【土・日曜日に書く】ワシントン支局長・佐々木類 国際社会と共に尖閣守れ
産経新聞2013.2.17 03:09
■厚い面の皮
どの口を開けば、こういう言葉が出てくるのかと思う。
「日本が危機をあおり、中国のイメージに泥を塗った」「日本の完全な捏造(ねつぞう)だ」。中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への射撃管制用のレーダー照射について、中国外務省の華春瑩報道官が記者会見で発した言葉だ。面の皮が厚いとはこのことで、高飛車でしれっとした顔の記者会見を見せられると、「鳴子のこけし」の方がよほど表情豊かに見えてくる。
思い出すのは、2007年から08年にかけて起きた中国製冷凍ギョーザ中毒事件だ。このときも中国外務省は、科学的見地から中国国内で毒がもられた可能性を指摘した日本側に、「中国側に汚水をまく行為だ」と責任をなすりつけた。後に、犯人は天洋食品を逆恨みした中国人元従業員と判明したが、日本への謝罪は一切ない。
今回のレーダー照射で日本政府は、国際法上の戦闘行為に出た中国の極めて危険な行動を明らかにした上で、領土保全に対する威嚇を禁じた国連憲章違反であると問題提起する方針を示した。矢継ぎ早の外交攻勢だ。中国軍が重要作戦と位置付ける「世論戦・心理戦・法律戦」という「三戦」のお株を奪う最善手を打った。
■米戦略の試金石
中国艦艇によるレーダー照射発覚直後の2月7日、米下院で開かれた米中経済安全保障調査委員会。傍聴席にいた約40人近い関係者のうち、半数近くが中国メディアだった。情報収集活動は活発で、上下両院や民間シンクタンクの会合に連日雲霞のごとく出現。中国外務省報道官の発言と同じ言い回しで沖縄・尖閣諸島の領有権を主張する質問をぶつけている。言論の自由がない国にジャーナリズムはあり得ない。ワシントンでメディアを名乗る中国人はほぼ全員、共産党工作員とみて間違いない。
有形無形の圧力がかかる中、米シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ政策研究所」のマイケル・オースリン日本部長は、中国艦艇によるレーダー照射を日中間の緊張に「重大な質的変化」をもたらしたと批判した。
また、「オバマ政権が打ち出した外交・安全保障の新戦略、リバランス(軍事力の再均衡)やピボット(軸足旋回)が、具体的にどういうものかが試されている」と指摘。民主党支持者からも外交的に内向きだと批判されるオバマ新政権にとって、中国への対応は新戦略の本当の狙いを見極める試金石になるとの見方を示した。
米政府のとるべき対応については、「米国は(尖閣諸島や南シナ海での)中国の挑発行為を見過ごしてきたが、今回ばかりは短期的な米中関係の悪化を覚悟して厳しく対応し、長期的な地域の安定を目指すべきだ」と語った。
■鯉口切った中国軍
尖閣問題の本質は、領土問題ではなく、日本に華夷(かい)秩序への従属を迫る中国の覇権主義にある。人権弾圧と政権腐敗に対する人民の批判をかわすための反日。旧日本軍と戦わなかった抗日戦のウソから共産党統治の不当性を隠蔽(いんぺい)するための反日。これが情報過疎の無知な人民をあおり、覇権確立と国内矛盾の封殺という一石二鳥を狙う反日の実態だ。21世紀に蘇(よみがえ)った清朝時代のアヘンのごとく、自家中毒を起こして責任ある大国としての正常な判断を狂わせている。
尖閣諸島への領有権主張という不条理な言動も、覇権主義の舞台回しにすぎない。1992年に領海法で尖閣諸島を領土化し、2010年に国防動員法を制定、日本との間合いを詰めてきた。
そして、射撃管制用のレーダー照射という鯉口(こいぐち)を切った。民度の高い日本への蛮行を世界の首都から目の当たりにすると、爬虫(はちゅう)類が哺乳類を補食しようとする映像を見せられた嫌な気分になる。中国は最初に手を出しながら日本が先にやったと喧伝(けんでん)するだろう。対日弱腰外交と批判され、一族郎党が打ち首獄門になりかねない一党独裁国家の恐怖を考えたら、どんな捏造も朝飯前だからだ。
棍棒(こんぼう)を振り回すだけではなく法律戦も仕掛けてきている。日本の尖閣国有化は「世界の反ファシズム戦争の成果を否定し、戦後国際秩序と国連憲章への挑戦」だそうだ。ならば言おう。言論の自由や人権を弾圧する中国共産党の存在自体が、人権尊重をうたった国連憲章第1章第1項違反である。
「米国は日中衝突に巻き込まれたくないが、必要となれば同盟国としての役割を果たす」。オースリン氏の見立てだ。米政府のホンネにかなり近いと思う。日米両首脳は会談で明確なメッセージを出す。だからというわけではないが、わが国は慌てて鯉口を切る必要はない。中国の思う壺(つぼ)だ。柄(つか)に手をかけつつ、「無刀取り」さながらの積極外交で、国際社会を味方につけることが肝要だ。(ささき るい)
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◆ 石原慎太郎氏(衆院予算委)質疑 詳報 憲法改正/天皇/尖閣/横田基地/NLP/会計制度/債務/環境 2013-02-13 | 石原慎太郎
【石原氏の質疑詳報(上)】「暴走老人が戻ってきた」 衆院予算委
産経新聞2013.2.13 08:24
日本維新の会の石原慎太郎共同代表が質問に立った12日の衆院予算委員会の質疑の詳報は以下の通り。
【はじめに】
石原氏「浦島太郎のように18年ぶりに国会に戻ってきた。暴走老人の石原だ。私はこの名称を非常に気に入っている。せっかくの名付け親の田中真紀子(前文部科学相)さんが落選した。『老婆の休日』だそうで、大変残念だ。これからの質問は言ってみれば、この年(80歳)になって国民の皆さんへの遺言のつもりだ」
「昨年2月ごろ、靖国神社で聞いた90歳超のある戦争未亡人の歌だ。この方は20歳前後で結婚して子供をもうけたが、主人は戦死された。ひ孫もできたかもしれないが、その方は90歳を超して今の日本を眺めてこういう歌を作った。『かくまでも 醜き国になりたれば ささげし人の ただに惜しまる』。これは強い共感を持ってこの歌を聞いた」
「国民の多くは残念ながら我欲に走っている。政治家はポピュリズムに走っている。こういうありさまを外国が眺めて軽蔑し、日本そのものが侮蔑の対象になっている。好きなことを言われている。なかんずく、北朝鮮には200人近い人が拉致されて、中には殺されて、取り戻すこともできない。こういった実態を眺めて、この戦争未亡人はあの戦のために死んだ主人を想起しながら心情を吐露した。私は運命の気がしてならない」
【憲法改正】
「さて、首相が(自民党)総裁選に出る前に、非常に心強い思いをして期待した。まずこの国の今日の混乱、退廃に導いた大きな原因である現行憲法について聞きたい。人間社会に存在する規範は結局は、人工的なものもあるだろうが、人間の歴史の原理にのっとっている。戦争の勝利者が、敗戦国を統治するために作った即成の基本法が、(米国に)統治された国が独立した後、数十年にわたって存続している事例は、私は歴史の中でみたことがない。もし、日本という独立国の主権者、つまり最高指導者の首相がこの歴史の原理にのっとって、かつて勝者が一方的に作った憲法を認めずに廃棄するということを宣言したときに、これを阻む法律的限界はあるのか。日本の憲法をいかにお考えか」
首相「確かに今、石原先生がおっしゃったように、現行憲法は昭和21年に日本がまだ占領時代にある中で、マッカーサー私案が作られた。マッカーサー私案は毎日新聞にスクープされるが、スクープを見たマッカーサーが怒り狂い、日本に任せておくわけにはいかないということで、ホイットニーに命じた。ホイットニーは2月4日に、(連合国軍最高司令官総司令部の)民政局次長であるケーディスに『2月12日までに作れ』と命じて、ほぼ8日間、1週間ちょっとで作り上げたのが現憲法の原案だったわけだ。それが現行憲法のもとであると認識している」
石原氏「その憲法を、日本の最高指導者であるあなたが廃棄すると仮に言ったときに、これを法的に阻害する根拠は実際ない。それに加えて最近、北朝鮮は核開発に着手している。
地震も起こしたが、かつて自民党の政調会長をしていた中川昭一くん(故人)が『日本もそろそろ核のシミュレーションぐらいしたほうが良いのではないか』と言ったら、慌てて時の国務長官のライスが飛んできた。こういった厄介な状況が日本の周りで進展するなかで、私たちは憲法の破棄なり改正を含めて、この国をもっと自分自身で守りきるという基本的な法的な体制をつくる必要があるのではないか」
「日本人が好きなトインビーの『歴史の研究』という本にあるが、いかなる大国も衰亡し滅亡もする。しかし、国が衰弱する要因はいくつもある。一番厄介な大国の衰亡、滅亡につながる要因は何かというと、自分で自分のことを決められなかった国は速やかに滅びるということで、国の防衛を傭兵(ようへい)に任せたローマ帝国の滅亡を挙げている。私は首相をはじめ、国会議員、国民の皆さんにも思い直してもらいたい」
「かつて名宰相だった吉田茂の側近中の側近だった白洲次郎さんが面白いことを言った。『吉田さんは立派だったが1つ大きな勘違いをした。サンフランシスコ(平和)条約が締結されたときに、なぜあの憲法を廃棄しなかったのか』と。麻生(太郎副総理)さんは安倍さんと一緒にこの問題を考えてほしい」
「この憲法をね、議員の諸君で精読した人はいるのか。あの前文の醜さは何だ。たとえば、『ここにこの憲法を確定する』とあるが、日本語で法律を決める場合は『制定』だ。『全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ』とあるが、ちょっとおかしな日本語だね。助詞の常套(じょうとう)から言えば『恐怖と欠乏を免れ』なんだ。日本語の助詞、間投詞は非常に大事で、1つ間違うと全然、作品の印象も違ってくるが、これをまったく無視した。日本語の体を成していないな。英文和訳とすれば70点もいかないぐらいだ。
こういう憲法が破棄も廃棄もされない。吉本隆明の言葉ではないが、『絶対平和』という一種の共同幻想で日本を駄目にした。首相はそれを考えて、憲法をできるだけ早期に大幅に変えて、日本人のものにしてほしい。そのためには、いかなる協力もする。うかがうが、第1条に『天皇は日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴である』と書いてあるが、象徴の具体的な意味はどう解釈するか」
首相「象徴というのはいわば、日本国において権力を持つ存在ではなくて、日本の長き歴史と伝統、文化と日本国民を象徴する存在だと理解している」
【靖国神社参拝】
石原氏「大まかには正しい。具体的に言うと、天皇はプリースト・キングだ。神道の大司祭だ。神道は普通の宗教と違う。人間の崇高な感性というか情念というか、そういったものの結晶だ。熱心なカトリック教徒の曽野綾子さんが伊勢神宮に行って、『これが日本だと自覚した』とエッセーに書いた。神道の大司祭者である天皇は、日本の感性がもたらした文化の象徴だ。決して政治の象徴ではない。それに付随したことだが、首相は今年、靖国神社に参拝するか」
首相「靖国参拝について、私はいたずらに外交的、政治的問題にしようとは思っていない。だから、私が靖国に参拝するしないということについては申し上げないことにしている。一方、国のリーダーがその国のために命をかけた英霊に対し、尊崇の念を表するのは当然だろうとも思っている」
石原氏「なかなか分からないような分かるような…。私は行かなくて良いと思う。あなたが行くと結局、政治問題になる。
ならば、その代わりに、国民を代表してお願いしたい。ぜひ、国民を代表した首相として、今年は天皇陛下に靖国神社に参拝していただきたい。これは決して政治的行為ではない。宗教的な問題でもない。神道という人間の情念の結晶の代表者であり象徴である天皇陛下が、戦争で亡くなった人を悼んでお参りするのは当然のことだ。異義は唱える国はない」
「あの戦争の評価について言えば、日本人はいまだに一方的にニュルンベルクと同じように戦勝国に敗訴させられ、東京裁判史観にとらわれている。しかし、その後、マッカーサーは米国の議会で、『今から考えてみたら、あの戦争は日本にとって自衛の戦争だった』と証言しているじゃないか。インドネシアのスカルノ大統領も同じことを言った。靖国参拝が政治的に解釈され、あの戦争の価値観に引っかかるなら、とにかく(首相の参拝を)やめたらよい。その代わり、神道の祭主である天皇陛下に、『国民を代表して靖国に参拝していただきたい』と陛下に奏上してお願いしたらどうか。いかがか」
首相「陛下のご親拝について私がうんぬんする立場ではない。しかし、今、石原議員がおっしゃったように、本来、国のために命をささげた人たちに対する敬意の表し方は本来、政治的なものではないわけだ。(米国)ジョージタウン大学のケビン・ドーク学部長が論文に書いていたが、『アメリカにおいて南軍も北軍の兵士も埋葬されていて、そこに大統領が参拝したからといって、南軍の奴隷制度を維持するという考え方に賛成するものではない。ただ国のために命をかけた人々に対する敬意の表明でしかない』と書いていたが、私もその通りだと思う」
【石原氏の質疑詳報(中)】「尖閣に灯台を造るべきだ」 衆院予算委
産経新聞2013.2.13 08:40
【尖閣問題】
石原氏「日本とシナの間の紛争の種になっている尖閣について。ついでに言うと、シナは日本人が使うと顰蹙(ひんしゅく)を買うようだが、おかしい。シナの政府のコメントを発信しているインターネットサイトのイニシャルは『sina.com』だ。中国は山口県、岡山県、広島県のことを言う。シナはシナで良いじゃないか。尖閣を日本は実効支配している。言葉は勇ましいが、実効支配の具体的な実態は何か」
首相「尖閣諸島は歴史的にも法的にもわが国固有の領土だが、日本が有効に支配している。有効に支配していることについて言えば、いわば、尖閣から12カイリのわが国の領海においては、わが国の海上保安庁の船が海の管理をしている。接続水域についても管理しているということだ」
石原氏「?小平が棚上げにしましょうと言って、日本の外務省は喜んで相好を崩して今日に至ってきた。私たち青嵐会は反発し、ある時、関西の学生たちに頼んで、ちゃちな灯台を造った。傘をつけたようなただの明かりだったが、それを頼りに避難している人たちから、学生たちは非常に感謝された。学生たちは非常に感動して『私たちは国家、民族というものを感じた』と報告してきた。その後、皆は右翼と蔑称するが、(日本)青年社という政治団体が行って、立派な灯台を造った。これは国家にとって良いことか。迷惑なことか」
首相「その灯台が造られたのはかなり昔の話だが、灯台ができたことによって、近くを通る人たちが『大変有益である』と話をしているということは聞いたことがある」
石原氏「私は運輸相もしたことがあるので、海図に記載しようとしたら、おかしなことに外務省から待ったがかかった。『時期尚早』といわれた。私はね、時期尚早といって灯台を正式な海図に載せないことが実効支配といえるか。どうか」
首相「海図に載っていないかどうかは、私もつまびらかに承知していないわけだが、そうした事実があるかどうかは確認してみたい」
石原氏「それから20年経って、私の息子が国土交通相をしているときに彼に厳命した。『あそこの灯台は日本国が造ったと示すためにプレートを貼れ』と言ったら、国交省はプレートを貼った。当然の措置だと思うが、私は今、日本がやっていることは実効支配とはとても言えないと思う」
「できれば魚釣島の頂上に、周囲八方から見える灯台を造るべきだ。日本の漁民のためではなく、全世界の航行者にメリットになる。ぜひやってもらいたい。たまたま、私が(東京都知事時代に)東京都で買おうと言ったが、たちまち寄付金が集まった。今も積んである。ぜひ、安倍内閣であのお金を有効に使って、国民の期待に応えてもらいたい」
「民主党の野田(佳彦)政権の時に、野田前首相が話したいというから、仲間の園田(博之)議員に立ち会ってもらった。園田さんは『私は石原さんは軍隊おけと言うのではないかとハラハラしたが、これぐらいの要望なら、聞いたらよいじゃないか』と。言った。私は灯台を造るということと、漁民が2、3日いられるように船だまりを造ってと言ったら、野田君は『まずステップ・バイ・ステップだろう』と。『最初のステップは何か』と聞いたら、『太陽パネルを持っていく』と。太陽パネルを持っていって電気を起こしても、灯台を作らないと意味がない。それで訳の分からない会合が終わり、国が買い取り今の体たらくだ。むしろ東京都が買い取り、沖縄(県)と石垣(市)と一緒に仕事すればよかった気がする。今から言っても愚痴にしかならないが、灯台は大きな意味がある。最低限、実効支配を具体的に表現するためには、あそこを通行する全国民のために灯台を作ってほしい。熱願する」
「次に、日本とシナの間の関係だ。シナが非常に挑発して嫌がらせしている。日本は我慢しながらこたえている。国民の意見は共通して『冷静に毅然(きぜん)として対応してほしい』と。冷静とはどういうことか」
首相「冷静というのは正常な判断力を備えながら対応していく態度ではないのかなと思う」
石原氏「そうですね。冷静に判断することが、政府の責任だと思うし、同時にそれが毅然とした態度を導く一番の術だと思う。防衛省の内局の言っていることは全部駄目だ。OBの話を聞くと違う判断ができると思う。内局は飛行機にも船にも船にも乗ったことがない連中だ。毅然たる態度を導く情報にはなり得ない。これから色んな判断をせざるを得ないときが来るだろう。そのためには、現役とは言わない。ごく最近のOBで結構だ。そういう人の意見を聞いてほしい。彼らは戦闘機に乗って性能の違いを知っている」
「仮に、尖閣をめぐる軍事紛争が起こったときに、あの島をシナが占領して何になるのか。日本が(太平洋戦争時に)出かけたガダルカナルと同じになる。ロジスティック、兵站が続かない。シナの海上輸送能力はみな過大評価しているが、冷静に現実を把握してほしい。日本の海上自衛隊、海軍の対潜能力は世界一だ。その限りで、尖閣周辺の紛争では制空権、制海権がとられることは絶対ない。これから先は分からないが。大事なことは、中国は膨大な経済国になったが、ロジスティックの海上シーレーンが保持できるか。できっこないのを知っていながら挑発している。日本は毅然とした態度をとったほうがよい。毅然とした態度は何か。パチンと鯉口を切ることだ。刀を抜くのはばかだ。昔の侍と同じように、『寄らば斬るぞ』と鯉口を切ればよい。そこまで決心しないと国民の要望に応えきれないと思うがどうか」
《註:へいたん【兵站】
アメリカ軍ではロジスティックスlogisticsといい,自衛隊(陸上自衛隊を除く)では後方と呼ぶ。作戦軍の生存と活動を維持・増進するため必要な軍需品,補充員等を本国から追送し,また死傷者,損傷兵器等を取り除いて本国に後送し,それによって作戦を支援する,戦闘地帯から後方の軍の諸活動・機関・諸施設を総称して兵站という。
[陸上兵站]
(1)補給業務 兵站の中心は補給業務である。作戦軍が必要とする糧食,燃料,武器,弾薬,衛生材料,その他の需品類を,本国から前線部隊まで輸送するための交通路(兵站線または後方連絡線という)が設定される。》
首相「私は常に鯉口を切っている印象を与えているところもあるかもしれないが、大切なことは尖閣について言えば、わが国の固有の領土であり、交渉の対象でもない。断固として、わが国は固有の領土、領海、領空を守っていく決意を示していくことだろう。万が一にも、実効支配を揺るがすことができるかもしれないと相手国に思わせることがあってはならない。その観点から来年度予算については、約11年ぶりに防衛予算を増やした」 石原氏「もっともっと」
首相「兵員については約20年ぶりに実増させたわけだ。また海上保安庁においてもそうだ。しっかりと相手に付け込む隙を与えないように、備えを確かなものにしていきたい」
石原氏「日本の防衛態勢には非常に大きな欠陥がある。ミサイルの問題だ。日本と相手の迎撃ミサイルの数はかなり違う。一度に20、30発打ち込まれたら半分ぐらいは打ち落とせるが、あと半分はできない。深刻に考えてほしい。搭載されているのは普通の爆弾だ。たとえば、仮に北朝鮮にしろシナにしろ、ミサイルが飛んできても、国会議事堂を全壊するような破壊力はない。核戦争はあってはならないし、そこまでシナも愚かではないと思うが、日米の防衛関係はきちっとする必要がある。集団的自衛権は当然表示して実行すべきだ。でないと、日本は孤立するだけで周りからも疎まれる」
「(元首相の)三木武夫は武器輸出を禁止する原則を作った。総予算の1%以内に防衛費をとどめろと。こんな論拠がない、センチメントが国是らしきものとしてまかり通っている。世界に例がない。これを当然変えることが安倍内閣の責任だ」
「日本は新しい技術を持っている。オバマ(米国大統領)は世界の核兵器をなくそうと言いながら、核のシミュレーションをしている。日本は『寄らば斬るぞ』という刀を持たなければならない。(戦略兵器の開発は)核と違って顰蹙を買わない。ぜひ考えていただきたい。いかがか」
麻生太郎副総理「優秀な機械、優秀な技術が帰ってきたときに最初に内容の詳しい説明を求めてきたのは米国の陸軍省だった」
【横田基地の共用化】
石原氏「日本に米国の横田基地がある。私が代議士のころから何とかしようと思って、土井(たか子)さんが社会党委員長のときからアプローチしている。日本の飛行機がヨーロッパから帰って来るが、(空域を)通れない。1度、太平洋側に出ないと成田や羽田に着けない。こんなばかなことがまかり通る国はあるか。金丸某が自民党を仕切っているときに、これを問題にしてくれたが、なぜか時期尚早と打ち切られたので、知事になってからやり出したが進まない。」
「米国は同情的だが空軍だけは渡したくない。前に総司令官のフォールが『考えようじゃないか』というシンポジウムに来てくれたが、外務省はフォール大使を呼びつけて『横田問題は日本国家のイッシューではない。小泉政権では問題にしたかもしれないが、今は問題にならない』と圧力をかけた。これについては言いたいことがいっぱいある。腹が立たって仕方ない」
「あと5年で日本の国際線はパンクする。僕らの衰退につながる。せめてビジネスジェットの8割を共同使用すればよい。(横田基地は)本来は返還されるべきものだが、共同使用が最初のステップだ。なんとかビジネスジェットを優先的に入れる。本当の空港にするとインフラ整備が必要だが、いずれにせよ、まずビジネスジェット。頻繁に利用されるようにならば、この空港の存在価値は大きくなる。各省連帯で横田の共同利用をとりつけてほしい。お願いします」
首相「横田基地は在日米軍司令部が置かれていて、有事の際に兵站機能を果たすということだ。なかなかこの返還あるいは軍民共有において、米国側が『はい、分かりました』とはなっていないわけだ。しかし、小泉政権時代、私が官房副長官だったときに、当時の石原知事から『是非交渉を始めてもらいたい』ということを言われた。その時に小泉・ブッシュ首脳会談、クロフォードで行われた首脳会談に私も陪席をしていたが、小泉首相からブッシュ大統領に日本側の考え方としての軍民共有についての話が先方に出されたが、残念ながら今日まで成果が出ていない。確かにおっしゃられるような課題がたくさんあるということを頭に入れながら、米国側も受け入れられる形で何があるを考えていきたい」
太田昭宏国土交通相「空域のさらなる返還は、さらに調整していきたい」
【石原氏の質疑詳報(下)】「子孫のために環境問題アピールを」衆院予算委
産経新聞2013.2.13 10:04
【NLP問題】
石原氏「米国が難渋している第7艦隊の航空母艦の艦載機の離着陸の問題、NLPだ。かつては三宅島にやろうということだった。三宅島は噴火して厄介な島だが、かつての溶岩でできた台地を活用したら簡単に滑走路はできる。周りは海だ。今、岩国にNLPの艦載機を持っていってうんぬんと言っているが、艦載機の整備要員は全部、日本人だ。家族は厚木(神奈川県)の周りに住んでいて、『行きたくない』と。今、硫黄島でやっているでしょ。私も努力するが、なぜ岩国に固執しているのかわからない。ぜひご一考いただきたい」
首相「岩国においては空母艦載機59機を厚木から受けることにしているが、米軍再編全体のなかで、各地域がそれぞれ沖縄の負担を軽減するなかで、岩国基地が厚木からの空母艦載59機と普天間の空中給油機12機を受け入れることになっている。しかしもちろん、地域としてはNLPはやってもらったったら困るという強い要請がある。現在、硫黄島において暫定的に行われているものをどうするかについては、考えて検討していく必要がある」
小野寺五典防衛相「岩国移転は首相が申し述べた通りだ。NLPについては防衛省としては馬毛島を中心にさまざまな調査を行っている状況にある」
【日本の会計制度】
石原氏「次に大事な問題だが、日本の国家の会計制度に懸念を持っている。明治12年から18年までは一種の複式簿記だった。ところが明治20年になり、岩倉具視がヨーロッパに視察に行き最後にドイツに行った。ドイツを参考に単式簿記に変更した。この国には健全なバランスシートがない。財務諸表がない。国は何で外部監査を入れないのか」
副総理「国の予算と決算については、現金主義が採用されている。問題はそれから後を調べていただくと分かったと思うが、複式簿記を含めた発生主義は確実性、客観性、透明性だ。われわれはストックとフローの両面が分かりやすいのはこちらだと思うが、今言われた複式簿記、発生主義は平成15年から、国の財政についても参考情報として財務諸表を作成して取り組んでいる。もう1点は海外についてだが、予算については日本、アメリカ、フランス、ドイツはいずれも現金主義。決算については、議決の対象としていずれも現金主義だが、財務諸表を作成しているのは、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツだけが作成していない」
石原氏「だいぶ違いますなぁ。都知事時代に『なぜ、国は発生主義、複式簿記にしないのか』と問い合わせたら、『財務省では、国の財政について国民の理解を促進するため、平成15年度決算分、平成12年、17年9月公表より、毎年、発生主義、複式簿記といった企業会計の考え方および手法を参考に、国の財務書類を作成して公表しているところだ』と。財務諸表をそろえてまた具体的な議論をしよう。日本は新会計制度にすべきだが、していない。なぜか」
麻生財務相「調べてご返答申し上げる」
石原氏「会計制度がしっかりしないといけない。前の経団連会長の御手洗(冨士夫)さんとゴルフクラブで会い、前の日銀総裁の福井(俊彦)さんもいた。私が『国の会計制度に文句言え』と言ったら、『そんなこと有り得ないよ』と。温厚な福井さんが『石原さんのおっしゃる通りだ。国はいまだに単式簿記だ』と言ったら、(その場にいた)2人が絶句した。今の経団連会長の米倉(弘昌)さんに言ったら、彼も知らなかった。経済団体の雄たちが知らない。この問題について特別委員会をつくって日本の会計制度を合理化しないとこの国は持たないよ。役人天国で。どうか」
首相「単式簿記、複式簿記の問題は財務相から答弁したように、平成15年から国としては財務書類、東京都で言う財務諸表を出していると私は承知している。いずれにせよ、委員会において、他の委員会もあるので、議論していただけたらと思う」
石原氏「円高の理由はあるが、この国は合わせて1000兆円に近い債務を抱えているが、金がだぶついている。故人の休眠資産。株、現金、タンス預金とか1515兆円もある。しかも国債はほとんど銀行が買っている。世界が日本の円に期待するのは無理からぬ話だ。だぶついているお金を何で使い切れないのか」
財務相「個人金融資産はほぼ1510兆円だ。そのなかで現預金が800兆を超えている。そのお金がほとんど金利がつかないにもかかわらず銀行、貯金にたまっている状態が続いている。不景気と言いながら、金利がつかず、現預金、金融資産はさらに増え続けている状況だ。かたわら、政府が金を借りているが、銀行もしくは郵便貯金経由で国債を売るが、政府の借金がたまり、個人の預金がたまる。その状況にある。1992年から約20年にわたり土地が暴落し、株は89年から暴落した。当時は3万8915円が最高値だと記憶するが、一時7800円まで落ちた。国民の資産という名の動産が4分の3。土地も85%ぐらい、不動産も暴落した。デフレーションによる不況は、多分、戦後初めてだ。デフレによる不況を世界で初めて経験している」
「政府も学者も含めて、デフレ対策をやった経験者はゼロだ。デフレを勉強するなら歴史に学ぶ以外に方法はなかった。デフレを最近にやったのは1930年の高橋是清蔵相だ。いろんな経験を積んだことによって、今回、安倍内閣において金融緩和、財政の柔軟な出動と成長戦略を同時にやると。高橋是清の時にやっているが同じことをやる決意をしている。これで初めて今、寝ている金が動かさないとどうにもならない。そこが問題だ。個人が消費するか、民間が設備投資するかしないと動かない。そこをどう動かすかの刺激策が最大の課題になるだろう。まずは金融緩和からスタートし、財政を出動させ、プラスで成長戦略が加わって、はじめて消費となってくる。少しタイムラグはあると思うが、その方向で動かさないとならないと思っている」
石原氏「金融緩和と言っても、銀行に国債を買わせて抱えさせてはまったく意味がない。設備投資減税などでアクティブにやってほしい。高橋是清の話が出たが、初めて統制経済をやった。デフレ下の不況は未曾有だ。克服は難しいが頑張ってほしい。もうひとつ聞くが、国と地方の債務総額は1000兆円近いが、返す必要のない借金もある。財産になるのもある。これに見合う資産の取得原価などの一覧表があったら、参考に出してほしい」
財務相「政府が持っている場合、資産に計上するわけだが、資産のなかに税金をとれる権利、徴税権、お金を刷れる印刷権、造幣権をいくらで評価するかはなかなかできない。各国みな複式簿記を予算に計上するのはできないということだと思う。ただ今、言われたように、道路やら富士山やら国有地はいくらで計算できるかといわれると、簡単にはいかないだろうが、一応のものをかつて作った記憶があるので、現存していれば提出する」
石原氏「会計制度を合理化して企業並みにしないと、アベノミクスのバリアになる。首相、聞いてますか? アベノミクスを成功させるためにも会計制度を一新させる必要がある。会計制度を変えると、税金の使途がハッキリ分かるということだ。民主党は良いことはしなかったが、良いことだけは言っている。心に留めて考えてほしい」
「最後に首相に政治家の哲学として記憶してほしい。私は代議士のころ、40年ほど前、東京でホーキングという天才的な宇宙科学者の講演を聴いた。その時に、質問を許された宇宙専門の学者の1人が、『宇宙に地球並みの文明をもった星がいくつぐらいあるか』と言ったら、ホーキングは『2ミリオン』と言った。私は驚いた。『なぜ、我々は宇宙船とか宇宙人に地球で出会うことがないのか』と尋ねられると、ホーキングは『地球並みの文明をもった惑星は自然の循環が悪くなって、宇宙時間で言う瞬間的に生命が消滅する』と言った。私は挙手して、『あなたの言う宇宙時間の瞬間は地球時間でどれぐらいか』と言ったら『100年』と言った。彼が正しければ、あと60年しか地球は持たない」
「過去のG8(主要国首脳会議)で環境問題が深刻に討論されたことがない。ツバルという国は半分水没している。今、あちこちに異常気象がある。ニューヨークでもハリケーンが来たり豪雪が来たり、ワシントンで雪が降ったりする。日本もそうだ。異常気象ではなく、通常気象だが、これを阻止するために日本はいろんなことをすべきだ。あなたもこれからG8に行くが、せめて日本の最高指導者は、世界全体に正当な危機感を抱かせるためにスピーチしてもらいたい。友人の開高健が書いたものに良い文言がある。『たとえ地球が明日滅びるとも、君は今日リンゴの木を植える』と。調べるとポーランドの詩人・ゲオルグの言葉だ。これは私たちの愛する子孫に対する責任のささやかな履行だ。ぜひ、首相はG8でそういう哲学を披露しながら、経済も復興も結構だが、私たちの子孫の生命を担保するために、もうちょっと違う意識をもって警告を発してください」
首相「2007年のハイリゲンダムサミットは私が出席したが、CO2削減が大きなテーマになった。その際、2050年までに排出量を半減をするという大きな目標で一致することができた。今年開かれるサミットでも当然環境は大きなテーマになるだろう。その際、日本はCO2削減あるいは省エネについては、高い技術力を持っているから、日本こそリードしていくべきだろうと思っている。安倍政権としても環境問題極めて重視している。だからこそ、石原伸晃議員を環境相に任命したところだが、政府一丸となって取り組みたい」=(完)
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◆ 石原慎太郎著『新・堕落論』 新潮選書2011/7/20発行
p47〜
しかし我々が敗戦から65年という長きにわたって享受してきた平和は、他国が願い追求努力して獲得してきた平和とはあくまで異質なものでしかありません。それは敗戦の後、この国の歴史にとって未曽有の他者として到来したアメリカという為政者が、あのニューヨークタイムズの漫画に描かれていたように、彼等にとっては異形異端な有色人種の造形した日本という、危険な軍事力を備えた怪物の解体作業の代償としてあてがったいびつな平和でしかありません。
ドイツは敗戦後連合軍の統治下、国是として2つのことを決めました。1つは新生再建のための国家規範となる憲法はドイツ人自身が決める。2つは戦後のどいつにおける教育はドイツ人自身が決めて行う、と。我々に人がやったことはドイツと正反対のものでしかなかった。
我々は、他人が彼等の目的遂行のために造成しあてがった国家の新しい規範としての(〜p47)憲法と引き換えに、自らの手で造成に努めることなしに、いや、努めることを禁じられた囲われ者へのお手当としての平和を拝受してきたのでしかありません。
p48〜
平和は自ら払うさまざまな代償によって初めて獲得されるもので、何もかもあなたまかせという姿勢は真の平和の獲得には繋がり得ない。(以下略)
p49〜
戦後から今日までつづいた平和の中で顕在したものや、江藤淳の指摘したアメリカの手によって『閉ざされた言語空間』のように隠匿されたものを含めて、今日まで毎年つづいてアメリカからつきつけられている「年次改革要望書」なるものの実態を見れば、この国がアメリカに隷属しつづけてきた、つまりアメリカの「妾」にも似た存在だったことは疑いありません。その間我々は囲われ者として、当然のこととしていかなる自主をも喪失しつづけていたのです。
未だにつづいてアメリカから突きつけられる「年次改革要望書」なるものは、かつて自民党が金丸信支配の元で小沢一郎が幹事長を務めていた時代に始まりました。
p51〜
あれ以来連綿とつづいているアメリカからの日本に対する改革要望書なるものの現今の実態はつまびらかにしないが、ならばそれに対して日本からその相手にどのような改革要望が今出されているのだろうか。国際経済機関に属している先進国で、こうした主従関係にも似た関わりをアメリカと構えている国が他にある訳がない。
トインビーはその著書『歴史の研究』の中で歴史の原理について明快に述べています。「いかなる大国も必ず衰微するし、滅亡もする。その要因はさまざまあるが、それに気づくことですみやかに対処すれば、多くの要因は克服され得る。しかしもっとも厄介な、滅亡に繋がりかねぬ衰微の要因は、自らに関わる重要な事項について自らが決定できぬようになることだ」と。
これはそのまま今日の日本の姿に当てはまります。果たして日本は日本自身の重要な事柄についてアメリカの意向を伺わずに、あくまで自らの判断でことを決めてきたことがあったのだろうか。これは国家の堕落に他ならない。そんな国家の中で、国民もまた堕落したのです。(〜p51)
p52〜
ものごとの決断、決定にはそれを遂行獲得するための強い意思が要る。意思はただの願望や期待とは違う。その意思の成就のためにはさまざまな抑制や、犠牲をさえ伴う。
現代の多くの日本人の人生、生活を占めているのは物神的(フェティシュ)な物欲、金銭欲でしかない。それはただ衝動的な、人間として薄っぺらな感情でしかない。そして日本の今の政治はひたすらそれに媚びるしかない。それもまた政治家としての堕落に他ならない。(略)
ワシントンの消息通に聞けば、政権を構築しているワシントンの重要省の幹部たちは本音では、日本の財務省はアメリカ財務省の東京支店、日本外務省はアメリカ国務省の東京支店と疎んじてはばからないそうな。特に日本の外務省は、外交の基軸に日米安保を絶対前提(アプリオリ)として捉えているから、日米関係間のさまざまな摩擦に関しても、最後は安保条約に依る日本の安全への斟酌で腰がひけ、正当な主張をほとんどなしえない。
それを証す露骨な例がありました。何年か前のニューズウィークの表紙一杯(〜p52)(p53〜)に、何のつもりでかアメリカの国旗星条旗が描かれていた。よく見ると、並んだ40幾つかの星の最後の星は小さな日の丸だった。本国でならともかく、この日本での版に、そうした絵をぬけぬけと描いて載せる相手の心情とは一体何なのか。語るに落ちる話だ。
横田基地は「戦勝記念品」
世界が時間的、空間的に狭小になったこの現代、航空機による往来は国家の繁栄のために欠かせぬものだから、まだまだ大きなビジネスチャンスがあると思われる日本や、育ち盛りの中国を含む東アジアへの往来のために日本の空をもっと開けろという声は世界中で高いし、現今の機材の飛行距離の能力からしても日本に有力なハブ空港が在るのが望ましい。現時点でも、日本への乗り入れを希望しながら待ちぼうけを喰わされている外国の航空会社は35もあります。しかし首都東京の中に日本で最長の滑走路を持ち、ただの兵站基地として日常殆ど使われていない厖大な横田基地を保有しながら(ちなみに横田基地がもっとも頻繁に使われたのはベトナム戦争の折、戦死したアメリカ兵の遺体を運び込み、日本の医学生を動員して死体の継ぎはぎをさせた時のことだ)、それを返還するという意欲は彼等には全く無いし、日本側にも国益のためにせめてもの共同使用を進める意欲もありません。
専門筋だけが知っていることですが、横田を占有している米軍が、演習のためと称して民間機を排他している空域は成田や羽田、入間といった飛行場の管制空域よりもはるかに大きく新潟県にも及んでいて、ヨーロッパからロシア経由で日本に飛来する飛行機は日本を横断してそのまま真っ直ぐ成田に向かうことは出来ずに、その空域を迂回し一旦太平洋に出て成田に向かうしかない。
最近になって東京都による横田の共同使用の働きかけの中で、日本の中で最も混雑している東京から大阪、福岡、さらにそれを延長して韓国のソウルに向かう最大幹線の西行線の管制がようやく緩和され、今まで往復1車線レベルだったものがなんとか2車線程度とはなりました。それによって飛行時間は10分ほど短縮されたが、それとて狭い幹線の中で正面衝突しかけた民間機が、互いに急上昇と急降下をしたため片方の乗客乗員が重傷を負う出来事があってのことだった。
高速で飛ぶ飛行機の往来の時間が10分短縮されるというのは経済利益として多大なものだが、それを彼等は最近まで譲ろうとはしなかった。それも人命の危険においてようやくのことです。
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◆ 【国家的喪失】石原慎太郎 原爆被爆というトラウマからセンチメントに駆られて猿に戻ろうとしているこの国 2012-10-01 | 石原慎太郎
石原慎太郎 国家的喪失
産経ニュース2012.10.1 03:22[日本よ]
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