“極右”安倍首相を評価し始めた韓国 有力紙も編集方針変更
zakzak2013.03.23
安倍晋三首相のロングインタビューが掲載された「月刊朝鮮」4月号【拡大】
【朝鮮半島ウオッチ】
安倍晋三首相が韓国の有力メディア「月刊朝鮮」(4月号)に、日韓関係はじめ歴史問題や憲法改正などについて語った。当初、安倍政権を「妄言内閣」などと決めつけていた韓国メディアだが、最近はアベノミクスの効果などを評価する論調も増えている。しかし韓国世論の「反日」はいつでも発火する。安倍氏は自身の信条をどう語ったのか、韓国は安倍氏の発言をどう受け止めたのか。韓国メディアの日本への視線は?(久保田るり子)
■「私が右翼的なら世界の国々はすべてが極右国家」
インタビュアーは韓国の保守陣営を代表するジャーナリストの趙甲済氏。趙氏は8年前、自民党幹事長代理時代も取材している旧知の人物だ。
韓国側の関心は安倍氏の国家観、歴史観、対韓国観だ。趙氏はまず、日韓の未来に関する考えを聞き、安倍氏はこれに「普遍的価値観を共有する最も重要な隣国」と答え、「普遍的価値には法の支配もある。例をあげるなら海は自由な海でなければならない」と領土問題での武器不使用に触れた。
これに趙氏は「直接的表現で質問すれば、独島(竹島)問題解決に日本は武力を使わないということか?」と念を押し、安倍氏は「日本がそういう手段を取ることはありえないという点を明確に申し上げる」と述べた。そのうえで、国際司法裁判所(ICJ)単独提訴について安倍氏は「この問題を法により冷静に平和的に紛争を解決していくという考えに基づき、検討準備を進めている」と留保した。
外交カードの機微まで安倍氏は明確に答えた。しかし、最も敏感な慰安婦問題に安倍氏は踏み込まなかった。
「私は韓国人に筆舌に尽くしがたい苦しい過去を作ってしまったことなど、そうした方々の心を思うと心が痛む。しかし、同時に歴史認識に関して申し上げれば、政治問題化、外交問題化させてはいけないと考える。歴史問題は歴史家に任せるべきだと思う」。そのうえで2015年の戦後70周年に首相談話を出す考えを表明した。
一方、趙氏は「自民党が参院選でも勝てば自衛隊の名称変更と集団的自衛権行使のための憲法改正を行うのか」と単刀直入に聞いた。安倍氏の答えはこうだ。
「私の政策が極右的だと韓国のマスコミからたびたび批判されてきた。かつてソウル大で講演したときも指摘されたが、私はこう答えた。『では韓国は集団的自衛権を行使できませんか?韓国の防衛担当機関はほかの部署より格が低いのですか?と』…これは、韓国を含む大多数国家が採択していることと同じ安全保障体制にしようとする行為にすぎない。私の主張が極右的なら世界の国々すべてが極右国家になります」
■韓国メディアの「安倍政権評価」
このインタビューへの韓国メディアの反応は引用報道がほとんどだ。「これまでの主張の範囲だ。特に新しいものはない」(外交筋)との受け止めで、憲法改正や集団的自衛権、国防軍に関する発言に目立った反論はなく「極右」レッテル張りもみられなかった。
「妄言内閣発足」「軍国主義の復活」などと昨年末から大騒ぎしていた安倍政権批判はどこへやら。拍子抜けの「冷静の受け止め」の背景には安倍政権の現実的な対韓国対応がある。
第一次安倍内閣(06年9月〜07年9月)は韓国メディアにたたかれっぱなしだった。特に慰安婦問題で安倍氏が「軍による強制連行の証拠はなかった」と述べたことに批判が集中した。このため第二次安倍政権は、総選挙の自民党公約「竹島の日の政府公式行事化」を先送りし、歴史問題を外交と切り分けることを徹底した。安倍氏の「極右発言」を待ち構えていた韓国メディアに肩すかしを食わせたのだ。
もうひとつ、「安倍政権評価」の背景として、韓国メディア側に自国の朴槿恵政権への不満があるのだという。歴代の韓国政権は有力メディアと一定の協調関係を構築してきた。政権側がメディア幹部から世論の動向を探り、観測気球を上げるため情報リークも行った。だが、朴槿恵政権はこうした慣習を一切排除した。メディアの朴政権への問題提起にも「全く聞く耳をもたない」(韓国メディア関係者)。韓国ではこうした政権サイドとメディアの攻防が約3カ月間、続いている。
さらに朴政権は人事や省庁再編でもたつき、スタートは約一カ月遅滞。これに比べ日本の安倍政権は、政治決断が早く経済が上向きだ。そんななかで、何かと日韓比較の好きな韓国メディアにはマスコミを味方につけた安倍政権を「評価すべきだ」の声が出たのだという。
■それでも安倍政権の日韓関係には暗雲
「3大有力紙のなかで安倍氏批判の最右翼だった朝鮮日報が、『是々非々で評価すべきだ』と最初に編集方針を変えた。特に同紙は編集幹部の交代もあって対日安倍批判を見直したようだ」(前出の関係者)。
しかし、今後の朴政権、安倍政権の日韓関係をみる韓国メディアの視線は悲観的で冷淡だ。
「安倍政権の本番は今夏以降だ。参院選後の改憲をはじめとする国のあり方への取り組みや、靖国神社参拝など安倍色が鮮明となればまた、極右批判が噴き出すことは必至」とされる。
注目されるのは日韓首脳会談だが、「両首脳ともに国内世論を抱えており、領土、歴史、慰安婦に踏み込めば引けない。お互いが言いたいことを言った“最悪の日韓関係”である現状を維持する方がよいのではないか」との声がいまから囁かれている。
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◆ 安倍首相「私の主張が極右的なら、世界の国々も全て極右国家になる。『安倍談話』15年発表目指す」 2013-03-18 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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