【どうなる日米関係】米のシビアな対テロ政策とうまく連携できるか★(3)
zakzak2013.01.24
安倍外交がスタートした。安倍晋三首相は、オバマ米大統領が再選直後に訪れた東南アジア諸国を、同じく就任後最初の訪問地としたが、その外遊途中でアルジェリア人質事件が起こった。安倍首相は「無辜(むこ)の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は決して許されない」とし、「テロと戦う決意」を表明した。
問題はいかに米国と連携して「人質テロ」と戦うかである。人命第一の危機管理問題として対処する日本と、国家安全保障として国防総省がオペレーションする米国とでは、連携はなかなか難しい。「武力は外交の延長である」(クラウゼヴィッツ=プロイセンの軍事学者)という戦略文化を基礎に持つのが米国である。
オバマ政権のテロ対策で中心的役割を占めるのが、今回任命されたチャック・ヘーゲル国防長官(66)と、ジョン・ケリー国務長官(69)という老かいな熟練政治家である。
ヘーゲル氏は共和党の上院議員でありながら、2007年、ブッシュ大統領のイラク増派に大反対をして議員を退いた骨太の1匹オオカミである。ネブラスカ州立大学在学中にベトナム戦争に従軍(陸軍)。帰国後はビジネス界に身を置き、1996年に上院議員(ネブラスカ州)に当選して、2008年まで議員として活躍した。
一方、ケリー氏は、エール大学卒業後、ベトナム戦争に従軍(海軍)。帰還後はベトナム退役兵のために活動し、反戦活動にも熱心に取り組む。マサチューセッツ州副知事を経て、1984年に上院議員(マサチューセッツ州)に当選。外交政策委員会では委員長を務めた。
ヘーゲル氏とケリー氏は第2期ブッシュ政権下で、オバマ大統領(51)や、バイデン副大統領(70)とともに、米国の外交政策に大きな影響を持つ上院外交委員会にいた。この時、米軍の捕虜虐待事件で米国の威信が大きく失墜し、イラクやアフガニスタンでの戦闘が熾烈さを増して、内外に行き詰まっていた。そんな中で、「四人組」は外交委員会で闘った戦友である。
また、ヘーゲル、ケリー両氏とともにテロ対策を担うCIA(中央情報局)長官には、やはり現実主義的な思考を持つジョン・ブレナン氏(57)が指名されている。ブレナン氏は大統領補佐官(国土安保・テロ対策担当)として、無人爆撃機による対テロ政策の推進者であり、オバマ大統領の信頼は絶大である。
オバマ2期目の対テロ政策は、テロリストに譲歩することなく力をチラつかせながら最大限の効果を狙うものになるだろう。そのシビアな政策に、安倍外交はどこまでついていけるのか。安倍政権に最大の課題が突きつけられている。
■川上高司(かわかみ・たかし) 1955年、熊本県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。著書に、「米軍の前方展開と日米同盟」(同文舘出版)、「アメリカ世界を読む−歴史を作ったオバマ」(創成社)など。
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