【阿比留瑠比の極言御免】憲法改正は前文から
産経新聞2013.4.18 12:33
夏の参院選では、憲法改正が重要な争点となりそうだ。結果次第では、昭和21年11月の公布以来初の改正発議が実現する可能性も十分ある。そうなれば国民は初めて、国民投票を通じて自らの手で憲法の欠陥を正し、足らざるを補う機会を得られることになる。
「まずは多くの党派が主張している(憲法改正の発議要件を定めた)96条の改正に取り組む」
安倍晋三首相は1月30日の衆院本会議でこう表明した。また、その上で「逐条的に国民的な議論が深まっている分野からやっていきたい」(3月9日のBS番組)との手順も示す。
ただ、「次に何を改正するかが問われる。セットで示さないと国民は不安に思う」(公明党の石井啓一政調会長)との指摘にも一理ある。これについて自民党の石破茂幹事長は「国民はそれ(9条)を念頭に置いて(国民)投票していただきたい」と将来的な9条改正に言及したが、喫緊の課題はほかにもある。
「(日本国民は)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」
こんな欺瞞(ぎまん)が記された前文こそ、まず改めるべきだろう。現実の世界に目を向けると、北朝鮮は核と弾道ミサイルによる恫喝(どうかつ)をエスカレートさせ、膨張する中国は尖閣諸島(沖縄県石垣市)などへの領土的野心を隠さない。ロシアは北方領土を、韓国は竹島(島根県隠岐の島町)を不法占拠し続けている。
むしろ、「日本を取り巻く国に平和を愛する公正と信義など全くない」(日本維新の会の平沼赳夫国会議員団代表)との主張の方が国民の実感に近いはずだ。
首相自身、前文について過去にこう語ってきた。
「いじましい敗戦国のわび証文だ。われわれの手で変える時期ではないか」(昨年3月の講演)
「自分たちの安全を世界に任せますと言っている。みっともない憲法ですよ、はっきり言って」(昨年12月のインターネット番組)
前文の現実から目をそらした卑屈で依存的な内容が日本にふさわしくないとの見方だ。首相に限らず、前文のさまざまな問題点を指摘する意見は少なくない。
維新共同代表の石原慎太郎氏はかねて翻訳調が目立つ前文について「醜悪な日本語」と述べており、同じく橋下徹大阪市長も「ありえない国際社会観を掲げた」と喝破している。
このほか前文の「人間相互の関係を支配する崇高な理想」という部分も、一読意味不明だ。昭和21年7〜8月に開かれた秘密会、帝国憲法改正案委員小委員会速記録によると「国際関係の平和主義の理想」を指すらしいが、正確に理解できる人がどれほどいるのか。
ともあれ、自分たちのルールは自分で決め、自分で改めるのが民主主義国の当たり前のあり方だ。「連合国軍総司令部(GHQ)が1週間ちょっとで作り上げたのが現憲法の原案」(首相)である以上、前文をはじめ憲法を自ら改正してようやく、日本は当たり前の民主主義国となれるのではないか。(政治部編集委員)
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◆ 石原慎太郎氏(衆院予算委)質疑 詳報 憲法改正/天皇/尖閣/横田基地/NLP/会計制度/債務/環境 2013-02-13 | 石原慎太郎
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「日本を取り巻く国に平和を愛する公正と信義など全くない」憲法改正は前文から
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