極秘条件 6月には把握 TPP 政府公表せず
中日新聞2013年3月8日 07時05分
環太平洋連携協定(TPP)交渉参加をめぐり、先に交渉を始めた米国など九カ国が遅れて交渉参加したカナダとメキシコに交渉権を著しく制限した条件を課した事実に関し、民主党政権時代に日本政府が把握しながら公表しなかったことが新たに分かった。安倍晋三首相は、近く日本の交渉参加を正式表明する方針だが、国民生活に重大な影響が及ぶ可能性が高いTPP問題で、現政権が説明責任を求められるのは確実だ。
一連の事実は、複数の日本政府関係者や外交関係筋への取材で明らかになった。
TPPをめぐっては、九カ国は二〇一〇年までに交渉入り。九カ国は、一一年十一月に参加の意向を表明したカナダとメキシコ両国に対し、すでに合意した条文は後発の参加国は原則として受け入れ、交渉を打ち切る終結権もなく、再協議も要求できないなどの不利な条件を提示。両国は受け入れ、念書(レター)も交わしたが、極秘扱いにしている。
当時の野田政権は、この事実をカナダとメキシコの参加意向表明後に把握。著しく不利なため、両国政府に水面下で「こんな条件を受け入れるのか」と問い合わせたが、両国は受け入れを決めた。両国の交渉参加が決まったのは昨年六月、実際の参加は同十月で、野田政権は昨年六月までには念書の存在を把握していた。
野田政権は両国の参加国入り後も、新たな後発国が九カ国の決めたルールを守る義務があるのかを探った。両国と同様、後発国は再協議できないとの情報を得たが、事実関係を詰める前に十二月の衆院選で下野した。
先発組と後発組を分けるルールの有無に関し、安倍首相は七日の衆院予算委員会で「判然としない部分もある。参加表明していないから十分に情報が取れていない」と否定しなかった。
菅義偉官房長官は記者会見で「わが国としてメキシコ、カナダのTPP交渉国とのやりとりの内容は掌握していない」と述べたが、政府関係者は本紙の取材に「九カ国が合意したものは再協議できないとの話は聞いたことがある」と認めた。
カナダとメキシコの事例では、秘密の念書は交渉参加の正式表明後に届く。安倍首相はオバマ米大統領との会談を受け「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」と強調しているが、野田政権の政務三役経験者は「カナダとメキシコが条件をのんだことで、日本も約束させられる危険性がある」と指摘する。
オバマ氏は先月の一般教書演説で、TPP交渉妥結を目指す考えを明言し、米政府は年内決着を目標に掲げた。九カ国が交渉終結権を握れば、年内という限られた期間に、日本はなし崩しに農業など各分野で譲歩を迫られる可能性もある。
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TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず
東京新聞2013年3月7日 夕刊
環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加問題で、二〇一一年十一月に後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、米国など既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」などと、極めて不利な追加条件を承諾した上で参加を認められていた。複数の外交関係筋への取材で七日分かった。
各国は今年中の交渉妥結を目指しており、日本が後れて参加した場合もカナダなどと同様に交渉権を著しく制限されるのは必至だ。
関係筋によると、カナダ、メキシコ両政府は交渉条件をのんだ念書(レター)を極秘扱いしている。交渉全体を遅らせないために、後から参加する国には不利な条件を要求する内容だ。後から入る国は参加表明した後に、先発の国とレターを取り交わす。
カナダなどは交渉終結権を手放したことによって、新たなルールづくりの協議で先発九カ国が交渉をまとめようとした際に、拒否権を持てなくなる。
交渉参加に前向きな安倍晋三首相は、「『聖域なき関税撤廃』が前提ではないことが明確になった」と繰り返しているが、政府はカナダとメキシコが突きつけられた厳しい条件を明らかにしていない。日本がこうした条件をのんで参加した場合、「聖域」の確保が保証されない懸念が生じる。
カナダ、メキシコも一部の農産品を関税で守りたい立場で、日本と置かれた状況は似ている。国内農家の反対を押し切り、対等な交渉権を手放してまでTPPの交渉参加に踏み切ったのは、貿易相手国として魅力的な日本の参加とアジア市場の開拓を見据えているからとみられる。
先にTPPに参加した米国など九カ国は交渉を期限どおり有利に進めるため、カナダなど後発の参加国を「最恵国待遇」が受けられない、不利な立場の扱いにしたとみられる。
<TPP交渉参加国> 2006年、「P4」と呼ばれたシンガポールとニュージーランド、チリ、ブルネイによる4カ国の経済連携協定(EPA)が発効。これに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが10年に加わり、9カ国に拡大した。その後、カナダとメキシコも参加を表明し、12年10月の協議から11カ国で交渉している。
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TPPの不利条件、外相「日本に提示ない」
日本経済新聞2013/3/8 11:26 (2013/3/8 13:41更新)
岸田文雄外相は8日の衆院予算委員会で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に遅れて参加表明したカナダ、メキシコが、交渉が進んでいる内容に関する再交渉は難しいと米国など他の9カ国から通告されていた問題を巡り「日本には条件の提示はない」と語った。日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長への答弁。
安倍晋三首相は日本政府がカナダ、メキシコ両国に事実関係を問い合わせたかどうかについて「この場で言うことが今後の情報収集に大きな影響がある」と明言を避けた。「TPP交渉に我々はまだ参加していないから参加国同士のやりとりの情報収集は難しい」と指摘。「ルールを作る側に立って、中心的な役割を担うことは国益だ」とも語った。
政府関係者によると、交渉に参加している11カ国のうち、カナダとメキシコ両国に対し、他の9カ国から既に交渉が進んでいる内容は再交渉が難しいとの通告があったとの話が両国政府から日本に伝えられている。TPP交渉に入るには各国から承認を得なければいけない。
首相は予算委で、道州制に関して「与党で議論が集約され次第、基本法案が国会に提出される」と強調。「積極的な提案をもらえれば維新とも建設的な議論を進めたい」と述べた。
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従軍慰安婦問題、河野談話は歴史家が議論…首相
(2013年3月8日14時42分 読売新聞)
安倍首相は8日午前の衆院予算委員会で、いわゆる従軍慰安婦問題に関する1993年の河野洋平官房長官による「河野談話」について「静かな場で見識を持った歴史家、専門家が議論すべきだ」と述べ、首相として見解を示すべきでないとの認識を改めて示した。
菅官房長官も「この問題を政治問題、外交問題にさせるべきでない。学術的観点からさらなる検討を重ねることが望ましい」と語った。民主党の辻元清美氏の質問に答えた。
また、首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)に関し、先に交渉を始めた米国などが後発のカナダとメキシコに「再協議を要求できない」など不利な条件を提示したのではないかと問われ、「我々はまだ参加していないので、参加国同士のやりとりは情報収集が難しい。必死の情報収集をしているが、(カナダ、メキシコに)問い合わせをしたかどうかについても、今後の情報収集に影響があり、コメントすべきではない」と語った。岸田外相は「我が国に対してはそういう条件の提示は全くない」と述べた。
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◇ 『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項/コメの自由化は今後こじ開けられる 2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP)
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TPP参加 後発国 日本=交渉を打ち切る終結権もなく、再協議も要求できないなど不利な条件
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