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堀潤の「次世代メディアへの創造力」 オープンジャーナリズムが戦争報道を変える

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堀潤の「次世代メディアへの創造力」
現代ビジネス2013年04月09日(火)堀 潤
第2回 「オープンジャーナリズムが戦争報道を変える」
 先日、ある民放局のラジオ番組に出演し、市民が電波を使って発信できる権利"パブリックアクセス"やインターネットを使って市民とマスメディアが協業でニュース制作を行う"オープンジャーナリズム"の可能性について話をした。
  番組はおよそ60分。解説者は大手新聞で論説委員などを務めてきたベテラン記者。時間をかけて"インターネット後"の社会における新たなジャーナリズムのあり方について意見を交換したが、市民発信とマスメディアの協業とは、具体的にどのような形で成り立つのかがわかりにくい、という声も聞かれたので、今回は、ここで具体例を紹介したい。
 *インターネットやSNSの活用で、戦争報道が変わる
  前回、連載第1回目では、オープンジャーナリズムの導入を試みる英国の名門紙『ガーディアン』の取り組みを紹介したが、一方で各国のテレビメディアも、市民参画型のニュース発信に力を入れている。
  今回は、アメリカのニュース専門チャンネルCNNと中東衛星テレビ局アルジャジーラの試みを取り上げたい。 昨年秋の停戦合意後も緊張関係が続く、イスラエルとパレスチナ。去年11月、イスラエルによる空爆でパレスチナ側に女性や子どもなど多数の民間人の死傷者が出た際には、アメリカ国内でも報道が過熱した。 実はこの紛争では、イスラエル・パレスチナ双方の軍や関係者が、攻撃や被害の状況を自らtwitterやfacebook等を使ってリアルタイムで発信していた。
  次のリンクはIDF・イスラエル国防軍のtwitterアカウントだ。
  @IDFSpokesperson
  彼らはガザに対する宣戦布告をtwitterで世界に向け発信した。攻撃の様子などを写真付きで随時ツイート、自らの正当性を主張するメッセージを織り交ぜるなどプロパガンダ攻勢も展開し、戦場ジャーナリスト達によるメディアリポートよりも先に、マスに対して情報発信を行っていった。
  そうしたツイートに呼応するように、ガザからの発信もスタート。ロケット弾が着弾した地域から、住民や地元ジャーナリストの発信が相次いだ。twitter上では、#GazaUnderAttackというハッシュタグが設定され、現場からの直接ツイートによるテキスト、写真、 動画などの情報が溢れた。
 *テレビ電話でライブインタビューを敢行
  こうした中、CNNは、市民からの情報や映像を募集し、集約するインターネットサイト「CNN iReport」を徹底的に活用した。
  CNN iReportに投稿された一般からの情報や映像が、良質なものと判断されるとそのままニュース番組でも紹介される仕組みだ。今回CNNは、ここに寄せられる情報を活用し、イスラエル・パレスチナ双方の現地市民に直接コンタクト。インターネットのテレビ電話を使って、ニューヨーク、イスラエル、ガザの3点を同時に結んだライブインタビューを報道番組で敢行した。
  同時インタビューでは、イスラエル軍の空爆によって、大きな爆発音とともにガザ側の市民とをつなぐ回線が一次寸断される場面もあり、紛争に巻き込まれる市民の様子や肉声がリアルタイムで報道された。
 一方で、対立する両地域の住民が「犠牲になるのはいつも市民だ」と共に和平を訴える様子も放送され、市民による直接発信とテレビ放送の協業によるニュース報道の新たな姿を提示した。
  即時性や中立性が問われる戦争報道のあり方に一石を投じる試みだった。
 *ビックデータ解析によるリアルタイム戦争報道
  こうした中、中東衛星テレビ局アルジャジーラは、これまでなら軍事衛星やレーダーなどを活用しなければ全体を把握できなかった「リアルタイム戦争マップ」の作成に挑んでいた。
  「Al Jazeera Interactive」と名付けられたサイトを見てみて欲しい。
  ここでは、GPSの位置情報が付加された市民のTwitterなどを利用した様々な調査報道が展開されている。いわゆるビックデータ解析によるデータジャーナリズムの実践だ。
  アルジャジーラは、イスラエル、パレスチの緊張関係が深刻化する中、それぞれの現地から発信されるSNS上の情報を独自に集計・分析、twitterなどのコメントに付加された位置情報から、それぞれの発信地点を割り出し、地図上に落とし込んでいった。
  イスラエル側のtwitterで、ロケット弾の発射地点が判り、ガザ側からの発信で、着弾地点を特定。被害はどの程度だったのか、建物を破壊したのか、死傷者が出たのかなど、刻々と変化する戦争の状況を現地からのSNS発信をもとに再現していったのだ。
  この「リアルタイム戦争マップ」はアルジャジーラの報道番組の中でも取り上げられ、放送波に乗ってより多くの人々に届けられていった。
  SNS上に散らばる現地からの発信を集約・分析して伝える新たな戦争報道の姿に、筆者も目を見張った。
  一方的なプロパガンダやデマも、双方からの情報を総合的に見渡すことで、ある程度見破ることができるのではないか、という可能性を感じた。
 かつて、インターネット前の戦争報道では、攻撃や被害の全体状況の把握は、まずは当局からの発表に頼らざるを得なかった。そうした情報を検証するため、戦場ジャーナリストが紛争地域を訪ね歩き、取材を重ね、攻撃や被害の実態を伝えてきたのだ。
  丁寧に声を拾い上げていくためには、こうした手法はこれからも絶対に必要だ。しかし、一方で、一次情報保持者が直接発信する時代に、メディア側がこうしたデータをどのように活用してくのかも考えていかなくてはならない。結果的に、権力側の動きを市民が監視する本来のジャーナリズム精神を全う出来る可能性も高まるはずだ。
  日本におけるオープンジャーナリズムの導入はまだまだこれからだ。次代を見据えた果敢な挑戦をこれからも促していきたい。
  次回も乞うご期待!
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「目指せ"オープンジャーナリズム"」 ジャーナリスト堀潤の新しい活動はここから始まる! 2013-04-09 | メディア/ジャーナリズム/インターネット 
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