海洋安全保障 中国けん制へ国際連携図れ(6月20日付・読売社説)
中国の著しい海洋進出で、急速に変わりつつあるアジアの安全保障環境に、日本は適切に対処していく必要がある。
菅首相とインドネシアのユドヨノ大統領が17日、東京で会談し、マラッカ海峡や南シナ海などにおける海賊対策や安全保障の問題での協力を一層強めていくことで一致した。
こうした海域は、中東と北東アジアを結ぶ海上交通路(シーレーン)であり、貿易立国の日本にとっては極めて重要である。
両国は、津波などに備える防災協力や、地球温暖化問題への対応、外相、防衛相、経済産業相ら閣僚による各協議の定例化についても合意した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の中核を占めるインドネシアと日本が、対話を重ね、地域の安定化に向けて協力できるようになれば、意義は大きい。
両首脳が戦略的関係の強化を図るのは、「海洋大国」を目指す中国に共同で対処する必要があるとの判断からだ。
中国は、南シナ海の領有権や海洋権益を巡り、ベトナムやフィリピンなどとのトラブルが絶えない。武力による威嚇も辞さない構えの中国の姿勢に対し、ASEAN各国は不安感を強めている。
こうした中国の動きに対して、ASEANは、南シナ海での紛争を話し合いで解決するとした「行動宣言」を、法的拘束力を伴う「行動規範」に格上げすることを目指している。中国はこの協議に前向きに応じる必要があろう。
懸念されるのは、日本近海でも最近、中国海軍が活動を活発化させていることである。
中国海軍の駆逐艦など11隻が6月上旬、沖縄本島と先島諸島の間を通り抜け、フィリピン東方沖の西太平洋で演習を実施している。遠洋での演習は、年々規模も内容も拡充されている。
中国海軍の増強は、東シナ海で尖閣諸島やガス田問題を巡って、中国と対立する日本にとっても看過できない。
日本政府は、インドネシアと同様に、対中警戒感を強める他のアジア諸国とも、重層的で幅広い対話の枠組みを構築していかなければならない。米国との同盟を深化させることも、中国へのけん制となるはずだ。
7月のASEAN地域フォーラム(ARF)や、秋の東アジア首脳会議(EAS)などの機会を積極的に利用すべきだろう。各国が連携して、中国に自制を促せるよう知恵を絞る必要がある。
(2011年6月20日00時59分 読売新聞)
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中国は、南シナ海の領有権や海洋権益を巡り、ベトナムやフィリピンなどとのトラブルが絶えない
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