作家・柴田哲孝×大学教授・平野秀樹「中国の“日本占領”はここまで進んでいる!」
週プレNEWS [2013年03月11日]
水面下で進む謎の土地買収が意味するものとは? 異なるバッググラウンドからこの問題を追う柴田氏と平野氏が語る
■日本という国が将来なくなるかもしれない……。
昨年9月と11月に上梓(じょうし)された2冊の本は、アプローチは違うものの、くしくも「外資による日本の国土買収」というテーマについて書かれている。
今回、この“問題作”2冊の著者ふたりをお招きして、日本が直面している危機について大いに語っていただいた。
対談の前に、ふたりについて、ごく簡単にその著作の紹介とともに若干の説明を加えたい。
まず、作家の柴田哲孝(てつたか)氏。リアル・フィクション『チャイナ・インベイジョン 中国日本侵蝕』は、北海道選出のある政治家の謎の死から物語は始まる。その背後で蠢(うごめ)く得体の知れない力を追うと、その先に見えてきたのは中国資本による北海道の土地買収だった―。骨太な取材に基づく作品を数多く発表している柴田氏ならではのリアリティあふれる一冊だ。
一方、外資による日本の国土買収と日本の土地制度の甘さを、具体的なデータの積み上げと、自らが現地で目にし耳にした情報をもとに浮き彫りにした『日本、買います 消えていく日本の国土』の著者・平野秀樹氏。平野氏は東京農大の客員教授を務めている。
日本の危機を肌で感じるふたりの対談は、静かに始まった。
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―まず、外資による国土の買収問題に関心を持つようになったキッカケを教えてください。
平野 私の専門は森林環境で、ずっと山や森をフィールドワークしてきたんですが、20年くらい前から島を巡るようになりました。そのうちのひとつが長崎県の五島(ごとう)列島で、毎年、同じ日に訪れて定点観測をしているんです。そうしたら、数年前から渚(なぎさ)に寄りつくゴミ、ポリタンクとかペットボトルに書かれている文字がハングルとか、中国の簡体字(かんたいじ・簡易化された漢字で、中国全土で公用文字として使われている)のモノがすごく増えてきたんです。そのときに初めて、島国で地続きの国境を持たない日本で領土や領海、ひいては国の形というのを意識するようになりました。そのうちに、2008年の7月に日本のブナ林が買われているんじゃないかという話があり、本格的に情報を集めだしたんです。
柴田 私は将来、沖縄に住みたいと昔から思っていて、7、8年前から年に1、2回は現地へ行って土地を探していたんですが、行くたびに地価の値上がりがすごかったんです。ただ、賃貸の価格はそんなに変わっていない。要するに、土地を買う人が多いと。で、どういう人が買っているのか調べたら、どうも日本人ではないらしいとわかりました。何か変だなと思っていたら、09年あたりから、外資に水源地が特に北海道で買われているという話が出始めた。それで、北海道のことを調べて、連載小説を書き始めたんです。
―当時、外資による土地買収については、まだそこまで大きな問題としてとらえられていなかったように思います。むしろ、海外資本に期待する声もありました。
柴田 北海道で取材を始めたら、どんな人が土地を買ったか、外資ということだけで、まるで顔が見えてこなかったんです。地元の役場で聞いてみても、個人情報になるので役所では言えないと。この景気の悪い時代に外資が役に立たない土地を買ってくれてありがたいのに、なんで邪魔をするようなことを言うんだ、と言われる始末でした。ちょっと待て、得体の知れない外国人に土地を買われているのに、あなた何人なんだと怒ったこともありました(苦笑)。
―平野さんは、ご著書の中で、一度、売ってしまうと、外資だろうとなんだろうと、買い戻すのが困難だと指摘しています。
平野 以前、五島列島で山の買収があったと聞き、持ち主を調べたことがあります。取材を進めるうちに、買収した業者は上海中心部から10kmほど離れた郊外の10階建てビルに所在があるとわかった。しかし、そのビルに登記されている法人は全部で5000社もあって、そのほとんどが実体のないペーパーカンパニーばかり。結局、その業者とはいまだに連絡がついていません。本来、土地を所有している彼らは、日本で固定資産税を払わなければいけませんが、持ち主が誰かわからない「幽霊地主」の場合、行政は追えません。ましてや、海外で土地を転売されたらまったくわかりません。
―なぜ追えないんですか?
平野 まず、転売については外為法(外国為替及び外国貿易法。外国資本との対外取引に関する法律)でも、外資による海外での転売については事後報告すらまったく必要がないとされています。それ以前に日本の土地制度は欠陥だらけなんです。土地の登記は義務ではないし、国土利用計画法の届出制度も不備だらけ。誰がその土地の持ち主か、あるいはどういう売買があったかということを知るシステム、トレーサビリティがない。
柴田 今、環太平洋の主要な国のなかで、外資による土地の買収に対して、何の足かせもついていない、まったくフリーなのは、日本だけですからね。
平野 それに、日本では土地をいったん買ってしまえば、本人が売りたくないといえば、たとえそれが公益にそぐわないとしても、買い戻すのはかなり難しい。それほど、日本では土地の所有権は強い。仮に土地所有者がわかっても、手も足も出ないんです。
■基地そばの中国人別荘に謎の巨大アンテナ
―実際に、日本で外資によって買収されている土地はどれくらいの広さなんでしょう?
平野 国で把握しているのは、山林だけで786ha(東京ドーム約168個分)です。でも、これは氷山の一角でしょう。土地の売買を追えないから、全貌がまるでわからない。
柴田 実際は、国が把握している面積の10倍なのか、20倍なのか、それとも100倍なのかもわからない。これは推察するしかないんです。ただ、買収が明らかになっている土地をつぶさに見ていくと、彼らの目的が見えてきますよね。
平野 そうですね。本来、土地が生み出す価値というのは、山であれば木材、水、それから鉱物資源といった土地の機能がありますが、これはどう考えても今買われている場所では産業として成り立たない。だから、外資の買収は心配する必要はないという人がいますが、それは違うと思う。考えるべきは、その土地空間が持っている特別な何か。そこを占有することによる別の効果です。
柴田 私もまだ断言することまではできませんが、例えば、自衛隊関連の軍事基地、もしくは軍事施設の周辺に、買収された、もしくは買収の手が入っている土地というのが非常に多いのは事実です。
―おふたりとも、著書で取り上げているのが、北海道の倶知安(くっちゃん)町内の土地買収ですね。
平野 倶知安町には、外資が所有する土地が自衛隊の駐屯地から3km以内に3件109haある。
柴田 これは北海道だけじゃないですね。南のほうの離島でも、沖縄・石垣島の海上保安庁石垣海上保安部が見えるリゾートマンションのほとんどが中国人に買われたり、奄美(あまみ)群島の南西にある沖永良部島(おきのえらぶじま)の航空自衛隊の基地近くにある土地の買い主が、中国の人民解放軍だということもわかっている。また、沖縄の米軍基地内の軍用地も人民解放軍にかなり買われています。
平野 柴田さんの本を読んでいて膝を打ったのが、ある分譲別荘地の話です。売り出された別荘すべてが中国人に買われていて、しかも、3軒に1軒くらいの割合で、家の庭に直径2m以上あるアンテナがそびえ立っているとあります。実際に北海道の千歳市にそうなってる場所があって、私も見に行ったことがあるんです。まるで通信基地といった風貌で、あれは異様ですね。数km以内に自衛隊基地があることを考えると、問題かもしれません。でも、こういう話をすると、すぐに“右”と言われてしまう(苦笑)。
柴田 全然、右じゃないですよ。
平野 陰謀論という人もいるかもしれませんが、事実を積み上げていくと、どういうことが起きているのかが見えてくるんです。
その観点から考えると、2011年の4月に中国政府が大使館用地として取得した東京・港区南麻布の約5600平方mの土地と、同年11月に同じく中国政府が総領事館用地として取得した新潟市中心部の約1万4900平方mの土地にも意味がある。新潟は、領事館としては不釣り合いなほどに広大なことが問題になりましたね。
柴田 中国は北朝鮮の羅津という港の租借権を取得して、念願だった日本海側への拠点を確保しました。その羅津から日本への最短の道が新潟に至る航路ですからね。
南麻布に至っては、皇居まで直線距離で3kmしか離れていない。しかも、大使館だからウィーン条約で保護されていて治外法権です。中に何を持ち込まれても日本政府は何も言えない。それこそ、スパイが逃げ込んだって、武器を運び込まれたって手も足も出ないんですよ、日本は。
平野 柴田さんは100万人いるともいわれる日本在住の中国の方々が民兵になり得るということも書かれていますね。
柴田 2010年に中国で制定された「国防動員法」という法律は、中国が合理的に日本と戦争するための法律ですからね。
―柴田さんの本では、国防動員法について、こう説明していますね。「中国で有事が発生し、常務委員会が戦争を宣言すると、公民に対して動員令を発令する。これは、中国籍を持つ18歳以上60歳以下の男性、18歳以上55歳以下の女性すべてが負うもので、国内在住者はもとより、国外に居住、もしくは旅行中の者も対象となる」と。つまり何かあったとき、中国軍は日本にいる大勢の中国人を指揮下に置くことができるわけですね。
中国資本による自衛隊基地周辺の土地買収、南麻布と新潟の治外法権となる土地取得、さらに日本にいる100万人以上の中国人、そして国防動員法……。こうして見ると怖すぎます! もし、日本がこのままだとしたら最悪の結末って……。
柴田 僕がこの本で書いたのも、ひとつの可能性としてあると思うんですよね。つまり……(編集部注:ネタバレになるので、続きは、ぜひ『チャイナ・インベイジョン』でどうぞ!)。
―じゃあ、日本はこれから何をすればいいんでしょうか?
平野 まずソフトインフラ、つまり土地の登記などを急いで整えないといけない。誰が買っているかわからないような不明地主、買った後、行方が追えない幽霊地主を作ってはいけないんです。そういう地道なことをやることで、外国からの脅威を少なくとも半減できると思います。
柴田 日本人はもうちょっと固定観念を捨てたほうがいいと思います。例えば、日本は安泰なんだとか、なんとかなるとか、それこそ中国と戦争なんて起こりっこないとか。
現実を直視して国民ひとりひとりが自分がどうあるべきか、そして有事の際にはどのように行動すべきか考えればいいんじゃないでしょうか。
(構成/頓所直人 撮影/津田宏樹)
●柴田哲孝(しばた・てつたか)
1957年生まれ、東京都出身。作家。綿密な取材に基づいた作品で知られる。著書に『下山事件完全版 最後の証言』(祥伝社文庫)、『GEQ』(角川文庫)など。最新刊は『国境の雪』(角川書店)
●平野 秀樹(ひらの・ひでき)
1954年生まれ。東京農業大学客員教授。外資の土地買収問題を追いながら、離島の海女をフィールドワークする。共著に『奪われる日本の森』(新潮文庫)
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