「バブルは悪」いまだ残る呪縛 不要な引き締めでデフレ突入
zakzak2013.04.10. 連載:「日本」の解き方
4日の黒田日銀による金融緩和策は世界の度肝を抜いた。しかし、日本のマスコミにはいまだにこれまでの呪縛を抜けていないところもある。
各社の翌日社説のタイトルは、朝日「新たな緩和策−歯止めを壊すだけでは」、毎日「黒田日銀始動 危険伴う大きな一歩だ」、読売「黒田日銀緩和策 デフレ脱却に向けた第一歩だ」、日経「黒田日銀は柔軟で規律ある量的緩和を」、産経「日銀金融緩和 『2%』達成へ決意見せた 黒田流の発信力を評価する」、東京「黒田日銀始動 『市場との対話』綿密に」と各社さまざまだ。
マスコミのいう懸念の一つに、資産価格が上昇するバブルになるのではないか、というものがある。まだ入り口にも入っていないので気が早すぎるのだが、やはり1990年代のバブル崩壊のイメージが悪いのだ。
日本のバブル期は一般的には1987年から90年までをいう。どのような経済状況だったかといえば、株価は87年の1万5000円ぐらいから上昇し、89年12月29日の大納会の日に3万8915円となった。その後、90年代後半まで2万3000円ほど下がった。
その当時のマクロ経済をみると、名目経済成長率が5〜8%、実質経済成長率は4〜5%。失業率は2〜2・7%程度、インフレ率は0・5〜3・3%と今からは想像できないほど良かった。
もっとも、株価と不動産価格が高騰した後に急落したため、高値でつかんだ人は負の遺産を背負って不良債権問題となり、バブル崩壊後の経済の落ち込みを加速させたという側面もある。
バブルは先進国を問わず世界のほとんどの国で、いつも起こっている。しかし、日本のようにバブル崩壊後にデフレになった国はない。筆者はこの点について、バブル崩壊時に、間違った余計な金融引き締めをして、その間違いを「正しい」と言い続けた結果、必要以上の金融引き締めが継続して長期間のデフレに陥ったと思っている。
筆者は当時、大蔵省証券局で証券規制を実施した担当官だった。筆者の現場感覚からいえば、バブルは、証券・土地規制の抜け穴によって、証券・土地のみで起こったことだ。その是正には証券・土地規制の適正化で十分だった。金融引き締めは余計なことだった。
もし、バブル時に今の安倍政権のようなインフレ目標2%があったらどうだったか。インフレ目標2%では、上下1%程度の誤差は許される。ということはバブル時には、物価は安定していたので、特に金融政策での対応は不要と判断していたはずだ。この意味で金融引き締めは間違いだったといえる。
たしかに、金融緩和は資産価格に影響を与えるが、バブルになった場合にはその要因を見極める必要がある。80年代後半の日本のバブルの要因について筆者の政策担当者としての現場感覚は、証券会社や金融機関の違法まがいの取引だった。それを日銀は勘違いして、金融引き締めを行ったとしか、筆者には思えない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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