1996年12月、男性受刑者が一審の死刑判決から無期懲役に減刑された名古屋高裁の判決公判。死刑と無期の差は、あまりに大きい
【連載企画・極刑の断層?】 死刑と無期、その差大きく 終身刑導入に賛否
共同通信 2013/05/05 20:15
日本の確定死刑囚は昨年末で133人と、年末時点では1949年以降最多となった。谷垣禎一法相は就任会見で、死刑執行について「裁判所の判断を尊重し、私が最終的に決める」と述べたが、死刑について国民が知り得る情報は限られている。死刑囚と死刑制度の今を探った。
中国地方の刑務所の面会室で、男性受刑者(44)はアクリル板越しに語った。「毎日をしっかり生きていくことが被害者の方、ご遺族に示すことのできる償いです」。刑務所に入って約15年。いつしか「模範囚」として処遇を受けるようになった。
男性は2人を殺害するなどの罪に問われ、一審では死刑判決を受けた。だが、二審では「矯正可能性がある」として無期懲役とされ、確定した。厳罰化の流れの「今なら死刑のままだったかもしれない」と思う。
無期囚は、 改悛 (かいしゅん) の情などが認められれば仮釈放されるが、釈放までの期間は平均で約30年と長期化の傾向にある。だが、男性は「死刑にならず、生きて償えるチャンスをもらえた。(仮釈放は)今は考えることではありません」と言い切る。
一生を刑務所で過ごしても、その意味を考えるのが「自分の責任」と思っている。刑務所内での作業で得た年間数万円の 報奨金は、 被害者遺族に送り続けている。
死刑と仮釈放の可能性がある「無期懲役」。その大きな差を、仮釈放のない終身刑で埋めようという動きがある。
日本弁護士連合会の死刑廃止検討委員会は昨年8月、死刑の代替刑として終身刑の導入検討を求める基本方針を決議した。日弁連の内部機関が終身刑の導入を求めたのは初めて。死刑制度の廃止に向け、まずは終身刑を導入しようという考えだ。
終身刑導入には、日弁連内部でも「社会復帰の可能性をゼロにしていいのか」など反対論もあるが、検討委委員長の 加毛修 (かも・おさむ) は「日本で死刑廃止を実現しようとするのならば、終身刑の問題は避けて通れない議論。明確な方針を示していく必要がある」と強調する。
一方、当事者である確定死刑囚たちの間では、終身刑に対する見解は分かれた。昨年の確定死刑囚に対するアンケートに回答を寄せた78人のうち、終身刑導入に賛成の意向は37人。「反対」または「分からない」は24人だった。
確定死刑囚の 兼岩幸男 (愛知、女性2人殺人)は、賛成の理由について「毎朝(執行に)おびえることがない」と記した。一方、 岡本啓三 (大阪、相場師ら殺人)は「(終身刑は)死刑以上に残虐な刑罰。何を目的に生きていればいいのか」と書いている。 下浦栄一 (マニラ・長野、3人殺人)は「死刑制度を廃止するためには、終身刑を導入しないと国民が納得しないと思います」と記した。(敬称略、共同通信=佐藤大介)
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