安倍政権を支持する
田母神俊雄公式ブログ 2013-04-23 09:31:20
第二次安倍政権が誕生したことは日本にとっての光明である。自民党政権に戻ったからいいと言っている訳ではない。安倍政権でなければ駄目である。
安倍首相は、東京裁判史観、即ち自虐史観に捕われていない数少ない政治家の一人であるからである。
もし自民党総裁選で石破茂氏が勝っていたら日本の復活はできないと思う。彼は靖国神社に一回も参拝したことがないし、これからも参拝しないと明言している自虐史観にどっぷり浸かった政治家である。私はあの第二次大戦をどのように認識をするかが、現在の我が国の国家政策に決定的な影響を及ぼしていると考える。戦前の我が国は悪の帝国で、中国大陸、朝鮮半島、東南アジアなどを侵略して多くの国に迷惑をかけたという歴史認識では、我が国を世界から尊敬される強い独立国にすることは出来ない。
これまでの歴代自民党総裁を見てみるとほとんどの人が、米国占領下で我が国に強制された自虐史観の持ち主である。我が国はかつて悪の帝国であり、戦後アメリカによって民主主義国に変えてもらったという歴史観を持っている。現在の自民党にもこの自虐史観を持つ政治家は多く、そのために我が国は、国を守る体制がいつまで経っても調わない。我が国は戦後アメリカによる占領体制から出発し、昭和27年に独立をした後も、日米安全保障条約によってアメリカに守ってもらうという体制が取られ、今なおその体制から抜け出すことが出来ないままである。外国に国を守ってもらえば、最終的には守ってくれる国の言う通りにせざるを得ない。国策の自由が奪われたままなのである。
自虐史観が、我が国の防衛力整備をどれほどいびつなものにしてきたか、私は自衛隊の現場でいやというほど味わってきた。日本以外の国では、軍は攻撃力と防御力のバランスが取られている。しかし自衛隊は世界でも稀な防御に偏重した軍なのである。自衛隊は攻撃力をあまり持たない。これは極東の米軍基地を守る存在として出発して、自衛隊創立後、半世紀以上も経っているのにいまだにあまり変わっていない。我が国が攻撃を受けたときはアメリカに反撃してもらうということになっている。自衛隊が自ら攻撃力を保有すると、間もなく侵略戦争を始めるからだというのだ。
我が国では、わが国が攻撃を受けたときアメリカが自動的に戦争に参加して日本を守ってくれると思っている国民が多いが、実は日米安全保障条約はアメリカの自動参戦を保障しているものではない。日本を守るか否か、それはアメリカの自由意志に任されている。だから日本が攻撃を受けたときにアメリカ大統領が日本を守ると決心をして米軍に命令を与えなければ米軍は日本を守るために行動できない。そして大統領が決心をしてくれても、大統領の決心の有効期間はわずか2ヶ月である。2ヶ月を経過すると、アメリカ議会の承認を得なければアメリカ大統領といえども米軍を行動させることは出来ない。しからば、アメリカ議会がいつでも日本を守ることを議決してくれるか。私は年がら年中、いわゆる反日法案と言われるような法案が成立するアメリカ議会に、それを期待することは無理だと思う。我が国を侵略しようとする周辺国は、第一撃を加えてアメリカ大統領による日米安保を発動させておいて2ヶ月待つであろう。その後、我が国を本格的に侵略すればアメリカ軍は動けない。アメリカ大統領や国務長官、国防長官などが、尖閣諸島は日米安保の適用対象であると言ったことで安心している場合ではないのである。
戦後の我が国は、東西の冷戦構造という戦後日本の復興にとって極めて恵まれた国際情勢があったことを認識しなければならない。冷戦間のアメリカの第一の戦略目標は、ソ連の封じ込めであった。そのためにアメリカは地政学的に日本列島を必要とした。世界地図をさかさまにしてみれば分かりやすいが、ソ連の太平洋進出を日本列島が完全に邪魔している。また日本の国民生活が安定しなければ、ソ連の盾にはなれないということで、冷戦間のアメリカは日本の戦後復興にも比較的協力的であった。戦後復興を成し遂げたのは歴代自民党政権の称賛されるべき功績であるが、そのような恵まれた環境が味方していたことも忘れてはならない。しかしどんどん経済発展する中で自民党政権が立党時の綱領に書き込んだ国家の完全独立を次第に忘れていった。「アメリカに守ってもらうのも悪くない」と思い始めたのである。
それでも冷戦終結までは、我が国が国を守るということを忘れた弊害が顕著に現れることはなかった。日米の国益は重なり合う部分が多かったからである。しかし冷戦終結に伴い、アメリカの戦略計画の変更があり、我が国が国を守ることを忘れた弊害が顕著に現れることになった。冷戦が終わって1991年、アメリカの第一の戦略目標は、ソ連の封じ込めから日本とドイツの経済力を抑えることに変更されたのである。アメリカは、もはや世界大戦争が生起する可能性はなくなり、これからは経済戦争の時代になると予測したのである。
経済戦争の時代には日米の国益が一致することはあり得ない。アメリカの言う通りにしていたら日本は損をすることが多い。しかし我が国は冷戦間の惰性から抜け切れずに、日米構造協議、年次改革要望書の交換などを通じて悉くアメリカの言う通りにしてきたのである。それが改革であり、グローバルスタンダードに合致させるということである。この二十年の改革で良くなったものがあるかと言えば一つもないのではないかと思う。改革の結果、みんな悪くなっている。日本国民が次第に安心して暮せないようになってきている。日本は、この二十年、自主的にアメリカの言う通りにしてきたのである。ロシアがある、中国がある、北朝鮮もあるということで、日米関係だけは損なわないようにしようとアメリカに譲歩せざるを得なかった結果でもある。アメリカが悪いと言っているわけではない。国家というものは徹底的に自国だけの国益を追求する存在なのである。アメリカもその例外ではないというだけである。
安倍総理が国防軍構想を打ち出した。政治的な防衛費の増額も戦後初めてのことである。これは自民党立党時の精神に戻るということである。独立国は自主防衛が基本である。自主防衛が出来なければ国策の自由を確保することは難しい。ましていまリーマンショック以降アメリカの力にかげりが見られるような状況があり、今後世界はどのように動くか不透明である。我が国は、今こそアメリカ依存から抜け出して、自分の国を自分で守る自主防衛の体制を強化しなければならない。国家があっての経済活動であることを今一度日本国民は想起すべきである。
私は安倍政権を支持する。安倍政権が崩壊するようであると、日本の再生はさらに困難になり、それこそ中華圏内で虐待を受けながら生活するような国に向かいまっしぐらということになりかねない。朝日新聞などマスコミではすでに安倍叩きが始まっているが、私たちは安倍政権を支えなければならない。彼ら左翼思想の持ち主は、強い日本が出来ては困るのだ。これまでどおり中国などにおもねる政権であってくれることが彼ら敗戦利得者にとっての利益なのである。保守派の国民の中でも一部安倍総理が韓国や中国に弱腰だとかの批判があるが、安倍総理は日本再生に向けて徐々にアクセルを踏み込もうとしている。ここは私たちもしっかりと安倍政権を支える心構えが必要だと思う。
◆ 『自立する国家へ!』田母神俊雄×天木直人 2013-04-29 | 読書
『自立する国家へ!』田母神俊雄×天木直人
著者 ◎田母神俊雄◎天木直人 2013年2月1日初版第1刷発行 KKベストセラーズ 刊
目次
第一部 天木直人
今こそ自主・自立した日本を取り戻す時である
第二部 田母神俊雄
日本は国力と軍事力を備えた独立国家たれ!
第三部 天木直人VS田母神俊雄
激論! 最強の自主防衛策とは?
第二部
p101〜
■「専守防衛」は自主防衛とはいえない
日本人に反省と謝罪を促した日本国憲法のもう1つの弱点は、「軍を持たない」と宣言したことにあった。これによって日本は、自衛隊という外国から見れば紛れもない軍ができた後も、その言い訳のように自衛隊は武器の使用を極度に制限された。原則的に、相手から攻撃されるまでは武器を使用できないことになったのである。p102〜
しかも、そうした歪んだ自衛隊の形を、戦後の左翼教育によって日本の一定数の世論が良しとしていたこと、それから、長く続いた自民党政権時代でも、常に野党第1党の座にあった社会党などが自衛隊を違憲と断定していたこともあって、自衛隊をまともな形に正すことはできなかったのである。
その間の1970年代には、当時の中曽根防衛庁長官が防衛白書の中で「専守防衛」といったあたりからこの言葉が一人歩きを始める。そして、日本が攻撃のための武器を持つことさえいけないことであるかのような風潮さえ生まれた。
そして、アメリカはそうした風潮に乗って「攻撃はアメリカに任せておけ」とばかりに日本にもっぱら防御システムを莫大な金で買わせるようになり、攻撃面はすっかりアメリカ依存になってしまったのである。
評論家などの中にも、「それでいいではないか」という人がいるが、それは軍事力とは何かを知らないもの言いである。
軍事力というものは、攻撃と防御がバランスよくセットになってはじめて軍事力なのである。外国から見たら防御一辺倒の軍事力など怖さはない。いくら最新鋭の防御システム(ペトリオット・ミサイルなど)を備えていようとも、「あの国は守りは強いが攻めは弱い」と認識したら、その国に怖さを感じるだろうか。
p102〜
軍事的な怖さがないということは、抑止力が働かないということに等しい。つまりは危険性が増すわけだ。そういう意味で、「実際に戦ったら恐い」とどれほど相手に思わせることができるかが、その国の軍事力であり、安全保障力であるといえるのである。
p104〜
■自主防衛への道に日米共同開発が立ちはだかった
戦前の日本は世界が驚くようなゼロファイター=零戦や多くの戦艦をつくった国であったから、戦後になっても武器・兵器を自前で製造する技術は保持していた。しかし戦後はGHQの統制下に置かれ、軍事力を保有することはできず、当然、武器を自前で開発、製造することは禁じられた。
p105〜
しかし朝鮮戦争の勃発によりアメリカは日本の再軍備の必要性に迫られ、我が国は警察予備隊の発足により再軍備を始めることになった。そのとき武器の多くをアメリカから買わされることになった。
しかし当時は我国の政治家も官僚も一人前の独立国になることを目指していたから、日本は武器を自前で開発、製造しなければならないと考えていたのである。(略)
しかし、1980年代半ばの中曽根総理の時代になって、国産化への道が突如として塞がれる。私が航空幕僚監部の防衛課にいた時代である。
その頃、F1で培った日本の技術はかなりのレベルに達しており、F1の後継機としてF2の開発も国産体制でやろうとしていた。
p105〜エンジンだけアメリカから買ってきて機体は日本でつくるという、F1同様の体制である。こうした日本の体制に対し、アメリカは横槍を入れてきたのだ。
「F2は日米共同開発でやろうじゃないか」
アメリカは日本政府に申し入れ、これを受け入れ、鶴の一声を発したのがロン・ヤス関係といわれ、アメリカべったりだった当時の中曽根総理であった。続く竹下総理がこれを引き継ぎ、1988年、日米共同開発が決まったのである。
アメリカの意図は、日本に自前の武器・兵器をつくらせないことが一点、そしてもう一点は、日本の軍事技術をいただくことであった。
当時の日本の技術力はかなり高いレベルにあった。
p107〜
■アメリカの戦略は「日本を自立させない」こと
湾岸戦争(1991年)のときに話題となったのが、レーダーに掛からない性能を持つという「ステルス戦闘機」であったのを覚えている人は多いだろう。
p108〜
実はあれにも日本の技術が使われていた。宇部興産がつくったチラノ繊維という合成繊維で、レーダーに映らないというステルス性能はこれがないと確保できない。日本はこんな優秀な技術も持っていたのだが、日米共同開発によって日本の優れた技術はアメリカに根こそぎもっていかれる、という事態が続くことになったのである。
p111〜
ただし、だからといって、私は特別にアメリカが汚いとは思わない。自国の国益のために友好国と交渉するのも国際常識であり、どの国でもやっていることだからだ。本当は、日本の政治家や官僚がそうしたアメリカの意図を認識しながら、日本の国益のためにうまく立ち回るべきで、それができていないことのほうが問題なのである。
ところが歴代政府の多くは、アメリカに追随することが政権の延命につながるということを優先し、ほとんどまともな交渉をしてこなかった。アメリカと対等になることを目指したり、アメリカに頼らない道を探ろうとした政治家はいたが、彼らは皆、志半ばで挫折した。アメリカによる情報戦(場合によっては日本のマスコミも加担した情報戦)によって追い落とされたと思われるケースがほとんどで、日本の親米派が陰で足を引っ張ったと思われるようなケースもあった。
ともかく、対米自立への道を考える時、アメリカは基本的にそれを阻止しようという戦略をもって、先手先手で動いてくるのが戦後の歴史。その象徴といえるのが日米安全保障条約であり、非核三原則なのである。
p116〜
■核武装論者が受け入れた「非核三原則」
最近では私のように公然と日本の核武装を提言する人も増え、「きちんと議論しよう」という人も増えたが、ひと昔前までは、核武装論をタブー化するような風潮があったものである。
それは日本が被爆国であったからではなく、「非核三原則」なるものが存在していたことが大きい。
「広島・長崎が被爆し、多くの犠牲者を出したから、戦後の日本人は核アレルギーが強くなった」という人がいるが、それは違う。戦後になって東西冷戦が始まり、米ソの核戦争が過熱し、中国も核実験に成功する流れの中で、1960年代前半頃までの日本国民には核武装を支持する声はかなりあった。
そんな中、1964年に総理となった佐藤栄作氏は元々、核武装論者であったが、総理になる直前に中国の核実験成功を聞いてその思いをなお強くし、アメリカに「日本も核武装をさせてほしい」と打診したといわれる。
p117〜
しかし、アメリカはこれに強く抵抗した。結局、佐藤総理は、日本が核武装をしない代わりに「日本がアメリカの核抑止力を必要とする時、アメリカはそれを提供する」ことを約束したことで核武装論を引っ込めた。
1967年の国会答弁の中で初めて「非核三原則」を口にした佐藤総理は、72年には「核の脅威に対してはアメリカの核抑止力に依存する」として、沖縄を含めた非核三原則を閣議決定してしまったのである。
核武装論がタブー視されるようになったのはそれ以降のことだ。佐藤総理が非核三原則を口にした当時の日本の世論に、これを良しとする声はさほどなかったが、それ以降の日本では次第に、核武装論を口にする者は危険人物の扱いをされるようになっていった。
つまり、核武装論者であった佐藤総理自身が、日本の核武装論を封じてしまったようなものだ。
p118〜
日本では、「専守防衛で核武装もしない平和憲法がある平和主義の日本だから世界で価値を認められている」といった根拠のない論調がいまだにあるが、それはまるで違う。むしろ逆で、核武装国になれば嫌でも存在感が増すのである。
核兵器を持っている核武装国こそが、戦後の国際世界を牛耳ってきた。「核武装国になれば国際社会での発言力と安全度が増す」ことは、国際社会では常識中の常識である。だからこそ世界の多くの国が、あわよくば核武装国になれないものかと狙っているのだ。
国連の常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国。核武装国でない国は1つもない。他にインド、パキスタン、そしてイスラエル、北朝鮮も核武装国だが、彼らがなぜ核武装国を目指したのかは、逆を考えてみればわかる。つまり、彼らが核武装国でなかったらどうなっていたかと。
p119〜
どの国も核武装をすることで抑止力を手に入れ、国を潰されないようにしたまでのこと。いま核武装に突き進んでいるイランにしても事情は同じだ。決して気が狂ったわけでも何でもなく、自国の安全のためにもっとも合理的で効果的な方法をとっただけのことである。
日本では、「核を持たないから平和でいられる」という論調がいまだに幅を利かせているが、世界の常識は180度違う。「核武装すれば国はより安全になる」というのが国際常識なのである。
なぜなら、核兵器は決して使われることのない兵器で、同じ兵器でも通常兵器とは存在意義が違うものだからだ。(略)
なぜなら、核戦争には勝者はいないからである。一発の核ミサイルは耐えることのできない被害を及ぼす。
p120〜
お互いに甚大な被害を覚悟しなければならないから、核武装国同士はお互いに手出しができなくなる。つまり核による抑止力は、パワーバランス(数の均衡)をさほど必要としないのである。核兵器出現以降、核武装国同士の戦争は一度も起きていない。
核兵器は2度と使われることはない。しかし核兵器を持つか持たないかでは大違い。国際政治を動かしているのは核武装国なのである。このことをよくわかっているからこそ、非核武装国は何とか核武装国になれないものかと考え、逆に、既に核武装国になっている国々は、自分たちの価値を下げないために、これ以上、核武装国を増やしたくないと考えるのである。
p140〜
核兵器を所有する大国は、話し合いの末の多数決を拒否するカードを持ち、自国が不利と見るや、すぐさまこのカードを切る。オバマ大統領も本気で核兵器を廃絶させるのなら、アメリカが音頭を取って「せーの」で核廃絶を決議すればいいのだが、そんなことを本気で考えてもいないし、重要な話し合いになればなるほど、どこかの国が国が拒否権カードを切るのがわかっているから、議題にも上らないのが現実だ。
p141〜
ただ、第2次大戦、そして冷戦以後の国際社会がそれまでと変わったのは、腕力の強い者が腕力にものを言わせる、すなわち戦争を仕掛けるのではなく(そういうことも時には起こるが)、大声でものを言い、発言力で相手をねじ伏せるようになったことだろう。それは国連が機能した結果というより、核抑止の効果といえる面が大きい。
もっとも、ただ大声を出しただけでは、誰も聞いてはくれない。世界の国々の耳を傾かせ、従わせるのに必要なものこそが腕力、すなわち軍事力で、そのために大国は核武装をしているのである。
第三部
■対米従属の実態
p157〜
天木 私がイラク戦争に反対したのはあの戦争が間違った戦争だったからです。アメリカが間違うのは仕方ないにしても、なぜ日本がそんな戦争を支持したのか。中東のことを何も知らない小泉首相が、どうせ感謝されるのだったら世界に先駆けて支持してやろうじゃないかといわんばかりに世界に向けて米国支持を打ち出した。このことに対して、同僚たちは誰一人、止めろといわずに沈黙し、追従した。情けないじゃないかと私は声を上げたのです。
田母神 しかし日本がアメリカに守ってもらっているという現状からすれば、あの時の小泉総理の決断は止むを得なかったのではないでしょうか。国際社会では、正義か不正義か、あるいは善か悪かで国の行動を判断すべきではないと思います。
(p158〜)判断基準はあくまでも我が国の国益に利するかどうかです。あの時、我が国がフランスのように強硬にイラク攻撃に反対したら、我が国の立場はどうなったでしょうか。おそらく日米関係を大きく損ない、結果として我が国の安全保障は危機的な状況になったでしょう。核武装もして自分の国を自分で守る態勢ができているフランスと同じ行動を、我が国は取れないのです。現状では日本はいつでもアメリカを支持せざるを得ないのです。
あの時、アメリカは、イラクは大量破壊兵器(化学兵器や核兵器)を保有するテロ国家だと宣伝して攻撃を仕掛けたけれど、終わってみればそういうものは出てこなかったわけです。アメリカは、最初から持っていないことは知っていたんです。そうでなければ攻撃するはずがない。むしろ、イラクに核を持たせないために攻撃したということだと思う。そのためにアメリカはイラクのフセイン大統領を極悪人と断定し、そのことを世界中アピールして納得させようという情報戦を仕掛けたということ。フセインが善人だとはいわないけれど、別に彼がイラクで飛びぬけて異常な独裁者だったわけじゃないでしょう。彼が交代してもイラクではまた同じような人が大統領になるでしょう。アメリカは昔から自国の利益のための情報戦に長けていますから。
p159〜
田母神 私が対米従属の情けなさを一番実感したのは、中曽根総理の時代です。当時、私は防衛庁航空幕僚監部にいましたが、当時はF1の後継機として三菱重工が中心になってF2戦闘機の開発にとりかかっていました。
(p160〜)戦後、我が国はアメリカから図面を買ってきて機体は日本でつくるというライセンス生産をくり返してきたのです。いずれ国産体制にもっていくつもりで着々と技術を磨いていた。そして戦後はじめてF1という戦闘機をつくり、その後継機としてF2の国産開発に着手しようとしていたのです。それをアメリカが日米共同開発の提案をしてきて、中曽根総理が鶴の一声でこれを受け入れることを決めてしまった。あれで日本の国産戦闘機への道は閉ざされたばかりか、日本の優位な技術ももっていかれるという悔しい思いをしたわけです。
それから、いま日本が買おうとしているF35でも、開発が遅れて、おまけにカネがなくなると、今度は日本にも国際共同開発に加わってほしいと要請があり、そのあげくにバカ高い戦闘機を買わされるわけです。
p161〜
■「自主防衛を目指す」と書かれた自民党結党時の政綱
田母神 やはり独立国家というのは、自主防衛の体制がきちんとしていることが基本だと思うんですね。自分の国を自分で守るということが基本で、それがあって初めてよその国といろんな対等な関係を築くことができていくわけですよね。
(p162〜)けれども戦後の日本の場合は、国の守りをアメリカに依存したというか、戦争に負けてアメリカの占領下にあったからしょうがないんですけれど、そこからスタートするしかなかった。
だからこそ昭和30年代に自民党ができた時、党の綱領とともに掲げられた「党の政綱」の中で、日本は独立したとはいっても、まだ自分の国を自分で守れない半人前の独立国家だから、いずれ占領下で仕方なく受け入れた憲法を正し、自衛隊もきちんと強化して自分の国は自分で守る体制をつくるんだと書いたわけですね。いわば、自主防衛を目指すんだ、としっかり書いたわけですよ。けれども、そういうことが全然改善されないまま70年近くたっていまったということですよね。
p165〜
田母神 戦後間もなくの頃の政治家の中には、占領下にあっても戦前からずっと国を司ってきた人たちがいて、まだまともだったと思うんです。だから今は甘んじていても「いつかは自分たちの手に取り戻すんだ」という気概があった。55年の自民党の綱領もそういう気概を持っていた人たちがつくったわけです。
しかしその後、多くの日本人が戦後教育の洗礼を受けて、結局、日本は悪い国なんだから反省しなければならぬと刷り込まれた。そうしているうちに、下手に自己主張なんかしないでアメリカに守ってもらってアメリカの言うとおりにすればいい、というような世代が社会の中枢を占めるようになってしまった。しかも冷戦時代までは経済がうまくいったものだから、今のままでいいじゃないか、余計なことはしないでおこうとなっちゃったわけです。
そうなると政治の世界でも、国を守るということが独立国家の基本なんだということさえ頭にないような人がたくさん大臣になってくる。それが一番の問題で、そういう状況の中で、自民党も立党の精神を忘れてしまったと思うんです。
私は日本も普通の国になるべきだというんですが、普通の国とはなんだといったら、アメリカに対してイギリス、フランス、ドイツといった国の政治家がいっているようなことを、日本の政治家も普通にいえるというようにならなければ、おかしいのではないかと思う。
p166〜
今の日本には、とにかく中国に遠慮する、いわゆる親中派といわれる政治家が一杯いますね。これに対して保守派といわれる人たちがいるけれども、この保守派というのは、「アメリカ派」なんだね。彼らの多くは親米の保守派で、アメリカ派なんです。日本には日本の国益のために考えて動く「日本派」の政治家がほとんどいない。だからアメリカ派と中国派が政治抗争をやってるみたいななのが今の日本の政治の状況。それで自民党と民主党に分かれているようなところがあります。だから私は、日本の国益を徹底的に考える人たちが集まった日本派の政党ができていかないと、日本は立ち直れないのではないかと思うんですよね。
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◆ 田母神俊雄著『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』(産経新聞出版)
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◆ 一触即発の中国・朝鮮半島情勢。米・韓・中、そして北朝鮮とどう渡り合えばいいのか 2011-01-12 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
田母神俊雄×三原じゅん子 新春対談「ニッポンの国防」 一触即発の中国・朝鮮半島情勢。米・韓・中、そして北朝鮮とどう渡り合えばいいのか
2011年01月12日(水) FRIDAY 永田町ディープスロート
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