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「金正恩の核」という安全保障の現実 朝鮮日報 / 韓国の核武装論 / 米国で再び登場した日本の核武装論

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【コラム】「金正恩の核」より深刻な問題
朝鮮日報 2013年03月03日09時44分
  北朝鮮が3回目の核実験を強行した日、朝鮮日報政治部は対応に追われた。ただ、北朝鮮の核実験は既に予告されていたものだった。半月前から核実験を予告しており、長距離ミサイル発射から1?2カ月後に核実験を実施してきた過去の例からみて、北朝鮮による核実験は時間の問題だった。決して予想不可能な突発事態ではなかった。
 それでも3回目の核実験による衝撃は1回目、2回目の核実験とは次元が異なった。北朝鮮の核武装が現実として迫ってきたからだ。韓国政府も表立って話はしないが、同様の判断を下しているようだ。しかし、よく考えれば、北朝鮮の核武装もはるか以前に予告されたシナリオに沿って進んでいるというのが正確な判断だろう。それなのに20年以上、われわれが「不都合な真実」を見ないようにしてきたにすぎない。
 朝鮮日報政治部が総掛かりで韓米政府の現職・元官僚、外交・安全保障分野の専門家にインタビューを行ったのは、その不都合な真実と向き合うためだった。われわれに北朝鮮の核武装を防ぐ方法が果たしてあるのか、北の核武装を防げないとすれば、われわれはどんな対応措置を取るべきかを集中的に尋ねた。その結果は核実験よりも衝撃的だった。誰も自信ある答えを示せなかったのだ。「南北対話の継続」「中国を通じた北朝鮮説得」「米国のミサイル防衛(MD)システムへの加入検討」「戦術核の再配備」「独自の核武装」などさまざまな意見が出た。ただ、成功する確率が低かったり、支払うべき代価が大きかったりして、これらの方策には意見を述べる本人でさえ、ためらいを感じているようだった。もともと答えがない問題の解決法を探ろうと知恵を絞っているような感じもした。結局われわれは北朝鮮の前に無防備で、丸裸の状態にあるという結論が出た。
 今われわれが直面する安全保障状況は国家的な災難だ。北朝鮮の3回目の核実験は68年前に広島、長崎に投下された原爆の半分程度のTNT(高性能爆薬)7000トン程度であり、核武装までには時間がかかるとの見方も一部にある。また、長距離ミサイルに搭載できるほど、核弾頭の小型化、軽量化には成功していない点を挙げ、北朝鮮の核問題を差し迫った脅威と見なす必要はないとの声もある。しかし、核実験の爆発力は実験計画に沿って、いくらでも調整が可能なはずであり、地震波の大きさだけで爆発力を測定することにも限界がある。大切なことは、3回目の核実験で北朝鮮が核の能力をかなり向上させたという事実だ。いくら過小評価しても、北朝鮮はいつでもソウルの主要施設をまひさせ、多くの人命被害を出すことが可能なレベルの爆発力を備えた核兵器を保有していると考えるべきだ。
 2010年に西海(黄海)のペンニョン島海域で哨戒艦「天安」が真っ二つにされた当時、誰も「北朝鮮の仕業」だとは自信を持って言えなかった。当時政府も「決め付けるべきではない」と表明した。西海の潮の流れや水深、爆沈当時の状況からみて、到底軍事的な挑発とは考えられないとの理由だった。実際にこの種の攻撃は世界の海戦史でも前例がなかった。しかし、それをやってのけるのが北朝鮮の権力であり、北朝鮮の軍部だ。北朝鮮がわれわれへの核攻撃を決めれば、その方法は必ずしもミサイルや飛行体を用いる必要はない。北朝鮮はわれわれの予想できない時期に想像を超える方法で攻撃を仕掛けてくる可能性がある集団だ。
 核は実際に使うために保有する兵器ではない。核保有は相手の核攻撃に対する抑止力だというのが60年以上、国際社会の定説になっている。そのルールを当てはめられないのが北朝鮮だ。今年29歳になる北朝鮮の権力者、金正恩(キム・ジョンウン)氏と彼を取り巻く北朝鮮の内部事情はまさに予測不可能だ。予測不可能な集団が大量破壊兵器を握っているというのが、韓国の安全保障の現実といえる。しかし、歴代の大統領と政府幹部、そして国民に至るまで、現実を直視しようとせず、その結果目前まで迫った危機を危機と考えない不感症の段階に至っている。
 朴槿恵(パク・クンヘ)政権はそうした核危機の中で発足した。大統領は自身に対する歴史的評価を左右する決定的な事件に直面するものだ。李明博(イ・ミョンバク)前大統領にとっては、退任後も痛恨の気持ちを隠し切れない天安爆沈事件や延坪島砲撃事件がそうだ。朴大統領には北朝鮮の核問題がそれに当たりそうだ。朴大統領にはこの問題に関して「韓半島(朝鮮半島)の信頼プロセス」という大統領選当時の公約にこだわらず、実質的な解決方法を探ってもらいたい。そのスタートは、国民と共にわれわれの安全保障の現実を直視することだ。
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「米国で再び登場した日本の核武装論」〜日本の核武装は中国にとって「最悪の恐怖」ワシントン・古森義久 2013-02-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉 
 米国で再び登場した日本の核武装論 北朝鮮の核兵器開発を封じ込める決定的な一手に
JBpress「国際激流と日本」2013.02.27(水)古森 義久
 朝鮮朝鮮の核兵器開発への必死な動きは、日本にも米国にも不吉な暗い影を広げるに至った。北朝鮮が2月12日に断行した3回目の核爆発実験へのワシントンの反応は、前回も詳述した通りだった。
 ところが驚いたことに、そのワシントンで、北朝鮮の核武装への野望への抑止策として日本の核武装の可能性が改めて語られるようになった。
 韓国ではすでに核武装が現実の課題として論じられ始めたことは、産経新聞のベテラン朝鮮半島ウォッチャーの黒田勝弘記者の報道でも詳しく伝えられている。だが日本の場合、核武装などという展望は、たとえ単なる可能性だとしても政治的にはタブー中のタブーである。
 米国でもつい最近までは日本の核武装というシナリオは禁忌だった。とんでもない妄想の扱いさえされかねなかった。だが、それがつい数年のうちに大きく変わってきたのである。日本の核武装という選択が、たとえ仮定の仮定であっても実際の政策テーマとして語られるようになったのだ。朝鮮半島や中国を主体とする東アジアの安全保障の状況がそれほど激変した結果だとも言えそうである。
■日本の核武装は中国にとって「最悪の恐怖」
 今回、日本の核武装の可能性を提起したのは、共和党ブッシュ前政権で国務次官や国連大使を務め、核兵器拡散防止をも担当したジョン・ボルトン氏だった。ボルトン氏は米国大手紙「ウォールストリート・ジャーナル」(2月20日付)に「北朝鮮の脅威にどう応じるか」と題する寄稿論文を発表し、その中で日本の核武装という政策選択を提起した。
 このボルトン論文は、オバマ政権内外に北朝鮮の核兵器保有を現実として受け入れ抑止や封じ込めに戦略重点を移そうとする動きがあると指摘し、その動きを「敗北主義」と断じていた。
 「北朝鮮の核武装をいまや現実として受け入れるべきだと主張する人たちは、つい最近までは北朝鮮と交渉さえ進めれば、必ずその核武装を止めさせられると主張していた。だが、いまやその同じ人たちが北の核武装を認めろと求めるのだ。そんな敗北主義は北朝鮮の核兵器をさらに増強させ、核の威嚇や拡散をもたらす危険な状況を生むことが確実だから、許容すべきではない」
 ボルトン氏はこう主張する一方、北朝鮮の核兵器を破壊するための軍事攻撃は犠牲が大きすぎるとして排した。ではどうすべきなのかというと、南北朝鮮統一によって金政権を交代させ、非核を受け入れる新政権を誕生させることを説くのだった。その統一実現には、北朝鮮にいま必要なエネルギーの90%以上を供する中国に圧力をかけて、動かし、金正恩政権を交代させて朝鮮半島の統一を目指すべきだ、とも論ずる。
 そして、もし中国がその圧力に難色を示す場合、米国は日本と韓国の核武装を現実の事態とするように動くべきだ、と強調する。ボルトン氏は日本の核武装が中国にとって「最悪の恐怖」だと評した。だからこそ中国を動かすための圧力材料に使うことに効果があると、提案するのである。
 その一方、日本の核武装が単に仮定の駆け引き材料に留まらず、実現しても構わないという見解を示唆して、次の理由をも説いている。
 「オバマ大統領が核兵器廃絶を唱えて『核なき世界』の夢を追うとなると、その一方的な核削減は逆に北朝鮮を含む他国への核拡散を招き、長年、米国の核のカサ(抑止)に守られてきた日本や韓国は(核抑止の)再考を迫られる」
 ボルトン氏はこの論文で、「北朝鮮が核兵器を威嚇の武器として、さらに好戦的な言動をとることへの対応として、韓国の政治家たちは自国も核兵器を開発することを求め始めた」、加えて「日本でも同様の(核武装賛成の)議論がひそかに語られ始めた」と述べる。
 つまりは中国に北の核武装を放棄させるための圧力材料としてだけでなく、すでにある核の脅威に対する日本の核武装にも理があるとする議論なのである。
■ボルトン氏以外にもいる米国の日本核武装論者
 ボルトン氏は、日本や韓国のような「安全な諸国」であっても核兵器は拡散させないことがこれまでの米国の基本政策だったことも明記する。だがその政策を変え得る「北東アジアの新しい核の現実」が生まれ、その現実に対応する日本の核武装もあり得ると説く。
 歴代の米国の政権の核拡散防止の基本政策は変わってはいない。オバマ政権も日本の核武装に反対であることは明白である。ブッシュ前政権も同様だった。だが議会や専門家の一部には、米国に敵対し得る中国や北朝鮮が核の威力を誇示する現状では、米国と利害や価値観を共にする日本が核を持っても害はないとする意見がすでに出ていた。ボルトン氏が米国側で初めての日本核武装論者というわけでは決してないのである。 
 2011年7月には下院外交委員会有力メンバーのスティーブ・シャボット議員(共和党)が日本人拉致事件の「家族会」や「救う会」代表らに「北朝鮮や中国に圧力をかけるためにも日本は自国の核兵器保有を真剣に考えるべきだ」と述べた。
 「中国は特に日本の核武装という事態を嫌うから、日本に核兵器保有への真剣な動きがあると見れば、その日本の核武装を止めるために北朝鮮への核兵器放棄を必死に求めるだろう」とシャボット議員は発言した。米国連邦議会の議員が、日本の代表と公式会合の場で日本の核武装を奨励するという実例は初めてだった。
 2009年7月の下院外交委の公聴会でも、エニ・ファレオマベガ議員(民主党)が「日本も核戦力を開発する必要があるという議論が出ても自然だ」と証言していた。同議員自身は日本の核兵器保有には反対のようだったが、日本側でそういう政策の選択が求められるようになっても不自然ではない、というのだった。
■「米国はなぜ日本の核武装に反対し続けるのか」
 2006年10月には有力政治評論家のチャールズ・クラウトハマー氏が「米国は、最も信頼できる同盟国で国際社会の模範的一員の日本に核兵器保有を奨励すべきだ」という正面からの日本核武装奨励論を発表していた。
 「日本は唯一の核兵器の被害国であり、これまで自国の核武装に強く抵抗する理由は明白だった。だが、常軌を逸した隣国が核兵器保有を公式に宣言するに至った現在、再考が必要になった」
 クラウトハマー氏の主張の上記部分は明らかに北朝鮮の核武装の危険性を指摘していた。同氏は中国の核兵器の存在にも同様に警告を発し、それを日本核武装の必要性の理由の一端としていた。
 「東アジアでの日本の対外政策の基本目標は、陶酔したように膨脹する中国を平和的に封じ込め、無法な北朝鮮政権に立ち向かい、民主主義を拡散する、などという諸点で米国の政策に合致する。であれば、米国としても核兵器がこれほど拡散した現状では、日本に核武装を促し、中国や北朝鮮への抑止効果を発揮させた方がアジアの安定には有用となる」
 クラウトハマー氏はこんな疑問をも呈する。
 「太平洋地域で安定し、信頼でき、民主主義の同盟国である日本が核武装することによって、米国自身の負担をも軽減することができる。それなのに米国はなぜその核武装に反対し続けるのか」
 日本国内ではいくら国家安全保障の重要性が論じられ、憲法の改正や集団的自衛権解禁の有益さが語られるようになっても、核武装というオプションまでは国政論議には出てこない。せいぜい「核武装を論じること自体を禁止すべきではない」という主張が出る程度である。
 しかし米国では、東アジアの危険な核の状況への抑止策としての日本核武装という戦略オプションがいまや再登場してきた。その現実をきちんと認識するぐらいは日本でも求められてよい姿勢だろう。
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北朝鮮の脅威にどう応じるか〜「日本の核武装という政策選択」ワシントン・古森義久 2013-02-24 | 国際/中国/アジア
 【緯度経度】日本核武装論 再び ワシントン・古森義久 
 産経新聞2013.2.23 14:47
 北朝鮮の核兵器開発への必死な動きに対して、ワシントンでは日本の核武装の可能性がまた語られるようになった。韓国ではすでに核武装が現実の課題として論じられ始めたことは本紙のソウル駐在の黒田勝弘記者の報道でも詳しく伝えられた。だが日本の場合、核の選択が同盟国の米国でまず論題となる点が安全保障での独特の屈折を示している。
 共和党ブッシュ前政権で国務次官や国連大使を務め、核兵器拡散防止をも担当したジョン・ボルトン氏は20日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルに「北朝鮮の脅威にどう応じるか」と題する寄稿論文を発表し、日本の核武装という政策選択を提起した。
 同論文は、オバマ政権内外に北朝鮮の核兵器保有を現実として受け入れ、抑止や封じ込めに戦略重点を移そうとする動きがあるとして、その動きを「敗北主義」と断じ、「北朝鮮の核兵器をさらに増強させ、核の威嚇や拡散をもたらす危険な状況を生む」として許容すべきではないと、主張した。
 ボルトン氏は、北朝鮮の核破壊のための軍事攻撃は犠牲が大きすぎるとして排する一方、非核を受け入れる新政権を生むために、北朝鮮が今必要とするエネルギーの90%以上を供する中国に圧力をかけて、金正恩政権を崩壊させ、朝鮮半島の統一を目指すべきだ、とも論じた。そして、中国が難色を示すならば、日本と韓国の核武装を現実の事態とすべきだと強調したのである。
 ボルトン氏は、日本の核武装が中国にとって「最悪の恐怖」だと評し、中国を動かすための圧力材料に使うことを提案する一方、その核武装が実現しても構わないことを示唆した。
 その理由に「オバマ大統領が『核なき世界』の夢を追うとなると、その一方的な核削減は逆に北朝鮮を含む他国への核拡散を招き、長年、米国の核のカサ(抑止)に守られてきた日本や韓国は(核抑止の)再考を迫られる」という点をあげた。
 同氏は「北朝鮮が核兵器を武器にさらに好戦的な言動を取ることへの対応として韓国の政治家たちは自国も核兵器を開発することを求め始めた」とし、「同様の(核武装賛成の)議論が日本でもひそかに語られ始めた」と述べる。つまりは中国に北の核武装を放棄させるための圧力材料としてだけでなく、すでにある核の脅威に対する日本の核武装にも理があるとする議論なのだ。
 ボルトン氏は、日本や韓国のような「安全な諸国」へも核兵器は拡散させないことが従来の米国の基本政策だったことも明記する。だが、その政策を変えうる「北東アジアの新しい核の現実」が生まれ、その現実に対応する日本の核武装もありうると説くのである。
 米国政府が日本の核武装に反対であることは明白だが、議会や専門家の一部には、米国に敵対しうる中国や北朝鮮が核の威力を誇示する現状では、米国と利害や価値観を共にする日本が核を持っても害はないとする意見がすでに出ていた。
 2011年7月には下院外交委員会有力メンバーのスティーブ・シャボット議員(共和党)が日本人拉致事件の「救う会」代表らに「北朝鮮や中国に圧力をかけるためにも日本は自国の核兵器保有を真剣に考えるべきだ」と述べた。09年7月の下院外交委の公聴会でも、エニ・ファレオマベガ議員(民主党)が「日本も核戦力を開発する必要があるという議論が出ても自然だ」と証言していた。
 06年10月には有力政治評論家のチャールズ・クラウトハマー氏が「米国は最も信頼できる同盟国で国際社会の模範的一員の日本に核兵器保有を奨励すべきだ」という日本核武装奨励論を発表していた。日本国内の現状は別にしても、米国側では東アジアの危険な核の状況への抑止策としての日本核武装という戦略オプションも出てきたということである。
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 韓国で核武装論が台頭 ソウル・黒田勝弘
 産経新聞2011.2.25 22:18[緯度経度]
 先日、韓国の有力紙に1ページの全部を使った本の広告が出ていた。今から20年ほど前、韓国でベストセラーになった小説『ムクゲの花が咲きました』(金辰明著)の新装版の広告だった。
 宣伝文句には「なぜ再び“ムクゲの花”か−独島を自分たちのモノと教える日本と軍事協定締結とは?」とある。領土問題と最近の日韓防衛協力問題を結びつけ、また反日ムードで売ろうというわけだ。
 この小説は韓国によくあるいわゆる“日韓仮想戦争モノ”。日本の自衛隊が竹島奪還を口実に韓国に侵攻し、その反撃のため韓国と北朝鮮が共同で核ミサイルを開発し日本に向け発射するというお話だ。
 日本との領土紛争と、南北が協力して日本を攻撃するという典型的な“反日・親北ナショナリズム”の大衆小説である。当時、数百万部も売れ話題になった。
 これが今、「再び」売れるかどうか興味深いところだが、その後、時代は微妙に変化している。
 当時の、日本をやっつけるための「南北共同で核開発」論はその後、北朝鮮の核開発と相次ぐ軍事的挑発で後退し、今や北朝鮮の核開発をやめさせるため「韓国も核武装」論や「日韓共同で核開発」論にとって代わられつつある。
 年初から韓国のメディアにその種の主張が登場していたが、ついに国会(25日)でも語られはじめた。
 火付け役となったのは与党ハンナラ党の元代表で次期大統領選に意欲を燃やす鄭夢準議員。まず「世論調査の結果、67%が韓国の核武装に賛成している」と発表した。
 本人は「韓国独自の核武装は微妙な問題だが、北との均衡上、少なくとも米軍の戦術核兵器の再搬入は考えるべきだ」と控えめだったが、やはり与党の元裕哲議員(国会国防委員会委員長)などは「北の核問題が解決するか南北統一が実現すれば即時解体するという条件下で、韓国も核保有すべきだ」と主張している。
 また保守系野党の宋永仙議員も「北の核廃棄が難しい場合、韓国としては最後の手段として独自の核武装を進めるほかない」と述べ、国民的議論を呼びかけている。
 こうした韓国の核武装論は、これまでも一部で語られてきたが、今回は最有力紙・朝鮮日報に最近、2度にわたって掲載された金大中コラムニスト(元主筆、元大統領とは別人)の主張の影響が大きい。
 その寄稿文は「南が核を持ってこそ北は交渉する」(1月11日付)「韓国の核兵器は議論する価値もないというのか」(8日付)と題され、いずれも北朝鮮に核を放棄させるための交渉手段として、韓国の核開発の必要性を強調したものだ。
 金大中氏は保守派で「韓国で最も影響力のある言論人」といわれている。「20年以上にわたって北の核問題一つ処理できない大国の無能と限界にわれわれの安全を任せることはできない」といい、イラ立ちがありありの中身だ。
 そして「6カ国協議で北に対し核放棄の期限を設定し、それが守られない場合われわれも核開発すると宣言してはどうか」と提案している。
 韓国の核武装論ではさらに「日韓共同の核開発」論も出ている。保守派の論客で知られる金容甲前議員はラジオ・インタビューで「北東アジアの平和のため、北に核を放棄させるため、われわれと日本は核開発で協力しなければならない。われわれも(対北)戦略を変える必要がある」(1月18日、平和放送)と堂々と発言している。
 韓国は在韓米軍撤退の動きがあった朴正煕政権下の1970年代、対北自主防衛のため核開発を計画したが、米国が対韓防衛約束を明確にしたため放棄したということがある。
 6カ国協議の参加国の中で非核国は韓国と日本だけだ。さあ、日本はどうするか。
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『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行 

        

p158〜
第6章 防衛強化を迫るアメリカ
 2 日本の中距離ミサイル配備案
○中国膨張がアジアを変えた
 「日本は中国を射程におさめる中距離ミサイルの配備を考えるべきだ」---。
 アメリカの元政府高官ら5人によるこんな提言がワシントンで発表された。20011年9月のことである。
 日米安保関係の長い歴史でも、前例のないショッキングな提案だった。日本側の防衛政策をめぐる現状をみれば、とんでもない提案だとも言えよう。憲法上の制約という議論がすぐに出てくるし、そもそも大震災の被害から立ち直っていない日本にとって、新鋭兵器の調達自体が財政面ではまず不可能に近い。
 しかし、この提案をしたアメリカ側の専門家たちは、歴代の政権で日本を含むアジアの安全保障に深くかかわってきた元高官である。日本の防衛の現実を知らないはずがない。
p162〜
 中国は射程約1800キロの準中距離弾道ミサイル(MRBM)の主力DF21Cを90基ほど配備して、非核の通常弾頭を日本全土に打ち込める能力を有している。同じ中距離の射程1500キロ巡航ミサイルDH10も総数400基ほどを備えて、同様に日本を射程におさめている。米国防総省の情報では、中国側のこれら中距離ミサイルは台湾有事には日本の嘉手納、横田、三沢などの米空軍基地を攻撃する任務を与えられているという。
 しかし、アメリカ側は中国のこれほどの大量の中距離ミサイルに対して、同種の中距離ミサイルを地上配備ではまったく保有していない。1章で述べたとおり、アメリカは東西冷戦時代のソ連との軍縮によって中距離ミサイルを全廃してしまったのだ。ロシアも同様である。
p163〜
 だからこの階級のミサイルを配備は、いまや中国の独壇場なのである。
 「中国は日本を攻撃できる中距離ミサイルを配備して、脅威を高めているが、日本側ももし中国のミサイルを攻撃を受けた場合、同種のミサイルをで即時に中国の要衝を攻撃できる能力を保持すれば、中国への効果的な抑止力となる」
 衝突しうる2国間の軍事対立では力の均衡が戦争を防ぐという原則である。抑止と均衡の原則だともいえる。
 実際にアメリカとソ連のかつての対立をみても、中距離ミサイルは双方が均衡に近い状態に達したところで相互に全廃という基本が決められた。一方だけがミサイル保有というのでは、全廃や削減のインセンティブは生まれない。だから、中国の中距離ミサイルを無力化し、抑止するためには日本側も同種のミサイルを保有することが効果的だというのである。
 日本がこの提案の方向へと動けば、日米同盟の従来の片務性を減らし、双務的な相互防衛へと近づくことを意味する。アメリカも対日同盟の有効な機能の維持には、もはや日本の積極果敢な協力を不可欠とみなす、というところまできてしまったようなのである。
p164〜
 3 アメリカで始まる日本の核武装論議
○中国ミサイルの脅威
 アメリカ議会の有力議員が日本に核武装を考え、論じることを促した。日本側で大きくは取り上げられはしなかったが、さまざまな意味で衝撃的な発言だった。アメリカ連邦議会の議員がなかば公開の場で、日本も核兵器を開発することを論議すべきだと、正面から提言したことは、それまで前例がなかった。
 この衝撃的な発言を直接に聞いたのは、2011年7月10日からワシントンを訪れた拉致関連の合同代表団だった。
p165〜
 さて、この訪米団は、7月14日までアメリカ側のオバマ政権高官たちや、連邦議会の上下両院議員ら合計14人と面会し、新たな協力や連帯への誓約の言葉を得た。核武装発言はこの対米協議の過程で11日、下院外交委員会の有力メンバー、スティーブ・シャボット議員(共和党)から出たのだった。
p166〜
 続いて、東祥三議員がアメリカが北朝鮮に圧力をかけることを要請し、後に拉致問題担当の国務大臣となる松原議員がオバマ政権が検討している北朝鮮への食糧援助を実行しないように求めた。
 シャボット議員も同調して、北朝鮮には融和の手を差し伸べても、こちらが望む行動はとらず、むしろこちらが強硬措置をとったときに、譲歩してくる、と述べた。
p167〜
○日本の核武装が拉致を解決する
 そのうえでシャボット議員は、次のように発言した。
 「北朝鮮の核兵器開発は韓国、日本、台湾、アメリカのすべてにとって脅威なのだから、北朝鮮に対しては食糧も燃料も与えるべきではありません。圧力をかけることに私も賛成です」
 「私は日本に対し、なにをすべきだと述べる立場にはないが、北朝鮮に最大の圧力をかけられる国は中国であり、中国は日本をライバルとしてみています」
 「だから、もし日本が自国の核兵器プログラムの開発を真剣に考えているとなれば、中国は日本が核武装を止めることを条件に、北朝鮮に核兵器の開発を止めるよう圧力をかけるでしょう」
 肝心な部分はこれだけの短い発言ではあったが、その内容の核心はまさに日本への核武装の勧めなのである。北朝鮮の核兵器開発を停止させるために、日本も核兵器開発を真剣に考えるべきだ、というのである。
 そしてその勧めの背後には、北朝鮮が核開発を止めるほどの圧力を受ければ、当然、日本人拉致でも大きな譲歩をしてくるだろう、という示唆が明らかに存在する。
p168〜
 つまりは北朝鮮に核兵器開発と日本人拉致と両方での譲歩を迫るために、日本も独自に核武装を考えよ、と奨励するのである。
 日本の核武装は中国が最も嫌がるから、中国は日本が核武装しそうになれば、北朝鮮に圧力をかけて、北の核武装を止めさせるだろう、という理窟だった。 *強調(太字・着色)は来栖
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