政権を取り巻く社会情勢はさらに深刻だ。政権発足後わずか10日間で、大規模な暴動事件の発生が3件もあった。
まず11月17日、習総書記自身がトップを務めた福建省寧徳市で、地元警察の汚職を疑う市民ら約1万人が暴動を起こし警察を襲った。
20日には、浙江省温州市郊外の農村で、変電所建設に反対する地元住民1000人以上が警官隊300人と衝突し、200人が負傷した。
その翌日の21日には、四川省広安市隣水県で、地元公安当局に抗議する住民1万人余りの暴動が起きた。公安当局の車が数台破壊され、20人の市民が負傷した。
政権発足直後の暴動多発は、本欄指摘の通り新指導部人事に対する人々の絶望の表れでもあろうが、暴動に至るまでの経緯やその原因をみれば、背後にあるのはやはり、今の体制と社会全体に対する国民の強い反発と不満であると思う。
例えば広安市隣水県で起きた暴動の場合、オートバイを運転していた住民が警察に殴られたことが事件の発端である。寧徳市の暴動の場合、1件の交通事故の発生が地元警察の汚職疑惑をもたらした。
普通の国ではおよそ「暴動」と結びつけることのできない、警察による暴力沙汰や汚職疑惑が中国では1万人参加の暴動発生の原因となりうるのだ。
言ってみれば、今の中国人は何らかの切実な理由があって「やむを得ず」暴動を起こしたというよりも、むしろ暴動をやりたくてうずうずしており、ちょっとした口実でもあればすぐそれに飛びついて一暴れするのである。
中国のどこの町でも、このような危険極まりない暴動予備軍が常に万人単位で存在しているのであろう。
この文章の冒頭でも取り上げているように、今後中国経済の低迷はさらに続き、失業の拡大や貧困層の生活難などの問題がより深刻化すれば、暴動予備軍の裾野はさらに広がっていく。
習近平政権は今後、一体どうやってそういう人々を手なずけて民衆の爆発を防ごうとするのだろうか。
おそらく彼らに残される最後の有効手段は、対外的な強硬政策を推し進めることによって国民の目を外に向かわせることであろう。
実際、習政権はその発足後数週間、海軍の「虎の子」の新空母で初の着艦試験を成功させたり、東シナ海と南シナ海でそれぞれ軍事演習を実行したり、フィリピンなどと領有権を争う南シナ海周辺を自国領と紹介する軍監修の地図を発売したりして、まさに軍中心の挑発的な行動を頻繁に展開し始めている。
内政面で追い詰められているこの政権は樹立早々、すでに危険な方向へと走っているようである。
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【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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◆ 危機に瀕する中国社会 胡政権の失敗と不作為 [石平のChina Watch] 2012-11-08 | 国際/中国/アジア
◆ [石平のChina Watch] 習近平氏の罠に要注意/中国の沖縄工作の狙い〜日本属国化 2012-09-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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◆ 「外交・防衛は票にならない」と言うのなら、北朝鮮や中国があざ笑うだけである 2012-12-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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◆ 中国の抗議デモ 学生の参加目立つ/中国では1日平均500件、年間に18万件の暴動が発生している 2012-09-07 | 国際/中国 アジア
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