【守れ!国境の島】「第2の尖閣諸島」化の危機せまる与那国島(2)
zakzak2013.05.15
現在、最も憂慮されている国境問題の1つは、日本最西端の島、与那国島(沖縄県与那国町)が「第2の尖閣諸島」と化してしまう危機だ。尖閣諸島の魚釣島には、戦前までかつお節工場があり、日本人が住んでいたが、無人島化して中国の領有権主張が始まった。人口流出が続く島にも同じことが起こらない保証はない。
さらに、島を他国から守る「戦力」といえば2人の警察官だけ。中国などとの紛争が勃発すれば、島の運命は風前の灯だ。不気味な隣国が、島の背後で大きな口を開けて待ち構えている。
与那国島は台湾との距離が約110キロ。晴れた日には肉眼で台湾が見えるほどの、文字通り「国境の島」だ。しかし、島内には総合病院や高校がなく、主産業の農業も疲弊。多くの住民が生活に不安を感じている。
終戦直後は1万人超だった人口は、今年3月末では1500人余。外間守吉町長によると「この10年間で200人が島から出ていった」という。
本土から見れば、国境の島々は「辺境の地」でしかない。しかし、そこに日本人が住み続けることによって国境が守られ、国境の内側にある本土が守られている。国境に日本人が住んでいる事実そのものが最大の安全保障なのだ。
戦後、日本人の「国境を守る」意識は薄かった。そのツケが、現在の与那国島の苦境であり、尖閣諸島問題の先鋭化だ。
「住民は貧乏に耐えてこの島を出ていかず、島を守っている。世の中、きれいごとでは済まないかも分からないが、これは非常に大切なこと」
与那国島出身の町議、糸数健一さん(59)はこう語る。住民の心意気に応えるためにも、国の責任で国境離島の地域振興を図る政策が必要だ。
島では、陸上自衛隊沿岸監視部隊の配備計画が進んでいる。駐屯が想定される部隊は100人規模。隊員と家族の移住による人口増や、地方税の増収などの経済効果も期待される。過疎化と安全保障の問題を一気に解決するカンフル剤だ。
「自衛隊は消費部隊」とまで言い切り、経済効果だけを目的に自衛隊誘致を進めてきた外間町長だが、ここへきて「迷惑料(市町村協力費)」の名目で国に10億円を要求。計画は暗礁に乗り上げた。
安全保障と地域振興は別の問題として進められるべきなのに、それを曖昧にし、住民に十分な説明をしてこなかった国にも問題がある。結局、国は戦後、与那国島に対し、両方の責任を怠ってきたのではないか。
*仲新城誠(なかあらしろ・まこと)
1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に石垣島を拠点にする地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県の大手メディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に「国境の島の『反日』教科書キャンペーン」(産経新聞出版)など。
◆ 【守れ!国境の島】土足で“裏庭”を荒らす中国船 「慣らされる」領海侵犯 (1) 2013-05-14 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉