【守れ!国境の島】取材中に中国船に追い回された 尖閣実効支配先送りにしたツケ(5)
zakzak2013.05.19
「中国公船がこちらに近づいています」
13日正午ごろ、私(=仲新城)たちが乗り込んだ漁船「高洲丸(こうしゅうまる)」に、ゴムボートで近づいてきた海上保安庁職員が告げた。
尖閣諸島・南小島の東南約2キロ。絶好の晴天だ。高洲丸は釣りをするため、一晩かけて石垣島から約170キロの距離を越えてきた。漁は好調だったのだが、中国公船は高洲丸の動きを察知し、“取り締まり”にやってきた。
1時間ほどして視界に入ってきたのは中国海洋監視船「海監66」と「海監50」「海監15」の3隻。いずれも領海侵犯の現行犯だ。気がつくと、南小島を背にした高洲丸は、中国公船に前、右、左の3方向から包囲されていた。高洲丸への接近を阻止しようとする海保の巡視船9隻と、中国公船のもみ合いが始まった。
攻防は6時間ほど。夕闇が迫ると、いつしか中国公船は包囲を解いて領海外へ去っていった。
尖閣海域で、漁業者が安心安全に操業する環境は失われていることは以前にも指摘した通りだ。しかし、わが物顔で日本領海に出入りする中国公船を肉眼で確認したのは初めてだった。無法地帯と化した尖閣周辺の現状を改めて痛感した。
特筆すべきは海保職員らの奮闘だ。高洲丸に乗船した仲間均市議(63)は「海保は一晩中、われわれを警護してくれた。午前3時ごろに目が覚めると、すぐそばにゴムボートがいた。職員の赤い顔を見ると、寝ていないことが分かる」と感嘆した。領海と漁業者を守るため海保は、不眠不休で任務を遂行している。
ただ、この状況では普通の漁業者は尖閣海域で漁をしたいとは思わないだろう。
尖閣で漁をするには、ただでさえ高い燃料費がかかり、悪天候で漁ができないと丸損だ。漁業者が尖閣に「避難港」の整備を求めていたのは、そのためだったのだが、日本政府は中国の反発を恐れ、日中国交正常化後40年もの間、実効支配の強化策を怠ってきた。
その間に、中国は日本を凌駕せんばかりの経済力、軍事力をつけ、今まさに、本腰を入れて尖閣を取りに来ている。もはや尖閣で施設整備ができる状況ではない。政府が、そして国民が、この問題を先送りしてきたツケというほかない。
危機にさらされている尖閣をどう守っていくのか。安倍晋三首相が再登板し、憲法をはじめ、国のかたちを問い直すうねりが始まった今こそ、論議の好機だろう。国境の島から、日本の将来が見えてくると思うのだ。
*仲新城誠(なかあらしろ・まこと)
1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に石垣島を拠点にする地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県の大手メディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に「国境の島の『反日』教科書キャンペーン」(産経新聞出版)など。
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◆ 尖閣 迫る中国船に乗員悲鳴 【八重山日報】記者 漁船に同乗 包囲され…6時間 2013-05-17 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
尖閣 迫る中国船に乗員悲鳴 八重山日報記者 漁船に同乗 包囲され…6時間
産経新聞2013.5.17 11:30
高洲丸に接近する「海監15」(右)と、割って入る海上保安庁の巡視船=13日午後、南小島の東南2キロ (八重山日報提供)
今月13日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で操業していた漁船が領海侵犯した中国公船に三方から包囲された。沖縄・八重山の漁船「高洲丸」(4・8トン)に同乗した八重山日報の仲新城誠記者が報告する。
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正午ごろ、海上保安庁の職員が記者の乗った漁船にゴムボートを寄せてきた。
「中国公船がこちらに近づいています」
しばらくして3隻の中国海洋監視船が続々と視界に入ってきた。他国に領海侵犯しているにもかかわらず、傍若無人に航行する。しかも、徐々に高洲丸との距離を詰めてきた。
「おーっ、こんな近くまで」。乗船者の一人が悲鳴のような声を上げた。高洲丸を警護する巡視船の電光掲示板には「中国公船は接近すると大変危険です」と注意を促す文言が流れている。尖閣諸島・南小島を背にした高洲丸は、気がつくと3方向を中国公船に包囲されていた。われわれは動きが取れない。巡視船は中国公船と高洲丸の間を航行し、これ以上われわれに近づかないように警戒している。巡視船は9隻態勢だ。
やがて中国公船、巡視船とも膠着(こうちゃく)状態になり、午後7時ごろには中国公船の姿は見えなくなった。包囲されていたのは、6時間くらいだっただろうか。高洲丸は翌朝まで尖閣海域にとどまり、魚釣りをしたが中国公船はもう姿を見せなかった。漁獲高は2日間で約60キロだった。
日本の領海内で八重山の漁船が中国公船に包囲される。海上保安庁に何とか守ってもらい、漁をする。日本の、この悲しい現実は何なのか。何が日本をここまで無力にしたのか。(八重山日報特約)
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